女好きべレス先生の覇道   作:カバー

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女好きべレス先生の覇道 黒鷲の栄光 後編

 

 

 

べレス視点

 

 

 

 

 

とうとう学級対抗戦当日。

練習を重ねてきた私たちの準備は万全だ。

部屋に篭ってやり過ごそうとしたベルナデッタを連れ出すためにエーデルガルトが部屋の扉を破壊したり、逃亡するリンハルトをフェルディナントがなんとか捕まえたりもしたが、まあ想定内だ。問題ない。

 

 

 

私はエーデルガルトと最後の作戦会議を行なっている。彼女は覚えが早くて助かる。

 

 

 

「それで、練習どおり索敵と釣り出し担当は先生とフェルディナントでいいのね?」

 

「ああ。エーデルガルトはリンハルトとベルナデッタの守備に回ってくれ。この布陣ならそれが一番だろう。」

 

 

「奇策ではない単純だけど効果的な陣営ね。それで、自信の程はどう?師。」

 

 

そうエーデルガルトが期待した目で静かにこちらを見てくる。ここは自信満々に行ったほうがいいだろう。

 

「勝たせてみせるよ。絶対に。」

 

「自信があるのね。私たちもそれなりに訓練を積んできたし、先生の采配にも数日で慣れてきたわ。勝算はあるわね。」

 

 

 

 

 

 

****************

 

 

 

 

 

 

そうしてついに学級対抗戦が始まった。

今回の対抗戦の指南役はジェラルトが行うようだ。

ジェラルトなら学びになる指摘を多く話すだろうという教団の判断だ。

 

 

 

まずは平原で3つの陣営が睨み合う。

べレス達は森林部に入り、密集して敵がこちらに動くのを待つ。

敵の2学級も敵が動くのを待つ構えだ。

遠くのクロード達は柵まで構えて森の中に籠る気合の入れようだ。

 

 

「…まあ、明らかに待ち構えてた方が有利だからね。」

 

 

そうべレスは呟いた。

 

なぜなら、一学級と先にやりあうとどう考えても残る別の一学級が圧倒的に有利だからだ。

 

損害を出さずに動くなら流れを見極めなければならない。

 

「どの学級もうまく待ち構えてるな。そうだ。悪くねえ判断だ。さて、これからどう動いて…おいおい。そりゃ下策だろ。」

 

ジェラルトが見学している生徒達に指南をしていると、クロード達に動きがあった。

 

槍を持ち、気取った感じに振る舞う青髪の貴族のローレンツに引っ張られ、気弱そうな眼鏡の少年のイグナーツがべレス達に突っ込んでいく。

 

クロードの指示ではなく、独断での判断だった。

 

「いい鴨ね。さっさと料理してあげましょう。」

 

べレスとエーデルガルトの指示で黒鷲の学級は森の中を取り囲むように動き、ローレンツ達を誘い込む。

そして…

 

 

「今よっ!」

 

 

「なっ!?囲まれているだと!?」

 

 

「う、わわ…!!」

 

 

戸惑うローレンツとイグナーツに、べレスとエーデルガルト、フェルディナントの近接の連続攻撃がまたたく間に入る。そして…

 

 

「くっ…まさか僕が…模擬戦とはいえ…」

 

「あ、はは…負けちゃいましたね…」

 

 

一人の被害もなく二人を畳んでみせた。

自陣にヒルダと篭っているクロードは面倒そうに頭を掻いて呟いた。

 

 

「ったく。だからあの先生を甘く見ると痛い目を見るって言ったんだ。」

 

「どうする?クロードくん。」 

 

「どうするもこうするも…俺たちもう3人しか居ないしな。ここで引きこもって迎え撃つ以外策も練れんだろ。」

 

 

 

が、事態はさらにクロード達に牙を剥く。

これを好機と見たディミトリたちは、べレス達と挟む形で背後からクロード達を襲う。

 

 

「ったく!ローレンツのやつ!俺のいうこと多少は聞けよな!」

 

まずはマヌエラがディミトリに急襲され倒れ、二人残ったクロード達は猛攻撃を受ける。辛うじてヒルダとクロードがそれぞれドゥドゥーとベルナデッタを倒すも、それまで。

 

「君が相手とはいえ、手加減はしない!」

 

「望むところ!勝負!」

 

ディミトリとエーデルガルトの一騎打ちから、最終的には青獅子と黒鷲が激突したが、教師の兵の運びの手慣れ方の差で黒鷲が勝利した。

 

 

 

****************

 

 

 

 

 

 

べレス視点

 

 

そして今は、学級での祝勝会が開かれていた。

エーデルガルトは最初は気恥ずかしそうに提案していたが、今は楽しそうに私の隣で寛いでいる。

 

学級の教室で、食堂から持ち込んだ料理を机に並べて各々が食事に舌鼓を打ちながら会話を楽しんでいる。

 

その中でもカスパルは食事を半分飲み込む勢いで食べながら騒いでいる。

 

 

 

「メシうめえ!うめえけど…やっぱり対抗戦に出られなかったの悔しいな!畜生!こっから俺はもっと強くなる!!」

 

「ちょっとカスパル…食べながら喋らないで。食べかすが…というか、相変わらずよくそんなに勢いよく食べれるね。絶対体に悪いよ?それ…。」

 

 

 

そうリンハルトが嗜めるが、カスパルは聞く耳持たずだ。

 

 

「お前こそそんな菓子ばっかり食ってたらダメだろ。ほら、肉食えよ肉!」

 

「いや、僕は肉肉しい料理はちょっと…って、聞いてる?」

 

 

二人は小さい頃からの腐れ縁だと聞いた。

何でも、帝国の軍務教ベルグリーズ伯と内務卿へヴリング伯の子供達らしい。

あの二人の犬猿の仲はフォドラ中で有名だ。

奇妙な縁もあったものだ。

 

 

「ぴええ!疲れた!疲れたよおお!!」

 

「よしよし。頑張ったわね、ベルちゃん。偉い偉い。」

 

 

また騒がしい所では、泣きじゃくるベルナデッタをドロテアが慰めている。

ドロテアを最近見ていて思ったのだが、男より女相手の方が優しい気がする。

 

 

「やはり一番優れていたのは私だろう。先生もエーデルガルトも見事ではあったが、最後まで無傷だった私が一番の功労者ではないかね?」

 

「相変わらずの愚かさですな、フェルディナント殿。どう判断してもエーデルガルト様の鬼気迫る敵の連続撃破がなければ勝利はありませんでしたよ。」

 

 

「全体の動き、指揮する、先生、一番、思います。」

 

 

フェルディナントとヒューベルト、ペトラが今日の功労者は誰かと延々と話し合っている。この話は長くなりそうだ。

 

 

そんな盛り上がっている祝勝会を、私とエーデルガルトは二人で眺めながらお茶を飲んでいる。

 

 

「師は私と自分のどっちが優秀だったと思う?」

 

 

しれっと答えにくい質問をしてくる。私が答えに窮していると、エーデルガルトは微笑んで呟いた。

 

「ふふ、冗談よ。皆が居たから勝てた。それ以上でも以下でもないわ。」

 

「そうだね。私もそう思うよ。」

 

 

 

いい雰囲気だ。今ならそれとなくそういう雰囲気に持っていけるかもしれない。そう考えながら私はエーデルガルトにあの話を振る。

 

 

 

「エーデルガルトは女の子同士での結婚についてどう思う?」

 

 

 

すると、エーデルガルトは驚いたようで、飲んでいたお茶を咽せてけほけほとし始めた。

私が慌ててエーデルガルトの背中をさすると、少しずつ落ち着いてきた。

 

 

 

「はあ…びっくりするじゃない。どうしたのよ急に。」

 

「いや、何となくの話題だよ。次期皇帝の意見を聞いておきたくて。」

 

 

 

そう返すと、エーデルガルトは真剣な顔になって言った。

 

「私は、そういう結婚を忌避する文化を愚かしいと思うわ。同性での結婚だけじゃない。紋章持ち以外との結婚。紋章持ちの子を作れない結婚を忌避するのは、間違ってると私は思うわ。」

 

「へえ…大胆だね。」

 

「そうね。私は皇帝になった暁には、そんな文化変えてやるわ。」

 

 

私の中でエーデルガルトの評価がぐんと上がる。

エーデルガルトは正直だ。この言葉に嘘はないだろう。

皇女でありながら誰よりも革命的なのは、もしかしたら彼女なのかもしれない。

 

 

「…そういう素質は、危うくもあるがの。何をするか、常識で測れんという意味でもある。」

 

 

そうソティスが険しい顔で言う。

でも、そういう考え方も世の中には必要だと私は思う。

 

どれ。もう一歩踏み出した質問をしてみるか。

 

 

 

「なら、もし私が君と結婚したい…って言ったらどう思う?」

 

僅かな沈黙。エーデルガルトは目を見開いている。

 

「………本気?」

 

「割と本気。」

 

そう答えると、エーデルガルトは困惑の顔を浮かべた後、小さく息を吐いて頷いた。

 

「そう。でも、それはまだなんとも答えられないわね。」

 

「私は師のことをほとんど何も知らないし、師も私のことをほとんど何も知らない。」

 

「それは…そうだね。」

 

私がしゅんと落ち込んで頷く。

ちょっと急ぎすぎたかな。雰囲気に飲まれてしまったかもしれない。

 

エーデルガルトはそんな私にふっと笑いかけると呟いた。

 

「ただ…私は師のことを、優秀な人だとは思ってるわ。今言えるのはそれだけね。」

 

そうしてエーデルガルトは私の隣に座っていた状態から立ち上がり、ヒューベルトの方に歩いていった。

 

「ふむ。案外脈アリなのではないか?」

 

「どうだろうね…。」

 

ただ一つ言えるのは、私は彼女のことがますます好きになったということだ。

 

 

 

その後、夜も更けてきたころ、私は教室で片付けを手伝い、セテスから呼び出されて大司教の謁見の間に来ていた。

 

「よく来てくれました、べレス。」

 

「どうして呼び出したの?レア。枢機卿の件?」

 

「それもありますが、主題は違います。貴女達の学級の翌節の課題を伝えるためです。」

 

「貴女達の学級には、盗賊の討伐を命じます。」

 

すると、セテスが引き継いで話し始めた。

大修道院にいる者は皆奉仕活動を義務づけられているとのこと。

そして、それは生徒も例外ではなく、課題という形で奉仕活動を行い、大司教に報告することになっている…とのこと。

 

「ふん。盗賊討伐か。まあ気晴らしにはなりそうじゃの。」

 

そうソティスが独言を呟く。あまり気乗りしないようだ。

が、次のレアの一言でソティスの雰囲気は一変する。

 

「実は…その盗賊ですが、級長達を襲ったあの盗賊達で…赤き谷ザナドに逃げ込んだのです。」

 

「お母様に聞かせるには心苦しい話ですが…」

 

「…なんじゃと?盗人風情が…ザナドに?」

 

女神の殺意が、迸った。

 

 

 

 

 

 

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