異種族との恋(そしてあけすけな性)についての三つの物語 作:五十貝ボタン
「久しぶりね、3人全員が顔を合わせるなんて」
庭園の中に丸テーブルがしつらえられている。そのテーブルを囲んで、三人の女が互いの顔を見合わせていた。彼女らは種族こそ違えど、学友だった。同じ学園で魔法を学んだ仲である。
春の
「卒業してから、色々あったでしょう?」
ティーセットにサフランティーを注ぐのは、ヒューマンのサラ。茶色い巻き毛を、今は後ろでひとつにまとめている。
「正式に司書として働くことになったんでしょ? お祝いをしようと思って」
ハーフリングのリリィはサラよりも二回りは小柄だ。ヒューマンと並ぶと子供のように見えるが、立派な成人である。
「久しぶりって感じはしないわ。二人のことは手紙でよく聞いていたもの」
妖精(フェアリー)であるペタラは、リリィよりもさらに小さい。彼女の頭に乗ることさえできる。だが、カップは他の二人よりもワンサイズ小さいだけだ。フェアリーのちいさな体のどこにカップの中身が消えるのか、サラには不思議で仕方なかったが、「科学的に解明できることばかりじゃない」というのが、妖精族の答えだった。
「でね、サラに聞きたいことがあったの」
一口目を飲んで落ち着いたところで、ペタラが身を乗り出した。
「うん。どんなこと?」
好奇心旺盛なフェアリーは、いつも突飛なことを言う。サラもそのことはよく分かっているつもりだった。だが、この時ばかりは、ペタラは予想を軽々と超えてきた。
「オークのおちんちんが大きいって本当?」
ブフッ。
サラは含みかけたお茶を盛大に吐き出し、咳き込んだ。
「ちょっと! もうちょっと色々、先に聞くことがあるでしょーが」
リリィが、サラの背中を叩いて落ち着かせてくれる。
「だって、正式に恋人同士になったんでしょ。オークってソッチもすっごいって言うじゃない?」
ペタラの表情には、サラを困らせたいというイタズラ心は微塵もない。純粋な好奇心に満ちている。
「ま、まあ……たしかに。異種族のそういうことって、聞く機会がないものね」
なんとか口元を拭いながら、サラは呼吸を落ち着ける。
「でも、そういうのはあんまり人前で話すことじゃないっていうか……」
「そう? でも心配だわ。世の中にはハーフオークがいるんだから子どもはできるんでしょうけど、もし大きすぎてサラに入らなかったら大問題じゃない!」
ペタラは大真面目だった。真剣に友人の心配をしているのである。
「じゃ、じゃあ……あなたたちの話も聞かせて。恋人とのこと」
ほんとのところ――以前から、サラも異種族との恋愛事情について興味を持っていたのだ。
リリィも、ペタラも、自分とは違う種族の恋人を持っている。そのことをいつか聞きたいと、彼女も思っていたのだ。
「包み隠さず、ベッドの中のことまでね」
「あたしはベッドは使ってないけど」
「どういうこと!?」
あっさり答えたリリィに、サラは思わず大声を上げた。異種族との交流について、実のところ彼女も興味津々だった。
「それは、話せば長くなるんだけど……順番にいこう、順番に!」
と、リリィがサラに水を向けた。
「……オークがみんな性欲や精力が強いわけじゃありません」
「私が見た本にはそう書いてあったけどな」
「むかしの記述は誤っていることもあるの。特に、『北伐』の時代は、オークへの偏見が強かったから……」
「で、サラのカレはどうなの?」
リリィに肘でつつかれて、サラは答えに詰まった。
「う……」
友人ふたりが、にやにやと顔を覗き込んでくる。
「つ……強い、です」
顔を真っ赤にして答えるサラへ、ふたりは歓声を浴びせた。
「こんな美人が近くにいりゃあね。そうでしょうよ」
「ねえ、早く聞かせてよ!」
サラはなんとか呼吸を整えてから、自分の記憶を辿る。
「私が語学の研究をしていたのは知っているでしょ。卒業後も研究に没頭していたんだけど……」