異種族との恋(そしてあけすけな性)についての三つの物語   作:五十貝ボタン

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3,リリィとファイアーファング&エピローグ

「あたしは学園を卒業した後、世界で唯一の冒険料理人になった」

 リリィは空を見上げながら話し始めた。

「普通では手には入らないような希少な食材を見つけて、誰も食べたことのない料理を出す! それがあたしの生き方だと決めたんだ。色んなところに行って、色んなものを集めてきた。あたしの屋台には、値もつけられないようなふしぎな食材がたくさん収められている」

 

「フェニックスの羽根つき餃子とか、ドワーフが掘り出した岩塩の塩キャラメルとか……」

 いずれも、リリィが発明したレシピだ。一部では珍味として語り草になっている。

 リリィの料理人としての腕は折り紙付きだ。その技術は学園で培った深い生物知識に裏打ちされている。

 

「あるとき、新しい食材を使うことを思いついたんだ。竜涎香(りゅうぜんこう)だよ」

「鎧に覆われた動物だね!」

「それはセンザンコウ」

 ペタラの堂々とした発言にサラがやんわりとツッコミを入れる。

「竜涎香って、ドラゴンの口の中にできるっていう石でしょう。それが料理に使えるの?」

「薬として使うんだし、量を調整すれば体に悪いものじゃない。独特の香りがするって言うから、その香りを料理に使えないかと思ったんだ」

 胸の前で手の形を様々に変えながら、リリィはかつてを思い出す。

 

「竜涎香を手に入れるため、炎峰山脈をナワバリにしているドラゴンたちのところに向かった。彼らはヒューマンの街と境界を接しているけど、良好な関係を続けている。そこでなら協力してくれるドラゴンが見つかると思ったんだ」

「ねえ、恋人の話は?」

 ペタラは退屈してきたようで、テーブルの上にぺたんと座りながらカップにもたれかかっている。

「もう、ペタラったら。リリィはその冒険の中で恋人になる人と出会ったのよね?」

「うん、まあ……そう、かな」

 リリィの語りはやや歯切れが悪い。どう切り出そうか迷っているようだ。

 

「まず、あたしは山脈の麓まで屋台を引いていって、料理を振る舞った。ヒューマンの街とドワーフの鉱山があったから、その両方にね」

「恋人とはそこで出会ったの? 彼はヒューマン? ドワーフ?」

「どっちでもない。彼らの信用を得て、ドラゴンのことを聞きだしていったの。ドラゴンは山脈にたくさん住んでいるけど、人間の前に姿を現すのはそのうちの数体なんだって。どうも、彼らは当番制で交渉役をやってるみたいだった」

「面白いわ。ドラゴンにも組織があるのね」

「基本的には、ドラゴンは人間を見下しているからね。相手をするのも面倒と感じるか、もしくは自分を崇めさせようとするんだ。でも、どっちのパターンでもいずれ戦いになる。だから、ドラゴンの中で代表者を選んで人間やドワーフと交渉をさせてるんだ」

「ふうん」

 恋の話を待ち焦がれるペタラは、少し気のない返事をした。サラが続きを促す。

 

「その頃、交渉役をやっていたのはファイアーファングって呼ばれるレッドドラゴンだった。月に一度、街の広場に降りてきてヒューマンやドワーフの代表団と話をするんだ。代表団とも会ってね。その場で出す料理を任せてもらうことになった」

「さすが。名高い冒険料理人のレシピを味わえるなら、ちょっとしたイベントになるわね」

「もちろん! ドラゴンの前で料理するなんて、それ自体が冒険でしょ? それで、メニューを考えた。ヒューマンやドワーフへのコースとは別に、ドラゴンのための料理を考案したんだ」

「へえ!」退屈そうにしていたペタラがぱっと顔を上げた。「ドラゴンってどんなものを食べるの?」

「好き嫌いは竜によるけど、その時はルビーを使うことにした」

 リリィは胸を張って、さっと両手を左右に開いた。

「高級品が好きなんだよ。分かりやすいでしょ?」

 

 サフランティーで喉を潤したあと、リリィはドラゴン向けのコースについて熱く語った。だがその内容はあまりに専門的、かつ刺激的だった。

「……そしてメインがシュリンプのルビーパウダー和え。レッドドラゴンのために作った赤く輝く料理ってわけ」

 コースを頭から紹介し追えたハーフリングは、ごくりと喉を鳴らした。

「でも、その時は緊張したよ。赤い影が空に現れたかと思うと、だんだん大きくなってきた。頭上に自分より大きな存在がいるっていうのは、本能的な恐ろしさがあった」

「あ、ああ。ついに会合が始まったのね!」

 さすがのサラも、レシピ紹介を聞いてすこしぼーっとしていたようだ。気を取り直して聞く態勢を作る。

 

「ファイアーファングは真っ赤な鱗に全身を覆われたドラゴンだった。頭から尻尾の先まで、15メートルくらいかな……」

成体(アダルト)ドラゴンね」

 サラに頷いて返し、リリィが続ける。

「ドラゴンの口って、臼歯がないでしょ。短剣がいくつも並べられてるみたいだった。息を吐くと陽炎ができるの。こんな生き物がいるのかって、最初は思ったわ」

「会合は、どんな風に進んだの?」

 文化に興味を持つサラである。だが、リリィは軽く肩をすくめた。

 

「あたしはほとんど料理の準備をしてたから、細かい内容までは分からないな。でも、激しい言い争いも長い議論もなかったみたいだから、『いつも通り』って感じだったと思うよ。うまくやってたみたいだった」

「そう」サラはいくらか残念そうに頷いた。「平和が一番ね」

「コースが進んでいって、ついにメインのルビーシュリンプを彼の前に出した。ただでさえ人間がドラゴンに料理を振る舞うのが珍しいのに、これは特別彼の興味をそそったみたい。『面白い味だ』って」

「好反応ね!」

 大きな竜との邂逅に、すっかりペタラも身を乗り出して聞いている。

 

「会合の内容も概ね終わったみたいだったから、彼の前に出て言ったの。

『この料理を作ったのはあたしです。お口に召しましたか?』

 ドラゴンはこう答えた。『ああ。新鮮な経験だった』

 彼は満足してるみたいだった。だから、今ならイケると思ったの。

『食後の口の中を掃除すると、きっとさっぱりしますよ』って」

「そうやって竜涎香を取ろうと思ったの?」

「そう! あたしは欲しいものが手に入り、ファイアーファングは牙が綺麗になる。会合はまとまって全員ハッピー、でしょ?」

 ハーフリングの指が虚空をちょんちょんと三カ所叩きながら主張する。

「ちゃっかりしているっていうか、なんというか……」

 

「ノミやハンマーも用意したんだ。竜涎香は石みたいに硬いっていうからね」

「ドラゴンさんは了承したの?」

「『やってみろ』って言って、広場に伏せて首を舗装の上に乗せて口を開いたんだ。ドラゴンっていえば空を飛んでるところしか見たことないから、なんだか大きいオモチャみたいなシルエットだなと思ったよ」

「ほんとうに? もしかしたらそうやって油断させて、首を斬ろうとしてるのかもしれないのに」

 物騒なことをさらりという妖精に、

「ファイアーファングはだいたいあたしの狙いを察してるみたいだった。それに、もし殺すつもりでもできっこないと思ってたよ、きっと。あたしの体格じゃあね」

 リリィは両手を広げてみせる。小柄なハーフリングの身長は、せいぜい120センチメートルあるかないかというところだ。

 

「ドラゴンの口をぐるっと眺めて、奥の牙の内側に白い石みたいな塊がついてるのがわかった。だからあたしは口の中に入っていって、それをノミで削り取ることにした……」

「ドラゴンの口の中に入ったの!?」

「食事の後だからね。もし食われたら、あたしの料理で満足してないってこと。でしょ? 料理がドラゴンに通用しなかったんなら、食べられたって仕方ないと思ったの」

「根が冒険家なんだから……」

 呆れたような、心配したような……そんな声をサラが漏らす。友人は目の前にいるのだから、食べられてはいないとわかっても冷や冷やするらしい。

 

「土足じゃ悪いと思って、靴を脱いで、そっと牙を跨いだ。頭を下げて、四つん這いで入って行った。ドラゴンの舌は濡れていて、なのにざらざらしてる感じだった。考えてみれば、たくさん人にものを食べさせてきたけど、舌がどんな形をしているのか、自分で体感したのははじめてだった。食べられる料理に目があったらどんな光景が見られるのかが分かったよ。深い穴が目の前にあった。ドラゴンの喉だよ。ひくつく粘膜に覆われて、奥は真っ暗だった。奥からはすこしだけ、硫黄のにおいがした。頭の上にある鼻の穴を空気が出入りするヒューヒューって音が聞こえた。あたしは見とれて、しばらく喉の奥を眺めてた。5秒か……10秒かな。我に返って、奥歯の方へ向かった。舌の上に胸を着けて、這っていったんだ。そのとき、急に……」

「急に?」

「真っ暗になった。何が起きたのか分からなかったけど、ファイアーファングが口を閉じたんだ。あたしは舌と上顎の間で閉じ込められた」

「ええっ!?」

「ケガはしてないよ。口の中にすっぽり入っちゃったんだ。ヒューマンの大きさだったら、どこかが牙に引っかかったかも」

「食べられそうになったの!?」

「違うって! たぶん、いたずらのつもりだったんだ。飲み込もうとはしなかった。飴玉を口の中に入れるような感じだよ。びっくりしたけど、不思議と怖くなかった。それに……」

「それに?」

 

 リリィは鼻を隠すように両手の指先を触れあわせた。

「感じたんだ……」

「何を?」サラはキョトンとして聞き返した。

「感じたの! 気持ちよくなったんだよ!」

 今度は目元まで隠して、サラは叫んだ。耳が赤くなっている。

「全身で()を感じたんだ。感触。におい。聞こえる音も見えるものも、なにもかもが彼の体の中だ。あたしの体ぜんぶが、ファイアーファングのナカにあった。そんな経験は初めてだった。だから、そのぉ……生まれ変わった気分というか、新しい自分になったっていうか……」

「……新鮮な体験をしたみたい、ね?」

 これって聞いていい話なんだろうか。サラはちらっとだけ思った。

 

「びっくりして、ドラゴンの舌に抱きつきながらイってたの! 悪い!?」

「悪くないよ! むしろ……すごい! それじゃあ、リリィの恋人って……ドラゴンなの!?」

 驚嘆満面、ペタラが声をあげる。

「……うん」

 こっくりと頷くリリィの小さい肩にサラがゆっくり手を触れる。

「それって……すごい経験だわ。伝説上に半竜人(ハーフドラゴン)がいるから、ドラゴンが他種族と肉体的なつながりを持ちうることはわかってけど、実例が目の前に居たなんて」

「話を続けて、リリィ!」

 ペタラが両手を振り上げる。卓上の花瓶に紫のグラジオラスが現れた。

 

「ええと。結局、あたしはファイアーファングの口の中で動けなくなって、彼に吐き出された。よだれまみれになって……噛まれたんじゃないかって大騒ぎになったんだけど、その場はなんとか取り繕ったんだ」

「取り繕えてたの?」

「……た、たぶん」

 ドラゴンの唾液まみれでうっとりしているハーフリングの姿は、街の人々にはどう映っただろうか。少なくとも今のところ、リリィの耳に評判は入ってきていない。もしかしたら、口にすることがはばかられているのかもしれない。

 

「それから半年、彼のところに通ったわ」

「半年!?」

「毎日じゃないよ。月に一度。彼の巣に通って、料理を振る舞った」

「竜涎香を分けてもらうため?」

「ううん……。彼に会いたくて」

「リリィってすごいね」妖精は目を潤ませていた。「私だったら、ドラゴンなんて近づくのも怖いわ」

「べ、別に特別なものを感じてたわけじゃないんだからね! 人型種族相手じゃ味わえない快感を思い出しちゃっただけなんだから!」

「私にはリリィが恥ずかしがるポイントが分かんなくなってきたわ……」

 こほん、とリリィは咳払いをした。それで仕切りなおそうと思ったのだろう。

 

「あたしはそんなにたくさん経験があるわけじゃないけど、さいわい料理の腕には自信があるからね。まずは胃袋を掴めっていう古来寄りの知恵を実践することにしたんだ」

「ちょっと違うような気がするけど、先人にならうのは大事なことね」

「あたしは戦略を立てた。ファイアーファングは人間とドラゴンの橋渡し役をやってる……だから、自分のねぐらから動けない。ってことは、普段食べているものも近隣の産物に限られるわけでしょ。そこで、彼が普段食べられないものを提供することにしたんだ」

「へえ!」ペタラは小さくつばを飲んだ。「どんなメニューを?」

「まずは南から取り寄せたフルーツ。赤い果肉が鱗と同じ色でかっこいいでしょって、サラダにしたんだ。ドラゴンってなんでも食べられるのに偏食家が多いみたい。野菜や果実のおいしさをあまり知らなかったみたいだった。

 次の月は、琥珀海(こはくかい)で取れたシーフードを振る舞った。普通なら切り身にして出すんだけど、ドラゴンが食べるサイズなら三枚に下ろした魚を半身(はんみ)ずつ調理できるでしょ。あたしにとってもやったことない料理だから面白くて……」

 

「毎月、一品ずつなの?」

 リリィが不思議そうに聞いた。

「ドラゴンってあの巨体だけど、寝て過ごしているうちはあまりたくさん食べる必要はないらしいんだ。それに、あたしも材料を担いで山に登らないといけないから、たくさんは用意できないし。さいわい、火だけは困らないけど」

「ドラゴンの吐息(ブレス)で調理したの?」

「彼はけっこう器用でね。火力を調節できるんだ。最初は薪を運んでたんだけど、三回目からは火を吹いて協力してくれるようになった。四回目からは山に登る必要もなくなったんだ」

「どうして?」

「あたしが麓まで行くと、彼が降りてくるようになったんだ。信じられる?」

「ドラゴンを料理で魅了するなんて」

 サラの目は感心を通り越し、感動の色に輝いていた。

 

「五回目には珍しがって人が集まっちゃって。いつもなら喜ぶところだけど、落ち着かなくってさ。そしたら、六回目には彼がねぐらまで運んでくれるようになった……ドラゴンの背中に乗って飛んだんだ」

「すごい! 英雄みたいね」

「ドラゴンに恋人として見初められたんでしょ。英雄よりもっとすごいわ!」

 喜びのあまり、ペタラは空中で踊っていた。そうせずにはいられなかった。

「『帰りも乗せてやろう』って言われたんだけど、『一夜でいいから一緒にいたい』って言った。ファイアーファングの瞳孔が広がったのが分かった。少し考えていたみたいだった。

『他の生き物がファイアーファングと並んで()せたことなどない。それは竜が他者に与える最大の栄誉だ』

 それから、こう言った。

『しかし、誰かに与えられた食事を楽しみに待ったこともなかった。お前には最大の栄誉で報いるべきだろう』

 それで、私たちは一夜を過ごした。竜の住処には山鳥(やまどり)も近寄らない。静かで、あたしは彼の鱗の下を熱い血が流れる音だけを聞いて眠った。すごく……満たされた夜だった」

 

 話をじっと聞いていた二人の口から、長い吐息が漏れた。

「すごいことを成し遂げたのね」

「熱い恋で竜の心を溶かしたんだわ!」

「そ、そんないいものじゃないよ。なんていうか……あの大きな体をもっと感じたいって、その思いで夢中だったんだ。性欲だよ、性欲!」

「なるほど?」サラの目元がイタズラっぽく細められた。「それじゃあ、体も満たされてるの?」

 リリィの耳が再び赤くなった。

 

「サラみたいなことはまだできないよ! アレなんてあたしの体ぐらいあるんだから!」

 大声を上げてから、リリィは口を手で塞いだ。庭園には他の姿はないが、誰かに聞こえているかもしれない。

「私たちもそうだよ!」

「ペタラみたいにもできないよ。夢を一緒に見るのは、エルフの魔法でしょ」

 手で顔を仰ぎながら、リリィは深く座り直した。

「じゃあ、どうするのよ?」

それ(・・)はできないけど、おたがいに舌でとか……」

「ドラゴンの舌で?」

「彼もあたしの肌に舌で触れると興奮するらしくて……」

 小さな体をますます小さくして、リリィは呻くように言った。

「リリィがするときは、どうやって?」

「こう……」

 リリィは何かに抱きつくような仕草をしてから、ぶんぶんと首を振った。

「それだけは言えない!」

 

「おほん。さすがにこれ以上聞くのはよくないわね」

 咳払いしてから、サラは首を傾げた。

「でも、伝説の半竜人(ハーフドラゴン)はどうやって生まれたのかしら」

「ドラゴンの秘術で、人間(マンカインド)に姿を変えることができるらしいんだ」

 話題が変わって、リリィはほっと胸をなで下ろした。

「それじゃあ、彼がハーフリングに姿を変えれば……」

「そんなのダメ!」

 掌を大きく振って、リリィは再び叫んだ。

「大きな体がいいのに! そりゃあ、人の姿になれば抱き合えるし、キスもできる……でも、あたしの倍くらいの身長でいてほしい。それに、鱗がなくなるのもいや! なめらかな熱い鱗で抱きしめられたいし、大きな口で噛み跡をつけてほしい!」

「こじらせちゃったみたいね」

 早口にまくしたてるリリィ。彼女がこれほどの情熱を持って料理以外のことを語る姿を見るのは、親友達にとっても初めてだった。

 

「……こ、こんなところかな」

 ひとしきり竜の体に対する欲望を口にしてから、リリィは我に返った。

 花々で彩られた卓上には、ほんのりと熱が漂っている。彼女らが漏らしたため息が、その場に留まっているかのようだった。

 

 

 

「なくなっちゃったわ」

 サラはカップにサフランティーを注ごうとしたが、ポットは空になっていた。

 

「二人が(はや)すから、話すつもりじゃないことまで話しちゃったじゃんか」

 両手でほっぺたを押さえて、リリィがつぶやく。

「いいじゃない。私、こんなに楽しいのは久しぶりだったわ。カレンシールと一緒の時を除けばだけど」

「のろけちゃって」

 リリィは皮肉っぽいことを言って会話のペースを取り戻そうとしたが、ペタラは動じない。

「二人の話にあてられちゃった。大事な友達がこんなに情熱的な恋をしてたなんて思わなかったもの」

 ハーフリングはふいっと顔を横に向けた。

 

「私、違う文化のヒトと付き合うことにちょっと悩んでたんだけど……」

 サラは細い肩をすくめた。

「むしろ、小さな悩みに思えてきたわ。ふたりとも、自分の何倍も大きな相手がいるんだもの」

「エルフたちには絶対知られちゃいけないことなんだけど、サラが包み隠さず話してくれたから」

 フェアリーは興奮を静めるように翅を休めていた。

「自分がちょっと変なのかもって思ってたけど、心強いよ」

 リリィは手元のティーセットを片付けはじめている。

 

「私も楽しかった」

 傾いていく日がカップの底に反射して、きらりと光った。

「何考えてるか、当ててみせようか?」

 彼女にとっては高い位置にある友人の顔を見上げて、リリィは笑った。

「カレに会いたいと思ってるんでしょ?」

「えっ! ……どうして分かったの?」

「リリィもそう思ってるからでしょ?」

 三人はしばらくお互いの顔を見つめ合い、そしていっせいに笑い出した。

 

 庭園には温かい風が吹き抜け、三人の髪を揺らした。

「またやりましょう、お茶会」

「もちろんよ! 今度はもっと早くやりましょう」

「賛成。こんな話を聞かされちゃったら、その後どうなったのか気になって仕方ないもんね」

 それぞれに別れを惜しみながらも、三人はてきぱきと茶話会の片付けをして、手を振り合って別れた。

 

 足取りは軽く――というよりは早足になって――駆け出さんばかりだった。

 一刻も早く恋人に会いたい。その気持ちが高ぶり……

 ムラムラしていたのだった。

 

(了)




 Twitterでリクエストを受けて作成しました。
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異文化交流いちゃらぶコメディ
【男性陣】
ドラゴン(人型になれてもなれなくても)
エルフ(ダークでも正統派でも)
オーク(豚でも人型でも)
【女性陣】
人間
ハーフリング
妖精
上記の組み合わせで自由に男女カップリングを作り、それぞれの異種間ならではシモネタトークを女三人が姦しくわいわい繰り広げる話
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 初の異世界恋愛に挑戦しました。当初の予定を大幅に超える文字数まで楽しんで書くことができました。

リクエスト:とりにくさん https://twitter.com/tori29umai

作者のTwitterID:https://twitter.com/Isogai_Button
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