情報が少ない学園の一つ。うーん難しい。でも書いた。
少なくとも百鬼夜行のメンツよりは書きやすいかなぁと。
どうも。
山海経高級中学校帰宅部所属、白尾シズクです。以後宜しく。
……これ以上何を言えと。
私の語れることなんて少ない。というか殆どない。あるとしても、面白みのないことしか話せないだろう。
強いて言うなら、裏では『白面』などと呼ばれていることくらい……か。しかし、戦闘能力はそこまででもない。
私は身長が低い。身体能力も決して優れていると言えるようなものではない。筋肉だってあまりない。
私はオメガだ。アルファよりも肉体で劣り、戦いには向かない。定期的にやってくる発情期は、私の思考を鈍らせる。
そんな私だが、しっかりと山海経の『裏』を纏めることが出来ている。
みな、私の正体を知らない。私も口外することはない。その隠匿が『白面』という存在に箔をつけている。
私が『裏』を纏めておけば、情報が錯綜することもない。悪人は必ず『裏』を通り、情報を残す。そうして『裏』に悪人が集まりきった時に……
『裏』という名の壺を、ひっくり返してしまえばいい。
それまで、私は『白面』という偶像を続ける。
そんなことをしてるくらい、か?
あとは、そうだな。
錬丹術研究会には、とてもお世話になっている。
オメガの発情を鎮める抑制剤に、低い身長で正体がバレないように身体が大人になる薬、髪色や毛色を変える薬など、いつも必要だからな。贔屓させてもらってるよ。
ああそれと、『裏』を纒める目的上、玄龍門のキサキ、玄武商会のルミとは顔を合わせている。もちろん薬を使っていない時の姿で。
そうでなければ、信用も信頼も得られない。少なくともキサキの信は得ておきたいのが本音だった。
必要な時に、渡せる情報をあちらに渡す。そうして『裏』からはみ出た悪人を捕らえ、『裏』に組み込むか玄龍門に引き渡す。
それを繰り返していけば、当然のように山海経の治安は良くなっていく。
そうすれば全てとはいかないが、以前よりはずっと綺麗な山海経を作り出せることだろう。それを目指して、頑張るとしよう。
……そろそろ時間か。
薬を飲んで、『白面』の名の元となった白磁の仮面を被って……ああ色を変える塗り薬も……これでよし、と。
さて、行こうか。
『白面』と名乗る者がいる。
またの名を『呑干獣』
山海経の裏に巣食う大悪。悪人を統べ、従え、呑み干し喰らう。
山海経の全てを喰らわんと蠢く獣。故に『呑干獣』
玄龍門でさえ、迂闊な手出しは出来ない。手を出してしまえば『白面』の……彼の者が長である『裏面』が黙ってはいない。
不倶戴天の敵。玄龍門にとっての『裏面』とは……『白面』とは、そういう存在だった。
しかし、その山海経の悪性を統べる『裏面』であっても、最低限のルールは守る。
例えば『梅花園』への手出し厳禁、など。
これは良識があるから、という話ではない。単にプライドの問題だ。『梅花園』に手出しをするほどに落ちぶれている、ということを暗に言っているようなものだと『裏面』では思われる。
上下の蹴落とし合いが激しい『裏面』であっても、『梅花園』には手を出さない。何より『白面』がそれを許さないから。
恐れられている『白面』だが、その正体を知る者はいない。いたとしても、すぐに『消される』と噂される。だから誰も『白面』のことを探ろうとはしない。
それでも探ろうと、『裏面』の頂点に立とうとした者は……噂通りの結末となる。
「結局そういうのが相手ならどうしてるのだ?」
「……前に記憶を消す薬を頼んだこと、覚えてる?」
「アレを飲ませたのだ? めっちゃ苦いアレを……?」
「知ってる。だから無理矢理、逆らえば殺すと脅して飲ませた」
「うわぁ」
……このように、錬丹術研究会に頼んで作ってもらった薬を飲ませる。そうすれば綺麗さっぱり忘れる、ということだ。
やはり錬丹術研究会の……薬子サヤの腕は良い。目的のものを多少のデメリットはありながらも作ってくれる。
依頼して良かったというものだ。
だがその薬子サヤは、なぜだか少し気まずそうだった。
「また、薬を使うつもりなのだ?」
「必要だから。貰える?」
「……ぼく様は天才だから、薬の改良品は出来てるのだ。前はあった副作用も、前より軽減出来てる。けど、決して無い訳じゃない。そんなに何度も使っていたら……」
「……それでも必要だから」
心配、してくれているのだろう。
大人に変える薬と、それを元に戻す薬。それらを何度も往復して使い続ければ、元は小さな副作用も積み重なって……身体を蝕む。
しかし、それを止めるわけにもいかない。
限界は来るだろうが、少なくともそれは今ではない。
それまで、組織を取りまとめ続ける。
そして最後には……
だから、それが終わるまではなんとか持たせてみせる。
それが私の─────
「シズク、ちゃんとご飯食べてる?」
後ろからいきなり声をかけられた。
一瞬硬直し、すぐにその声が誰かを察した。
「……ルミか、驚かせないで」
「あははっ、ごめんね。でもここしばらく食べる量が減ってるって聞いたから……お邪魔させてもらってたんだ。こうでもしないと、シズクはあたしのこと避けるから」
「いや、そういうわけじゃ……」
……ない、とは言えないか。
少なくとも、キサキとは違って避けてる自覚はある。
私のしてることにキサキには理解を得られているが、ルミにはそういったことは聞いてないから。
止められるよりは良いと、そう思っていた。
「そういうわけで、はいこれ」
「……これは?」
「少しでいいから食べてもらおうと思って、作ってきたの」
「少しってほどの量? 多い気がするけど、」
「まあまあ! ほら、早く食べてよ。出来立てだよー?」
「……ここで作ったのか。まったく」
ルミ特製の料理。
そうだな、久しぶりに食べる。美味しそうだ。
……避けてたから、というのもあるか。
久しぶりに食欲が唆られている。はてさて、いつぶりか。
……まあ、とりあえず食べるか。
「サヤ、君は?」
「え、や、ぼく様はもう昼食は済ませてあるのだ……」
「そう? じゃあ遠慮なく……」
そうして箸に手を伸ばせば、ルミのニコニコとした笑顔が見えた。
それは、食べてくれることを喜んでいる……という顔、のはずだ。
……それにしては。
なんだか、背後が揺らいでいるように見えるのは……気の所為だろうか?
「ちゃんと食べてくれて、あたしは嬉しいよ。おかげで……睡眠薬も、しっかり効いてるみたいだね」
「薬、ありがとね。こうでもしないとシズクは意地でもやめなかっただろうから」
「……シズクが頑張ってたのは、私も、キサキも知ってるよ」
「でも、そろそろいいんじゃないかな」
「『裏面』は十分に育った。これ以上は実を……シズクを腐らせるだけだよ」
「早めに刈り取らないと、手遅れになる」
「キサキもそう思って私に相談したんだろうから」
「さ、これで話に聞いた通りなら丸一日眠って起きないらしいし……」
「あとはそっちの出番だよ、キサキ」
「それまで私は……下準備でもしようかな」
「ルミ」
「あ、キサキ。思ったより遅かったね」
「『裏面』がしぶとく逃げ回っての。捕らえるのに時間が掛かった。少数は取り逃したが……再興は不可能であろうよ。それで、ルミ。何をしている?」
「あははっ、わかってるくせに」
「……そうじゃの、わかっておるよ。それを見れば一目瞭然に。その上で聞いておる」
「うん。『下準備』をね。あとお仕置きも兼ねて」
「まったく……シズク、起きておるか?」
「流石に喋れないと思うよ。ほら、こんな感じに咬ませてるから」
「徹底的だのう」
「あたしもやりすぎかな? って思わなかったわけじゃないけど……なんだろうね、このくらいしないと気が済まなくて」
「まあ、それはいいんだ。それで、キサキはどうするの?」
「どうするか、のう」
「それは散々に話し合い、もう既に決めたことであろうよ」
「─────手籠めとする」
「あははっ、だよね」
「あたしは順番に拘りはないから、キサキから先でいいよ」
「ふむ、では……」
「ほう……ルミ、相応に時間をかけたな」
「キサキが来るまで手は出さないって約束だったからね」
「ここまで入るか。ならこれは……」
「どんどん入っていくねー」
「トロトロになってるね。なんでも入っちゃいそう」
「準備は既に済んでいたであろう。今までよりも、入りやすくはなったじゃろうが」
「じゃ、そろそろかな?」
「……ルミ、噛んだな?」
「あはは……ごめんね、我慢できなくて」
「……まあ良い。順番など、さほど重要でもないからの」
三人の邂逅は、夜が明けるまで続いたそうな─────
『シズク』
『白面』と呼ばれ、裏を支配し取りまとめて、秩序を与えている。いつか集まりきったところを刈り取るために。
薬使用後は身長160cm以上、色も金色、胸も更に大きくなっているなど変化が激しい。
いつかは『裏』────自身の呼び名から『裏面』と呼ばれる組織を刈取るつもりでいるが、その中には自分も含まれる。
最悪卒業するまで牢獄の中だろうが、その覚悟で組織をまとめている。
……しかし、予想の斜め上を行くこととなった。
呑干獣が逆に呑み干される結果に。
泣いたし鳴いた。
『ルミ』
病んだ。いや病んでないけど、執着心が異様なほどに膨れ上がっている。
手作りご飯は食べてほしいし、料理は作りたいし、健康でいてほしい。でもシズクが守る気がなかったので乱暴した。
『キサキ』
実は熟してこそ美味となる。しかし熟し過ぎれば、ただ腐るだけ。
そういうわけで育った『裏面』を刈り取った。
シズクは自分が駄目になるまで続けようとしたみたいだが、そんなの許すわけがない。
そういうわけでルミと画策し、シズクを手籠めとした。