本人にその気がなくても……ねえ?
えー、連邦生徒会所属、白尾シズクでーす……寝不足でーす。
えー、仕事がぁ、多すぎます。生徒会長いなくなったからね、あの人マジでなんなの?
1から説明するとですね、ある時に連邦生徒会長が行方不明、消息不明に。生徒会長は最後に何やらシャーレという連邦生徒会直属の組織を作るだけ作って消え去って。
で、残った問題事は全部こちらに丸投げと。はぁーあ。
くそがよぉ。おかげで毎日寝不足だぁこら。
建前でも連邦生徒会長代行なんてやるんじゃなかったよ。いやほんとにさ。
なんか同じ連邦生徒会所属でも会長の座を狙う輩もいるし……はぁーあ。
連邦生徒会長の代行だからってなんでも出来るわけじゃないんだぞ。あの人と比べんな? マジで。
……でもやるしかないよねぇ。任されちゃったんだもん。
ちゃんとやらないと七神行政官にどやされるしね……あの人、怒ると怖いんだよ。
本当に、なんで私なんかが……
連邦生徒会っていうのは、ざっくり言っちゃうとエリートの集まり。
ゲヘナの万魔殿、トリニティのティーパーティー、ミレニアムのセミナーに百鬼夜行の百花繚乱調停委員会……とにかく、優秀な人が集まるところだと思っていい。
そんなところに所属している私だけど、なら私も優秀なのかと言われれば……まあ違うよねって。
基本的に、連邦生徒会に所属できるのはアルファだけ。そういうルールがあるわけじゃないけど、暗黙の了解がそこにある。
しかし私はアルファではない。かといってベータでもない。
生まれながらのピラミッド最下層組、オメガである。
肉体も弱いし、知能もアルファに劣る。例え優れた部分があったとしても発情期が全てを台無しにしてしまう。
……なんで連邦生徒会になんて所属してるんだろ、私。
金払いがいいからだろうなぁ。抑制剤って、定期的に買おうと思えば買えなくもない……けど。
一般発売されてる薬が身体に合わない場合は個人用にオーダーメイドしなくてはならない。それが高いのよ。
私自身の戦闘力も高くなかったし、運良く連邦生徒会に入れたのは本当に良かった。
いやでもだからってなんで連邦生徒会長代行に……?
七神行政官からは……満場一致で代行をやるのは私に決められた、とかなんとか。
ええー、意味わからんわぁ。
なんで七神行政官がやらないの? 現在の実質的なトップはあなたでしょうに。
まあ任されたからにはやるけどさあ。はぁーあ。
……少なくとも今現在の段階では、連邦生徒会長を探すのは後回しにしたほうがいい。最悪、シャーレに連邦生徒会長の代わりを任せればいい。
そのシャーレにはサンクトゥムタワーの掌握と権限譲渡を行ってもらったから、少なくとも強欲な悪人ではないと思う。
しかし完全に信頼を得るにはシャーレは不安要素すぎる。
……優先順位が低くて、それでいて比較的早急な対処が必要なものを、シャーレに任せてみる?
例えば要請が届いてるアビドスとか……
……試金石にするようで悪いけど、試してみようか。
これでも私、代行なのでね。ちゃんとキヴォトスを守らないと。
はぁーあ。
世の中は辛いよねぇ。
「先生、突然申し訳ありません」
「先生に……シャーレに任せたい事柄がありまして」
「出来ることならこちらで対処したいのですが……何分、生徒会長が消えてしまい、混乱が想定よりも……」
「いえ、話を戻しますね」
「アビドス高等学校を御存知ですか?」
先生への連絡を終える。
「はぁーあ。しんどー」
いやほんと、僅かに空いた時間を縫って連絡したけど……今もなお手を動かすのが止まらない。
幸い動かすのは口だけだから良いけど……それでもまったく休めないよね。
連邦生徒会に向けての連絡は途絶えないし、なんなら間違い電話もある。むしろその間違い電話が唯一の休憩時間とも言える。
というかトリニティとゲヘナのエデン条約は必ず穏便に終わらせたい。アレって連邦生徒会長が中心に進めてたんだけど……今も行方不明だしなぁ。
……まあ無理か、絶対どこかの誰かが陰謀を巡らせてめちゃくちゃにするでしょ。
自由に動かせる戦力は……ヴァルキューレは駄目。SRTも解体間近で、私は連邦生徒会長じゃないから止めることはできない。
あー手が足りない。私の手も増やしてほしいけど、それ以上に自由に動かせる戦力……せめてエデン条約が無事に終わればゲヘナも安定するように……
「失礼します」
「あれ、七神行政官。どうしましたか」
鬼の七神行政官が現れた。また仕事の追加です?
「………」
「あ、何も考えてないでーす。ちゃんと仕事に集中してまーす」
「私は何も言ってませんが」
でも言わなかったら何かしら小言を口にしてませんでした?
会話をしながらも手は止まらない。最早病気では? 手が勝手に動く病気とか怖い。
「先日の件についてですが」
「どうでしたか?」
「今のところ、問題は見られません」
「じゃあ上手く隠れてますね。はぁーあ、探し出す手間を考えたら……めんどー」
「……」
納得していない。そんな顔をしてる。
まあ私から言っておいてまったく信じてないんだからそうもなるか。
けど、エデン条約というのは特大イベント。何の陰謀もない、なんてことはありえない。
残念なことにね。
「……誰もが平和を望んでたなら、エデン条約なんていらなかったんですよ」
「……」
「私は代行として、キヴォトスを守ります。任されたからにはやり遂げなくてはいけません。エデン条約も、その一つです。監視は続けさせてください、監視があるというだけで防げるものもありますから」
多分、連邦生徒会長なら容易く終わらせていたはずだけど。
まあいない人のことを考えても仕方がない。
私は私の仕事を熟すだけだ。
……そのうちクーデターされたりしそうだなぁ。もう代行をやらなくていいのなら私はそれで……いや駄目だ、薬が買えなくなる。やっぱ真面目にしないとかぁ。
「それでは、失礼します」
七神行政官は帰ってしまった。追加の仕事を置いて。
……今日も眠れなさそうだなぁ。いやエデン条約が纏まればやるべき仕事も減るはずだから、それまでは……
音が鳴る。電話だ、対応しなくては。
「はい、こちら連邦生徒会長代行、白尾シズクです。ご要件は……残念ながらこちらはピザ屋ではありません。どちらのピザ屋に……そちらでしたら番号は、」
……流石に間違い電話の数は減らしてほしいかもなぁ。毎日最低十件も来るのは頭おかしいって。でも減ったら休憩時間が減る……
はぁーあ、疲れるよぉー。
その後は、まあなんとか運行できていたと思うよ。
エデン条約は予想通りドタバタ大混乱の事態に。幸いにも私のポケットマネーで(ギリギリ)アビドスを雇って事態の終息に動かせたのは大きかった。それもこれもシャーレの先生がいたおかげだ。
というかシャーレの先生を通して依頼しなきゃ多分受けてくれなかった気がする。
ミレニアムは問題ないだろう、と思っていたのに危うく世界滅亡しかけたとかマジ?
こちらで確保した元・SRTの生徒たちを派遣したけど、あまり役に立ててはいなかった気がする。投入するタイミングを間違えたなぁ……はぁーあ。
最後にはサンクトゥムタワー崩壊&世界救済ミッションの開始だよ? なんか宇宙戦艦(モドキ)に乗って最終決戦にも赴いたし……疲れたぁ。ほんとね。
……それが終わっても、連邦生徒会長は帰ってこなかった。捜索も続けてたんだけど、やっぱり無理か。
これはもう、本格的にやらなくちゃいけないかな。
そう、次期連邦生徒会長総選挙を……!
何やら連邦生徒会もきな臭くなってきたし、そろそろ潮時というやつで。
そんなにクーデターして連邦生徒会長になりたいなら、いっそのこと会長にしてしまえば解決するでしょ。
大口叩く……いや、しようとしてるくらいだし、まあなんとかなるって。
あ、そういえばもらったチョコを食べとかないと。感想も言っておいて……ホワイト・デーにお返しかなぁ。でも数多いよなぁ。でもやるかぁ。
最近、発情期が全然来なくて薬も使わなくなってきたからお金も余ってるし……それにある程度安定してきたから、多少の自由時間は取れるようになってるから、良いものが作れそう。
……お返しをしたら、シャーレの先生とも話してみようかな。
ま、時間が出来たらね。
はぁーあ。さてさて、お仕事頑張りますかぁ。
「代行、どちらに行かれるおつもりですか?」
「え、いえ、シャーレに……」
「ご要件があれば、こちらでご連絡しておきます。どうぞ戻ってください」
「や、そういう仕事での話ではなく、もっとプライベートな、」
「ところで代行、まだ処理しなくてはならない書類が残っているようですが」
「え? そ、そんな、先程全て終わらせたはず……ふ、増えてるっ!?」
「はい、どうやらそのようですね」
「……この量だと……シャーレは無理、か。仕方ない、今日はこちらを片付けます。あぁそれと、七神行政官、何か用があったのではないですか?」
「こちらの書類を代行に、と」
「……仕事ですか?」
「はい」
「……はぁーあ。がんばりまーす……」
「…………………ふふ」
『シズク』
連邦生徒会長代行に大多数から推薦・任命された。なんで?
とりあえずキヴォトスを守るかぁ。そんな心境。
自己評価は低いが、連邦生徒会長の代行を任せられるほどには優秀。彼女とは違うやり方で連邦生徒会を運行してる。
シャーレの活躍と面識の広がりに応じて積極的に行動している。エデン条約における最初期からのアビトス介入もその結果。
エデン条約が終わったあとは、次の連邦生徒会長を決めるために準備していた。
しかしそんなことをすれば、連邦生徒会長代行の最後の二文字が消えることになる。
連邦生徒会の大半から想いを向けられてハーレム状態だが、本人は気づいていない。
『アオイ』
もし次の連邦生徒会長を決めるとしても推すのはシズクになるくらいにはシズクへの評価が高い。
偶然見かけたシズクのうなじの痕に嫉妬心が芽生えている。
シズクからは、暇があれば一緒に買い物とか行く友達。
『モモカ』
シズクと一緒にデリバリーを頼んだりする。シズクは仕事の関係もあって手早く食べてしまうのだが、コミュは怠らないので好感度は高い。
シズクに角を触ってもらうのが好き。逆にシズクのを触るのも好きである。
『アユム』
自身の羽根にシズクの頭を乗せるのが好き。そうして見せてくれる無防備な姿は、彼女の脳内で保管されている。
限界を迎えそうになったときにシズクが頼る友達。ぐっすりと眠れるらしい。
『ハイネ』
色恋とかそういうのじゃないけど、シズクと話してると連邦生徒会長を思い出すらしい。あと単純に仲が良い。
『リン』
実際に私的に話すことは少ないが、だいぶべったりしてる。常にシズクの傍にいて離れない。
バレンタインにドサクサに紛れて最初にチョコを送った。そしたらホワイト・デーに返されたのでちょっとうれしい。
実はオメガとして苦しむシズクが心配になって、うなじを噛んだことがある。優越感と独占欲があることに自覚はない。