ティーパーティーの親友としてトリニティ全体の脳を焼畑する一般(?)生徒 作:うどんそば
どかん! そう大きな音には聞こえなかったが、たしかに耳に届いた争いの音。
それが聞こえたのは私達だけではなかったらしく、店内はにわかに騒がしくなってくる。
「ん〜、どうも近くでなにかいざこざが起きてるみたいだね」
スイーツも大方食べ終わってしまって、そろそろ退店しようかと話し合っていた矢先だったし、少しびっくり。まあ店内にいる私達には関係ないかな……そう思ってたんだけど……。
どん!
「おらぁ! のんきにスイーツなんて食ってんじゃねえよ!」
謎の不良きたな……?
「ねえ、スイーツ店に入ってきて、スイーツ食ってんじゃねえよは流石に無理あるんじゃない?」
「流石にそうよね……? さすがの私も怒りより先に困惑が出てきたんだけど……」
いつもならはじめに怒りそうな二人が困惑する謎の突撃。そういうならスイーツ店の入口を爆破しながら入ってこなければよかったのでは……?
「も、目的は何なんです?」
「んあ? 目的なんて一つだけだろうがよ! 私だってスイーツが食べたいんだよ!」
ぽろぽろ涙を流しながら小柄な不良はいう。ちょっとかわいい。やってることは可愛くないけど。
「……ねえ、どうする?」
「どうするもこうするも、突破するか撃退しないと帰れないからね。まあ別に、しばらくここでスイーツに囲まれながら過ごすのもいいかも知れないけど」
みんなの目がこちらを向く。そりゃあそう。私は一応治安維持の命がある。つまり、皆が正実に通報しているだろうけれども、到着する前にやっちゃっていいのだ。
幸い、襲撃してきた不良は私くらいの小柄な一人だけ。入口を爆破させてたから爆発物を持っている可能性はあるが、入り口付近にいた人も大きな怪我はないことから、そう威力が高いものじゃないだろうし。
ただ、お店の人の顔を見るに、これ以上大きな被害を出しながら戦うのはよくないだろう。つまり、外で被害が出ないように確実に仕留める必要がある。……はあ、私じゃなかったらどうしてたんだろ。
「ねね、残ってるマカロンたべさせてあげていい?」
「少し可哀そうだし、いいと思うよ〜。あ、最後に一つだけ今食べていい?」
私が聞くと、最後のチョコミント味のマカロンを食べたアイリは私にマカロンの箱を手渡してくれる。私はそれを持って、不良の子が立っているところまで歩いていった。
「ねえ」
「ん? 大人しくしておけば何もしないから早く戻れ!」
しっしっ! と手で払うようにジェスチャーするが、私がマカロンの箱を掲げると顔が変わった。
「それって……」
「マカロンだけど……いらないのかな? さ、こっちでたべよ。お腹へってたらイライラするよね」
「……わかった」
一瞬逡巡したような素振りを見せたけど、食欲には勝てなかったのか銃をおろして外のテラス席に着いてきてくれた。
「じゃあ、はい、どうぞ」
「……ありがとう」
「なんだ、ちゃんとお礼言えるんじゃん」
もしかして、本当は悪い子じゃないのかな? 勘だけど、そんな気がする。
「……私だって、それくらいは……さっきはイライラしちゃってて……」
「そこにスイーツ店があって、つい……って?」
「うん……今思えば、どうしてそんなことしちゃったんだろ……」
「まあまあ。今はこれをたべよ?」
マカロンをゆっくり両手で持って食べる不良の子は、どうもハムスターみたいだった。
「ちなみにさ、私のこと知ってたりする?」
「え? 最近は食べ物もなくて、学校に行く余裕もなくて……見た所、新入生?」
「先日近衛部長官の任を仰せつかった、九条アマネと申します。以後お見知りおきを――というわけで、警察機能を持ってるんだけどさ……できれば、これ食べていいから投降してくれない?」
「……しないって言ったら?」
「それ食べたあとでいいから、戦うことになるかな」
そう答えると、顎に手を当てて考える素振りを見せた。
「じゃあ、これ食べてから投降する……牢獄は、ご飯が出るんだよね?」
「……うん」
なんだかかわいそうになってきた。マカロンを食べて、腹が満たされていくのに応じて、少しずついい子である気配が増してくる。
……この子、境遇が境遇なだけで、本当は突然スイーツ店を襲う不良なんかになるわけない子だったんじゃない?
最近はこういう子も増えたこともあって、これからが少し不安になった。