ティーパーティーの親友としてトリニティ全体の脳を焼畑する一般(?)生徒 作:うどんそば
結局あの子を連行しないといけなくなったから、そこでスイーツ部の皆とは別れることになった。マカロンをしっかり食べたあと、お店の人に「ごめんなさい」と謝った不良の子は、やっぱり少し涙目で私に着いてきた。
「その……ごめんなさい」
「んー? 落ち着いた?」
「うん……」
しっかりマカロンを食べたあとだし、途中でご飯を食べられるところに連れて行って、今は随分と落ち着いた様子。やっぱり、こういうふうに実力行使でいろいろする子じゃなかったみたい。顔には悲痛な面持ちが浮かんでいるし、なんでこうしちゃったんだろうって言ったふうな溜め息が痛々しく聞こえる。
「じゃあ、どうしてスイーツ店を襲ったのか、説明してくれる? 状況によっては情状酌量があるかも知れないから」
一応ちゃんとした司法自体はあるけど、今回の場合、あまり大事にならない可能性が高い。この世界じゃ、これくらいの騒ぎほぼ毎日起こってるし。
「えっと、私はトリニティの二年生なんです。寮に住んでて、これまではこういったことはせず、真面目に生きてきたと思います。でも、つい二週間前、銃が大きな故障をしてしまって……その修理でお金がなくなり、食べるものがなくなって、いっぱいいっぱいになってしまって……」
「トリニティからの支援は? そういった時用の支援があるでしょ?」
「初耳です。初めは友達に相談すればいいとも思ってたんですが、よく考えたらそんな友達なんていなくって……はは。学校ではもうどうしようもないと、外を探してなんとかその日暮らしをしてたんです」
うーん随分重い。あとこれ、本当に大きな問題なんじゃない? 本当はこういった時用の援助策はあるんだけど、知られてないならある意味がない。ナギサちゃんあたりに相談してみようかな。
「はい、着いたよ。ここが留置室ね」
「ここが……? 随分ときれいなんですね」
「まあまあ。一応トリニティだし、凶悪犯とかはここに入れられないから。ここに来るのは、貴方みたいに話を聞かないといけない人たちだけ。多分、ここで話すのが終わったら、沙汰によってはちゃんと収容所に行くかも知れないけど」
「それは覚悟しているので大丈夫です」
収容室内に設置されている椅子に座るのを促し、少しずつ情報を得ていく。さっき聞いていたこともあるので、今日の詳しい詳細とか。ちなみに、特に問題はなさそうだった。
取り調べも終わって、今度は処置をどうすべきか。さっき電話があって、話を聞いていた店長さんが、「きちんと賠償さえしてくれれば罪はなくても良い」とわざわざ言ってくれたので、正直、賠償だけさせて無罪でもいいんだけど、一応ナギサちゃんにでも通しておこうかな。
「ナギサちゃん、いる?」
「はい。どうぞ」
ナギサちゃんのセーフハウス。そこのドアをノックすると、中から声が聞こえたので、入る。そこには少し緩んだ笑みで紅茶を楽しむナギサちゃんがいた。
「ねね、今いい?」
「はい、何なりと。たまたま、といってはあれですが、暇だったので」
「さっき、私達で行ってたスイーツ店が襲撃されて、その犯人である二年の鶴殿ユウイちゃんを連行してきたんだけど、どうも理由が理由でね」
調査書を渡すと、ナギサちゃんは少し顔をしかめた。
「……なるほど。銃の修理代金が嵩んで、まともにご飯も食べられる状態ではなく、ですか……救済措置も、そもそも知らず、と。これはティーパーティーの責任がないわけではありませんね。それに、被害店からの減刑嘆願まであると。これは、無罪とでもしておけばいいのではないでしょうか」
「わかった。じゃあ今日は勾留して、明日には釈放しておくね」
「ああ、あと、これからもお金の都合がつかなさそうなら、ティーパーティーの誰かを訪ねるように言っておいておいてください」
「わかった」
救済措置の話かな? ユウイちゃん、たしかに「これからどうしよう」とか「いっそ有罪で収容されたほうが助かるのかも……だめ! それは駄目! ……うう、耐えろ私……!」と、随分危うい状況にあるみたいだったので喜ぶと思う。
戻ってきて、あったことを伝えると、安堵した様子でほっと息を吐いたユウイちゃんは、私の目をじっと見つめた。
「……今回はありがとうございます。暴走した私をここまで気にかけてくれて」
「ううん。いいの。そういう人を助けてこそ、私ってものだし」
「……お噂通りですね。トリニティの大天使さん」
「だ、大天使? 私のこと?」
「はい。ティーパーティーの御三方と、貴方のことを合わせて、四大天使と言われたりもしてますし」
初めて聞いた……あの三人と違って、私は羽もなけれは神秘的な部分もない、ものすごく普通な見た目してるんだけどなあ。ま、悪い意味じゃないし、嬉しいといえば嬉しいけど。
「今回は、本当にありがとうございました。いつか必ず、この恩に報いさせてください」
「いつでもいいよ」
私は立ち上がって、手を振りながら部屋を出る。たしかに運は悪かったけど、全然悪い子じゃなかったし、どうもものすごくいい出会いをした気がする。
でも、最初みたいな砕けた言葉じゃなくなっちゃったのが少し残念。ずっとああやって話してくれても良かったのに。