『賢者の石』以降の物語については、ガンダム二次創作と、その次に投稿予定のヒロアカ二次創作が完結してから執筆し、完結まで完成してからの投稿となります。
予めご了承ください。
※毎週日曜日、19時予約投稿します。
【前書きと注意事項】
本作品は以下の内容を含みます。予めご了承ください。
・ハリー性転換(TS)と名前の変更。
ハリーの名前が女性化に伴い、ハリエットに変更(ハリーの名前は愛称に)
・原作とは異なるカップリング。
・独自設定および、独自解釈。
・原作と異なる歴史(サラザールがホグワーツを去っていない等)
・原作キャラ、原作種族の魔改造。
・原作生存キャラ死亡。
※本編開始前に死亡していても、作中での死亡描写はない予定です。
・原作死亡キャラ生存。
・一部映画版準拠のビジュアル
(具体的にはハーマイオニーとか『アズカバンの囚人』のパンジー等)
・基本シリアスですが、時々キャラが崩壊するぐらいコメディが入ります(最重要)
※割と各話のタイトルでふざけます。
※2024/6/14誤字修正。
貧血さま、ゴライアスさま、RPG大好きさま、ご報告ありがとうございます!
1_01 列車での出会い
かつて、戦争があった。
時代は二〇世紀を迎え、人々は箒を跨がずとも鳥のように空を飛び、杖を持たずとも鉄と火でもって、遥か彼方の敵を斃すにまで至った。
しかし、そうした科学が表舞台を席巻したからとて、かつて栄華を誇った神秘が消失した訳ではない。どれだけ時代が下ろうと、どれだけ人々の目から遠ざかったとしても魔法は存在し続ける。
何故なら神秘とは、森羅万象を司るもの。たとえどれだけ文明が栄えようとも、人という器の中にある魂が、奇跡の輝きを忘れる事はないのだから。
けれど、その神秘もまた力に過ぎず、手段に過ぎず、文明を織り成す道具に過ぎない。
どれだけ輝いて見えるものであったとしても。
限られた者達にしか扱えない力だったのだとしても。
力が力である以上、人はそれを争いに使ってしまう。
故に、闘争こそを
だが、現実は時に創作さえ超える舞台を作り出す。
光と闇。
正義と邪悪。
善悪の二元論を体現する戦争が、この平和と繁栄の世界の
「驚いた……ハリー、君、本当に何も知らなかったんだね」
「う、うん。僕、ずっと普通の……こっちだと
「へぇ……
「あ。ううん……これはごく一部かな?」
愛称で呼ばれたハリーがこれ以上は聞かないで、という態度で表情を作ると、赤毛の少年もそれ以上は触れなかった。
仔細は不明だが、それでも
だから今は、この丸眼鏡の愛らしい少女に、ちょっとした先輩風を吹かせて得意げに色々と語ることにした。
とはいってもそれは魔法使いの日常ではごくごく当たり前のことで、取り立てて驚くようなことでもないのだが、
「じゃあさ、ロン。〈ヴォルデモート〉って何者だったの?」
瞬間、赤毛の少年……ロンの背筋に氷柱が刺さった。先程までの自信たっぷりな表情は見るも無残に崩れ、オロオロとした表情で、シーッ! と口元に人差し指を当てて不味いことを示した。
「駄目、駄目だよ。君は知らないから仕方なかったけど、〈例のあの人〉の名前は口に出すもんじゃないんだ。
そりゃあ、君は〈例のあの人〉を赤ん坊の頃にやっつけた英雄だから口にできたのかもしれないけど、その名前は大の大人でも怖くて口にできないぐらいなんだから」
そんなに……? と未だにことの重要性を理解しきれず、小さく首を傾げるハリーの仕草は愛らしかったが、ロンからすればそんな可愛らしい仕草とは別の感情で動悸が激しくなってしまった。
「そうさ。〈例のあの人〉〈名前を言ってはいけないあの人〉なんて口にされてる、魔法界きっての大悪党……きっと、あれ以上の悪党はもう二度と現れないだろうってぐらいの、とんでもなく強くて恐ろしかった人……それこそ、闇の帝王なんて呼ばれたぐらいにね」
そうしてロンは神妙な表情で語る。
闇の帝王、ヴォルデモート。
ハリーのいた
「勿論、真っ当な魔法族は〈例のあの人〉に反抗した。ホグワーツの校長先生、偉大な魔法使いたるアルバス・ダンブルドアを筆頭に、魔法界の名門で知られる〈聖二八〉一族の当主全員が〈例のあの人〉と戦う為に杖を執った。
自慢になっちゃうけど、僕のパパも〈聖二八〉一族の当主として、〈例のあの人〉が率いた手下と戦ったんだ」
これが冒頭で語った戦争……アルバス・ダンブルドアの旗下に集った〈不死鳥の騎士団〉と、ヴォルデモート率いる〈
「……あの戦争で、特に勇敢に戦った〈聖二八〉一族の当主や親族の殆どは死んじゃった。僕のパパは運良く無事だったけど、名誉を重んじる貴族程、〈例のあの人〉の悪逆が許せず戦いに身を投じたんだ」
「それで……」
この魔法の汽車に乗るまで、ハリーはどうして自分が周囲から持て囃され、時には涙ながらに感謝され続けたのかをようやく理解した。
どういう理屈で、どういう経緯なのかは不明だけれど、それでも赤ん坊だったハリーが、そんな恐ろしい悪党を倒してしまったからこその感謝であり、期待であり、尊敬だったのだ。
「……でも僕、何も覚えてないよ?」
「そりゃ、その頃の君は赤ちゃんだったんだろ? 僕も知識でしか知らないけどさ、闇の帝王を倒すだろうって予言を知った〈例のあの人〉が、君を探し出して……」
「……僕のパパとママを、手にかけたんだね」
そう口にされて、ロンは今更ながらに自分が失敗したことに気付いた。確かに魔法界にとってハリエット・ポッターは英雄なのかもしれない。だが、彼女もまたヴォルデモートに大切な家族を奪われた被害者なのだ。
「ごめん……無神経だった」
「ううん、知らずにいるより、ずっと良かった。訳も分からずに感謝されるのって、ちょっと疲れちゃうしね」
最後の部分は本音もあったが、ロンに対しての気遣いも含まれていたことはロン自身嫌でも分かる。だから何度も謝ったりすることはせず、ハリーに強い口調で言った。
「きっと君は、誰より凄い魔法使いになるよ! 君ならスリザリンでもやっていけるんじゃないかな!」
掛け値なしの賛辞として述べたが、ハリーは「スリザリン?」と小首を傾げ、ロンもそういえば知らなかったんだったと自分の間抜けさを自嘲した。
「スリザリンっていうのは」
と、説明しようとしたところでコンパートメントの戸が控えめにノックされた。流石に無視するのも悪いため、ロンの許可を得てから「どうぞ」とハリーは返事をすると、そこにはとても同年代とは思えないプラチナブロンドの少年が戸口に立っていた。
敢えて言うが、決してこの少年が老けているとか、そういうものではない。だが、その凛々しい表情や一本の樫の棒が入ったような背筋。
薄青色の理知的な瞳から感じ取れる力強さと、横柄さのない自信に満ちた振る舞いが、年長者のような雰囲気をこれ以上ないほどハリーとロンに伝えてきたのが原因だった。
「おや? 君は確か、マダム・マルキンの洋装店でお会いした子だね? あの時は名乗れず申し訳なかった。僕はドラコ・マルフォイ、以後お見知りおきを」
大の大人が持つような、銀細工の蛇を柄頭にあしらったステッキを片手で後ろに回し、優雅に腰を折って淑女に対する礼を示すマルフォイに、ハリーは頬を赤らめつつ返す。
「ううん! その、あの時のマルフォイ君は採寸で身動きも取れなかったし……それに、僕の方こそ挨拶もできずにごめん! 僕はハリエット、ハリエット・ポッター」
すると今度は、マルフォイの方が面食らったという表情で目を数回瞬かせた。
「これはご無礼を──亡き父上に代わり、魔法界を救って下さいましたこと。マルフォイ家の次期当主として、心から感謝致します」
“亡き、か……”
それだけで、ハリーはこれほどまでの感謝を示し、頭を垂れてくれたマルフォイの真摯さが痛い程に伝わってきた。ロンが語った通り、ヴォルデモートの災禍の爪痕は何処までも生々しく、当事者のみならず遺された家族の心を抉っていたのだろう。
感謝しきれないというマルフォイの瞳に浮かんだ、微かな雫は決して媚びへつらう人間には作れない感情の発露だった。
「実を言うと、この列車にミス・ポッターがいるという話題で持ちきりでね。無作法とは承知していたが、居ても立ってもいられなかったんだ」
どうか許して欲しいと謝罪するマルフォイに、ハリーはブンブンと首を振った。
「そんなに畏まらないで。僕自身、赤ん坊だった頃のことで何も覚えてないし、何より、ずっと
これにはくすっ、とマルフォイも笑った。ただ、その笑いも相手の育ちや無教養を嘲笑する類のものではなく、謙虚な女性の愛らしさを持ち上げるような、場を湧かせる類の笑みだ。
「ホグワーツに入るまで、魔法に触れてこずに来た
「ハリーで良いよ。そんな風に畏まって呼ばれるの、ムズ痒いし。だからその……僕も、ドラコって呼んでいいかな?」
意気揚々と胸を張って告げたマルフォイは、またしても目を瞬かせたが、すぐに「君の友人になれて光栄だ、ハリー」と微笑む。
ただ、横で口を挟まず大人しくしていたロンには刺激の強すぎる会話内容だったが……そこには敢えて触れず、自己紹介すべく口を開いた。
「そ、その。初めまして、僕は」
「ウィーズリー家のご子息だろう? 燃えるような赤毛ですぐ分かったよ。ミスター・アーサーと父上は時折反りが合わなかったこともあったそうだが、それでも背を預けるにはこれ以上ないほど心強い方だったと母上から聞いている。
僕らの父がそうだったように、君とも真の友として……と、済まない。自己紹介の腰を折るなんて、紳士らしからぬ振る舞いだった」
熱を上げてしまった自らの若さ青さを恥じるように出た謝罪。とても
何しろマルフォイ家と言えば、代々魔法族の血縁のみで血脈を保つ〈純血〉という枠組みだけで〈聖二八〉一族の末席に加わったウィーズリー家とは文字通り格の違う大貴族であり、
しかしながらその権威を笠に着るような真似はせず、かの魔法戦争の際にも資本家として蓄えた私財の殆どを擲ちつつ、裏表双方の世界のコネクションを駆使してヴォルデモートの暗躍を阻み続けた、
魔法族の人間であれば、マルフォイ家こそ真の貴族だと皆口を揃えて語るだろう……と、そのようにロンがまくし立てれば、やめてくれとマルフォイは手を振った。
「ああ、ハリー。ロナルドの言うことは話半分に耳に入れてくれよ? 確かに財産は三分の二を注ぎ込んだが、元より蓄財というものは経済を回す上で褒められたことじゃないんだ」
愛称でなくしっかりとファーストネームでロンを呼んだマルフォイは、そういって肩を竦めてみせる。
〈本当の有事の為に〉という父祖の教えを頑迷に守った蓄財の結果、たまたまそういう機会が父上の代に回ってきたに過ぎなかった。
あの戦争がなければ、未だにマルフォイ家は私腹を肥やすばかりの貴族だと罵られ続けただろうし、何より貴族とは時変あらば率先して前に出るからこそ裕福な暮らしを約束されている。
然るべき勤めを果たしたからとて、殊更持ち上げられるようなものでは決してないとマルフォイは語った。
「何より貴族としての責務を果たしたのは両親であって、僕自身は何も成し得てない未熟者。誇れるものなどないのさ」
謙遜も過ぎれば嫌味になるというが、嫌味という要素が全くないように振舞うのも、やはり品格の成せる業なのだろうとハリーは思う。
少なくとも、ハリーの預けられたダーズリー家も裕福な家庭でこそあったが、どう贔屓目に見たところで嫌味ったらしさが鼻を突いていたし、両親の過度な愛情を受けた一人息子のダドリーは飽食と怠惰と傲慢を掛け合わせた、思い出したくもない男の子だっただけに、成金と
「ところでハリー。ホグワーツは全寮制だが、君は希望している寮はあるかい?」
「ううん。でも、ロンは僕ならスリザリンに入れるかもって」
「それはまた……別にスリザリンが秀でている訳じゃないんだけど……そうだね、じゃあ到着まで時間もあるし、少し説明しようか」
ホグワーツ魔法魔術学校は全寮制の学校であり、そこには四つの寮が存在している。各々の寮は生徒の適性を〈組み分け帽子〉という特別な帽子を被ることで見出され、各生徒に相応しい寮が告げられるのだという。
「叡智を求めるならレイブンクロー。
誠実ならハッフルパフ。
大望を抱くならスリザリン。
勇敢ならグリフィンドールといった具合にね」
とは言っても先に語ったのは大まかな適性に過ぎず、どの寮に入ったとしても授業で差別化が図られる訳ではない。
「レイブンクローは成績優秀な知性溢れる者が集うが、別にそこに入ったからといって特別な蔵書が読めたり、研究室が与えられるといった特典がある訳ではないしね。
ハッフルパフは勤勉・忍耐・献身・慈愛・寛容といった特徴を有しているから、一番居心地がいいと評判だ。
グリフィンドールは勇猛果敢で騎士道精神を抱く者が入るが、だからと言って真面目一辺倒という訳じゃなく、反骨心・度胸・大胆奔放という部分もある。
そしてスリザリンなんだが……ここはエリートが集うという印象が強い反面、狡猾さを磨くという面も見られる。政界に踏み込んだり、役人として進む上ではそうした面も受け入れておかねばならないということだね」
だからこそ、スリザリンの卒業生は多くが世に名を残すものの、それが悪名となるケースもまた多い。
「経歴不明の〈例のあの人〉だって、元はスリザリン生だったという噂もある」
だからこそ、と念を押してマルフォイは続けた。
「重要なのは、ハリー自身がどんな学校生活を送りたいかさ。さっきはスリザリン一辺倒でいて欲しくないからああ言ったが、スリザリンの本質はリーダーシップを磨くこと。共に切磋琢磨していく中で、大望を抱きつつも手を取り合える、真の友を得る為の寮でもあるんだ。ハリーが心の底から望むものを求めるなら、帽子はそれに応えてくれる筈だよ」
そう締め括ると共に、到着が近いことを知らせる汽笛が鳴る。優雅にマルフォイが席を立つと、見計らったようにコンパートメントの戸がノックされた。
「ご無礼、こちらにマルフォイ様はいらっしゃいますか?」
「ああ、僕ならここだよ」
その声に応えるように、軽やかに戸が開けられる。立っていたのは如何にも上品そうな、白磁の肌に黒絹のような髪をしたおかっぱの少女だ。
「申し訳ありません。差し出がましいとは承知していたのですけれど、中々お戻りになられなかったので」
「済まない。君を蔑ろにするつもりはなかったんだが、新しい友人との会話が弾んでしまってね」
「では、そちらの方がそうなのですね。初めまして、マルフォイ様の婚約者のパンジー・パーキンソンです。どうぞよしなに」
上品なドレスのようにローブを翻しながら、自己紹介にとんでもない情報を含ませる。マルフォイ自身否定していないことから、冗談の類ではないのだろう。
やれやれといった表情で立ち上がるマルフォイは「紹介するよ」と二人を示した。
「新しい友人の、ロナルドとハリーだ。ハリーは
「光栄です。勿論、ミス・ポッターがお嫌でなければですけれど」
「パーキンソンさんみたいな人となら、断る理由なんてないよ!」
ありがとうと淡く微笑んで、パンジーは手を差し出すとハリーもまたその手を取った。ダーズリー家で家事を押し付けられてアカギレ塗れだったハリーと違い、白磁の肌に相応しい白魚の手の柔らかさと繊細さは同性のハリーでさえ感嘆の吐息を漏らしたが、逆にパンジーとマルフォイはハリーの手を見つめた。
「働き者の手だが、見た以上はそのままにはしておけないな。〈
ステッキのグリップから指揮棒状の杖を抜くと、マルフォイは軽く振って傷を癒した。魔法界では何もかもが衝撃的だったハリーだが、自分の傷が癒えるというのは今までで一番の驚きだった。
「新しい呪文を覚えましたの?」
「覚えるだけなら以前からさ。何分、成功率が低かったものでね」
マルフォイにしてみれば、いざという時に使えない呪文は事故の恐れがあるため口にできない。出来ることならば一〇割、そうでなくとも九割五分でなければ人前で使う気はなかったのだ。
魔法杖をステッキに納め直し、到着と同時、ハリー達を先導するように歩を進める。
これから苦楽を共にする学び舎──、ホグワーツに到着したのだ。
この作品のマルフォイパパは戦争映画に出てくるジェイソン・アイザックス氏みたいな、常在戦場の空気をまとわせてるガチ貴族だった模様。
イメージ的に近いのは『スターリンの葬送狂想曲』のスタイリッシなジューコフ元帥。
そりゃお辞儀様も全力で殺しにかかる。