闇深ハリーちゃんと綺麗なスリザリン   作:c.m.

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1_04 パンチラはジャスティス

 初日こそ大騒動で午前中の授業を受けなかったが、次の日からホグワーツは通常通りの授業となったし、以降の授業に関しても、特例としてスリザリン生の為にもう一度同じ内容の授業を行う運びとなった。

 ただ、どんな事情があっても授業に出なかったのは問題なので、スリザリン生だけは他寮の生徒と違って多くの宿題を抱え込む形になったが、パンジーもマルフォイも、当然他のスリザリン生もそれでハリーに当たったりせず、むしろこれは勲章だと喜々として宿題を手早く片付け、余った時間でハリーや非魔法族(マグル)育ちの新入生の為の勉強会まで開いてくれた。

 ハリーも他の非魔法族(マグル)育ちの新入生も頭が悪い訳ではないのだが、筆記体の教科書や羊皮紙と羽ペンに、どうしても苦戦を強いられてしまっていたのだ。

 

「消しゴムが使えたらなぁ」

 

 とは、非魔法族(マグル)の誰もが思うことで、勿論羊皮紙だって削れはするのだが、やはり手間の違いは大きかった。しかし、長い付き合いになるので慣れておくべきだろう。

 本当に苦労するならガラスペンや自動でインクが滴る魔法ペンを買うことも勧められたが、試験はカンニング防止の為に専用の羽ペンが配られる以上、慣れておくに越したことは無い。

 入学したてのハリーも、慣れるまでは普通の羽ペンで努力すると決めていたので、熱心にペンを走らせてパンジーやダフネに微笑ましい目で見られた。

 特に勤勉で成績優秀なダフネの説明は耳に心地よく、解かり易かったので助かったが、ハリーはそれ以上に優しい彼女らの期待に応えたかったのだ。

 

 そうして授業と勉強を交互に繰り返す日々を送っていたが、ハリーが──というより新入生全員が──特に好きになれない授業があった。

 魔法族の生徒の誰もが期待していた、〈闇の魔術に対する防衛術〉の授業が肩透かしも良いところだったのである。

 この授業を担当するクィリナス・クィレル教授は過去に吸血鬼に襲われたトラウマから、教室にまでニンニクをぶら下げて換気もせずに臭いを充満させていたし、喋りも(ども)りっぱなしで、おまけに肝心な授業は自分の自慢話ばかりだったのだ。

 クィレルは自分のターバンを、ゾンビを撃退させた功でアフリカの王子から賜った物だと得意げに語ったが、これもまた甚だ疑問な話で「そんな大手柄を立てたのなら、何処かの新聞に載っていた筈だわ」とパンジーは目に見えて軽蔑していたし、他の生徒もあれはホラだろうと確信していた。

 他寮ならばいざ知らず、スリザリン生の多くは各国の王侯貴族とも繋がり(パイプ)がある。表沙汰にせぬよう緘口令が敷かれていたとしても誰かしらの耳には入っている筈だし、ターバンの生地も肉厚で野暮ったく、織のキメも悪い。とても貴人の贈り物とは思えないというのがスリザリン生一同の見解だった。

 

「それよりハリー、その額の傷、やっぱり今でも痛むの?」

「ううん、ホグワーツに来るまでは全然痛くなんてなかったんだけど、どうしてか時々痛むんだ」

「それが、〈例のあの人〉に受けた古傷ね」

 

 他人の、ましてや女の子の顔の傷をまじまじと眺めるなど宜しいことではないが、パンジーもダフネも傷の原因が原因なだけに、深刻な表情でハリーに問うた。

 

「ハリー、その傷が傷んだ時に、規則性はある? たとえば、場所とか時間とか」

「……そういえば、クィレル先生を見た時、たまにズキっとするような」

 

 実は入学初日も、クィレルを視界に入れた際に傷が痛み出したハリーは言う。その時は一瞬で気のせいかも知れないと思っていたが、よくよく考えれば傷が疼くのは決まってクィレルが近くにいた時だった。

 

「どう思う? ダフネ?」

「……最悪のケースは、クィレル先生が〈例のあの人〉のシンパか死喰い人(デスイーター)の残党だということ。ですが、死喰い人(デスイーター)なら刺青が刻まれていますから、ホグワーツの先生がそこを調べていないとは思えませんわね」

「じゃあ吸血鬼絡みかしら? 〈例のあの人〉は巨人や危険な種族も従えていたから。マルフォイ様はどう思います?」

「……断定は出来ないな。ただ、クィレル先生がその傷と……正確には〈例のあの人〉と何らかの形で関わっているか、過去に因縁があったぐらいには心に留めておいた方が良いだろうね。

 勿論クィレル先生が純粋な被害者だった可能性もあって、その傷がハリーだけじゃなく、身近な人への警告の役割も果たしている可能性もあるから、悪者にするには早計だと思う」

 

 いずれにせよ、ダンブルドアには報告すべきだとマルフォイは立ち上がり、クラッブとゴイルにもハリーを気にかけて欲しいと告げて校長室に向かうべく歩を進め出した。

 

「待って、僕も行くよ! 僕の口から説明した方がいいと思うし!」

 

 ハリーが慌てて駆け寄るとその後に続く形で任されたばかりのクラッブとゴイルが続き、更にはダフネとパンジーも追いかけたので、結局大所帯で校長室に向かうこととなった。

 

 

     ◇

 

 

「ふむ……傷がのう。相分かった、クィレル先生のことは儂も気にかけておくこととしよう。じゃが、教師を無闇に疑ってはならんよ? それと、この件はここだけの秘密じゃ。そんなことを触れ回っては、白も黒に変わるでな」

「ありがとうございます。勿論、軽挙妄動は慎みます」

 

 うむ、と満足げにダンブルドアが頷くと、マルフォイたちは退室した。

 

「これで、大丈夫かしら?」

「ダンブルドアが目を光らせて逃げられるのは〈例のあの人〉ぐらいさ。黒なら縛につくし、白ならそれで良い。僕らはこれまで通り、学生としての努めを果たすことが第一さ」

 

 そうマルフォイが応えればパンジーやダフネには十分な説得力で以って迎えられたが、ハリーにとっては我がことであるし、ダンブルドアがどれだけ偉大な魔法使いかという事も理解し辛いのだろう。

 一抹の不安があることを無言の内にも悟ってか、マルフォイは安心させるように告げた。

 

「勿論、ハリーに危険が及ぶようなら、何があっても駆けつけて助けるけどね」

 

 気障っぽいセリフなのに、こうも真剣な口調だと軽薄さを感じないのは狡いと思う。

 

“多分、こういうところをパンジーは好きになったんだろうなぁ”

 

 ハリーだって女の子だ。そりゃあ生まれたての時は男の子だったのかもしれないが、そんなのは自我が芽生える前の話で、ずっと女の子として生きてきたのだから、恋愛に興味がないといえば嘘になる。けれど。

 

“僕も、こんな人と恋ができるような日が来るかな?”

 

 それを口にするのは、考えてしまうのは、何故か良くない気がした。

 本当にどうしてかは分からないが、深く考えないようにしようと思ったのだ。

 

 だって、きっと──それを自覚してしまったら、友情が終わってしまうように感じたから。

 

 

     ◇

 

 

 その後、ハリーの額の傷が痛むことは全く無くなった。クィレルの授業の際も、クィレル自身が目に留まってもだ。

 このことをパンジー達に報告すると、クィレルは白で、吸血鬼か何かが取り憑いていたのをダンブルドアが追い払ったのだろうと声を弾ませていたが、やはりクィレルはニンニク臭かったし、オドオドした態度や吃音もそのままだったのがハリーには何処か気がかりで、マルフォイに小さな声で相談した。

 

「確かに変だな。もし本当に何かしらの危機が去って、それが物理的なものならダンブルドアが呼び出して教えてくれるぐらいはしそうなのに」

 

 授業の開始間際、隣に座るマルフォイは暫し黙考した。自分の考えが正しいとは限らないし、正しかったとしてもそれを口にするのは少々憚られたからだ。しかし、不安なハリーに押し黙り続けるのも、誤魔化すのも不誠実かと考えて切り出す。

 

「……これは僕の考えだが、ダンブルドアは網を張ってるんじゃないかと思う」

 

 つまりはまだ、クィレル自身かその影に潜む者を炙りだそうとしている最中で、手を下すには至ってないのでは? ということだ。

 

「まぁ、だとしても傷の痛みが消えたこと自体は喜ばしいと思うし、罠なら罠で君に危害が及ぶことはないさ」

 

 そう締め括りはしたが、マルフォイ自身自分の発言に一抹の不安を覚えなかったかと問われれば否である。ダンブルドアの叡智も、力も本物だという事は魔法界の住人なら誰もが認めるところである。

 しかし、その叡智故に。大局を見据えているが為に、取り返しのつく範囲ならハリーが傷つく事さえ勘定に入れている可能性は否定できなかったからだ。

 

 ──全ては大いなる善のために。

 

 始まりは闇の魔法使いである、グリンデルバルドのモットーであったが、後に不死鳥の騎士団を結成したダンブルドアもこのモットーを〈真の意味で正しい未来のために〉として用いた。

 そして正しい未来、正しい道筋の中で、ダンブルドアは常に最良と言える選択を指し続けたが、裏返せばそれはチェックメイトの為に、駒の犠牲をも許容する棋士の価値観……指揮官として有すべき取り捨て選択を行ってきたということだ。

 

“だけど……そうだとしても、ダンブルドア以上に頼れる存在は何処にもいない”

 

 最早この時代には、過去の偉人にしてマルフォイの尊敬するマーリンも、サラザール・スリザリンも存在しない。そうした一世一代の傑物として、ダンブルドアがこの時代にいること自体が奇跡の産物ですらあるのだから。

 

“だから”

 

 じっと、マルフォイはハリーを見つめる。もしもダンブルドアが、そうした止むを得ない犠牲を強いてしまうなら、その時は自分が彼女を護ろう。

 たとえこの世界の全てが敵になったとしても、マルフォイにとってハリーはかけがえのない友人なのだから。

 

 

     ◇

 

 

 マルフォイに相談したことで心なしか気が楽になったハリーは、その日以来授業に集中して取り組むことが出来るようになったが、ようやくというべきか、待ちに待った授業に大いに胸を弾ませていた。

 

「楽しみだなぁ」

「もう、ハリー。淑女が駆け足なんてはしたないわよ?」

 

 とは言っても、高所恐怖症でもない限り、今回の授業を待ち遠しいと思わない生徒は魔法族や非魔法族(マグル)でも極めて希だ。

 箒に跨って空を飛ぶこと。それは非魔法族(マグル)の世界でも魔法使いが行う定番の移動法であり、魔法族でも一度味わえばその爽快感に病みつきになる。

 非魔法族(マグル)の良家出身が乗馬を嗜みとするように、魔法界の貴族らも幼少期から箒を乗りこなすことを叩き込まれる。

 女であれば優雅に乗りこなし、如何に殿方に颯爽とした姿を見せつけて魅了させるかを競い、男はクィディッチをはじめとする箒を使用した各種スポーツや戦場で活躍できるよう、荒々しくも完全なる制御下においた躍動感溢れる乗りこなしが求められる。

 パンジーもダフネも、初めて箒に跨った時の不安や乗りこなせた時の感動を昨日のように思い出せてしまうだけに、思い膨らませるハリーに軽く咎めつつも「仕方がないわね」とつい許してしまった。

 初の飛行訓練の授業が、グリフィンドール寮生との合同授業であったのもハリーが上機嫌の理由であると分かっていたからだ。

 

 スリザリン生に限らず、寮杯獲得のために鎬を削る各寮だが、だからといって生徒間で仲良くしてはいけない訳ではないし、積極的な交友はむしろ推奨されている。

 特にスリザリン生の交友範囲は広く相互理解に余念がないが、これは将来のために多くの者と顔を繋いでおきたいという理由だけでなく〈忌むべき敵でなく、尊敬すべき友を見よ〉という高貴な教えに忠実なところがあったからだ。

 だからこそ多くの友人を作り、一秒でも長く楽しい時間を味わいたいというハリーの思いは微笑ましくも立派なスリザリン生そのものであったし、入学時の何処かおどおどとしていた彼女が、前向きになってくれているのもパンジーらには喜ばしかった。

 

 

     ◇

 

 

 ハリー達が校庭に到着すると、二〇本の箒が地面に整然と並べられ、短髪の白髪に鷹のような黄色い瞳をしたマダム・フーチが整列した生徒に箒の傍に立つよう催促した。

 

「右手を箒の上に突き出して、〈上がれ!〉と命じなさい」

 

 言われるがまま全員が叫ぶと、箒はハリーの手に吸い込まれた。しかし、一度で成功した生徒は半数ほどで、グリフィンドールだけでなくスリザリン生の中にも一度では成功しなかった生徒が出た。

 顔ぶれや発語を鑑みるに、おそらくだが空を飛ぶことや失敗に対しての恐れがあったり、後ろ向きだったり内向的な性格の生徒ほど成功率が低いのだろう。

 最初の魔法薬学の授業でロンにお小言を漏らした女生徒、ハーマイオニー・グレンジャーは座学では大変優秀で勤勉であることをハリーは合同授業で知っていたが、そんな才女でも箒を掌に納めるのに苦労していた。

 

「ねぇ皆! 箒に乗った楽しい自分を想像しながら言ってみて!」

 

 お節介は承知の上でハリーがアドバイスすると、失敗していた生徒の半数はそれで成功した。

 

「ありがとう、ポッター!」

 

 グリフィンドール生の中でも、特にぶきっちょで要領の悪いネビルがハリーにお礼を言うと、ハリーもどういたしましてと得意げに返す。

 ただ、ハーマイオニーのような理論的なタイプだと難しいようで、彼女は数回失敗して、ようやく箒を掴むことに成功した。

 

「良い指摘でした、ポッター。スリザリンに一点。さあ、次は箒に跨って、しっかりと体を支える握り方を教えますよ」

 

 そうして皆箒に跨って握るのだが、ダフネやパンジーは跨らず、長椅子に腰掛けるように箒に座ろうとしたのでフーチからお叱りを受けた。

 この座り方は本来事前に箒を浮かせ、更には箒の柄に足場を構築する呪文をかけて、座り易く安定させてから行うものだ。

 見栄えこそ美しいが安定性に欠ける上、難易度も高いことから初心者には危険な乗り方であるため「言われた通りしっかり跨りなさい」とフーチは注意した。

 

「箒に乗り慣れている生徒も多いことでしょうが、これは授業です! 基礎を疎かにする生徒は減点しますよ!」

 

 こう怒鳴られては大人しく従うしかない。ただ、足を上げて跨ることに羞恥を覚えるスリザリンの女生徒は多かったし、しっかりとした前傾姿勢というのも、お尻を突き出しているようでみっともないという思いから、姿勢を取るのに時間がかかっていた。

 

「……こんな事なら、着替えておくべきでしたわ」

 

 スリザリン生の中でも、育ちの良い淑女の総意を誰かがこぼした。クィディッチのような激しく動く競技のためのスポーツウェアならば開き直れても、丈が標準のスカートでこれは恥ずかしい。

 ハリーが気にせず豪快に足を開いたとき、グリフィンドールの男共が一瞬視線を箒を握る手元から上に上げた時には、女性徒らは男共に「見るな殺すぞ……!!」と殺意を込めた視線を向けて、ついでにハリーも叱ったぐらいだ。

 ハリーからすればローブを羽織っているからまず見えないし、大丈夫だと楽観視していたのだが、スケベ心に満ちた男共の視線というのは女からすれば分かり易いことこの上ないし、一〇〇パーセントでないのなら用心するに越した事はないのだ。

 

 お前に言ってんだよ、ガン見したロナルド・ウィーズリー! このむっつりが!!

 

 そんな女性徒一同の物理的に殺せそうな視線を浴びているロンをはじめとした男共だが、こちらもグリフィンドール・スリザリンを問わず時間がかかっていた。

 経験豊富なスリザリンの男子生徒も我流であったり、箒を用いた決闘や杖試合特有の握りや乗り方であったので、基礎の基礎となると癖の修正に悪戦苦闘するハメになったのだ。

 あの、何事も完璧にこなして女生徒から黄色い声援を浴びて止まないマルフォイでさえ「握り方が違いますよ」とフーチから注意を受ける羽目になった程である。

 

 次にフーチは、笛の音を合図に実際に生徒に飛ぶことを指示した。但し、浮上するのは一メートルまでで、飛んだらすぐ降りることと厳命した上でだ。

 

「さぁ、笛を吹きますよ。一、二の──」

「わ、わわ……!?」

 

 と。まだ笛は吹かれていなかったが、ネビルは緊張や焦りからつい先走って地面を蹴ってしまった。

 当然制御などできる筈もなく、箒が暴れて振り回されそうになったが、すかさずマルフォイが軽やかに宙を舞って杖を抜き、軽く振った途端ネビルと箒が引き剥がされたが、ネビルも箒も地面に叩きつけられることはなく、ふわふわと浮いて地面に降りてきた。

 浮遊呪文は一年生で習う基礎のものだが、それでも軽い道具を浮かせるのが関の山。

 それを箒と人間の二つにかけたばかりか、魔法学校の名門たるホグワーツですら、六年生になってようやく学び始める無言呪文での救出という、二重の意味で凄まじい技量を見せつけたことで歓声と拍手が響いた。

 

「皆さん、授業中ですよ!」

 

 フーチがそう怒鳴れば喝采は止んだが、それでも生徒たちの目は羨望と称賛で爛々と輝いていた。フーチは降り立ったマルフォイを前に仁王に立つと、厳格な表情で口を開く。

 

「お見事です、マルフォイ。しかし、無断で飛んだことは厳罰の対象です。よって、スリザリンは危険行動で三点の減点。先の杖と箒捌きに六点上げましょう。さぁ、次は笛の合図を待つように!

 焦らず慎重になさい! 一歩間違えれば大事故になることは、嫌というほど理解できた筈ですからね!」

 




 映画では女子も長ズボンですが、ここでは女子は初日だけスカートです。
 何故って? 皆好きだろ、パンチラ……!!(熱弁)
 ハリーちゃんの今日のおパンティは、可愛らしい水玉だったってロンが言ってたよ!!
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