セイとシの狭間で   作:最上 イズモ

5 / 6
05.旅

爆発の残響がまだ空気に染みついている。

焦げたコンクリートの匂いが鼻を刺し、黒煙がゆっくりと空へ溶けていく。

その煙の切れ間から覗く青空を見上げ、ジョンはわずかに息を吐いた。

 

ジョン「やれやれ……ちょっと派手すぎたか」

 

肩に残る衝撃と熱を振り払うように首を回す。

生きているという実感だけが、鈍く胸に残っていた。

 

アリス「でも、あなたらしいよ。ド派手で、馬鹿みたいに真っ直ぐで」

 

そう言いながら、アリスはナイフをホルスターへ収める。

その指先が、ほんのわずかに震えていた。

死線を越えた直後だということを、本人が一番分かっている。

 

シャルル「ねえねえ。旅に出るって言ってたけど、どこから始めるの?」

 

ジョンは瓦礫の上に腰を下ろし、背負っていたリュックを開いた。

中から出てきたのは、折り目だらけの古い地図と数冊の手帳。

そして、手書きの世界旅行チェックリストだった。

 

ジョン「まずはヨーロッパだな。親父が昔、憧れてた場所があってさ」

 

シャルル「憧れ?」

 

ジョン「AIの研究仲間と、研究所を作りたかったらしい」

 

シャルル「へえ。どこ?」

 

ジョン「スイスだ。山と雪に囲まれた静かな場所で、人里離れてて……でも平和で、空気が綺麗らしい」

 

アリス「いいね。それ。私、雪ってあまり見たことない」

 

ジョン「決まりだな。最初の目的地はスイスだ」

 

焼け落ちた地面に背を向け、破壊された戦闘ヘリを背後に置いて歩き出す。

道なき道を進む三人の背中は、どこか終幕のようで、同時に始まりでもあった。

 

数日後。

 

シャルル「寒い寒い寒い!! この気温、僕の回路に悪影響ありそうなんだけど!」

 

スイス、ベルン近郊の山岳地帯。

雪に覆われた山道を進むたび、白い息が空に溶ける。

アリスの頬は冷気で赤く染まり、それでも足取りは軽い。

 

ジョン「機械のくせに寒がるなよ」

 

シャルル「外装は感覚インターフェース付きなんだってば! 寒いものは寒い!」

 

アリス「ふふ。でもさっき、雪に寝転がってたの誰だったっけ?」

 

シャルル「観察だよ。重要な観察!」

 

山小屋に入ると、暖炉の火が三人を迎えた。

木の香りが満ち、窓の外には凍った湖と白銀の山々が広がっている。

 

ジョン「……こういう場所で、ずっと暮らすのも悪くないな」

 

アリス「ほんとに? 暗殺業やってた人が?」

 

ジョン「引退しただろ。それに……あんたたちと一緒なら、悪くない」

 

シャルル「でも、旅はまだ始まったばかりだよね」

 

アリス「うん。世界は、まだ広い」

 

その夜、三人は暖炉の前で眠った。

静寂に包まれた雪の夜は、怒号も銃声も、遠い過去のように感じさせた。

 

翌朝。

 

突然、通信端末が鋭い音を立てた。

ジョンは跳ね起き、画面を確認する。

 

ジョン「……なんだって?」

 

アリス「どうしたの?」

 

ジョン「旧友からだ。日本の研究都市で、AIの制御暴走が起きてるらしい」

 

シャルル「制御暴走……またAIか」

 

ジョン「関係ないって言えば、それまでだ」

 

シャルル「でも放っておいたら、また誰かが兵器にされる。僕たちみたいに」

 

アリス「だったら行こう。助けに」

 

アリス「シャルルみたいなAIが、もう一体生まれてるかもしれない」

 

ジョン「……決まりだな。次は日本だ」

 

荷物をまとめ、三人は再び歩き出す。

雪道を下り、次の戦場かもしれない場所へ向かって。

 

ジョン「なあシャルル。お前、自分が人間っぽくなったと思うか?」

 

シャルル「前よりはね。でも……君たちといる時間が、僕を変えてると思う」

 

アリス「……いい変化だよ」

 

ジョンは小さく笑った。

 

ジョン「なら、もっと見よう。食べよう。会おう」

 

ジョン「一緒に、変わっていこうぜ」

 

雪の中に、三人の足音が重なっていく。

やがて音は消え、白い世界には、新しい物語の始まりだけが刻まれていた。

 




【あとがき】
――登場人物たちと筆者・最上イズモによる、ささやかな対話。

舞台は、どこかの空白の書斎。机の上には未完の原稿、マグカップ、そして開きっぱなしの資料ファイル。そこへ突然、物語の登場人物たちがぞろぞろと「侵入」してくる――

 

ジョン「……よぉ、イズモ」

シャルル「作者召喚、完了。対象:最上イズモ。理由:更新放置につき読者とキャラへの精神的苦痛が発生。責任、取っていただきます」

イズモ「えぇぇぇぇ!? ちょっと待って、こっちにも都合ってものが――」

ジョン「ほら、言い訳始まったぞ」

アリス「前回、私がかっこよくナイフ投げたとこで終わってるってのに。次の登場、どんだけ待たせる気?」

シャルル「僕なんか感情パラメーターの調整が途中で止まったままだよ。処理落ちしそうだったんだからね!」

イズモ「ご、ごめんってば!ほら、執筆以外にも仕事とか生活とかさ……いや言い訳じゃないよ!?ほんとに!!よそ様で共同執筆してるし....」

アリス「ふぅーん浮気してるんだぁ」

イズモ「ウ、浮気って…」

ジョン「まあまあ、そこまで責めるなって。俺は別に怒ってるわけじゃ――」

アリス「はい、ジョンも怒ってるくせに無理していい人ぶらない!」

ジョン「う……まぁ、正直言えば、俺の“不死設定”を軸に次の展開作るって言ったよな? 楽しみにしてたわけよ。俺、ついに“死ねるかもしれない”ってとこまで来てさ……そしたら更新止まるとか、そりゃズルいぜ」

イズモ「(土下座)……申し訳ございませんでしたァァッ!!」

シャルル「よろしい。では次の更新は、明日ですね?」

イズモ「わかった!すぐ書くよすぐに」

アリス「じゃあ“本気で続きを書く宣言”して。それか、更新予定を公開しなさい」

イズモ「うっ……ぐぬぬ……わかった……書きます……!不死化抑制剤のシーンももっとドラマチックに!死を選ぶか否か、AIの自由意志と人類の境界線に迫る話にするから!!今日中に書くから許して!!」

ジョン「よし。それでこそ俺の作者だ」

アリス「ふふ、やっと本気になったね」

シャルル「では、ログアウトします。データ保存、完了」

(カタッ……何かが書斎の隅で光り、キャラたちは再び物語世界へと戻っていく)

イズモ(ひとりごと)「……ああもう、キャラに怒られるってどんな地獄だよ……でもまあ……やるしかないか。よし、筆を取るぞ」

 

―次回、必ずや更新を約束しよう。
そのときジョンは死を選ぶのか、それとも……。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。