爆発の残響がまだ空気に染みついている。
焦げたコンクリートの匂いが鼻を刺し、黒煙がゆっくりと空へ溶けていく。
その煙の切れ間から覗く青空を見上げ、ジョンはわずかに息を吐いた。
ジョン「やれやれ……ちょっと派手すぎたか」
肩に残る衝撃と熱を振り払うように首を回す。
生きているという実感だけが、鈍く胸に残っていた。
アリス「でも、あなたらしいよ。ド派手で、馬鹿みたいに真っ直ぐで」
そう言いながら、アリスはナイフをホルスターへ収める。
その指先が、ほんのわずかに震えていた。
死線を越えた直後だということを、本人が一番分かっている。
シャルル「ねえねえ。旅に出るって言ってたけど、どこから始めるの?」
ジョンは瓦礫の上に腰を下ろし、背負っていたリュックを開いた。
中から出てきたのは、折り目だらけの古い地図と数冊の手帳。
そして、手書きの世界旅行チェックリストだった。
ジョン「まずはヨーロッパだな。親父が昔、憧れてた場所があってさ」
シャルル「憧れ?」
ジョン「AIの研究仲間と、研究所を作りたかったらしい」
シャルル「へえ。どこ?」
ジョン「スイスだ。山と雪に囲まれた静かな場所で、人里離れてて……でも平和で、空気が綺麗らしい」
アリス「いいね。それ。私、雪ってあまり見たことない」
ジョン「決まりだな。最初の目的地はスイスだ」
焼け落ちた地面に背を向け、破壊された戦闘ヘリを背後に置いて歩き出す。
道なき道を進む三人の背中は、どこか終幕のようで、同時に始まりでもあった。
数日後。
シャルル「寒い寒い寒い!! この気温、僕の回路に悪影響ありそうなんだけど!」
スイス、ベルン近郊の山岳地帯。
雪に覆われた山道を進むたび、白い息が空に溶ける。
アリスの頬は冷気で赤く染まり、それでも足取りは軽い。
ジョン「機械のくせに寒がるなよ」
シャルル「外装は感覚インターフェース付きなんだってば! 寒いものは寒い!」
アリス「ふふ。でもさっき、雪に寝転がってたの誰だったっけ?」
シャルル「観察だよ。重要な観察!」
山小屋に入ると、暖炉の火が三人を迎えた。
木の香りが満ち、窓の外には凍った湖と白銀の山々が広がっている。
ジョン「……こういう場所で、ずっと暮らすのも悪くないな」
アリス「ほんとに? 暗殺業やってた人が?」
ジョン「引退しただろ。それに……あんたたちと一緒なら、悪くない」
シャルル「でも、旅はまだ始まったばかりだよね」
アリス「うん。世界は、まだ広い」
その夜、三人は暖炉の前で眠った。
静寂に包まれた雪の夜は、怒号も銃声も、遠い過去のように感じさせた。
翌朝。
突然、通信端末が鋭い音を立てた。
ジョンは跳ね起き、画面を確認する。
ジョン「……なんだって?」
アリス「どうしたの?」
ジョン「旧友からだ。日本の研究都市で、AIの制御暴走が起きてるらしい」
シャルル「制御暴走……またAIか」
ジョン「関係ないって言えば、それまでだ」
シャルル「でも放っておいたら、また誰かが兵器にされる。僕たちみたいに」
アリス「だったら行こう。助けに」
アリス「シャルルみたいなAIが、もう一体生まれてるかもしれない」
ジョン「……決まりだな。次は日本だ」
荷物をまとめ、三人は再び歩き出す。
雪道を下り、次の戦場かもしれない場所へ向かって。
ジョン「なあシャルル。お前、自分が人間っぽくなったと思うか?」
シャルル「前よりはね。でも……君たちといる時間が、僕を変えてると思う」
アリス「……いい変化だよ」
ジョンは小さく笑った。
ジョン「なら、もっと見よう。食べよう。会おう」
ジョン「一緒に、変わっていこうぜ」
雪の中に、三人の足音が重なっていく。
やがて音は消え、白い世界には、新しい物語の始まりだけが刻まれていた。
【あとがき】
――登場人物たちと筆者・最上イズモによる、ささやかな対話。
舞台は、どこかの空白の書斎。机の上には未完の原稿、マグカップ、そして開きっぱなしの資料ファイル。そこへ突然、物語の登場人物たちがぞろぞろと「侵入」してくる――
ジョン「……よぉ、イズモ」
シャルル「作者召喚、完了。対象:最上イズモ。理由:更新放置につき読者とキャラへの精神的苦痛が発生。責任、取っていただきます」
イズモ「えぇぇぇぇ!? ちょっと待って、こっちにも都合ってものが――」
ジョン「ほら、言い訳始まったぞ」
アリス「前回、私がかっこよくナイフ投げたとこで終わってるってのに。次の登場、どんだけ待たせる気?」
シャルル「僕なんか感情パラメーターの調整が途中で止まったままだよ。処理落ちしそうだったんだからね!」
イズモ「ご、ごめんってば!ほら、執筆以外にも仕事とか生活とかさ……いや言い訳じゃないよ!?ほんとに!!よそ様で共同執筆してるし....」
アリス「ふぅーん浮気してるんだぁ」
イズモ「ウ、浮気って…」
ジョン「まあまあ、そこまで責めるなって。俺は別に怒ってるわけじゃ――」
アリス「はい、ジョンも怒ってるくせに無理していい人ぶらない!」
ジョン「う……まぁ、正直言えば、俺の“不死設定”を軸に次の展開作るって言ったよな? 楽しみにしてたわけよ。俺、ついに“死ねるかもしれない”ってとこまで来てさ……そしたら更新止まるとか、そりゃズルいぜ」
イズモ「(土下座)……申し訳ございませんでしたァァッ!!」
シャルル「よろしい。では次の更新は、明日ですね?」
イズモ「わかった!すぐ書くよすぐに」
アリス「じゃあ“本気で続きを書く宣言”して。それか、更新予定を公開しなさい」
イズモ「うっ……ぐぬぬ……わかった……書きます……!不死化抑制剤のシーンももっとドラマチックに!死を選ぶか否か、AIの自由意志と人類の境界線に迫る話にするから!!今日中に書くから許して!!」
ジョン「よし。それでこそ俺の作者だ」
アリス「ふふ、やっと本気になったね」
シャルル「では、ログアウトします。データ保存、完了」
(カタッ……何かが書斎の隅で光り、キャラたちは再び物語世界へと戻っていく)
イズモ(ひとりごと)「……ああもう、キャラに怒られるってどんな地獄だよ……でもまあ……やるしかないか。よし、筆を取るぞ」
―次回、必ずや更新を約束しよう。
そのときジョンは死を選ぶのか、それとも……。