シャーレの地下室の秘密   作:cheese hamburg

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この小説はゲームとか、便利屋漫画の身体能力を元にしています

アニメ版も楽しくていいのですが、身体能力ちょっと控えめな気がします



甘い誘い

次の日の朝

 

外の世界の自宅で先生以外の全員が一つの部屋に集う

先生には今日一日休んでもらい、自分達で進められるところまで進めようと集まったのだ

 

「では私は、マコト先輩への定期連絡を送ってきます。今後誤魔化していくための文章も考えないといけないので、失礼いたしますよ。」

 

だがそんな中イロハは、自分のやるべきことを伝えると足早に抜けていってしまった

確かに報告の類は騒がしいところよりも静かな場所で行う方が効率がいいため、誰からも反論はなかった

 

「…彼女は、大丈夫なのでしょうか?」

 

覇気のない気怠げな後ろ姿を見て、心配するヒマリ

同じゲヘナ生のヒナに大丈夫か確認すると、ヒナは力強く頷いてくれた

 

「ええ、大丈夫。確かに普段はあの調子だけど、与えられた課題や仕事は確実にこなす優秀な人物よ。だから彼女はマコトから信頼され、戦車長という地位を与えられている。」

 

イロハは普段から無茶振りともいえる命令の数々を与えられているが、それだけ信頼されているということでもある

万魔殿戦車長の地位は伊達ではなく、それに見合うだけの能力を持っている

 

イロハ個人の戦闘力は大したものではないが万魔殿の保有する戦車、虎丸に乗ったならば話は変わる

優れた指揮能力によりイロハの操る虎丸は驚異的な強さを見せる

 

普段見せている姿とは裏腹に、イロハはゲヘナ学園においてとても優秀な生徒なのだ

 

「ちょっと待って!じゃあ裏で内通してる可能性も…」

 

イロハとマコトはそれだけ深い繋がりであることが伺えた

もしイロハがマコトにバラしてしまったら全てが水の泡になってしまう

不安に駆られたユウカが見張りをつけるべきか提案するが、ヒナはそれも否定した

 

「それも、問題ないわ。万魔殿は全員がイブキファーストだもの。イブキに関することで彼女達が嘘をつくことはないから。」

 

万魔殿に所属するメンバー全員がイブキを溺愛し、尊重している

それはイロハも例外ではない、彼女もイブキのことは妹か娘のように可愛がっている

 

昨日の夜言っていたことが、全くの嘘だとは思えなかった

 

「私達もそれぞれやるべきことをやりましょう。」

 

ヒナの一言を合図にそれぞれのグループに分かれて行動を開始した

 

 

 

「では私達は改めてパソコンの状態を調べましょうか、ちーちゃん。」

 

「うん…今度は忘れてなくて偉いね部長。」

 

「その言い方は聞き捨てなりませんよ!?ですから以前のはあくまで楽しいひとときを台無しにしないよう考え抜いた超天才清楚系病弱美少女ハッカーの思いやりであって、決して忘れていたというわけでは」

「はいはい、それじゃ始めようか。」

 

チヒロにからかわれながらヒマリはパソコンへと向かっていった

ネットワークセキュリティやアプリ等はキヴォトスのものと違いはあるのかを確認する

 

またキヴォトス産のパソコンなどはこちらのネットワークでも使うことができるのか

もしキヴォトス産のものでも問題がないのなら先生に外の世界の高いパソコンを用意してもらう必要がなくなる

 

2人は集中して電子の世界へ向き合った

 

 

 

ヒナとユウカ、ノアの3人は庭先に向かった

もしこの先問題児の生徒が来た際、こっそりと抜け出してしまわないための防衛線を考えなければならない

自宅周辺の地形を念入りにチェックしていく

 

「少し雑草は多いけれど、視界良好…近くの森や山に逃げ込まれなければ問題なさそうね。」

 

「用意するのはトラップ、というよりセンサーでしょうか…先生がもし踏んだら怖いですし…」

 

「そうですね、この辺り野生動物が出ると言ってましたし……

あっ、ヒナさんちょっといいですか?」

 

庭に設置するものについて議論を交わす最中、ノアがヒナを呼び止めた

 

これから実際に防衛していくため、今のうちに確認すべきことがあったのだ

 

「外の世界とキヴォトスで、何か体調の変化とか身体能力に違いはありますか?」

 

「…………特に変わりはない、わね。」

 

キヴォトスで生きてきた彼女達にとって外の世界は未知の領域

ヘイローや神秘といったものがない場所において、今まで通りちゃんと動けるのか試しておく必要があった

 

いざという時に体調が悪くなったり、弱体化してしまったら大変である

 

「ちょっと試してみてもらってもいいですか?私達はあまり運動が得意ではないので…」

 

ユウカとノアは運動に自信がなく、普段の事務仕事で身体が鈍ってしまっていた

ジョギングで先生よりも早く息が上がってしまったこともあったため、2人では参考にならないだろう

普段からゲヘナで事件解決のために飛び回っているヒナの方が適任だと思いお願いした

 

「なるほど…わかったわ。」

 

そう言うと、ヒナは

助走もつけずに先生の自宅2階のベランダ目掛けて跳び上がった

 

ベランダに置いてあるものを崩すことなく軽やかに着地する

 

ヒナの身体能力の高さを見て呆気に取られる2人をよそに再び跳躍し、何事もなかったかのように元の場所へ戻ってくる

 

「軽く跳んでみたけど問題なし。他も試してみる。」

 

淡々とした口調で空高く飛び上がり、風の如く駆けて動きを試すヒナ

愛銃の重みがない分、いつも以上に素早く軽やかな動きだった

 

 

「これは想像以上ですね、ユウカちゃん…」

 

「ネル先輩といい、学園最強格の人達はどうしてこうも人間離れしてるのよ…」

 

涼しげな顔で人間離れした芸当をこなすヒナの姿を見て、彼女が何故ゲヘナ最強と呼ばれているのかがわかった気がした

 

 

 

 

「では私は本日の食事の準備をします。」

 

「あ、私も手伝います!栄養満点の料理を作れば先生もすぐに元気になりますから!」

 

「そうだね、私も簡単なことしか出来ないけど手伝うよ。」

 

最後に残った3人は食事の準備に取り掛かる

食材は先生とチヒロがすでに準備してくれていたため、後は下拵えや調理等を済ますだけ

 

キッチンへ向かう前にセリナが立ち止まって、エイミに声をかけた

 

「じゃあエイミさんが着替えてくるまで、待ってますね。」

 

「…もう着替えてるけど?」

 

「え?」

「え?」

 

頭の中が疑問符で埋め尽くされる

相手が何を言っているのか分からず、首を傾げて見つめ合う2人

 

「…エイミの今の格好は寝間着ではなく、普段着です。」

 

「そうだったんですか!?」

 

トキからの補足にセリナは驚いた

昨日は夜も遅かったので、一人だけ寝間着に着替えた状態だと思っていたのだ

パジャマ代わりにしては変だとは思ったが、まさか半裸の姿が普段着だとは思わなかった

 

誤解を解くため、エイミはとても暑がりで365日、常にその格好をしていること、ひどい時は裸にさえなろうとすることを説明した

 

 

「常日頃からそんな格好だなんて、普通じゃないです!何か重大な病気かもしれません…一度検査しましょう!」

 

「ちょっと待ってください、その救急箱はどこから取り出したのですか?」

 

説明した結果、セリナの救護魂に火がついてしまったらしい

手ぶらのはずのセリナの手にはいつのまにやら赤い救急箱が握られていた

 

面倒な気配を感じやんわりと躱そうとするエイミに突撃するセリナ

 

 

「私は普通。その瞬間移動能力の方が普通じゃない。」

「いいえ!普段から服を脱がなければいけないほど暑く感じる方が、普通じゃありません!」

 

 

──わちゃわちゃと揉めはじめてしまった2人から目を外し、トキは青空の中を流れていく白い雲を眺めた*1

 

[見なさいトキ、これが決戦兵器アバンギャルド君よ][この超天才清楚系病弱美少女ハッカーである(略][暑いから脱ぐね][今からリアルファイトに行くよ!][ロッカーに隠れてます…][アリスはゴミ箱をあさった…][ああっ!?スカジャン最高だろうが!][やはり劇的な演出に爆発は欠かせませんね][やはり自爆機能は必須だな][後Bluetoothもね][説明や解説が必要なら!][先生の声を録音してもいいですか?][エナドリ〜…][今の私に攻撃が当たる確率は極めて低い!][ふふっ、今のユウカちゃんかわいい。記録しなきゃ][はっちゃ!][ララ〜♪どうして仕事は無くならないんだろう〜♪]

 

 

(皆様とてもいい人なのはわかりますが、どうして私の知り合う方はどこか変わっている人が多いのでしょうか…?)

 

リオの元を離れ普通の学生として復帰して、一般常識を学んでいる最中のトキ

嘆いたり悲しんだりしているわけではなく、ただただ疑問に思った

 

 

 

 

それぞれが行動している中イロハはというと…

 

 

襖を締め切った誰もいない部屋で一人寛いでいた

 

 

(マコト先輩から催促の連絡はなし…どうやら問題なさそうですね。)

 

実はイロハは万魔殿に送る事務連絡を昨日の段階で全て終わらせていたのだ

詳しい内容は戻り次第、直接マコトに報告することとなっている

 

後は追加の連絡が来ない限り、何もすることのない完全な自由時間である

 

やるべきことはこなしつつサボりの時間は確保する、マイペースなイロハらしかった

 

(さて、今なら邪魔も入らなさそうですね…)

 

見張りが来るかもしれないのでじっとしていたが、人の気配を感じない

この様子ならしばらくの間は気づかれないだろう

 

後は誰も来ないうちにやりたいこと、伝えたいことがある

イロハは誰にも気づかれないように、こっそりと部屋を抜け出した

 

 

 

 

「なんだか…落ち着かないな…」

 

自室で布団に寝転がりながら一人でに呟く先生

身体は疲れ切っているのだが、どこか不安を感じ続けて寝付けずにいた

 

(寝てる場合じゃないんだけどな…皆が頑張ってくれてるのに、何もしないで寝転がったままなんて…もし、間に合わなかったり失敗したら…)

 

大変な時に倒れてしまった罪悪感が体を蝕む

 

こっそりとお仕事しないようにとシッテムの箱も遠くに置かれてしまった

今は少しでも休むべきなのはわかっているのだが、何もせずに寝ているのは落ち着かない

胸に手を当て、モヤモヤとした気持ちのまま先生は悩んでいた

 

「失礼しますよ〜…」

 

そんな時、襖の方から声が聞こえた

目を向ければ、襖がゆっくりと開いていくのが見える

 

「…やっぱり起きてますね。まったく、しばらく会わないうちに随分とサボるのが下手くそになってしまいましたね。先生?」

 

「やぁイロハ、ここにはサボりに来たの?」

 

現れたのはイロハだった

普段かぶっている帽子を置いて、靴下も脱いでいるあたりだいぶ寛いでいるようだった

サボり場所として避難してきたのかと思ったが、イロハは首を横に振っているため違うらしい

 

「お疲れの先生を慰めに来たんですよ。今の先生に負担をかけるほど、私も鬼じゃありませんから。」

 

よっこらせとイロハは先生の横に座る

先生を見つめるイロハの瞳は普段以上に柔らかく優しく感じた

 

「せっかく休んでても、不安で眠れないのなら意味がありません。だからその不安を取り除いてあげようと思いまして。」

 

「……一体何をするの?」

 

イロハが一体何をするのか全くわからない先生

そんな先生を安心させるため、イロハは普段よりも甘く優しく、囁くように声を出す

 

「ただお話しするだけですよ……

…ねぇ先生?失敗するのって怖いですよね?」

 

今先生の感じている不安、その確信をつく言葉を投げかけた

先生の表情が強張る

予想通りの反応を見て、イロハは言葉を続けていく

 

「皆優しくていい子達だからそんなことないって思ってても、失望されるんじゃないか…私のせいで台無しになるんじゃないか…そんな不安を感じてるんじゃないかと思いまして…」

 

囁く

 

「それは人として普通のことです。実際どうなるかなんて誰にもわからない。

…でも、先生…私は違いますよ?」

 

囁く

 

「私が誰の元で働いてると思ってるんですか。大袈裟なことを言っては失敗ばかりの長と一緒に働いてるんですよ?それに比べればどうと言うことはありませんよ。」

 

囁く

 

「…私はたとえ先生がどんな失敗をしたとしても、失望なんてしませんよ。ああ、とある風紀委員にしたようなことでもね…舐めたいなら舐めさせてあげましょうか?

なんて、冗談ですけど…でもいざという時は全部…受け入れてあげましょう。」

 

甘く優しい言葉で怠惰に、堕落に誘う

さあさあどうぞ、こちらの準備はいつでも整ってますよ、と

 

「だから、もしこのまま上手くいかなくて…どうしようもなくなって…キヴォトスに来られないとか、外の世界に残らなくちゃいけないとか…先生でいられないってなっても…大丈夫ですよ。安心してください。」

 

頭を優しく撫でて、先生の手を上から痛くないように強く握る

いいんですよ?私に溺れても。そんな気持ちを込めながら

 

「私がいます。もし全部失うことになったとしても…私が先生の最後の生徒になって、一緒についていってあげます。2人だけでまた一から始め直す…なんていうのも悪くないと思いますよ。

だから…頑張りすぎなくていいんですよ先生。大丈夫、安心して…全部嫌になったら逃げちゃっていいんですよ…」

 

──イロハは思う

キヴォトスの大人達はすべからくロクデナシばかりだ

怯えてばかりで頼りにならないもの、何もしないくせに文句だけは一丁前のもの、こちらを平気で騙して何もかも奪っていこうとするもの

 

彼らならこんなふうに追い詰められたらきっと、イロハの甘言に喜んで飛びつくだろう

 

だが、先生は違う

 

この人は本当に生徒のことを誰よりも考え、慈しんでいる

その証拠にほら

──いつのまにか柔らかな表情で先生はこちらを見つめている

 

「ありがとう、イロハ。すごく勇気づけられたよ。でも、大丈夫。なんとかしてみせるよ。イロハの優しさに甘えてばかりじゃ先生どころか大人失格だからね。」

 

イロハの口角がにんまりとつり上がる

やっぱり、この人は違う

ここを逃せばこんな人とはもう二度と出会うことはできないだろう、少なくともキヴォトスでは

 

そんな確信と予感があった

だからイロハは先生のことが気に入っている

 

「そうですか。まぁなんにせよ、倒れるくらいなら私のところに来てくださいってことです。壊れる前に余計な物は全部投げ捨てちゃってください。私はいつでも先生のこと、待ってますから。」

 

「そうだね、そうするよ…」

 

先生はいつのまにか眠たそうにしていた

言うべきことは全て言った

後は倒れる前にちょくちょく顔を出すくらいのことだろう

 

「それじゃ、おやすみなさい先生。」

 

「うん、ありがとう。おやすみイロハ…」

 

先生が目を閉じたのを確認してから部屋を出た

 

 

 

歩きながらこれからの予定について考える

万魔殿の羽沼マコトは果たして騙し切れるものなのだろうか

 

(まあ、やるからには真面目にやりますよ。イブキと一緒にここに来たいっていうのも嘘じゃないですし。)

 

わざと失敗するようなことはしない

頼まれた以上はやってやるつもりだ

ただし、もし上手くいかなくて失敗したのならその時は

 

(全部奪って、逃げちゃいましょうかね…ふふふ、思いがけない楽しみができてしまいました…♪)

 

上手くいきっこない?幸せなのはほんの僅かな間だけ?最後は破滅する?

知ったこっちゃない

自由と混沌こそがゲヘナ、私だって自由にさせてもらう

ああでも、他にも同類はいるだろうし私だけのものにならないのは不満だけど、皆で囲んでしまえば確実で悪くないかも

 

 

なんにせよチャンスが来たら絶対に逃さない

 

 

来るかもしれないそんな未来に舌なめずりしながらイロハは歩いていった

*1
ものすごい速度で動き回る白い何かがチラチラと視界に映った





クソボケ先生「イロハは優しい子だなぁ…私を勇気づけるためにそこまで言ってくれるなんて…よし、元気出た!しっかり休んで頑張ろう!」



(イロハ視点で)ほのぼのとした未来

イブキはもちろん好き、でも先生も大好き

わざと失敗させるとか、こっそり告げ口するとかそんなことはしません
全力でやった結果、失敗したらそうしよう
成功しようと失敗しようと美味しい所はもらっていく
それだけです

ブルアカと言えば湿度高い生徒!
じっとりイロハ好き…
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