シャーレの地下室の秘密   作:cheese hamburg

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どうして先生の実家に一緒に行く現実来訪ものがないんですか…
難しいからですね、すごく実感してます
小説を書ける人って本当にすごい

仕事終わりにアロナとプラナと一緒に美味しいものを食べたい人生だった…


ささやかな晩餐 withアロプラ

シャーレの地下室にあった襖の放つ光の中に飲み込まれた先生

光が収まると先生は木造でできた長い廊下に佇んでいた

その背後には地下室にあった襖と全く同じものがあり、ゆっくりと1人でに襖が閉まっていく

 

『転送完了、バイタルチェック…問題ありません。』

『忘れ物落とし物などの転送漏れも…ないですね。』

 

「ふぅ〜、やっと休める…」

 

2人の報告を聞きながらゆっくりと廊下を歩き出す先生

やがて、大きな庭の見える縁側にたどり着いた

 

ここは二階建ての大きな大きなお屋敷だった

裏手には山があり、自然豊かな田舎の風景が広がっている

そしてキヴォトスではなによりも特徴的だった空に広がる光輪が影も形もなく、満点の星空が広がっている

 

『いつ見ても大きいですよね〜先生のご実家は。』

 

「私1人だけだから、広すぎて寂しいけどね。」

 

そう、ここは先生の実家だった

それもキヴォトスの外、外の世界にある先生の故郷へと転送され、帰ってきたのだ

 

『…スキャン完了。痛みや腐れ等の損傷箇所は確認できません。』

 

『部屋も荒らされてないようですし、泥棒さんもいないみたいですね!』

 

「いつもありがとう2人とも。ここは私と両親の大切な思い出の詰まった家だから大事にしないとね。」

 

『…きっと空の上でご両親も喜んでいますよ。』

 

「そうだといいなあ。今はもっぱら私のコレクション置きに使わせてもらってる部屋が多いから申し訳ないんだけど。」

 

広い屋敷を歩いて行き、ようやく自室へとたどり着く

 

そこは8畳ほどの広さでできた和室で、タンスや布団といった私生活のものからシャーレ執務室のように仕事用のデスクやパソコンも用意されていた

 

タブレットをパソコンの近くに置き、2人から見えないようにタンスの前に移動する

 

「よし!着替えてシャワー浴びてくるからちょっと待ってて。」

 

『いえいえ、お家なんですからごゆっくり!』

『先生のパソコンから私達はネットで情報収集もできますのでお気になさらずごゆるりと。』

 

「あはは、ありがとう2人とも。じゃあ行ってくるね。」

 

ハンガーに制服をかけた後、寝巻きを持って浴室へと向かう先生

その間アロナとプラナは情報収集という名のネットサーフィンへと洒落込んでいた

超高性能AIである彼女達はケーブルを繋がずとも、シッテムの箱からこの外の世界のインターネットへ自由にアクセスすることができるのだ

 

『ふぅむ、キヴォトスも負けていないと思いますがやっぱり外の世界のスイーツも魅力的ですね〜…!』

 

『先生の故郷…日本はやはり百鬼夜行に非常に酷似していますね。建物や妖怪という概念、食文化や観光地…本当によく似ています。』

 

キヴォトスと日本を比べながら、スイーツや歴史、観光地等の情報を楽しんでいた

 

『あっ!プラナちゃん!これ見てください!期間限定のおまんじゅうだって!』

 

『…なるほど、これは美味しそうですね。』

 

『配達もやっているみたいですし、お届け範囲にここも入ってるので問題ありません!今度先生に相談してみましょう!』

 

『いいですね…あ、アロナ先輩。こっちも見てください。古くから受け継がれてきた歴史的建造物と紅葉が織りなす絶景スポット、だそうですよ。』

 

『おぉ〜!!綺麗ですね〜!このまま秋になったら絶対に先生と行ってみましょう!』

 

『……景色と一緒に楽しめる特別スイーツに目が釘付けですね、先輩。やっぱり花より団子ですか。』

 

『んなっ!ななな、なんのことですか!?たまたま近くに載せてあったのでつい目移りしただけですよ!?ほ、本当に先生やプラナちゃんと絶景見に行くのも楽しみなんですからね!?』

 

『ふふっ、わかってますよ。楽しみですね。』

 

 

「お待たせ2人とも。寝巻きに着替えたしケーキも持ってきたよ!」

 

和気藹々と盛り上がる2人に声がかかる

声の先にいたのは寝巻きに着替えてリラックスした表情の先生

その手には片方にケーキ、片方に缶ビールとワインが入ったビニール袋が握られている

 

『おや?今日はお楽しみですね先生♪』

『あまりお酒は強くないとお聞きしていましたが大丈夫ですか?』

 

「うん、大丈夫。これはワインじゃないからね。」

 

ほらと先生が2人に見えるようにタブレットの前に置く

そこには[赤ブドウ 微炭酸ジュース]と書かれている

これは赤ワインではなく赤ブドウの炭酸ドリンクだったのだ

 

「私が行ってきたお店はケーキや洋菓子と一緒にワインも取り扱っているんだけど、子供のいる家族向けに炭酸ドリンクも売ってるんだ。私も前に飲んでみたんだけど、この炭酸ドリンクがおいしくてね、2人にもぜひ飲んでほしくて買ってきたんだ。」

 

『わーい!ありがとうございます先生!』

『そういうことでしたか。とても楽しみです。』

 

「そしてこれがケーキだよ。」

 

ケーキの箱を開いて2人に見せる

そこにはイチゴのショートケーキとチョコレートケーキ、モンブランの3種類が入っていた

 

「ネットで見た人気ランキング上位のケーキを買ってみたよ。2人とも好きなものを選んでね。」

 

『じゃあ私はショートケーキにします!』

『では私はチョコレートケーキにします。』

『ケーキと炭酸ドリンクをスキャンしますね!…おお、やっぱりすごく美味しそうです!』

 

アロナがスキャンすると言った後、すぐにテーブルの上に置かれた炭酸ドリンクとケーキがシッテムの箱の電脳空間の中に現実世界と寸分違わない姿で現れる

 

これも現代科学では実現できない、シッテムの箱の持つ超常的な力の一つ

AIにそんな機能必要ないのでは?と思うがこれもれっきとした先生を守る為の機能の一つだ

 

食べ物に含まれている成分や味、食感に至るまで全てを完全に再現することで危険なものが含まれていないか毒見することができる

先生が食べる前にスキャンし完全再現したものを食べて確認することで安全に食べさせることができるのだ

 

…とはいえ先生はアロナやプラナのことも大切な生徒だと思っているため、毒味なんてことは絶対にさせない

そのため、本来の使い方として機能していないのだが

 

アロナ達が、ケーキやドリンクを読み込んでいる間に先生はテーブルの準備を整えていく

先生のそばに缶ビール、タブレットのそばに炭酸ドリンクをおけば準備完了だ

 

「コップとかは準備しなくて大丈夫かな?」

 

『ふふふ、ご心配はいりません!食器類はもうそろっています!』

『では先生、乾杯の音頭を。』

 

最後の確認を済ませて先生は缶ビールの蓋を開ける

2人は炭酸ドリンクの入ったコップをすでに掲げている

 

「それじゃあ今日も皆本当にお疲れ様でした!かんぱーい!!」

 

『かんぱーい!!』

『かんぱーい。』

 

音頭の後、一斉に飲み物に口をつける

仕事で疲れ果てた先生の喉には冷たいビールが染みわたっていき、2人の喉には赤ブドウの痺れるような甘さと炭酸が爽快に弾けた

 

「くぅ〜!きく〜!!」

 

『ぷはっ!美味しいです〜!!』

『美味です先生。』

 

3人だけのささやかな晩餐がこうして始まった

飲み物の次はそれぞれの選んだケーキに手を伸ばす

 

まず最初にケーキを食べたのはアロナだ

ショートケーキにスプーンを入れれば、ふわふわのスポンジが柔らかくスプーンを受け止めて沈み込む

そのまま口に入れると、生クリームの優しい甘みと柔らかなスポンジの食感に加えてスポンジの中にあったイチゴの甘酸っぱさが広がっていく

上品かつ素晴らしい美味しさが口の中いっぱいに広がり顔をほころばせた

 

次にケーキに手をつけたのはプラナだった

ふわふわのショートケーキに対して、しっとりとしているチョコレートケーキを口に放り込む

程よいカカオの苦味と脳が痺れるようなチョコレートの甘みが染み渡る

口の中に広がる味全てがもっともっとと食欲をそそり、すぐに次の一口を口の中に入れる

あまり感情を表に出さないプラナのその目は、キラキラと星空のように輝いていた

 

最後に先生もケーキへ手をつける

モンブランが切った後倒れてしまわないよう丁寧に手をつける

一口食べれば栗の甘味や風味が生み出すこっくりとした味わいが口いっぱいに広がっていく

マロンクリームのコクと濃厚さ、クッキークランチのザクザクとした食感にホイップクリームが組み合わさった素晴らしい美味しさに日々の疲れが吹き飛ばされていった

 

 

「いや〜、本当に美味しいねこれ!買ってきて正解だったよ。」

 

『はい!とってもとっても美味しいです!』

『本当に、頑張った甲斐がありました。いずれ食べ終えてしまうことが本当に惜しく感じてしまいます。』

 

言葉を交わしながら夢中で飲み物とケーキを食べていく

穏やかで温かな時間がゆっくりと過ぎていく

 

『そういえば先生!これを見てください!』

 

「どれどれ…絶景スポット特集か〜!いいね!この中だと…こことか車で行けそうだよ!それじゃ、今度のお休みに皆で行ってみようか!」

 

『とても楽しみです。そして先生に見せたいものが他にもあります。』

 

「あはは、わかったよ?さては期間限定の特別スイーツだね?」

 

『ご名答です。』

『ええっ、どうしてわかったんですか?』

 

「アロナは美味しいものに目がないからね。今度期間限定のおまんじゅうも注文しておくから安心してね?」

 

『…やっぱり先輩は花より団子ですね。先生もよくわかっています。』

 

『そ、そんなアロナを食べることしか頭にない食いしん坊みたいに言わないでください〜!!』

 

「そこまで言ってないよ〜。あはははは。」

 

『そ、それよりも先生!今回のケーキとジュース、とても美味しかったんですけどいい値段したんじゃないですか?またユウカさんに怒られちゃいますよ?』

 

「うっ!…キ、キヴォトスと外は別だから!バレなければ大丈夫!」

 

 

先生の自室は笑顔に笑い声に包まれていった

仕事を終えた3人の楽しい時間はあっという間に過ぎていく

これからの予定に、楽しい未来に思いを馳せる

 

 

その時だった

いち早くプラナが異変に気がついた

 

『…!!先生、緊急事態です』

 

「えっ!?急にどうしたの!?」

 

『ふぇっ!?ふ、襖が開いて…転送装置が動いてますっ!誰かがこの家に転送されてきます!』

 

「ええっ!そんなシャーレには誰もいなかったはずだよ!」

 

いつでも自宅の襖が動き始めていたのだ

もし、先生が自宅に帰っている間にキヴォトスでとんでもない事件が起こっていたり、緊急の要件が来た時に備えて、スマホの電話がつながるよう襖は起動状態で待機していたのが仇となった

 

今までこんな夜遅くに訪ねてくるような人はいない為、大丈夫なはずだったのだが今日は違っていたようだ

 

『先生、ナビゲートを開始します。こちらの位置がバレないよう部屋の明かりを消してください。』

 

『転送されてくる相手の情報収集を開始します!』

 

「ちょ、ちょっと待ってね!……よし!大人のカードは手に持った!いざという時はこれで戦えるよ!」

 

2人の指示のもと、迅速に準備を整える

いざという時のため先生の持つ唯一の武器である大人のカードを握りしめる

普段から突発的な戦闘に巻き込まれることの多い先生の対応速度は伊達ではない

 

灯りを消して、飛ばされてくる相手に備えて息を殺す

そのまま待っていると、やがて家の奥から微かな光が漏れてくる

何者かが先生の自宅に到着したようだ

 

『パターン照合、シャーレの登録データに…該当…あり!?…あれっ、あれれっ!??』

 

「ど、どうしたの?誰が飛んできたの?」

 

『照合完了、先生。転送されてきたのは生徒さんです。それもシャーレに所属している生徒です。彼女は……』

 

アロナとプラナから告げられた生徒の名前に先生はとても驚きながらも納得した

彼女には前科があるからだ

 

困ったことに無自覚なイタズラ生徒がまたシャーレに忍び込んできてしまっていたようだ




襖は途中で転送をやめるとキヴォトスと外の世界の間に弾き飛ばされる可能性があります
外の世界のどこかわからない所に飛ばされたら最悪です
いくらアロナやプラナの力といえど見つけ出すのに時間がかかります

だから完全にこちらに転送されてからすぐに向こうへ叩き返すのが一番安全で確実なため、押し戻せるよう待機していました
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