今日も今日とて独自設定
公式が情報を出せば出すほどこの小説は終わるので、ここはこういうパラレル世界なんだなと思ってください
筆者の勝手な解釈や推測も多分に入っています
不快に感じましたら、すみませんがブラウザバックしてください
ナギサとサクラコという2人の生徒を迎えて、ついに三大学園による協力が実現した
ミレニアムは本来の会長の不在、ゲヘナは万魔殿の代理という形ではあるが、権力と能力の高さ的には申し分ない
むしろ本来の長達よりも柔軟に対応することができるため、これから協力して動くのに一番適した人材が揃っている
今度は途中から複数の生徒達が乱入してきた前回の反省を忘れずに、最初から先生の自宅に生徒達が集まっていた
─まずは今回から新しく加わった生徒達の自己紹介から始まった
「ごきげんよう、皆様。シスターフッドのリーダーを務めさせていただいております、歌住サクラコと申します。こうして集まるのを、とても"楽しみ"にしておりました。本日は"有意義な時間"にいたしましょう。うふふふ…」
…サクラコは至って真面目に、仲良くしたい気持ちを込めて自己紹介をしたつもりだった
だが今回もサクラコの真意が伝わることはなく、どこか影の濃い笑みに怪しい言い回しを聞いて警戒しない生徒はいなかった
本当に大丈夫なのか、とこっそりアイコンタクトをとってくる生徒達に先生はサムズアップで返す
「コホン…改めましてトリニティ総合学園にてティーパーティーホストを務めさせていただいております、桐藤ナギサと申します。本日はよろしくお願いいたします。」
気を取り直して、今度はナギサが挨拶する
至って普通の自己紹介をすることでトリニティに敵意はないことをアピールした
少々堅苦しいものではあったが、先ほどまでの怪しさはない
先生が補足するように2人について説明した後、元々いた生徒達も自己紹介をして、なんとか不穏になりかけた場を持ち直した
いきなり会議に移る前にまずはコミュニケーションからという先生の提案により、しばし歓談をすることになった
会話がぎこちなくならないように先生が逐一フォローに入ることで、会話も弾んでいく
今回初めて参加する生徒達はもちろん、あまり会話をしなかった生徒同士でもコミュニケーションを取った
そんな中あえてナギサ達は万魔殿の少女へと話しかけに行く
「改めてお久しぶりですね、万魔殿の棗イロハさん。」
「…ええはい、お久しぶりです。桐藤ナギサ先輩。サクラコ先輩。」
「ええ、以前の会議の場以来ですね。」
イロハとナギサとサクラコ
ほとんど会話していないので顔を知っている程度ではあるが、面識はあった3人
両校は色々と溝の深い関係にあるため、いきなり仲良くしろと言われても難しいと思っていたが…思ったよりも早く話しかけられたことにイロハは少し驚く
穏便に済ませるなら他のトリニティ生徒と同じように"様"というべきだが、あえて棘のある言い方をした
「先輩…ですか。どうにも新鮮な響きですね。」
「私個人としましては、トリニティに対してそこまで深い感情を持ってはいないのですが…
私の立場上それは難しく…あまり好意的に接すると上司がうるさ…お叱りをいただくので、ご理解いただければと思います。」
イロハ個人としてはトリニティ憎しというわけではないのだが、万魔殿の戦車長という立場についている以上周囲の目というものがある
もしトリニティの生徒を様付けで呼ぼうものなら、「お前には忠誠心が足りない」と面倒なことになるのが目に浮かぶ
普段爪が甘いくせに変なところで勘の鋭い議長を思い出して、イロハはため息をついた
「大丈夫ですよ、お互い立場というものがありますから。私もゲヘナの方と急に親しく接していては他のトリニティ生にいい顔はされないでしょう。ただ、この場には一般生徒達もいませんしもっと楽な話し方で構いませんよ。」
「そうですね、せっかくの機会なのですから、もっと気兼ねなく自然体で"話し合い"ましょう。」
「そう言ってもらえると非常に助かりますね。」
ナギサやサクラコの言葉に甘えてイロハはすぐにいつもの喋り方に戻した
堅苦しい喋り方を続けるのは疲れるのだ
その言葉を引き出すためにわざと仰々しく喋っていた甲斐があった
自分から言い出すのと相手から許しを得てから直すのとでは天と地ほどの違いがある
ただの怠け者扱いされないよう気をつけつつ、いかに先の自分に楽をさせるか、サボれるかをイロハは常に考えている
「ふふ…ゲヘナの中でもお話の通じそうな方に来ていただいて良かったです。」
「こちらこそ、ティーパーティの中で一番まともそうな方に来ていただいてホッとしていますよ。」
皮肉とも取れる言葉を返し合う2人だが、紛れもない本心だった
客観的に見た際、互いの陣営の中で一番会話の出来そう相手だと思っていたのだ
─連邦生徒会が主催した会議の場を思い出す
かたや狸寝入りをする女と本当に居眠りする女
そして重要な会議の場に連れてくるにはいささか幼すぎる少女
かたや頬杖をつき、不満と威圧感を隠そうともしない少女に室内に連れ込んだシマエナガと見つめ合う不思議ちゃん
イロハとナギサも、本を出してため息をついてたり紅茶を飲んでたりとまともではなかったのだがあの中では一番マシな方に見える
あの時は連邦生徒会側の対応が悪いのは大前提ではあった
だがそれを踏まえた上でも最悪、とまではいかないが、とても良い印象は持っていなかった
だからあの中では、比較的話の通じそうな人が代表で良かったと2人は安堵していた
そんな談笑の最中、人数分の飲み物を用意してきたトキが丁寧に茶器を並べていく
優秀なメイドとしての本領発揮、とトキは張り切っていた
「ありがとうございます。ミレニアムにこれほどのメイドさんがいらっしゃるとは思いませんでした。」
「恐縮です。」
手際良く丁寧に紅茶を並べるトキを賞賛するナギサ
確かに仕事モードのトキはできるクールメイドなのだが、本来の姿を知る面々は苦笑いを浮かべた
彼女の内心は今ドヤ顔でダブルピースしていることは容易に想像がついた
ある程度緊張もほぐれ、知らない生徒間同士でも自然に話せるようになってきた
頃合いを見て本題へと移る
…前に代表の生徒達以外には別室へと移ってもらった
理由としては政治的な話が多くなること、単純に人数が多すぎること
そしてあえて会議に参加しないことで、決まった内容を客観的に見てもらい精査していくためだ
会議中は良い案だと思ったことでも、第三者から見た時にはおかしいと思うような結論に至ってしまうことがあるからだ
「必要なものがあればいつでもお申し付けください。」
「それじゃ隣の部屋で待機してる。」
「部長、会議の内容が決まったら教えてね。」
「少しでも具合が悪くなったらすぐに言ってくださいね!」
トキやエイミ、チヒロにセリナが部屋を退出する
そんな他の面々に紛れて、こっそり赤いモフモフの髪の少女もついていこうとした
「では、私も会議の邪魔にならないように向こうに行ってますね。」
「待ちなさいイロハ。」
さりげなくサボろうとするイロハの手を掴むヒナ
万魔殿議長の代わりに出てきているのに、会議の場にいなければ意味がない
万魔殿の持つ情報を提供してもらわなければ困るのだ
「貴方は万魔殿の代理として出席しなさい。」
「まあ、そうですよね。はぁ…わかりました。」
渋々元の場所に戻るイロハ
止められるだろうなとは思っていたので、特に驚きも落胆もない
ダメ元でサボれたらラッキー程度の考えだった
そんなマイペースなイロハに苦笑する生徒は多かった
ついに三大学園による会議が始まった
まず一番最初に議題に上がったのは贈り物作戦について
周囲を欺き、本命の転送装置から注意を逸らすための記念品について改めて共有を行った
「当初の予定通り、ミレニアムからは我が校の誇る最新型の高性能パソコンを贈らせていただくことに決まりました。もうすでに準備は整っているので、後はシャーレに運び出すだけになってます。」
「……素晴らしい性能ですね。トリニティにも回して欲しいくらいです。」
「やっぱり、風紀委員会にも欲しいくらいの性能だわ…」
ミレニアムの用意した高性能パソコンに関して書かれた資料に目を通す
カタログスペックを見たが、キヴォトスの科学の最先端を行くミレニアムの名に恥じない性能だった
膨大な数の仕事に忙殺されているヒナやナギサからすれば喉から手が出るほどに素晴らしいものだった
「ゲヘナからはやはり黄金のマコト先輩像になりました。理由としてはシャーレとの友好を深めつつ、万魔殿の威光を示すとおっしゃていましたね。」
「本来ならば、そんなふざけた像はすぐにでも破壊するのだけど…今回ばかりは仕方がない。」
「……………………?????」*1
(あの顔を見るにサクラコさんも本当のことだとは思っていなかったようですね…私も情報部からゲヘナで金の像を大量に作っている、という情報を聞いた時は何かの間違いかと思いましたから…)
次にゲヘナからは、羽沼マコト議長をモデルにした黄金の像を送ることを発表した
今回初めて聞くトリニティはもちろん、あらかじめ聞いていたはずのミレニアムも理解に苦しむ顔をしていた
これを本当に先生への贈り物として出すつもりなのか
自分を模した像を見られることに羞恥心というものはないのか
確かに、為政者が自身の権力の強さを表すために製造するのは珍しくもない
羽沼マコトは自身の銅像を大々的に取り上げることが多いのはトリニティでも有名な話だ
しかし、学園から感謝の気持ちとこれからの友好を期待して贈られるものが生徒会長の像というのは他のゲヘナ生徒達も果たして納得するのだろうか
…もし仮にトリニティでそんなことを行おうものなら貴重な学園のお金を使って一体何をやっているのかと、非難待ったなしである
万魔殿の理解に苦しむ点がまた一つ増えてしまった
最後にトリニティが今回贈る記念品について発表する
以前先生が事情を説明した際に、話は通してあるので考える時間は充分にあった
トリニティは一体どんなものを用意するのだろうか
「お話や隠れ蓑とする記念品の内容を拝見させていただきました。その結果私達トリニティからは…」
ナギサは一度言葉を区切り、息を吸う
サクラコは穏やかな顔で微笑を湛えている
生半可なものではないだろうと皆予想していたが、出てきたものは想像以上のものだった
「トリニティからは、初代ティーパーティーの使っていたカップ…のカケラを用いて再現されたレプリカを贈らせていただきたいと思います。」
「とんでもなく価値のあるものじゃない、それ!?」
キヴォトスにきて日の浅い先生でもとんでもない価値を持つ物だとわかるものをお出ししてきた
─初代ティーパーティーの茶器とは
はるか昔、トリニティでは無数の学園が紛争を繰り広げていた
絶え間なく続いてしまっている学校間での紛争を止めるべく、各校代表が会談を取り行った
そのために設けられた場を「ティーパーティー」と呼んだことが始まりとされている
会談を幾度となく続けていった各学園は「第一回公会議」における合意を以って、「パテル」「フィリウス」「サンクトゥス」という3つの主要な学園を中心とした連合を形成する
結果、長い戦いの歴史に終止符を打ち、いがみ合っていた学園はトリニティ総合学園という一つの学校へと生まれ変わったのだ─
そんな長きにわたる争いを止めて、統合へと至った記念すべき場に使われた茶器、のレプリカ
それをシャーレへの友好の証として送るのだという
レプリカといえど、本物のカケラを元に修復し精巧に作られたものであり歴史的価値は計り知れない
歴史ある美術品をそんなことに、と慈愛の怪盗が盗みにこないか不安になる
それほどに価値のある恐れ多いものだった
先生は本当に大丈夫なのか、考え直した方が良いのではとやんわりと辞退しようとしたが…
「カケラを使ったレプリカは他にも数多くありますので、ご心配なさらずとも大丈夫です。先生はトリニティ…ひいてはキヴォトスの危機を救われたお方ですから。先生のお姿を知るものからは、反対の意見もないでしょう。」
「シャーレとは…先生とは今後も末永く友好を深めていければと思います。そういった願いも込めていますので、どうか受け取っていただきたいと思います。」
もう既にティーパーティーの幹部達には話は通してあり、合意は完了していた
もちろん贈り物作戦についてだけであり、外の世界については一言ももらしていない
2人の意思はとてもとても固いものであり、受け取らないという選択肢はなかった
(トリニティ総合学園の成り立ちを考えれば、その価値は計り知れません…
シャーレとの繋がりをより強固なものにする為に、これほどの物を持ち出してくるとは…さすがはトリニティですね…!)
ヒマリ達は長い長い歴史を持つマンモス校の力の一端を改めて垣間見たことで畏怖し
(まさかここまで大胆にマウントを取りに動いてくるとは思いませんでしたね…マコト先輩がムキにならないといいんですけど…)
イロハ達はこの情報を知った時に起こりうるであろう苛烈な対抗心にため息をつき
(アロナ…バリアってこういう食器類とかにも使えるかな…?)
『えーと…近くにあれば使えるとは思いますが…』
『先生が第一ですので、保証はできかねます。』
先生は貴重な遺産をいかにして保護するか、頭を悩ませていた
次の議題は、三大校が協力しあわなくてはならない重要な要素
互いの世界を守る為の警備について話し合った
警備を任せるのは風紀委員会、正義実現委員会などから信頼にたる者へ声を掛けて協力を仰ぐ方針だが、それよりも先に決めなくてはならないことがある
「私達を含めた生徒達全員が外の世界を訪れるにあたり、絶対に守らなくてはいけないルールを作ります。」
外の世界の常識に合わせた、キヴォトス出身のものが護るべきルール
キヴォトスと外の世界では、体質から社会性に至るまで、似ているようでまるで違う
キヴォトスでは許されても、外の世界では絶対にやってはいけないことを明確にしなくてはならない
様々な意見を交わせて、内容を掘り固めていく
似たような内容は一つにまとめて無駄を省き、曖昧な意見はより正確に、絶対に守るべき点を除かないよう慎重に
その後、会議の中で書記を担当するノアが決まった内容をホワイトボードに書き込んだ
○銃火器類の持ち込みは禁止、爆弾等も同様
○許可なくパソコンを使わない
○キヴォトスの情報を外部に漏らさない
○敷地内から許可なく外に出てはいけない
○人に姿をさらさないよう細心の注意を払う
○先生の自宅に被害が及ばないようにする
「とりあえずはこんな感じでしょうか…」
「あまり多く書きすぎても覚えきれないし…これを元に随時更新、修正していきましょう。」
書きたそうと思えばいくらでも細かく書けるのだが、たくさんあってもまず覚えられない
ひとまずはこれだけは絶対にしてはいけないこと、先生の引率なしで勝手に交流してはいけないことを主軸にまとめあげた
「うーん…ちょっと厳しすぎないかな?」
内容を改めて確認した先生が苦言を呈する
何をするにも許可を取らねばならず、常に監視の目がついているのは窮屈ではないか
先生は生徒達のことを無条件に信頼している
例えどんな問題児であろうとも本人のやりたいことを否定せず、自立や成長を願いながら生徒達の自主性を重んじる先生らしい発言だった
「甘いわ、先生。うちの不良生徒達を思えばこれでもやさしいほうなんだから。」
そんな先生の言葉をバッサリと切り捨てるヒナ
先生の言うとおり、ある程度の自由を認めることは簡単だ
だが、もし問題が起きてしまったら?
その時、先生は全ての責任を被り生徒達を護ろうとするだろう
自身の持つ全て、何もかもをなげうってでも罪を償おうとするだろう
─先生を慕う者としてそんなことは断じて認められない
「風紀委員長の言うとおりですよ。うちの不良生徒達はそこらの不良どもよりもよっぽどタチが悪いんですから。」
イロハもヒナに追従した
キヴォトスには不良生徒がいたる所にいるが、その中でもゲヘナ学園の不良達は群を抜いてレベルが高い
美食研究会といい、温泉開発部といい、便利屋68といいゲヘナの生徒は何かと爆破関連のスペシャリストが多いのだ
ホームセンターに行けば、爆弾を作るなんて朝飯前
まるで子供が輪ゴム鉄砲を作るような気軽さで片手間に兵器を作り出す
事実そうなのだろう、なぜならキヴォトスに住む者は爆発に至近距離で巻き込まれようとも、建物の倒壊に巻き込まれようとも命に別状はないのだから
諸々の理由から監視の目無しで自由にさせるのはリスクが高すぎる
「先生、私達のことを思うなら心を鬼にしてください。キヴォトスの問題児達はキヴォトスだからまだ取り返しがつくのです。ですが…」
「外の世界では事が起きてしまってからではもう遅いからね…うん、わかったごめんね皆。」
「…謝らないでください先生。先生のその甘さや優しさに救われた生徒は数多くいるはずです。ですから私達が暴走しないように遠慮なく先生の考えもおっしゃってください。」
「…わかった、ありがとう。それじゃ今決めたルールのここの部分なんだけど──」
生徒達全員に説得されては先生も折れるしかない
ただ全てを否定するのではなく改善点をお互いに出すことで、できる限り互いが心から納得することができるように話し合いを続けた
「皆、お疲れ様。もう遅くなってきたから、これくらいにしよう。疲れた頭で考えても良い意見は出てこないと思う。だから最後にこれだけは!って思うことを一つ発表してから終わりにしよう!」
夢中で話し合うこと数時間、気がつけば日も暮れていい時間になっていた
大分疲れが見えてきたため、無理はせずに切り上げた方がいいだろうと先生は判断する
何名かの生徒はまだまだ話し足りない様子だったので、最後に各々の陣営から一つだけ意見を発表してから解散ということになった
「私が思うに、車のセキュリティが一番不安だわ。早急になんとかする必要があると思う。」
これだけは伝えたいということで、ヒナは車のセキリュティの脆弱性を訴えた
先生の家周辺は民家の少ない田舎ということもあり、徒歩の状態ならば逃げても捕まえることは容易い
しかし、車を盗まれて仕舞えば話は別だ
銃を持ち込めない関係上、ヒナクラスでもない限り追いつけずに見失うリスクが高くなる
問題児達がこちらの世界に来た時に、逃してしまうことがあってはならないのだ
「ゲヘナでは、ほぼ全ての車は電子ロック含め機能していないと思っていいわ。それくらいピッキングの技術が高い不良達が多い。先生の車のセキュリュティは弱すぎるから、3重いえ4重にかけてロックしておかないと。」
「毎月の盗難、破損事故が多すぎて、車の保険というものが全く機能していませんからね。持ち主以外が車に近づいたら作動するトラップを仕掛けてもいいんじゃないですか?万魔殿はそれで戦車等の盗難を防いでます…それでもまれにやられますけど。」
「どれだけ治安が悪いんですかゲヘナは!?」
ゲヘナの治安が悪いのは有名な話だが、ミレニアムの生徒達はまさかそこまでとは思っていなかったようだ
主に不良生徒の被害にあってきたトリニティの生徒達は苦笑いを浮かべていた
実はブラックマーケットに行かなくても、グレーなお店がゲヘナには数多く存在し、悲しいことに需要がある
愛鍵の複製なんてお手のもの、ピッキング技術を教える違法教室まで存在しておりヒナ達風紀委員会はそんな非合法な連中を数多く検挙してきた
先生はその情報を聞いてなぜあんなにもフウカ達給食部の車が盗難されやすいのか納得がいった
その後も空崎ヒナはゲヘナの恥ずべき所を包み隠さず話し、イロハもそれに逆らわず追従し補足することで、セキュリティが脆弱な今のままだと危険すぎることを訴えた
─そんな2人の姿にナギサはとても驚いていた
ゲヘナの治安の悪さにではない
トリニティの諜報部によりゲヘナ自治区はそういうものであると既に知っていたから真新しい所は特になかった
全てを包み隠さずに話すヒナとイロハに驚いていたのだ
彼女達も自らの学校に対する愛が全くないわけではない
これを伝えることで先生に怖がられてしまう恐れもあった
けれど、ゲヘナ学園とそこに所属している自分達を見る目が変わってしまうとしても、彼女達は話し続けた
それだけ、彼女達は本気だということだ
隠したいはずであろうことも含めて話したのは、全ては先生の安全を守る為
─ナギサ達も覚悟を決めた
今回の作戦に対する本気度では明らかに彼女達に遅れをとっている
先生を思う者として負ける訳にはいかない
「車の警備、セキュリティに関して…トリニティにも一枚かませてください。」
「事前に罠等を見破り、対処することに関してはトリニティはそれなりに自信があります。」
「そうなんですか?」
超セレブなお嬢様達が多く集う学校トリニティ
それ故に身代金目的の誘拐犯や貴重な品物の数々を盗み出そうとする不届な輩が現れることがあり、それらに対する警備能力にはそれなりの自信があった
「そうね、問題児達の中には鬼怒川カスミのように狡猾で手回しのいい連中もいる。罠の対処法を一緒に考えてもらえると助かるわ。」
「ええ、より万全な状態で警備に望みましょう。
そのために、ですが…加えてトリニティからは更衣室など人の多く出入りする場所の検査、管理を徹底するべきだと思います。」
「…議事録に追加しますね、理由も合わせてお願いします。」
書記として内容を書き込むノア
その理由をナギサとサクラコを詳しく語っていく
トリニティ総合学園はその華やかさと裏腹に、政治的思想が強く陰謀渦巻く負の側面がある
ゲヘナは政治に興味がなさすぎるが、トリニティはその逆
権力を争い、自身の陣営を優位に立たせようと他の陣営へ謀略を仕掛けようとする過激な生徒がトリニティの歴史上しばしば現れた
「当人の前に立ち、直接的に批判するのはまだ可愛い方です。留守の間に服を隠したり、破いたり…
一見普通に見えても動くと破れやすくなるように細工をされていた、というようなことも過去にありました。」
「ロッカールームなどの待機する場所に用もなく出入りする者がいないか気をつけてください。
古い話で、未遂に終わりましたが…気化して証拠隠滅可能な薬品を持ち出してきた事例もあります。」
「トリニティ陰湿すぎません?」
イロハがたまらずに突っ込んだ
お嬢様学校の知りたくもなかった嫌な側面にドン引きする
かつての話で未遂に終わったが、政治的に対立する陣営の生徒を病院送りにしようと薬品を仕込もうとした生徒がいた
犯人は取り押さえられたが、あくまでも実行犯の1人であり黒幕は別にいた
実行犯は捨て駒として見捨てられおり、黒幕は正体がバレないよう証拠隠滅能力に優れており捕まえるのには苦労させられたという
─貴方はとても優れている
どうしてその才能を使わずに無駄にしようとしているのか
この私が見出してあげたというのに!
これは貴方のためなのです、今すぐに私の組織に入りなさい!入らないというのであれば…
─相手が犯罪者なら、悪いことをしたのならどんなことをしたって許される
だって自分は正しいことをしているのだから
だってアイツは悪い奴なのだから
法が裁きを下さないのなら、私が代わりに動かねば
今までに事件を起こしてしまった者達は行きすぎた正義感が暴走してしまった結果だった
良くも悪くも一度動くと決めたトリニティ生徒の行動力は、ゲヘナ生徒に引けを取らない
…誤解のないようにいうと、表に出せないような事件が起きてしまうのは非常に稀でありそういったことを起こさないために正義実現委員会が尽力している
「こちらの方で対応マニュアルを作成しますので目を通していただければ。思いつく限りの対策を施し、万全の状態で防衛に望みましょう。」
「…確か救護騎士団でもそういった事態のためのマニュアルがあるとお聞きしました。後でセリナさんにも"お話"しましょう。」
ティーパーティーにはもちろん、救護騎士団にもそういった事態のための分厚いマニュアルが数多くある
実際に事件が起こってしまった時、被害者達の治療は彼女達の役目になる
─救護騎士団が時に過激なほど動いてしまうのはそういった背景があるからかもしれない
「お見苦しい話を聞かせて申し訳ありません。ですが、トリニティ総合学園は良い所も数多くあります。ですから…」
「大丈夫だよ、トリニティの皆はとても良い子達ばかりだから。皆は本当によく頑張ってるっていうこと、私は知っているから。そういう時は真っ先に、大人が動くべきなのにね…」
先生に怖い話を聞かせてしまったことで偏見を持たれないか不安だったナギサだが、先生はその気持ちを理解している
安心させるように皆まで言わせず、全く気にしていないことを告げた
「では、そのような事態を防ぐための警報装置やトラップ等の機材に関しては私達ミレニアムに任せてください。」
諸々の話を聞いた結果、監視カメラや危険物に反応する警報装置といった抑止力も必要だという結論に至った
そういった機材の担当として、ミレニアムが声を上げる
これに対しても特に反対意見はなかった
技術力でいえばミレニアムの右に出るものはいないからだ
「ただ、準備するのに少し時間をもらいたいですね。性能の良さで言えば、エンジニア部製の物がいいんだけど…」
「何か問題があるのですか?」
「科学者にありがちな、ほんの少しの妥協も許さない完璧なものを出したいんじゃないでしょうか?」
準備するには少し時間がかかることをユウカが告げた
いくらか時間がかかるのは承知しているため気にならないが、含みを持った言い方がナギサは気になった
エンジニア部がどうしたというのだろうか
その疑問に対してイロハが揶揄うように推測を告げる
…確かにイロハの言っていることは的を得ているが、問題はそこではない
「それもそうなんだけど…自爆装置が付いてないか確かめないといけないのよ。」
「………今、なんと?」
思わず疑問の声が溢れるサクラコ
さらっと今とんでもないことを言わなかったか?
そんな周囲の様子にも気づかず、考え込むユウカ
「威力も手のひらサイズで収まるものから、建物一つ吹き飛ぶくらいのものまでピンキリだし…その癖、自爆するまでの過程は簡単な上に使用者が逃げ切る暇もなく一瞬で爆発するものも結構多いのよね…設置する時も全部こちらでやらないと、最悪設置中に仕込まれるかもしれないし…」
「ミレニアムの安全性はどうなっているのですか!?」
聞き間違いであってほしいことを願いながら、思わず声を荒げるサクラコ
残念ながら聞き間違いではなかったらしい
ミレニアムを良くも悪くも代表する科学者集団エンジニア部
彼女達にはそのまま完成品を提出してくれればいいのに、余計な機能まで追加してくる悪癖があった
Bluetoothなどの便利機能をつけるのはまだわからなくもない
しかし自爆機能なんて、よっぽどのことがない限りいらないだろう
敵よりもまず使用者の方が危険である
これはエンジニア部だけではなく、ミレニアムサイエンススクール全体の問題でもあった
元々が千年難題という今の技術では解けない7つの難題に立ち向かう研究者達が集まったことにより生まれた学園
ミレニアムの科学者達に遠慮や自重といったものは存在せず、実現不可能だと言われようとも、決して諦めずに夢を追い続けひたすらにロマンを追い求める
彼女達の行きすぎたチャレンジ精神がトラブルを引き起こしてしまうのだ
搭載したAIが暴走するのは日常茶飯事*2
仮に暴走した場合、破壊するしか止める方法がないことはざらである
そういった背景からセミナー保安部やC&Cといった特殊部隊が作られている
「ミレニアムも意外と不祥事が多いんですねぇ。」
「それでも悪評が広まっていないわけだし、対応の速さはさすがね。」
イロハとヒナが驚いたように呟く
ミレニアムでもそんなトラブルがあったとは思わなかった
チヒロやユウカ達の日頃の頑張りのおかげで大きな騒動になっていないだけで、治安維持に苦労するのは他の学園となんら変わりはなかった
「なるほど…ミレニアムも少々やんちゃな生徒さん達がたくさんいるんですね。」
「ええ、元気が良すぎて困ってしまうこともありますが…皆可愛い後輩達ばかりですよ。」
ナギサの言葉に同意して困ったようにため息をつくが、手のかかるほど可愛い者だとヒマリは笑みを返した
…どちらかというと貴方も問題児の側ですよ、とノアは思ったが口に出さなかった
──その後も自校で本当にあった事例を言いながら話を交わす中で、3校それぞれの代表生徒達の心は一つになる
私達、思ったよりも仲良く慣れそうな気がする──
そして先生は大人として生徒達の味方となれるよう改めて決意を固めていた
話を聞くほどに、キヴォトスの歪な社会構造を再確認する
これは、子供が社会を支えているが故の歪みだ
本来、生徒達を教え導いていく立場にあるはずの大人達がほとんど見られず
子供を騙し食い物にする、ずる賢い大人がキヴォトスには多すぎる
そんな中で困っている生徒達の助けとなれるように、シャーレの先生はあるのだと拳を握りしめた
『色んな苦労があるんですね〜…』
『同意、世知辛い世の中ですね…』
──ブラックマーケットの深部
各学園の生徒達が友好を深めながら準備を進めている一方で、光もろくに刺さない未知の場所で暗躍する一つの影があった
「…ええ、では当日は手筈通りに。報酬金は既に送付済みです。もし反故にしたら…わかっていますね?」
「…ええはい、その通りです。貴方達を見下してきた連中に一泡吹かせるチャンスです。存分に暴れてください。」
「…何も私は勝利しろと言っているのではありません。指定の場所で騒ぎを起こせばそれでいいのです。その後は早急に逃げていただいて結構。」
様々な通信機を駆使して指示を出す少女の声
逆探知をされないように、仮に情報が漏れても尻尾切りができるように計算されたプロの手口だった
「…これで準備は整いました。」
やがて連絡を終えた少女はボルトアクションライフルに短い剣がついた、独特な愛銃を手に取った
お面から光る赤い眼光が、写真に撮られたシャーレに集う生徒達を鋭く射抜いていた
「ああ、ああ…なんと嘆かわしい!!私が離れてる間に、卑しい女狐達があんなにも!
毎日の業務で日々お疲れだというのに、負担を強いられて……
…ええ、ええ、断じて許すわけには参りません…!
うふっ、うふふふっ、待っていてくださいましあなた様!
卑しい女狐供をことごとく追い払い、あなた様に平穏と癒しをお届け致しますわ!」
遂に、痺れを切らしたとある生徒が動き出す
──問題児その1、襲来
色々と問題のある各学園
もちろん良い所もありますが、あえて述べるなら…
治安が最悪のゲヘナ!
生々しい陰湿描写のあるトリニティ!
ロマンを求めて暴走しがちミレニアム!
治安が悪すぎて転生するにはよくないと言
れるブルアカ世界
生徒達の気質もそうですが、一番問題なのは悪いこと正しいことを教えてくれるはずの親とか大人がいないことだと思います
誰が悪いかって言ったら大人が悪いんです
高校生なんておふざけ大好きの遊びたい盛りだぞ!逆に大人の対応できてる一部生徒達がすごいわ!
悪い大人代表のカイザー!お前ら大人のくせに生徒に強さも人間性も負けてて恥ずかしくないのか!
自分はそんなカオスなブルアカ世界が大好きです