シャーレの地下室の秘密   作:cheese hamburg

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実は原作では明確にされていない神秘という設定
でも、コユキやジュリ、アスナやミユなどの特殊能力は何?ってなってしまうのでこの小説では神秘という言葉を多用しています

困った時に神秘って言葉が便利すぎるんですよね…



防衛部隊、初仕事

 

今日の外の世界は快晴

 

暑すぎることもなく、寒すぎることもない気候はお昼寝するにはもってこい

 

空を心地よい風が吹き抜けてゆく、絶好の小春日和

草木が煌めき、小鳥達も喜びの囀りをあげている

 

 

そして、空気も美味しく自然豊かな庭には──

 

 

 

 

紫色の怪物が跳ね回っていた

 

 

 

 

「そっちに逃げたぞ!」

 

「そこから先には進ませないでください!」

 

「うわぁ…なんかヌメヌメしてるんだけど…」

 

 

「貴方デザートが好きなんですよね!?

ほらパンケーキですよ、思う存分食べたらいかがですか!?」

 

「ふざけないでください!あんな…あんなものパンケーキではありません!

名状し難い別の何かです、あれは!」

 

 

生徒達はパンケーキ型の怪物を敷地の外へと出さないようにさすまたなどの武器を持って、悪戦苦闘を繰り返す

 

知らない人が見れば正気を奪われてしまいそうな地獄絵図

先生の実家では今、大変な騒ぎに陥っていた

 

 

「ごごご、ごめんなさーーい!!!」

 

 

「絶対に敷地の外へ逃したらダメ!全部捕まえて!」

 

 

どうしてこんなことになってしまったのか

 

ことの発端は数時間前まで遡る──

 

 

 

 

 

 

以前約束した通り、秘密を共有する名目で外の世界へと連れてこられたフウカ

その際、自分の大切な後輩も一緒に連れていきたいということで牛牧ジュリも一緒に着いてきていた

 

…また攫われてしまうことのないように護衛となる生徒達を同行させていたため道中も安心だった

 

「わあ…すごく綺麗な所ですね!」

 

「こんな自然豊かな場所に訪れることができるなんて…!」

 

そんなこんなで辿り着いた外の世界の景色に2人は感嘆の声を上げる

 

給食部にはお休みという呼べるものがほぼ存在しない以上、どこかに遠出することなんてできるはずもない

故にこんな自然豊かな場所に来られるとは夢にも思わなかったため、感動しているのだ

 

「それじゃあ私はフウカ達を簡単に案内してくるから、皆は自由にしててね。」

 

先生は初めて来る子達にここがどういった場所か教えるため、2人の元へと向かっていく

 

トキやミヤコなどはついて行きたかったが、流石に来たばかりの生徒を無視してまで絡むつもりはなかったので自重した

 

 

 

「それにしても、また随分と集まりましたね。」

 

イオリと共にゲヘナからフウカとジュリを連れてきたアコはぽつりとつぶやく

 

シャーレ当番があるといっても普段は学生らしくそれぞれの学園にいることが多いため、理由がなければ意外と鉢合わせることは少なかったりする

当番関係なしに生徒の方から会いに行けば問題ないが、治安維持や組織の長を務める生徒は次の当番までずっと会えないことなんてこともザラなのだ

 

先生が案内中のため、手持ち無沙汰なアコは他の生徒達に今回訪れた理由を聞いてみた

 

 

「無論、先生の護衛です。以前の事件、私達があの場にいたならば先生が攫われてしまうこともなかったはず…不覚です。」

「全く…常日頃から危機感が足りないんだ、先生は。あの調子じゃ、これからも様子を見に来る必要があるな…」

 

「くひひ、それもあるけど公園のテントよりも先生の家の方が居心地がいいのもあるしね〜。」

「えへへ、またこたつの中に入ろうかな…」

 

「んんっ!とにかく遊びに来たわけじゃありません。では私達は周囲の安全確認に向かいます。」

 

「ひゃう〜、その通りなんだけど…」

「毎回、いち早くここに来たがってるのはミヤコなのにね〜。」

 

浮かれる隊員達にあくまでも遊びに来たわけではないと咳払いをしてRabbit小隊は敷地内にある防衛装置の確認に行ってしまった

 

…とても真面目そうに語っていたミヤコだが、その腕にはぴょんこという可愛いウサギを抱き抱えていたため一番説得力がなかった

 

「普段は公園をキャンプ地にしてると聞きましたが…シャーレにいる時間の方が多い気がするのは、大丈夫なんですかねぇ…」

 

「まあ、一年生とはいえSRT所属になれるほどなんだし大丈夫じゃない?」

 

「…そういう貴方達もここにいて大丈夫なんですか?つい先日もゲヘナの犯罪者が暴れたばかりなのに、また騒ぎを起こされては困りますよ?」

 

今度はハスミの方からアコ達へ質問が入った

 

アコとイオリはヒナが不在だったり忙しい時に風紀委員会の中核を担う存在

日々ゲヘナの規則違反者を相手に奔走しているはずの2人がこの場にいて大丈夫なのかと聞いているのだ

 

「委員長からの命令。ゲヘナの問題児達は責任を持って捕まえておくから、先生に万が一がないよう護衛に入れってさ。」

 

「本当は私もヒナ委員長のお手伝いがしたかったのに…」

 

イオリが代わりに説明する中、アコは遠い目で空を見つめながらヒナに思いを馳せた

今日もアコのヒナコンは絶好調のようだ

 

少しして我に帰ったアコは先程のトゲのある言葉に返答を返すべくジト目を向けた

 

「それにしても正義実現委員会の委員長と副委員長が揃い踏みとは…随分とまあ、正義実現委員会は暇を持て余してるんですねぇ?

 

暇ではありませんが???こちらもナギサ様の采配による物です。」

 

青筋を立てながらも務めて冷静に返すハスミ

ハスミ達が来たのも当然護衛のためだ

 

先生を狙おうと考えるのは何もゲヘナに限った話ではない

命を狙うだけでなく、恋愛的な意味でも強行手段に出る生徒がいないとも限らない

 

何よりすぐ救助されたとはいえ、一度先生を攫うことに成功してしまっているのだ

なら私でもできるのでは?と考える者が現れてもおかしくはなかった

 

そういう甘い考えを持った愚か者達を牽制するためにも強力な存在が護衛につく必要があると考えたのだ

 

「また思い切った采配ですね…代わりの戦力は大丈夫なんです?」

 

「ええ、代わりに正義実現委員会の増援としてミカ様をこき使うと言っていましたから大丈夫でしょう。今回勝手に抜け出して騒動を起こした罰も含めて、とのことです。」

 

代わりに抜けた分の戦力としてミカを使うことで、ナギサはツルギとハスミを向かわせたのだ

 

お手柄ではあった、が強引にセイアごと飛び出していってしまったのは不味かった

 

側から見れば誘拐しているようにしか見えず、後処理の説得に大変苦労した

お咎めなしではまた私刑に走る生徒が現れるかもしれないため、皆にもわかる形で罰を与えることでミカ自身を守ることにもつながっている

 

それぞれの事情を把握したことでようやく嫌味合戦は幕を下ろした

 

 

 

「やっぱりゲヘナとトリニティは仲が悪いんだね。」

 

「あれでもだいぶ改善した方だし、あの2人はあれで良いのよ。お互い本気で排除しようと思ってるわけじゃないだろうし、問題ないわ。」

 

最後にその様子を見守っていた3人

ミレニアムからはユウカとトキ、エイミが来訪していた

 

喧嘩し始めないか警戒していたエイミだが、光輪大祭であの2人と関わったユウカが問題ないというのなら事実そうなのだろうと納得した

 

「…所でミレニアムからは2人だけ?ノアからは次回は私が向かうので、今回はユウカちゃんが行ってくださいって送り出されたんだけど。」

 

こういう時真っ先に来てそうなヒマリがいないことを珍しく思ったユウカが事情を知ってそうな2人に尋ねた

 

ノアは前述の通り、職務に忠実で真面目なチヒロはともかく、車椅子でも割とアグレッシブでお茶目なヒマリなら今回も来てるものだとばかり思っていたが…

 

「部長とチヒロ先輩は調べ物、百合園セイアさんの話を聞いてからね。」

 

「?それはC&Cから聞いたってことでしょ?前のミレニアムエキスポで交流ができたんだし。」

 

セイアに事情を聞いた際どうやって先生の元へほとんど最短で辿り着き救出したのかは、はぐらかされてしまった

 

一緒にいたミカからミレニアムの新しい友達のおかげという所まではわかったが、具体的に誰が教えてくれたのかまではわからなかった

 

最初は皆エキスポで交流の出来たC&Cの誰かだと思っていた、が

 

「失礼を承知でいいますが…C&Cの先輩方達だけでは複数のルートを予測して、逃走経路を割り出すほどの緻密な計算をできません。

ネル先輩やアスナ先輩、カリン先輩も直感で判断するタイプですから。」

 

「確かに…じゃあ一体誰が……」

 

トキの言う通りC&Cメンバーに高度な計算予測ができる者はいない

 

カリンは数学が苦手で感覚でスナイパーをやっている

アスナは直感という名の幸運、ネルは頭はキレるが難しいことを考えず身体能力に任せて強引に突破することも多い

アカネは爆発物関連のスペシャリストでこの中では一番可能性がありそうだが、果たしてあの短時間でそこまでの計算ができるだろうか

 

C&Cと深い関係にある協力者の助けによるもではないかと考えつくのは自然な事だった

 

C&Cと関係があるかつ、それほどまでの能力が持つ者と考えれば──

 

「もしかして…会長?」

 

ミレニアムの生徒会長、調月リオ

 

これから起こるであろう滅びの未来を予知し、1人で防衛都市を完成させるほどの頭脳を持った彼女ならば逃走経路を割り出すことも容易いだろう

 

「おそらくは。ヒマリ先輩が露骨に不機嫌になっていたことも含めて間違いないかと。」

 

「そういうことだったのね…はぁ、早く戻ってきてくださいよ、会長〜…」

 

というわけで今ミレニアムでは調月リオの捜索活動が行われているのだ

逃走経路を割り出したということは周辺の地形地図や監視カメラなどにアクセスして予測したということ

 

必ずあるリオの痕跡を辿り、居場所を突き止めるためヒマリとチヒロは今回お休みしていた

 

事情を全て把握したユウカは早く戻ってきて仕事してほしいとうなだれるのだった

 

 

 

 

やがてお昼の時間になると、先生主導でバーベキューの準備が始まった

その間、フウカとジュリは縁側に座ってくつろぐように言われていた

 

「えっと…本当に何もしなくていいんですか?先生」

 

「うん、今日は普段大変なフウカ達に楽をしてもらおうと思ってたからね。ほとんど切ってあるから、後は火を起こして焼くだけだよ。」

 

給食部もまた風紀委員会に負けず劣らずの多忙な組織

毎日千人単位の学生を相手に給食を作り続ける苦労は計り知れない

 

いつか倒れてしまうのではないかと不安に思っていた先生は、心身の健康のためにもこの機会に休んでほしいとお願いした

 

「休める時に休まないと体を壊してしまうよ?だから今日は普段の疲れを癒して、のんびりしてほしいな。」

 

「先生…ありがとうございます。」

 

「お言葉に甘えてゆっくり休ませてもらいますね!」

 

好きな人のために作る料理なら全然苦でもないのだが、フウカもジュリも先生の好意に甘えることにした

 

 

「そういう先生も働きすぎで倒れてしまったことがありましたよね?休んでください!」

 

「…はい。」

 

バーベキューの準備を始めてまもなく先生も休むように言われて縁側に戻された

以前倒れてしまったことを咎められては従う他なかった

 

 

 

 

 

「うーん…やっぱり私もお手伝いしに行ってもいいですか?」

 

「うん、なるべく休んで欲しいというだけで強制じゃないから。自由にして構わないよ。

ジュリは良い子だね。」

 

「そ、そんなことないですよ。その、自分にできることを精一杯やりたいだけで…では、いってきますね。」

 

ただ、それでもじっとしてるのが合わないのかジュリはそのうちお手伝いをしに行ってしまった

 

誰かの役に立てるのが嬉しいのか、ジュリは楽しそうに炭を運んだりとバーベキューの準備を手伝っている

 

「ジュリは本当に良い子だねぇ…」

 

「はい、頑張り屋さんで凄く良い子だと思います。」

 

その様子を2人は遠くから微笑ましく見つめていた

 

「最近の給食部での活動はどうだった?困ったことがあれば力になるからなんでも言ってね!」

 

「ふふ、ありがとうございます。贈り物騒動で騒ぎはありましたが、それ以外はいつも通りのゲヘナですので…大丈夫ですよ。」

 

バーベキューの準備が進む間、フウカは先生との会話を楽しんでいた

 

落ち着いて、2人きりの状態で話すことのできる機会はとても貴重だからだ

激務であることもそうだが、それに加えてゲヘナの不良達や美食研究会の被害にあってしまえば時間など取れるはずがない

 

誰の邪魔も入らない落ち着いたこの空間に夢心地だった

 

「そう言えば先生、その…以前お会いしてたワカモさんとは仲が良いんですね?」

 

話をするうちにふと、以前先生がワカモと交わしていた会話を思い出し尋ねるフウカ

 

先生は生徒に対して盲目的な所があるのでまた騙されてはいないかと危惧するフウカだったが…

 

「うん、問題児ではあるんだけど話せば聞いてくれる良い子だよ。色々とお世話してくれたし、手料理なんかも作ってもらってね。」

 

「ほ、本当ですか、先生!?」

 

予期せぬ方向から衝撃的な情報を叩き込まれ、フウカは驚愕した

 

さらに詳しく話を聞けば、一度や二度ではなく定期的に訪れては手料理を振る舞っているのだという

 

 

─それは、私が一番やりたかったのに!!

なんということだ、私以上に先生へ手料理を振る舞っている生徒がいたなんて!

 

 

呑気していたフウカもこの情報を聞いては黙っていられない

 

「そ、そんな…こうしちゃいられません…!

先生、今日は私が腕によりをかけて料理を作ります!いえ、作らせてください!!!」

 

「ええっ!?いやいや今日くらいは休んでも」

 

「そんなこと言ってられません!」

 

フウカは念の為に持ってきていたエプロンを身につけてキッチンへと向かう

 

こと料理に関しては、絶対に負けるわけには行かない

奪われた先生の胃袋を掴み直すために、闘志を燃やしながら厨房へと向かっていった

 

 

 

 

「バーベキュー用以外にも食材が行き届いている…これもワカモさんによる影響?うぐぅ…」

 

早速冷蔵庫の中を覗き込むフウカ

冷蔵庫の中には様々な食材が行き届いていた

その事実にダメージを受けつつもなんの料理を作るか思考を開始する

 

元々大人数のバーベキューを予定していたためか、具材は豊富に揃えられていた

だが、バーベキューを楽しむ以上他にメインとなる料理を作っても邪魔になってしまう

 

それを踏まえて、今最適なものは…

 

(やっぱり、今作るべきなのはデザート…!)

 

フウカは全身全霊でデザートを作ることに決めた

愛情たっぷりの主食を作るのはまた次の機会にすればいい

 

今は自身のだし得る最高のデザートを作って先生を夢中にさせなければ

 

「フウカ先輩!」

 

「ジュリ?」

 

そんな決意を固めていたフウカ

そこに彼女を尊敬するジュリが強い瞳で声をかける

 

「私にも手伝わせてください!」

 

フウカが突如動き出したことに疑問を持ったジュリは先生から話を聞いた

何が起こったかを理解して居ても立っても居られずに駆けつけてきたのだ

 

彼女もまた美味しい料理を先生に食べてもらいたいと願う生徒の1人

 

いつか完璧な料理を振る舞う前に先生を取られてしまっては元も子もないため、給食部が先生の胃袋を掴まなければならない

そう思い、フウカの手伝いを申し出たのだ

 

「…そうね、カットするのをお願いしてもいい?」

 

「!…はい、わかりました!」

 

以前経験したアルバイトの時、何個かは失敗することなく無事に作ることができていた

それに下拵えをするだけなら問題はないためフウカはジュリの言葉に甘えることにした

 

 

(大丈夫、いつも通りに…いやだめ、いつも以上に気合いを入れてやらないと…!)

 

フルーツをカットする中でそんなことを考えるジュリ

今のジュリは良くも悪くも気合いが入りすぎていた

 

 

─ただの下拵えと思わず、完成させるくらいの気持ちで完璧に

もしかしてフルーツ盛り合わせくらいなら大丈夫かも、外の世界の食べ物だし…

 

 

そんな思いを込め過ぎてしまった結果、彼女の持つ特殊な力が働き始めてしまう

 

…気がついた時には、紫色の触手が彼女の手を離れてうねり始めていた

 

 

 

 

 

「ジュリ、そっちの方はどう?…ってジュリ!?」

 

「ごごご、ごめんなさーい!!!外の世界の食べ物で作ってみたら、もしかしたら大丈夫かもしれないと思ってぇ…!!」

 

「言ってる場合じゃない!早く止めないと!」

 

慌てて止めようとしたが時すでに遅く──

 

 

 

 

 

 

そんなことが起きているとは梅雨知らず

突如動き始めた給食部の2人を不思議に思った生徒達が先生に詰め寄っていた

 

「先生、何があったんですか?」

 

「えーっと、私もよくわからないんだけど…話をしていたら急に料理を作るって2人が…」

 

事情を説明しようとした先生の言葉が途中で遮られる

 

家の中から悲鳴と何かが暴れるような音が聞こえてきたからだ

 

 

「…ねぇ、アコちゃん。嫌な予感がするんだけど。」

 

「奇遇ですねイオリ。私もですよ。」

 

 

イオリとアコは半目になりながら、事の経緯を見守る

 

家の中から見覚えのある触手が見えた瞬間、2人は戦闘態勢へと移った

 

「あー…やっぱりですか!総員戦闘準備です!武器の用意をしてください!」

 

「ちょっ、ちょっと!?急にどうしたのよ!?」

 

「先生はこっちにきて!他の人達も飛び出してくる奴に備えて!」

 

「と、飛び出してくるって何が…?」

 

アコの指示で倉庫に用意していた護身具が持ち出されていく

事情を知らない生徒達は疑問の声をあげたが、その疑問はすぐに解消されることとなる

 

 

緑色の汁を撒き散らす、丸い胴体に触手を生やした紫色の怪物が姿を現したからだ

 

 

「な、何よあの化け物はぁああっ!?」

 

見ただけで正気を奪われそうなパンケーキ型の怪物、パンちゃんにユウカは悲鳴をあげた

 

外の世界の食べ物でもジュリの神秘は働いてしまったらしい

しかし外の世界の食べ物でできているせいか少しサイズが小さかったり、吹き出す汁の量が少なかった

 

それでも脅威であることに変わりなく、迅速に対処しなければならない相手だ

 

「っ!ツルギ、お願い!」

 

「了解ぃ… 戦闘だぁああっ!!きゃははははは!!!」

 

先生はこの場において最も強い生徒へ助けを求める

未知の怪物相手ではあったが、ツルギはその声に応えてくれた

雄叫びを上げながら躊躇なくパンちゃんの群れへと突っ込んでいく

 

瞬く間に給食部の2人にまとわりつく個体を蹴散らして先生達の方へと投げ飛ばして救助した

 

「ひゃあっ!」「ご、ごめんなさい…助かりました…」

 

「あの群れはツルギと私がなんとかします!サポートするので、存分に暴れてくださいツルギ!」

 

「我々は敷地の外に出ないよう、1匹残らず仕留めましょう。必ず仕留めきって見せます、パーフェクトメイドの名にかけて。」

 

多くはツルギが抑えてくれたが、一部の個体は既に庭へと出てしまっている

 

こうしてパンちゃんの大半はツルギが相手し、残りの生徒達が飛び出したパンちゃんを逃がさないように庭中を駆け回ることとなる

 

 

 

これは先生の事を純粋に慕っていたが故に起きてしまった事故だった

 

フウカもジュリも無理に料理しようとは考えておらず、仮に料理を始めてもいつもの下拵えだけなら何も問題はなかった

負けじと気持ちがこもり過ぎてしまった結果、パンちゃんが誕生してしまった

 

強いて言うならば口を滑らせて、無意識に焚き付けるような真似をしてしまった先生が悪い

先生が余計な事を言わなければ何事もなく終わっていたはずなのだ

 

 

そういうわけで現在、庭にパンちゃんが大量発生するという大惨事になってしまったのだ

 

 

 

 

 

─パンちゃんと格闘し続けることすでに数十分

普段使い慣れている銃がないため、パンちゃん退治に生徒達は苦労していた

 

フウカとジュリはこの中では戦闘力が低いため、ぴょん子を連れて離れている

 

 

「まいったな…こいつら中々しぶといぞ。」

 

「あれ?気のせいならいいんだけど、なんか増えてない?」

 

「いえ、気のせいではありませんRabbit3。少しずつですが、増殖しています…!」

 

「ひ、ひぇええ〜…!」

 

パンちゃんと一言に言ってもその姿形は様々だ

最初から巨大なものだったり、時間経過で成長したりと多種多様な姿をしている

今回は増殖型らしく、少しずつ数を増やしていた

 

どこからエネルギーを得ているのかというと、厄介なことにパンちゃんは植木鉢といった草木を食べる姿が確認されている

そのため自然豊かな庭の草を栄養源にしているようだ

 

 

 

そんな中イオリとアコ、先生は戦う中であることに気づいていた

 

「アコちゃん、先生気づいてる?」

 

「パンちゃんについて、だよね?」

 

「ええ、以前戦った個体よりも明らかに弱いですね。」

 

「え…これ、キヴォトスに出た時はもっと酷かったの?」

 

すでに地獄のような光景なのだが、以前はこれよりも酷かったのかと隣で聞いてたエイミがドン引きする

 

そう、前にゲヘナで対処したことのある個体よりも明らかに弱いのだ

 

「キヴォトスではなく外の世界で生まれたためか、それとも外の世界の食べ物を元に作られたせいかはわかりませんが好都合です。

この強さなら強引に仕掛けても押し切れるかと。」

 

「よし…じゃあゴリ押しでも問題ないってことだな!」

 

パンちゃんは未知の能力を持っている可能性があったため、攻めあぐねていたがいつもより弱い個体なら問題ないだろう

 

自慢の健脚で翻弄し蹴散らすべく、イオリは軽く跳ねて手首を鳴らす

 

「囲まれないように気をつけてイオリ!アコは援護を!」

 

「わかってる!指揮をお願い先生!」

「くれぐれも気をつけなさいイオリ!」

 

先生の指揮に従い、イオリは勢いよく飛び出した

パンちゃんの攻撃を華麗に躱して、鋭く攻撃していく

 

イオリは近接戦闘にも明るい

普段スナイパーライフルを使っていながらも前線へと飛び出していき、ストックの部分で直接攻撃も行うほどだ

 

故に銃がない状態でも、問題なく戦うことができていた

 

「流石はあの空崎ヒナさんが率いるゲヘナ風紀委員会…」

 

「くそっ、私達も化け物相手の戦い方を教本で学んでおけば…!」

 

「いや〜、そんな教本はないでしょ…」

 

見事な戦いっぷりにRabbit小隊は舌を巻いた

 

Rabbit小隊も近接格闘術の心得はある

しかし、それは対人間相手の物であり得体の知れない化け物相手の戦闘訓練など経験していない

下手に絞技などを繰り出そうものなら逆に締め上げられてしまいそうだ

 

今までの教えが役に立たない以上独学でなんとかするしかないこともあり攻めあぐねていた

 

「み、皆…護身具の中にキヴォトスで使われてる水鉄砲があったよ。さすまたや警棒よりは私たちに合ってるんじゃないかな?」

 

「水鉄砲か…確かにこういう方があってるかも、な!」

 

ミユからもらった水鉄砲を放ち、パンちゃんを撃ち抜く

いい感じの手応えにRabbit小隊は水鉄砲での制圧射撃を試みた

 

だが、ここで思わぬアクシデントが発生する

 

「んなっ!?」

 

「水を吸って、膨れ上がった!?」

 

なんと水鉄砲の当たった一部のパンちゃんが巨大化したのだ

水を吸ったことでパワーアップしてしまったのか先ほどよりも強くうねり始める

触手がRabbit小隊の方向を向いたその時

 

「させない!…動きは止めた、トキ!」

 

「了解、仕留めます!」

 

膨れ上がったパンちゃんが暴れ出そうとしたその瞬間、エイミが動きを止めトキが上から強烈な一撃を叩き込んだ

 

見事なコンビネーションを前に膨張パンちゃんはあっさりと制圧された

 

「た、助かりました。」

 

「いえ、この程度パーフェクトメイドには朝飯前ですので。」

 

助けたRabbit小隊に丁寧にお辞儀して見せるトキ

 

あれほど激しく動き、至近距離まで接近したにも関わらずメイド服に汚れ一つつけていないのは見事だった

 

「普段変わった言動してるけどちゃんと強いんだよ、トキは。」

 

「変わった格好のエイミも人のことは言えないのでは?」

 

「??私の格好は普通だけど?」

 

ズレた会話をしながらも確実にパンちゃんを仕留めていく2人

素人から見てもわかるほど2人の動きは洗練されている

 

普段とのギャップにRabbit小隊は再び驚かされていた

 

「驚くのも無理ないわよね。あの2人はミレニアムの全校生徒の中からリオ会長直々に選ばれた選りすぐりのエリートだもの。普段の姿はちょっとアレだけど、実力は本物よ。」

 

そんなRabbit小隊にユウカがなぜあれほど強いのかを説明する

三大校のうちの一つであるミレニアム学園は当然生徒の数が多い

それほどの数の中から選ばれたということは、それだけトキとエイミには素質や才能があったということ

 

同じ一年生として思う所はあるが、確かにそういった理由があるのなら納得せざるを得なかった

 

「そ、そういうユウカさんもお強いですね…?」

 

あの2人については納得したが、目の前のユウカも戦闘慣れしているように見える

 

生徒会に属する会計担当なのに、と理由を聞くとユウカは苦笑いを浮かべた

 

「あはは…私はこういった戦場を経験してるうちに自然とね…いや、でも冷静に考えるとおかしいわね。私ミレニアムで結構重要な役職についてると思うんだけど…なんで最前線に立たされてるのかしら…

 

主に廃墟となった遊園地に駆り出された過去を思い出してユウカ自身も何故だろうと首を捻った

 

 

 

─確かにユウカは本人が思っている以上にミレニアムにとって必要な人物なのだが、シャーレにとっても変えようのない存在なので致し方なかった

平均並かそれ以上の戦闘力があって、事務や計算能力が高くて、生徒会組織の重要役職についている上に性格も良好でどんな生徒とも基本仲良くやれる子は貴重だから本当に仕方ない

 

 

 

 

徐々に適応してきた各学校の生徒達

その状況を見てミヤコは少し焦りが生まれる

 

Rabbit小隊は今の所あまり良いところがないからだ

 

(やはり飛び道具が欲しいですね…でも、水鉄砲を使うわけにも行きません…そうなると、やはり…)

 

防衛するために来ている以上、これ以上遅れをとるわけにはいかない

自分達も立派な戦力となることを証明しなくてはならない

 

ミヤコは尊敬する先輩達の言葉を思い出す──

 

 

 

─時には劣悪な環境で粗悪な武器を使わざるを得ない状況に陥ることもある

そんな時に、武器の性能が悪かったから負けました、などという言い訳は通用しない

どんな状況であろうとも我々は必ず任務を遂行しなくてはならない

 

考えを張り巡らせろ、使えるものはなんでも使え

 

 

 

「先生!こちらお借りします!」

 

「え、いいけどエアガンだよ!?」

 

先輩からの教えを胸にミヤコはエアガンを手に取った

 

(おもちゃといえどこれが銃であることに変わりはありません。

ならば、いつもの武器を扱う時と同じように力を込めて撃てば…!!)

 

力を込めるように引き金を引く

その瞬間、およそエアガンから放たれたとは思えない衝撃音を持って、弾が発射された

 

込められていた弾が弾であったため、パンちゃんを撃ち抜くことはかなわなかったが、それでも気絶させるには十分すぎるほどの威力だった

 

「おおっ!?」「ミヤコちゃんすごい!」

 

「やはり、思った通りです…!」

 

ミヤコは思惑通りにいったことに拳を握りしめた

 

形は違えど、銃を使った戦い方ができるようになったことは大きい

Rabbit小隊は調子を取り戻し、今までの遅れを取り返すべく動き始めた

 

 

 

「…彼女がやってみせたのは以前ヒナ委員長がやっていたことと同じです!今こそ、委員長のような弾幕を撃ちなさいイオリ!」

 

「無茶振りやめてよアコちゃん!?」

 

その裏で、アコからそんなことを言われながらエアガンを渡されたイオリは悲鳴を上げた

…ビームとみまごうほどの紫色の弾幕を放つことができるのは空崎ヒナだけである

 

 

 

 

 

ミヤコの発見と活躍により、生徒達は勢いづいた

残りのパンちゃん達を瞬く間に片付けていく

 

気がつけばあれほどパンちゃん達は1匹残らず姿を消していた

 

『庭の方のパンちゃん、全滅を確認しました!』

 

「皆お疲れ様!パンちゃんは無事倒しきったみたいだよ!」

 

「でも、家の方にはまだたくさんのパンちゃんが残っています…!」

 

庭内にいたパンちゃんは全員制圧したが、まだ家付近にはツルギ達が請け負った群れがいる

 

急いでツルギ達の元へと向かった、が

 

 

「無駄ダァ!無駄無駄ァ!かぁははははは!!!」

 

 

「ふぅ…ああ、お疲れ様でしたみなさん。お怪我はありませんでしたか?」

 

 

ハスミは倒したパンちゃんを片付けており、ツルギは大量に積み上がったパンちゃん達の上で勝利の笑い声をあげていた

緑色の液を返り血のように浴びた姿は完全にホラーゲームの敵役のようであった

 

 

「残りはツルギ達が倒してくれたみたい。流石だね。」

 

「むぅ…ヒナ委員長に負けず劣らずの実力…トリニティの戦略兵器の名は伊達ではないということですか。」

 

「ひゃ、ひゃう〜…もう全部あの人だけでいいんじゃあ…」

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうツルギ!本当に助かったよ!」

 

「ひゃっ、先生!?い、いえそのあ、当たり前のことをしたまでですので…きひひひひひ…」

 

「戦闘中とキャラ違いすぎない…?二重人格なの…?」

 

先生が来ると先ほどまでのバーサーカーっぷりは鳴りを顰めてとても大人しくなるツルギ

あまりのキャラ崩壊っぷりにツルギをよく知らない生徒達は驚きを隠せなかった

 

 

今は皆で増えてしまったパンちゃん達を一箇所に集めて処理している

 

 

「一つ気になったんだけどさ〜…これ、パンケーキってことは食べられるんだよね?くひひ、人を軽く気絶させるほどの劇物…ゾクゾクしてきちゃうなぁ〜…」

 

そんな中、ひっそりとモエの破滅願望が顔をのぞかせた

死ぬことはないが、死ぬかと思うほどにまずい味となれば試してみたくもなる

 

こっそりと倒したパンちゃんを1体、手に取った

 

「あっ、待てやめろモエ!バカなことは…」

 

「もぐもぐ…むぐぅっ!!?」

 

 

「モエーー!!?」

 

 

その一歩手前でようやくサキが気づいたが時すでに遅し

仲間の忠告も聞かず一口かじり咀嚼した瞬間、口の中に広がるとんでもない不味さにモエの意識は遠のいていき───

 

 

 

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激登!! SRT 式登頂訓練

 

番外編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…あれ、どこ?ここ?

 

 

 

あ〜、さっきまで何してたんだっけ?思い出せない…

 

 

 

見たことあるような、ないような…変な場所

 

 

 

うわ、何あの化け物

避けて進んだ方がよさそう

 

 

 

結構来たけど…はぁはぁ、ここでわざと落ちたらまた最初からかな〜…それも破滅的だよね〜…

 

 

 

ん、あれ?ここ、先生の家だ

でも、先生の家ってこんなに高かったっけ?

 

 

 

よくわかんないけど、登ってみればわかるかな───

 

 

 

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「モエー!!モエーーーッ!!?」

 

「モエちゃんが口から泡を吹いたまま、起きないよ…!!?」

 

パンちゃんを口にした途端、泡を吹いて倒れたモエに現場は騒然としていた

 

体を揺すり、大声で呼びかけるが意識が戻る気配は一向にないからだ

 

「しっかりしろー!医者ッ!誰か医者ーッ!!」

 

「待ってて、今医療関係者を呼んでくるから!

アロナ!転送装置起動して!」

 

今までの経験から命に別状はないだろうが、介抱しなくては

しかし、こうなってはもう素人にはどうしようもない

 

一刻も早く医療関係者を呼んできて診察してもらったほうがいいだろう

先生はアロナにすぐキヴォトスへ戻る準備をするようお願いしたが…

 

『はい!もう既に起動して…あれれ?誰かが通った後が!?』

 

「救護騎士団です!患者はどこですか!?」

 

「ありがとうございます!仲間を診てくださ…ちょっと待ってください。今どこから現れたんですか!?」

 

先生がセリナを呼びに行こうと装置を起動させ駆け出した瞬間、既にセリナはそこにいた

驚くRabbit小隊を気にもせず、セリナはモエの診察を開始する

 

 

─なぜ、心の中で思い浮かべただけですぐそばにいたのかって?

それは先生がセリナのことを思う時、セリナもまた先生のことを思っているからなのです

 

 

 

「あんなものをっ!あなたは食べろと言っていたのですか!?」

 

そしてそんな惨状を見たハスミはぷるぷると震えながらアコに怒鳴り散らした

 

素人から見てもやばすぎる症状、抗議せずにいられるはずがない

 

「耳元でうるさいですね!別に死にはしませんよ。私も食らったことありますけど、不味すぎて気絶するだけでしたし。」

 

「ああなるとわかっていたのならなおのこと悪いでしょう!?」

 

なおも怒りの収まらないハスミにアコは大袈裟にため息をついてみせた

何をそこまで騒いでいるのかという雰囲気を隠そうともせずに口を開く

 

「騒がしい上におおげさですねぇ…倒れて病院送りになるなんて、治安維持してたらよくあることでしょうが。

 

「そういうところですよ、ゲヘナ。」

 

あっけからんと当然のように言い放つアコ

 

当たり前だが、病院送りにされてしまうことを決して日常に組み込んではいけない

やはりゲヘナは危険な場所だとハスミは再認識した

 

 

 

その後、モエは無事に意識を取り戻した

そして皆で倒したパンちゃん達を1匹残らず回収し、万が一にも逃げてないか確認を行った

 

ようやく事件を解決できたと判断した所で、フウカとジュリは自発的に正座していた

 

「本当に申し訳ありませんでした…」

 

「いえ、フウカ先輩は何も悪くないんです!」

 

2人は平身低頭して謝った

出禁になっても仕方のないことだと覚悟を決めている

 

迷惑をかけてしまったことを言い訳せずに誠心誠意謝らなくてはならない

 

「そんなに落ち込まなくて大丈夫だよ、2人とも。私達は気にしていないから!ね、皆?」

 

先生が他の皆にも聞いてみれば、揃って気にしていないと答えてくれた

そんな姿を見せられて怒るほど心の狭い生徒達はいない

 

 

「まあ、いつものことですから気にしてないですよ。結果的に見れば、いい訓練になりましたし。」

 

「そうだな、課題や反省点も見えた。あの規則違反者供相手にぶっつけ本番でやるよりはよっぽどいい。」

 

(…むしろ料理させて失敗したものを武器として使えばいいのでは?外の世界に問題児供が来たら無理やり食べさせて…」

 

「考えてることが声に出てるし、流石にそれはダメだと思うよ。アコちゃん。」

 

ゲヘナ組はカラッとしており、何も気にしていなかった

起きた事件をいちいち気にしていたらゲヘナではやっていけない

 

解決したのならもうそれ以上やることはないのだから

 

 

「もしも、たらればを考えるのは非効率的。何事もなく無事に解決したんだからそれで十分。何も気にすることはないよ」

 

「同意です。この程度の騒ぎ、ミレニアムではよくあることですので。ドローンがパンちゃんに変わったくらいです。」

 

(今回はノアがいなくて良かったわ。あのクリーチャーがずっと頭の中に残り続けるのは酷だし…うぅっ、夢に出そう…)

 

 

ミレニアム組は皆、気にもとめていなかった

ミレニアムでも学園が転覆しかねない事態になることは珍しくなく、それが悪意ではなく善意によるものであることが多いからだ

 

よかれと思って余計な機能を付け足しまくるエンジニア部だったり、軽い気持ちで入ったら体を壊しかねない運動をさせられるトレーニング部だったりと数え始めたらきりがない

 

そういった事態の後始末に比べればこの程度まだまだ可愛いものである

 

 

「こ、このデザート…すごく美味い!?」

 

「い、いいなぁ、ゲヘナの給食は…」

 

「お口直しにちょうどいいや。こんなスイーツ次はいつ食べられるかわからないもんね〜。」

 

「兵站の質は兵士の質に関わる…確かに納得です。Rabbit小隊ももう少し質のいい物を用意すべきでしょうか…」

 

 

Rabbit小隊はフウカの出した料理がとても美味しかったため、全てを許してしまった

普段売れ残り弁当などを食べている彼女達にとって、甘露なスイーツを食べる機会など滅多にない

 

甘いスイーツの数々に年相応の女子高生らしく喜び舞い上がっていた

 

 

「せ、先生が許されたのなら、私から特に言うことはありません。」

 

「必要以上に謝る必要はありません。元は善意から起きてしまった事故ならば、私も責めるつもりはありませんから。

…所で失礼ですが、本当にゲヘナ出身の方なのですか?」

 

「あはは…私も変わった症例を見れて、勉強になった部分もあるので大丈夫です。いついかなる時も、何があっても対応できるよう精進しないと…」

 

トリニティ組も言いたいことはあったが、悪意を持ってやったことではないことはわかっている

善意で起きてしまった事故を責めるつもりはない

 

何より普通に会話することができている時点でもう評価が高い

ゲヘナの犯罪者達は会話できてるように見えて、自分の主張を押し通すことしか考えていないため会話が成立していない

だが、この2人はちゃんと受け答えできている

自身の非を認めて謝っている姿に感動すら覚えていた

 

 

─先生の言う通り、誰も必要以上に怒っておらず許してくれていた

それに給食部の心配を他所に出されたデザートは皆好評だった

そのデザートに添えられていたのは全てジュリが下拵えと思って切り揃えた果物達である

 

フウカが給食を準備できるのもジュリの下拵えがあってこそ

 

それに最近は少しずつだが、成功することも増えてきているのだ

めげずに頑張ればいつか完璧な料理が作れるようになると先生は信じている

 

今度はすぐ対処できるよう、誰かに見守られながら失敗を重ねながら少しずつ成長していけばいい

 

 

「ほら、大丈夫だったでしょ?

また何かあったら必ず助けになることを約束するよ。だから、君の好きな事を諦めなくていいんだよジュリ。フウカも美味しいデザートをありがとう!」

 

 

「…はい!ありがとうございます、みなさん!」

 

「ふふ、お口にあったようで良かったです!」

 

 

その後の歓迎会でトラブルが起こることはなく無事成功し、新たな仲間が防衛部隊に加わったのだった

 

 

 

 

 

 

「所でどうしてフウカさんはわざわざ料理を?

慰労目的もあるのだから、今日くらい休んでも良かったのに…」

 

「そ、それは…ワカモさんが先生のために料理を作りにきてると聞いて、私も負けてられないと思ったから…」

 

 

「「「は?」」」

 

 

「あれ、どうしてまた不穏な空気に?…もしかしてやばい感じ…?」

 

 

『バリアの準備をしておきます…』

 

『先生…頑張ってください…!』

 





エアガンの威力が上がった理由
キヴォトスでは同じ銃でも使い手によってその威力が変わると思います
例えばヒナの愛銃、終幕 デストロイヤーを一般生徒に渡してもヒナのように強くはなれないでしょう

生徒=魔法使い 神秘=魔法や魔力 銃=杖
のイメージ
エアガンは杖によく似ていたため、うまく神秘がのりました

幕間のイチカのお話のように神秘を込めず、普通に撃つ分には全く問題ありません
ただ力を込めるような意識で撃つと威力が上がってしまう…という設定です
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