シャーレの地下室の秘密   作:cheese hamburg

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えっ!?FOX小隊が地下で活動するんですか!?(原作沿いじゃないし、よっぽどのことがない限り公式から刺されることないよね。と呑気してた筆者)




─ゲヘナ学園、牢屋

「やぁやぁ、いつぞやの議事堂作りの時以来だなぁ議長殿!出してくれるのは嬉しいが、これはどういった風の吹き回しかな?」

「キキッ、そう警戒するな。なに、お前達には一つ依頼したいことがあったからな?」

「依頼したいこと…ふむ、詳しく話しを聞かせてもらおうじゃないか?」



「…ほ〜う?なるほどなるほどそういう腹づもりか。いいだろう乗った!お望み通り、楽しい温泉開発を始めようじゃないか!」

「ああ、遠慮せず思う存分開発するといい。思う存分、あの場所でな?キキキキッ!」



大騒動

 

『こちらクロノススクール、アイドルレポーターの川流シノンです!サンクトゥムタワーでは連日抗議のデモ活動が行われています!原因はやはりアビドス高等学校の行った【プレゼントはわ♡た♡し♡】作戦によるものであり、生徒達の抑えきれない不満が爆発しています!

ネットからも【卑しい!卑しい〜!】

【反吐が出る】【FATALITY…】

【生徒自身がプレゼントである必要がない、なぜ生徒自身がプレゼントになるんですか?これを許可した連邦生徒会は本当に正式な運営ですか?】といった非難の声が上がっており──』

 

 

 

「うへ〜…思った以上に大事になっちゃったねぇ…ごめんね先生。」

 

キヴォトスを震撼させた爆弾ニュースから早数週間

d.u地区では連日、大変な騒ぎになっていた

理由はもちろん納得のいかなかった生徒達による抗議やデモ活動である

 

テレビ中継の画面にはレッドウィンターの安守ミノリを筆頭にデモ活動を行う生徒達が映っていた

 

─理屈は理解できても、感情は別のもの

実質アビドス一人勝ち状態に納得できる生徒達は少なかった

 

「私の方は大丈夫、元々覚悟してたことだしね。

それよりもアビドスの方は大丈夫?」

 

「うへ、心配してくれてありがと〜。でも問題ないよ、アビドス校舎までわざわざ来るほどのガッツを持った子はなかなかいないからね〜。」

 

先生はキヴォトスに来てから騒動のない日なんてほとんどなかったため、気にしていなかった

それよりもこの調子だとアビドスの方が大変なことになっているのではないかと心配していたのだが…それは杞憂だった

 

理由としては、まずシンプルに遠いこと

 

かつてはキヴォトス有数のマンモス校であったアビドスは自治区がとても広い

駅からアビドス高校まで行くだけでとても時間がかかってしまうのだ

 

その上、歩き回っているうちになぜか発生する砂嵐によって靴も服も砂まみれになる分不快度も非常に高い

これだけで綺麗好きな生徒、寒冷地に住む生徒やお嬢様などは進む気をなくしてしまう

 

 

次にアビドスを抜けるには知識がいること

 

アビドス自治区は前述の通り広すぎて、現地に住んでいるホシノ達でさえ知らないことが多い

現地民でさえ知らないことも多い砂漠の地で、なんの知識も持たない者が訪れるのは自殺行為だ

現に先生も初めてアビドスに行った時は普通に遭難した

 

例外としてアビドスで悪さを働く不良生徒達がいるが…彼女達はカイザーに大いに助けられたが故であった

 

─かつてカイザーは広大なアビドスの地から超兵器、ウトナピシュティムの本船を見つけ出すべく隅々までマッピングを行っていた

自治区の土地を買い占めていたこともあり、アビドス自治区内についてとても詳しいのだ

 

学のない不良生徒が度々アビドスへ来れるのはカイザーが原因であり、そうでなければ街までならまだしも学校まで辿り着くのは難しい

アビドスへ侵攻したヘルメット団、およびに便利屋68が迷わなかったのはカイザーによるバックアップがあったためである

 

その他にたどり着けたものといえば、情報部から情報を得たゲヘナ風紀委員会やナギサが主導したトリニティの砲撃隊など大きな組織ばかり

ただの一般生徒達がアビドスを迷わず進んで校舎へとたどり着くことができるはずもなく、遭難して救助される事例が相次いだ

 

それでもなんとかたどり着き、暴れようとした生徒もいたが…覆面をつけた謎の黒いドレス少女によって即座に鎮圧されていたという

 

 

結果的に良くも悪くも砂嵐によって天然の要塞と化したアビドス

意気揚々と抗議に向かおうとしたが辿り着くことができず、諦めて帰らざるを得ない生徒達が後を絶たなかった

 

故に鬱憤の治らない生徒達は、その矛先を連邦生徒会へと向けてしまった

D.U地区ならば行きやすいし、暑くもなければ砂もなくて過ごしやすい

デモをするならこちらの方が断然楽なのである

 

そういったこともあって、アビドスではそれほど騒ぎにならずD.U地区の方で大きな騒ぎになってしまっているのだった

 

 

ちなみにシャーレの建物にも突っ込んでくる生徒がいないわけではない

先生も知らなかった、という事実があるため抗議しにくる生徒は少ないが…アピールのためだったり、直接ホシノに喧嘩を売りに来たりする生徒もいたりする

 

 

「失礼いたします!!」

 

 

例えばそう、先生のことを慕う災厄の狐だったりが襲撃をしかけてくるのも珍しい話ではなかった

 

「ふふふ、舐めた真似をしてくれましたねアビドス…やはり海で出会ったあの時に念入りに潰しておくべきでした…!」

 

「うへ〜、どちら様だっけ?見た目的に百鬼夜行の人だと思うんだけど…」

 

「このお面に見覚えがないとは言わせませんよ…!」

 

今回のワカモは普段の衣装ではなく、お忍びでよく着る着物で来ていたためホシノは気が付かなかった

 

その反応も織り込み済みのワカモは懐からいつものお面を見せつける

 

「あ〜、誰かと思えばあの時の狐ちゃんかぁ。…やるなら外でやろうね。」

 

「待って待って、落ち着いて2人とも!!」

 

ようやく正体に気づくと、ホシノは流れるような動きで武器を手に持った

 

ブチギレワカモに売られた喧嘩は買うホシノ

シャーレ前で決戦が始まらないよう先生は朝から翻弄されるのだった

 

 

 

 

 

─ゲヘナ学園万魔殿の執務室

 

「キキキ…キキキキ……!」

 

ゲヘナ学園の生徒会長、羽沼マコトは上機嫌だった

何度も時計を確認しては意味深な笑い声をあげている

 

これには部屋で仕事するイロハも流石に声をかけざるをえなかった

 

「なんですかマコト先輩?ずっとニヤニヤ笑い続けて…何かいいことでもあったんです?」

 

「ああ、すまんすまん。

いいことか…あったのではなく、これから起こることが嬉しくてな。

お、その顔は聞きたくてしょうがないという顔だなイロハ〜?」

 

「……ええ、そうですね。気になりますね。」

 

イラっとしながらも続きを促すイロハ

そうしなければずっと面倒な態度が続くからだ

ここで聞いておかなければ何度も煽るように話しかけてくることは間違いない

 

そんなイロハの反応にも気づかないくらい上機嫌なマコトは自らの計画を話し始めた──

 

 

 

 

 

場所は変わって、トリニティ

 

「ナギサ様、ご報告します。」

 

「どうかしましたか?」

 

ティーパーティーの執務室

いつものように執務を行なっているナギサの元へ諜報部隊から不穏な影がシャーレに迫っていると連絡が入っていた

 

制服、腰から生えた尻尾などの見た目から推測するにその正体はゲヘナ学園の生徒のようだ

 

「えぇ〜、またゲヘナの子〜?」

 

「まあ…ゲヘナはその校風故にトラブルメーカーが多いと聞くからね。特段珍しい話でもないだろう。それより珍しいのは…」

 

「あのマコト議長がわざわざこちらに釘を刺してきたこと、ですね。」

 

それに加えてもう一つ、ゲヘナ学園の生徒会長マコトからも連絡が入っていた

マコトから送られてきた内容には、ゲヘナ風紀委員会が責任を持って対処する。トリニティの手出しは無用、という旨が書かれていた

 

風紀委員会を毛嫌いしているマコトがわざわざそれを伝えてきたりと怪しいことこの上ない

 

「念のため、ヒナさんに連絡してみましょうか…」

 

ナギサはすぐにモモトークを起動して、風紀委員会へと連絡をとった─

 

 

 

 

 

 

さらに場所は変わって、ゲヘナ自治区のとある空き地

 

件の風紀委員会達は大規模訓練の真っ最中だった

 

「それにしても、どういう風の吹き回しだろうな。」

 

「ええ、まさかあのマコト議長が訓練場を用意してくれるとは思いませんでした。」

 

いつも邪魔してくる万魔殿が訓練場を貸し出すなど妙に協力的なことに違和感を覚えつつも、訓練を続ける風紀委員達

 

毎日多忙な日々を過ごす風紀委員会にとって、訓練を行える機会は非常に貴重なものだ

故に多少の怪しさを覚えても、訓練をしないという選択肢はなかった

 

「た、大変です委員長!」

 

その時、モモトークに届いた連絡を見たチナツが血相を変えて走ってくる

それはトリニティのナギサから送られてきた情報だった

 

─かつてエデン条約のためにヒナがナギサと交流していたことを風紀委員会達は知っているため送り主に対する動揺はなかった

 

だが、そこに書かれていた内容を確認した風紀委員会達は大きく動揺した

 

「おい、この規模と特徴は温泉開発部じゃないか!?」

 

「ど、独房に待機していた風紀委員が倒れているのを発見したとの連絡が!」

 

「何より私達はそんな連絡出していないわ…!」

 

捕らえていたはずの温泉開発部がいないこと、トリニティに手出し無用の連絡などどれもこれも風紀委員会には心当たりがない

 

この瞬間、全てを理解した天雨アコは怨嗟の声を上げた

 

 

「あ、あの狸女〜〜〜ッッッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

「利害の一致…?どこに利があるんです?」

 

イロハにはこれのどこに万魔殿にとって利があるのかわからなかった

 

温泉開発部は手綱を握れるような存在では決してない

結局解放された温泉開発部がいつものように暴れ、せっかく送った記念品も壊されてしまうだけである

 

シャーレの建物と共に自身の像が壊れてしまうことに一体なんのメリットがあるのか…

 

「利害は一致してるとも。ああ、作ればいい。

シャーレ敷地内で存分にな?」

 

イロハの疑問に対しマコトは不敵に笑いながら言葉を返す

 

─マコトはこのキヴォトスに再び自らの存在感を示そうと企んでいた

自身の姿を彩った像は確かにインパクトがあった

 

だがそれはホシノの【プレゼントは私♡】作戦という奇策を前にあっさりと敗れ去った

 

渾身のマコト様像が埋もれてしまった以上、新たなアピールの機会を生み出す必要がある

そのために温泉開発部を暴れさせるのだという

 

「大事なのは、そのホシノという生徒が1人だけでは守りきれませんでしたという事実なのだ。

専属生徒でありながら、大事な時に戦力不足とあらば周りからの評価も落ちるだろう。

それを認可した連邦生徒会も同様に、な?」

 

「マコト先輩、まさか…」

 

同じことを繰り返した所で二番煎じになってしまうだけ

ならば、話題の中心にある人物を引き摺り下ろすのみ

 

ホシノという生徒が強いことは諜報部の情報からも知っている

だが、かつてのギラギラしていた1年の頃に比べれば随分と腑抜けた姿が目立つという

ならば、温泉開発部の数の暴力に昔ほど対応できるか怪しいだろう

ヒナ憎しではあるが、ヒナの実力を理解しているため彼女が負傷していたのも雷帝の遺産など別の要因によるものが大きいだろうとマコトは推測していた

 

専属生徒という立場を真っ当できなければ、バッシングは免れず失脚させることは用意だと考えた

 

「キキッ!そこに颯爽と我らが助けに現れれば周囲と先生からの評価は鰻登り!シャーレ専属を申し出た生徒は壊されたシャーレを前にあまりにも無力であった事が知れ渡る!

さらに黙って見過ごしてしまうというやらかしをした風紀委員会共の信頼も地の底まで落ちるわけだ!

関わる者全てが最悪の行動を取ってしまった中で最善を尽くせたのは我ら万魔殿のみ!

先生を含めたキヴォトスの者達は思い知ることだろう。このキヴォトスにおいて最も信頼できる存在は、我ら万魔殿だけだとな!」

 

これがマコトの考えた、万魔殿一人勝ち作戦である

既にマコトの脳内では、クロノスを前に行う演説の内容が完成されつつある

後は、その時が来るのを待つばかり

 

まさしく完璧だと、マコトは脳内で自画自賛した

 

「なるほどなるほど…所でマコト先輩。」

 

「なんだイロハ?人が気持ちよく話している所を…」

 

だが、この作戦には大きな穴があった

 

エデン条約が破断になったことでナギサとヒナに深い繋がりはなくなったはずだったが、地下室の秘密を守るために再び密接に関わり初めてしまったことだ

 

「ヒナ先輩が鬼の形相でこちらに向かってきていると連絡があったんですけど、護りは大丈夫なんですか?」

 

「…………なにぃっ!!?」

 

故に、事態を即効で把握したヒナがとんでもない速度で向かってきていることなど予測できるはずがなかった

 

万魔殿は一瞬のうちに大混乱状態へと陥った

なぜバレたのか、いくらなんでも早すぎる

ここからどう誤魔化すべきかと議員達があっちへこっちへ駆け回る

 

その隙にイロハは避難しつつ、こっそりモモトークを起動した

 

(こちらの連絡網も大概、混乱中ですね。まあ仕方ありませんか…)

 

モモトークのグループにイロハも情報共有を行なっていく

状況が悪いことを再確認するばかりで改善されることはないと思われたが…

 

 

ミレニアムから頼もしい連絡が送られてきたことで事態は好転する

 

 

 

 

─こちらセミナーです、状況把握しました。この手だけは取りたくなかったけど…緊急事態のため彼女達を出動させます。周辺の被害は大きくなりますが…最短でターゲットまでたどり着けるはずです。

 

─どうやってそこまで早く?まるで針の穴を通すように人混みを避けていかなければならないというのに

 

─それが、彼女達にはできるのですね?

 

─ええ、彼女達は"とても運が良い"から大丈夫です

 

 

 

 

 

 

そして、場面は戻ってきてシャーレ

 

「皆、大変だ!シャーレに温泉開発部が迫ってきてるらしい!」

 

「…仕方ありません。一時休戦です。あなた様の大事なシャーレを壊されるわけにはいきませんから。」

 

「そうだね。続きは後にしよう。…全く、面倒くさいなぁ。」

 

ほんの少しでも目を離した瞬間にぶつかり合いそうな2人をなだめながら、モモトークの内容を伝える先生

 

これにはワカモも戦う手を止めて、一時休戦を申し出る

それにホシノも同意し、本気を出す時に着る臨戦装備へと姿を変えた

 

「…戻りました!Rabbit小隊準備万端です!」

 

「全くシャーレはいつもトラブルが絶えないな。」

 

「くひひ、私は退屈しないからいいけどね〜?」

 

「ふ、普段お世話になってる分、頑張ります…!」

 

 

そして、今日もいつものようにシャワーを借りていたRabbit小隊も身なりを整え準備万端だ

いついかなる時もスマホを手放さないミヤコによって、情報共有も完璧になされている

 

「うへ〜…君達、ほぼ毎日のようにシャワー借りてるねぇ…」

 

そんな見慣れてしまった光景にホシノは苦笑いを浮かべた

ホシノに対抗し暇さえあればシャーレを訪れていたのでもはや常連さんである

 

「正面から来る本隊は私とホシノが対応するよ。皆は裏から来る別働隊の対処をお願いしてもいいかな。」

 

「問題ありません。背中は任せてください!」

 

考える時間も限られているため、手短に配置を決める

どれだけの数が来ようともホシノならば問題はないため、シャーレ周辺の守りをお願いして外に出た

 

 

 

 

「はぁ…何かの間違いであってくれないかなぁ…」

 

「先生。残念だけど、本当だったみたいだよ。」

 

そうしてシャーレ前で待ち構える先生とホシノ

 

誤報であることを祈っていたが、ロゴの入った白いヘルメットを被った集団が現れたことで連絡が誤りではなかったことが証明されてしまった

 

「いやー、朝から出発したのに時間かかっちゃったね!」

 

「ああ、デモの混雑は想像以上のものだったな!」

 

規模も被害も最大級、弩級のテロリスト集団温泉開発部がついに現れた

 

 

 

「やっほー先生!久しぶり!元気してた?」

 

「はーはっはっ!ごきげんよう先生!今日もいい温泉開発日和だなぁ!」

 

「ははは…メグにカスミ、皆んなも久しぶり。今日はどうしたのかな?」

 

人懐こい笑みを浮かべながら気さくに話しかけてくるのは下倉メグ

温泉開発部の作業班長を務めており、明るく優しそうな印象を与える印象を与えるが騙されてはいけない

温泉開発のためなら他者の被害も鑑みずに破壊の限りを尽くす生粋の狂人生徒だ

 

高笑いしながら上機嫌で話しかけてくるのは鬼怒川カスミ

温泉開発部の部長であり、ブレーン

計略謀略は朝飯前、周囲を巻き込んで騒ぎを起こす

 

ホシノは口を挟まず、温泉開発部の動向を静かに見守っている

少しでも変な動きを見せた瞬間、即座に撃てるように

 

「それはね〜…先生にお礼をしようと思って来たの!」

 

メグは輝くような笑顔でそう告げた

その手に持つ火炎放射器やらがなければ素直に喜べるのだが…

 

そしてその言葉にカスミも笑いながら乗っかった

 

「ああ!先生には大変お世話になっているからな!

何をすればいいか、どうすれば先生に日頃のお礼をすることができるのか考えた!」

 

そう言い切るとカスミは名案とばかりにポンと手を叩く

 

こちらもまた、見ている側が腹立つくらいにいい笑顔だった

 

 

「そうだ、シャーレの中に温泉をつくろう。」

 

 

「いや、それはおかしい。」

 

 

まるでどこかに旅行することを決めたような気楽さに先生は震え声で待ったをかける

 

頼むから考え直してくれないかなと頭を抱えた

 

「シャーレの目の前どころか、建物の中に温泉があったら凄く嬉しいよねー!」

「屋上にも露店風呂あったらいいんじゃない!?」

「いやいっそのことシャーレの地下から温泉を掘りあててしまおうか!」

 

「いやいや、それでこの建物を崩されるのは困るよ!?」

 

そんな先生の苦悶も露知らず、大盛り上がりする温泉開発部達

 

彼女達は本当にこの温泉開発が先生のためになる、喜んでくれると信じている

なぜならばいざ自分自身がやられたとしたら、それはとても嬉しいことだから

私達は温泉を掘れて作れて幸せ、先生も温泉に入れて幸せという図式が出来上がっているのだ

 

「はーはっはっは!安心しろ、シャーレを崩さずに建物を残したまま温泉を掘り当てるなぞ我らには朝飯前!だがそうだな、確かに取り壊して以前よりもっと素晴らしい温泉旅館に変わったシャーレを建てるというのも悪くない考えだなぁ!?」

 

─そんなカスミの笑い声を聞いた瞬間、我慢の限界が来た

 

「あはは〜、中々面白い話だったねぇ…冗談じゃなかったら笑えないんだけどさ。」

 

ホシノが青筋を浮かべながら待ったをかけた

 

会話をしているように見えて、自分達の意見を押し通すことしか考えてないことを理解して話しを打ち切ったのだ

 

「今なら冗談でした、で許してあげるよ。けど向かってくるっていうなら容赦はしない。」

 

もうこれ以上会話をするのは無駄だとばかりに銃口を向ける

 

その闘志を感じ取った温泉開発部達も誰にも邪魔はさせないと闘志を露わに武器を構えた

 

「やれやれ、血の気が多いことだ。話し合いで解決できればよかったが仕方ない。」

「いつものことだよ!作る前は皆嫌がるけど、作り終えたらきっと喜んでくれるって!」

 

「先生、指揮ちょうだい。おじさんに全部任せといて。」

「わかった!ホシノ、お願い!」

 

『オペレーション開始、先生どうぞ。』

『私達も全力でサポートします!』

 

それぞれが準備を整え、向かい合う

 

譲れない思いを胸に秘めて、引き金に手をかける

 

「さてと、それじゃあ本気で行こうか…!」

 

「諸君、温泉開発開始だ!はーっはっはっ!!」

 

そうして温泉開発部とホシノはついに真正面から激突し─

 

「「「ぎゃーっ!!?」」」

 

「………はっ?」

 

─突っ込んだ温泉開発部員達が吹き飛ばされて来たことで、カスミの笑顔は固まった

 

 

 

 

 

 

 

「うぎゃーーーっっ!!?」

 

 

戦闘が始まってから早数十分

再び遥か彼方へとぶっ飛んでいく部員達を見てカスミは焦り始めていた

 

(待て待て待て!想像以上に強いぞ!?こんな奴が今までどこにいたんだ!?)

 

ホシノの戦闘力はカスミの想定を遥かに超えていた

守りに長けた生徒だとは聞いていたが、これほど縦横無尽に暴れ回ることができるなんて聞いていない

 

そんなふうに戦況を見守っていたカスミだが、ホシノもまた戦いながら自身を観察していることに気がついた

 

─青と金色に鋭く光る目がこちらを射抜いている

 

「ひぇっ…!?」

(な、なんだ…?なんだ、この感覚は…?

まるで…まるで、空崎ヒナを相手にしているような寒気がする…!!!)

 

カスミの危機感知センサーがかつてないほどの警鐘を鳴らしていた

空崎ヒナと出会した時と同じくらいの悪寒が背中を走っている

 

そんな予感を否定し、あれほどの傑物がそうそういるはずがないと努めて冷静に振る舞おうとして…

 

「う、うわぁああっ!?盾だけがものすごい勢いで飛んできたぁあっ!?」

 

「ひえっ……」

 

爆風の中から盾だけが物凄い速度でぶっ飛んでいき、まるでボウリングのように生徒達を吹き飛ばして飛び続ける光景に思考が停止しかけた

 

 

 

 

 

「ほ、本体は!?本体はどこに…」

 

「そこどいて。」

 

ホシノの姿を見失った開発部員がまた1人派手にぶっ飛ばされていく

そんな姿を尻目にホシノはぶん投げた盾を素早く回収し、再び敵陣の真ん中へと飛び込んだ

 

「ホシノ!今度は12時の方向に!」

 

「オッケー。」

 

物陰にいる先生からの指示に従い、弱点を狙い撃った

温泉開発部の持ち込んだ爆弾を狙って撃つことで誘爆を誘ったのだ

インカム越しから来る的確な先生の指示も相まって、数的不利をものともせず無双ゲームの如く薙ぎ払っていく

 

元々の戦闘力に加えて、先生のサポートも受けて仕舞えば誰もホシノを止められるわけがなかった

 

(うへー…参ったねこりゃ。早く全滅させて他の場所の助けに行きたいんだけど…)

 

「弾切れだ!チャンス…いったぁあ!!?」

 

そんな大立ち回りをしながらも冷静に考察するホシノ

 

片手でショットガンのリロードをしながらも、もう片方の手でハンドガンを速射し全く隙を見せない

 

(怯えてはいる。竦んでる子もいる。なのに、士気が全然下がらない。そこらの連中ならとっくにビビって逃げ出すのに………

…なるほどねー…こりゃヒナちゃんも手こずるわけだ。)

 

温泉開発部はみるみる間に数を減らしてはいるものの、元々の数が多い上に士気が下がらない

 

それもそのはず、彼女達は普段からヒナに絞められているにも関わらず温泉開発を諦めない猛者達

圧倒的な存在に対する恐怖があろうとも、この世の何よりも温泉開発へ情熱を燃やす彼女達が野生の強者に遭遇した程度で止まるはずがなかったのだ

 

(倒し切ることはできる。ただ、シャーレを完全無傷で護りきるのは難しいかも。)

 

完全無傷で護りきりたかったホシノは歯噛みした

自身にできることは1秒でも早く全滅させることだと愛銃に力を込めながら、再び中心へ躍り出る

 

 

 

 

『抜けました部長!シャーレ建物付近に部員が1人取り付きましたよ!』

 

「おおっ!いいぞ、よくやった!」

 

その時、別の場所から攻めさせていた温泉開発部員の無線から連絡が入る

ようやく良いニュースが流れて来たことにカスミは安堵した

 

無理に倒さずとも、この生徒をこの場で足止めをし続ければいいのだ

ホシノを食い止めている間にシャーレ周辺の同士達が温泉開発をすることができる

カスミは別働隊に開発してもらう作戦へとシフトした

 

 

 

「くそっ、抜けられた!」

 

「うおおおお!!温泉開発開」

 

カスミからの指示を受けた温泉開発部員はRabbit小隊の横を潜り抜け、叫びながら爆弾を起爆させようと─

 

 

『目標補足…ファイア!!』

 

 

「始げふぅっ!??」

 

 

─する寸前で頭に強烈な一撃を喰らい、前のめりにぶっ倒れた

 

 

 

「何っ!どうした応答しろ!…ダメか…誰だ?風紀委員会がこんなにも早く来れるはずが…

 

「随分と大層な騒ぎだな。」

 

っ!?」

 

無線先の状況はわからないがどうやら失敗したらしい

それに続けて、突如背後から聞こえて来た声にカスミは慌てて振り返った

 

─あれだけの喧騒、人混みを無傷で潜り抜けて来るなんて不可能のはずだ

なのに、何者かがこちらへと歩いてくる

 

現れたのは珍妙な姿をした生徒だった

 

「はっ、面白そうなことしてんじゃねえか。アタシも混ぜろよ?」

 

「メ、メイド…?」

「スカジャン…?」

 

メイド服の上に何故かスカジャンを羽織っている小柄な少女

迷いなくこちらへと向かってくる姿を見て…カスミは再び悪寒が走った

 

(ま、まただ…この少女からも空崎ヒナと似た気配がする…!?)

 

 

 

『リーダー!こっちは無事に防衛してる生徒さんと合流したよー!』

 

「ああ、あたしも敵本隊の後ろに着いた所だ。」

 

『こちらコールサイン02。リーダー、工作員は無力化した。』

 

「そうみたいだな。連中、わかりやすく動揺してるぜ。」

 

少女はそんな温泉開発部の反応を気にも止めず無線に返事を返しながら、堂々した足取りで歩き続ける

 

『リーダー、こちら03。当番の生徒達と協力してシャーレ裏側のお掃除を完了させました。』

 

「おう、よくやった。」

 

『04より補足します。トップが健在の限り敵の勢いは衰えません。速やかに温泉開発部部長の排除を。』

 

「あー、言われなくてもわかってる。」

 

乱暴に頭をかくと少女は温泉開発部に目線を向ける

 

懐から愛用する二丁のサブマシンガン、『ツイン・ドラゴン』を構えて、獰猛な笑みを浮かべた

 

「さて、どいつがボスかはわかんねぇけど要するに…」

 

─この日、温泉開発部は思い知ることとなる

他校における最強の存在、その実力を

彼女こそはミレニアムが誇る最強のエージェント

 

 

「ここにいる奴ら全員掃除しちまえば終わりってわけだな?」

 

 

ミレニアムの約束された勝利の象徴(コールサインダブルオー) 、参戦

 

 





先生!次回予告、始まりますよ〜!

どれどれ〜





やめて!暁のホルスの特殊能力で温泉開発部を薙ぎ払われたら、部員達と繋がっているカスミの精神が燃え尽きちゃう!

お願い、死なないでカスミ!

あんたが今ここで倒れたらマコトとの約束はどうなるの?

まだ味方は残ってる、ホシノとついでに現れたネルを倒せば温泉開発ができるんだから!

次回「鬼怒川、死す」




いかがでしたか?
次回もぜひ見てください!じゃんけんぽん!

(拳のマーク)

うふふふ。
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