そこに住む人や地域性が違えば、当然創作物にも違いが現れるよねというお話
「お、お久しぶりです先生。ほ、本日はお日柄もよく…」
「うん!久しぶりだねツルギ。
あまり緊張しないで…とは難しいかもしれないけど、そんなに畏まらなくて大丈夫だよ。」
「ぜ、ぜぜ、善処します…!」
外の世界を防衛するにあたり知識を深めるため、今回先生宅を訪れることなったツルギ
そんな彼女は着いてからずっと緊張しきりだった
先生が気を楽にするよう声をかけても、その緊張はなかなか解れることはない
以前は人がたくさんいた上に仕事モードに入っていたため問題なかったが、今回は先生との2人きり
意識しないほうが難しいというものだ
(お、落ち着け…落ち着け私……
逃げる、壊す…?いやいやいやここで暴れたらダメだって…何のために皆頑張ってるんだ…!
…ああぁああ!やっぱり落ち着かない!!
ど、どうして1人で来てしまったのぉー!!!)
(…なんとか楽な気持ちにしてあげられないかな。
うーん、無理に声かけたり頭を撫でたりっていうのは……逆効果だよね、多分。)
いつぞやディナーに連れて行った時のように、ツルギは既に爆発寸前だった
このままでは飛び出して行ってしまうか、奇声を叫び始めてしまいそうだ
そうなればいくら田舎といえども、珍獣が現れたと話題になってしまう
今時はネットの普及によって話が広まる速度が早いため絶対に避けたい
何か気を紛らわせる物はないかと考える先生はちょうどいい物があったことを思い出す
「そうだ、前にお願いしてた外の世界の漫画が届いたよ!」
「ッ!あ、ありがとう、ご、ございます。」
緊張しっぱなしのツルギを和ませるため先生はネットショッピングで注文していた少女漫画や恋愛漫画を差し出した
─外の世界の漫画は、気に入ったものがあれば先生に生徒達がお金を払うことで購入することができる
先生自身は好きでしていることだからお金はいらない、と言っていたのだが…そういうふうに奢ってばっかりだから金欠になるのだと皆からお叱りを受けてしまったため支払うようになっている
…それでもこっそり少なめの金額で伝えては、ユウカ達に目敏く購入履歴を見られて怒られたりしている
「で、でで、では、これとこれと、これをその失礼、します…!」
「うん、どうぞ。面白かったら後で私にも教えてね。」
「は、はは、はい…!」
人は自分の好きな物を見つけると安心感や癒しを感じて落ち着くと言われている
ツルギもその例にもれず、さっきの破裂寸前の状態からは幾分か持ち直していた
複数の漫画を先生から受け取り、ちょうどいい場所に座り込む
(せ、先生に少女漫画好きを知られてるのは恥ずかしいけど…い、今はこれで心を落ち着けて…!!)
先生は多めに注文してくれていたらしく、野球要素の入ったもの、恋愛頭脳戦といった変わり種、身分違いの恋を綴ったものなどいろんな種類の漫画があった
その中から一冊を無作為に選びとったツルギは早速漫画に目を通し始めた─
パタリ、と漫画を閉じる
「……??????」
(なんだかツルギが凄く面白い顔をしている…それはどういう感情なのかな…?)
ツルギは困惑した
何かを悟ったような顔をした猫のように、なんともいえない表情のまま首を傾げる
疑問符が頭を埋め尽くしたまま、一冊読み終えてしまった
それは当然の話だった
外の世界の日常はキヴォトスの日常と比べれば何もかもが違いすぎる
最初に読み始めた時、この漫画の登場人物は全員が病弱設定なのかと勘違いした
キヴォトス人にはなんてことないことに、いちいち大袈裟に反応する姿は違和感しかなかったからだ
だが読み進めてみるとそういうわけではなかったらしく、基本的には皆健康優良児
病弱キャラはほとんどいなかった
するとどうだろう
キヴォトス人の視点からだと過剰に痛がっているように見えてしまい、まるでぶりっ子を見たような気持ちになってしまったのだ
漫画やアニメを鑑賞する際「よくよく見ると変だな、ここ?」と疑問に思ったことはないだろうか
シートベルトが天井につながっていたり、人間と建物のサイズが明らかに違いすぎて小人になっていたり、ありえない方向に体が曲がっていたり…
それと似たようなものだった
キヴォトスの人から見ると、冷静に考えなくてもおかしくない?というシーンのオンパレード
いわゆる作画崩壊と呼ばれるものであり、ツルギは今それを見せられ続けているような状態なのである
これはキヴォトスの者と外の世界の人間との価値観があまりにも違いすぎるため起きてしまった現象である
─漫画を読む時は主人公の気持ちになって、成り切って読み進めるのも醍醐味の一つ
ツルギはその傾向が強かった
これでは感情移入が極めて困難であるため、読み込むのに非常に苦労した
そのため今度は主人公達に感情移入するのではなく、幼子を見守る保護者のような気持ちで見ることにした
そういう弱々しくて可愛らしい存在であることを頭に入れて読み進めなくてはならない
そうした結果…
「けひゃぁあああ…!」
「ど、どうしたのツルギ…?」
ツルギは赤面した
顔を抑えて盛大に仰け反り、呻き声を上げる
こうなってしまったのは内容がピュアすぎるからだった
外の世界の少女漫画は、キヴォトスの少女漫画のようにヒロインが火の輪をくぐったりしない
挨拶代わりに1発撃たれることもない
キヴォトスの者なら持っていて当然の銃を誰一人として持っていない時点でファンタジーに片足を突っ込んでいる
当然、銃撃戦も全く登場しないため暴力シーンが暴力シーンたり得ないのだ
ちょい悪系、オラオラ系といえど最低限の武器たる拳銃すら持っていないのであれば、いくら凄んで見せようとも恐れる要素はない
爪や牙のない狼を見ても怖くないのと同じ
キヴォトス人フィルターを通して見ると可愛らしくてしょうがないのである*1
暴力性の限りなく低いメルヘンチックな世界で繰り広げられる恋愛模様に赤面してしまったのだ
これはこれで、と思いつつさらに読み進めると…
「う、ぅうっ…ぐすっ…!」
「どうしたのツルギ!?」
ツルギは号泣していた
涙を漫画にこぼさないように気をつけながら、ページをめくる
読めば読むほどに彼らがいかにか弱い存在だと理解させられてしまったからだ
彼らの日常は毎日が死と隣り合わせ
キヴォトス人ならかすり傷にもならないことでも、外の世界の人々に取っては命取り
─車に轢かれるかもしれない
─階段を転げ落ちてしまうかもしれない
─頭を激しく打ってしまったら?
─上から何かが落ちてきてしまったら?
家を出た瞬間から死の危険が待ち受けているにも関わらず、それでも外へと飛び出していく
それは愛ゆえに他ならない
吹けば飛んでしまうような、か弱く儚い男女が必死に出会いを重ねて愛を育んでいく
この感覚は、小さな小動物達の一生を記録したドキュメンタリー番組と酷似していた
いつ死ぬともわからない過酷な環境で必死にパートナーを見つけ生を全うする姿は、人々の心を打つ
そんな命懸けのラブストーリーにツルギは感動していた
物語はどのように進んでいくのか期待しながら、さらに読み進めていく…
「きしゃあぁああああぁッ!!!」
「どうしたのツルギぃ!!!??」
ツルギは怒り狂っていた
ツルギ愛用のショットガン、ブラッド&パウダーが手元にあれば今すぐにでも発泡しているくらいにはキレていた
武器も持たない、ちょっとしたことですぐ死んでしまう彼らを同じ人間として見るのは難しく、もはや妖精さんとかゆるキャラ的な感じで見ていた
そんな矢先彼らへと襲いくる理不尽の数々
突然の交通事故!
2人が付き合うことを認めない両親!
差し向けられる刺客!
恋敵を蹴落とそうとするライバル!
咲き誇る花園を容赦なく踏み躙るがごとき暴挙
どうして世界はこんなにも残酷なのか
正義を掲げる者として、許し難い邪悪な存在に怒りを爆発させていた
─その後もツルギは一喜一憂しながら、一心不乱に漫画を読んでいった
─日も暮れてカラスの鳴き声が聞こえてきた頃、ツルギは漫画を綺麗に重ねて先生へと手渡した
「せ、先生…!本日は、本当にありがとうございました。とても貴重な、学びを得ることができました。この経験を忘れずに、正義実現委員会の委員長として、悪を許さず徹底的に根絶やしにしていく所存です!」
「う、うん…力になれたのなら良かったよ…」
(なんか、キャラ変わってない…?)
心ゆくまで漫画を堪能したツルギは晴れやかだった
また次にこの場所を訪れた時、新しい漫画を読んでみたいと思っていた
なんの変哲もない漫画から一体どれほどのものを見出したのか、反応に困る先生
困惑しながらも楽しんでくれたのなら良かったと思うことにした
なんにせよ今回の件はツルギが過剰反応すぎただけだと、そう思っていた
しかし──
「ふふ…奥手なように見えてその実大胆に…これが外の世界の恋愛模様なのですね。記録しました♪」
「そ、そんな…!外の世界の方はほんの少しのことでも命に関わる怪我を負ってしまうなんて…!」
「これはいずれセナ部長にもご覧になっていただいたほうがいいですね…!」
「うぅ…なんかモヤモヤするというか、気恥ずかしいというか…エッチじゃないのに、どこかエッチな感じがする…!」
「ッスゥー……はぁ〜……
落ち着くっす、これは漫画。作られた物語っす、現実に起こったわけじゃない。だからこの度し難い悪党も現実には存在しないっす…」
外の世界の趣味嗜好について考察する者
改めて外の世界の人間のか弱さを知り悲しむ者
一般漫画って直接的に表現できない分、フェチが詰まってて下手なエロ漫画よりもえっちなのでは?と考える者
強い正義感から、悪に対して怒りを覚える者
キヴォトスの女子高生達は外の世界産の少女漫画、恋愛漫画にハマっていた
「そんなに面白いのかなぁ…?」
確かに先生も読んでみて面白かったのだが、あれほど大きく反応をしてしまうものではなかった
これがくたびれた大人と活力に満ち溢れた女子高生との違いなのだろうか
それとも外の世界の少女漫画はキヴォトスの少女漫画にはない斬新な内容で描かれているのだろうか
今度は逆にキヴォトスの少女漫画とは一体どんな内容なのか、生徒達以上に気になってしまった先生だった
外の世界の人々は体が弱すぎてキヴォトス人から見ると凄く不便
以下筆者の自分語り
人によっては気分悪くなってしまうと思うので一応閲覧注意
読む場合は自己責任でお願いします
キヴォトスにある漫画の内容が気になる今日この頃
モモイのゲーム描写を見るにファンタジー系のゲームや漫画はこちらと大差ない感じだと思います
問題は"キヴォトスのリアル"に近づけた漫画です
キヴォトス人のリアルに近づけるということは当然耐久性、治癒力が跳ね上がるので、こちらのファンタジー系よりもよっぽどファンタジーしてる状態なのではないでしょうか
つまり大怪我をさせたりする難易度が桁違いに跳ね上がるんです
階段から落ちたり、車に跳ねられた程度では死なないんです
アニメで普通に窓から飛び降りてるのもそうですし、戦車の砲撃喰らったり弾道ミサイルでも死んでいませんし、走る列車から飛び降りても半日気絶で済むくらいなので相当硬いと思われます
おそらくキヴォトス人に有効な手段は溺れさせたり窒息させることぐらいではないでしょうか
某推理漫画がめちゃくちゃ大変になってしまいますね
物語にメリハリ、悲劇性をつけるために怪我をさせたいなら、神秘を貫通する神殺しのナイフとかバトル漫画みたいな要素が必要になってしまうんです
正攻法だと、連続で乗り物に轢かれ続けたりとか
ヒーローが怪物に連続で必殺技を叩き込むみたいなのとか
もはやギャグというか邪悪なピタ○ラス○ッチくらいしないと無理じゃないでしょうか
…それでもホシノとかヒナは普通に生きてる気がしますね
なのでキヴォトスの漫画がどうなっているのか凄く気になります
トキの発言からジョ〇〇っぽいのはあるみたいですが、そうすると拳銃使いのミ○タが全く役に立たなくなるんですよね、銃効かないし
我々視点からするとツッコミどころ満載のシーンがたくさんありそうです
…運営の人そこまで考えてないよと言われたらそれまでですが、いいんです
こういうのは世界観について考察してる時が一番楽しいですから!
うちのキヴォトスはこんな感じで行きたいと思います