今回のお話には個人の感想が多く含まれています
筆者は実際に食べて中々美味しいと思いました
特にチョコレート系
「本日はよろしくお願いします、先生。」
「うん、こちらこそよろしくねハスミ!」
今回先生の家へお手伝いに訪れたのはハスミだった
具体的に何をするのかというと先生の家は広すぎるため、定期的に掃除したりする必要があった
使わせてもらってばかりでは悪いと思った生徒達が自主的に掃除のお手伝いをしてたりするのだ
「早速ですが先生、私は何をすればいいでしょうか?どんなことでも、遠慮なく言ってください。」
「ハスミ、なんだかすごく張り切ってるね?それじゃあえっと…一緒に掃除をお願いしようかな。」
ハスミは誰がみてもわかるくらいに張り切っている
─実は先生のお手伝いという名目以外にも別の目的があったからだ
そんなこととはつゆ知らず、真面目な彼女らしいと思いながら先生は今日の掃除してもらう場所について話し始めた─
今回は、今まで利用することの多かった一階部分を担当してもらうことになり、早速先生の家の掃除が始まったのだが…ハスミのやる気は凄かった
「えっと、とりあえず目に見える範囲だけで大丈夫じゃないかな?そこまで本気でやらなくても…」
「いえ、こういう細かい隙間に埃が溜まっていって汚れていくのです。私が持ち上げますので先生はその間に掃除機をかけてください。」
先生としては軽く手伝ってもらえればそれで良かったのだが、ハスミは違った
誰にも文句を言わせないほど完璧に、家中を掃除しきって見せると息巻いていた
クローゼットや本棚といった動かすのが面倒くさい物を持ち上げ、ひたすらに掃除機をかけていた
…特に重たいものを運びたがっており、進んで重労働をしようとしているように見える
先生は何か違和感を感じていたが、気のせいかもしれないと思い何も言わなかった
その後も、凄まじい勢いで掃除が進んでいき─
「いやぁ、1人だと広すぎる家も手伝ってくれる人がいると助かるよ!ありがとう!」
「いえ、これくらい普段の訓練に比べれば大したことはありません。先生、他にもやっておきたいことはありませんか?」
あっという間に部屋の掃除が完了し、ピカピカになった家
隅から隅まで細かく掃除した甲斐もあって埃一つ落ちていない
これだけでも十分すぎるのだが、ハスミはまだまだ満足していなかった
後からやるよりも、今全て片付けてしまいましょうと先生に問いかける
「え?えーと後は…庭の手入れをするために草むしりとかかな。でもこの広さだと時間もかかって大変だし…」
「!!やります、是非とも手伝わせてください!」
またすっかりと雑草が伸びてしまった庭の手入れが必要だと言えば、ハスミは喜んで作業したいと申し出る
室内から外の庭に出てからもハスミの勢いは凄かった
普段の訓練によって培われた体力を活かし、進んで肉体労働に勤しんでいた
個人差の大きいキヴォトスの者の中でも力のある方のハスミは、軍手で伸びた雑草を軽々と引っこ抜いていく
先生から静止の声が上がるまで、一心不乱に作業を続けていた
「ありがとうハスミ!今日はこれくらいにしよう!これ以上はもう無理に手入れしなくて大丈夫だよ!」
「そう、ですか。確かにこれ以上続ける必要はなさそうですね。」
そうこうしてる間に、庭の手入れも瞬く間に終わってしまった
まだまだ体を動かしたかったハスミだが、これ以上草むしりをしたら土地が荒れてしまうため、終了せざるを得ない
浮かない顔をして、少し落胆しているような様子を見せた
「お疲れ様、今日は本当にありがとう。手伝ってくれたご褒美にケーキを用意してたんだ!一緒に食べよう!」
なぜか落ち込み気味のハスミに喜んでもらおうと先生は明るく声をかける
先生は手伝ってくれる生徒達のためにご褒美を渡せるよう、常にケーキなどの甘いものを常備していた
甘いものが大好物のハスミなら喜んでくれるはずなのだが…
「っ!あ、ありがとうございます…」
しかし先生の予想に反し、ハスミはあまり嬉しくなさそうな反応を示した
甘いものが大好きな彼女にしては珍しく困ったような、苦悩するような表情を浮かべる
その顔を見て先生はようやくハスミが何に悩んでいたのか気がついた
「ハスミ…?その間違ってたら本当に申し訳ないし、土下座もするんだけどその…」
女性に話すにはデリカシーに欠ける内容を、先生は意を決してハスミに問いかける
「もしかして、またダイエットしてる?」
「〜〜〜ッッ!!せ、先生っ!!」
「わあ、ごめん!」
顔を真っ赤に染めて、声を荒げるハスミ
そう、これこそが裏の目的、ハスミは今日の清掃活動を自身のダイエットにしようといつも以上に張り切っていたのだ
図星をつかれたことに言い訳をしようと口を開きかけるが…諦めた
「…気づかれてしまったのなら仕方ありません、一緒にダイエットの方法を考えてください!」
開き直って、痩せるための手段を一緒に考えるよう先生へとお願いするのだった
ハスミはぽつぽつと自身の悩みを語り始めた
「ここ最近また体重が増えてしまって…
我慢しようと頑張っているんです。でも、食べれないことにストレスを感じては余計に食べてしまって……」
我慢しようと思ってもストレスを感じてはついつい食べてしまい、苦悩するハスミ
とにかく甘い物に対する誘惑に弱いため、気がつけば深夜にパフェを食べてしまうことも多い
「気を紛らせようとスマホを見れば、美味しそうな食べ物が目に入り込んで逃げ場がないんです…
くっ!私はこんなにも日々悩み苦しんでいるのに…!彼女達は見せつけるように大食いチャレンジやスイーツバイキングの写真をネットにあげて…!
やっぱりゲヘナは許せません…!!」
気を紛らわせようとスマホに向かうも、好みのコンテンツを表示してくるため逃げ場がない
事件が起こった際に情報が流れてくるネットを確認しないわけにもいかず、どうしても目に入る
そんな風に苦悩する中で「私、どんなに食べても太らない体質なんです〜⭐︎」と笑顔で宣うゲヘナ産テロリストの顔を思い浮かべては怒りを募らせた
「…だったら、ちょうどいいのがあるかも。」
そんなハスミに先生は、自身が食べるように用意していたあれが役に立つかもしれないと思い至った
「これをちょっと試してみない?」
「これは…糖質カットのケーキ、ですか?」
先生が取り出したのは糖質をできる限りカットして作ったと書かれているケーキだった
元々自分用に取っておいた物をテーブルの上に置く
それを見たハスミは苦い顔を浮かべる
「こういった物は以前私も試してみましたが…正直に言って微妙でした。」
ハスミも今までキヴォトスのお店でそういったものは買ってみたことはあったのだ
しかし、満足のいくような物を食べられず逆にストレスが溜まるばかり
時にはあまりの不味さに憤慨し、口直しに別のスイーツ買ってきてしまう始末
以降はそんな上手い話はないと諦め、試さずに見送ってきたのだ
「外の世界の有名なお店が作った物だから、もしかしたら口に合うかもしれないよ。
騙されたと思って試してみて欲しい!」
キヴォトスの物は駄目でも、外の世界産の物ならいけるかもしれない
先生はハスミにチャレンジしてみるよう勧めた
「…そこまで言うのでしたら、いただいてみます。」
確かに以前外の世界産の通常スイーツを食べてみたがとても美味しかったことを思い出す
もしかしたら、先生の言う通り違う結果をえられるかもしれないと改めてテーブルに置かれたケーキに目を向けた
「確かに、クリームといったトッピングがなくなっていますが…それ以外は普通のケーキと変わりありませんね…」
チョコレートケーキをまじまじと観察するハスミ
本来ケーキによく載っているホイップクリームなどのトッピングは確かになくなっていたが、それ以外は普通のケーキにしか見えない
「味の方は…」
恐る恐るケーキを一口分、口へと運ぶ
甘みがまるでないブラックほどの苦さを想定していたハスミだったが、食べた瞬間驚き目を見開いた
「控えめではありますが、ちゃんと甘いです…!」
「どうやら口にあったようでよかったよ。」
チョコレートのしっかりとした甘さが損なわれておらず、スポンジもふわふわとしてて食感も素晴らしい
確かに濃厚さなどでいえば通常のケーキの方が甘くて美味しい
しかし、ケーキの甘さを完全に損なうことなくこれほどの味を保っているとは驚きだった
「驚きました、キヴォトスにあったものは駄目だったのに…どうしてこれほどまで違うのでしょうか?」
「おそらくだけど、キヴォトスと外の世界では人口比違うから、かな?」
キヴォトスと外の世界では人口ピラミッドの形がまるで違うことが原因だと先生は予想する
欲しいと思う人がいても、その総数が少なければ商売は成り立たない
学園の運営方針を決めるのは生徒で、鉄道の運行も警察も報道を行っているのもほとんど生徒達
キヴォトスはそんな学生主体の都市のため需要がないのだ
新陳代謝の下がってくる大人と違って、まだ若い高校生が健康を考えるには早すぎる
そしてダイエットを謳う商品は味を犠牲にしているものが多い
基本甘くて美味しいものにはとんでもない量の砂糖が入っているからだ
糖質を抑えつつ、甘さを確保するには非常に苦労する
熱意のある大人がいれば、人々の満足いくようなクオリティの商品開発を続けたのかもしれないが…しかしそこはキヴォトスクオリティ
真っ当な大人を探すのが難しいこの世界において、純粋に悩める少女達のことを思って思考を巡らすような大人は少ない
カイザーのような金稼ぎしか考えていない大人達が、はなから騙すつもりで作った手抜き商品を掴まされる被害は後をたたなかった
当然少女達は怒り、襲撃されて店が無くなっていることは珍しくなく
そんなお店を率先して潰しにかかる美食研究会が持て囃されるのが今のキヴォトスの現状だった
「外の世界ではそんなに高齢の方々が多いのですか?少し想像できないですね…」
「うん、だから健康食品に対する需要が自然と高まってきているんだ。皆長生きしたいからね、私も平均寿命まで生きたいと思うし。」
外の世界は少子高齢社会
食べ物がないことによる栄養不足から解放された現代人達は、今度は生活習慣病といった病気に悩まされている
それでも甘いものが食べたいという需要の増加により、カロリー抑えめのスイーツを開発する企業が増えているのだ
「だから進歩しているというか、せざるを得なかったんだ。現代人は舌が肥えてるから、美味しくないと食べてもらえないからね…」
技術の進歩や発展が進むにつれて、健康について考え始める人も増えてきたことにより新たな市場開拓を目指す企業
熾烈な顧客争奪戦に新しい食べ物が生まれては消えていく
舌の肥えた現代人を満足させるほどのクオリティを維持できなければ生き残ることはできないのだ
「おっと、話がそれちゃったね。えっとダイエットのために…他には食べる時間も大切だよ。
同じ量でも深夜に食べるのを控えて、おやつの時間とかお昼に食べるよう心掛けるだけでだいぶ違ってくるから。」
「なるほど、実践してみます。
…それにしても、先生がそれほど詳しく知識を持っているとは思いませんでした。」
ハスミは適切な食事の時間について語る先生の知識に感心していた
いつのまにそれほど多くの知識を得ていたのか
そんな尊敬の眼差しに先生は全部生徒達からの受け売りだと苦笑を浮かべる
「ははは…食生活については注意される度に自然と、ね…」
その答えは救護騎士団や救急医学部といった生徒達による熱心な指導によるものであった
先生は遠い目で空を見上げ、これまでの思い出を振り返る
深夜にお菓子を食べようとした所をセリナに注意されたり*1
カップラーメンで済ませようとした所をフウカに注意されたり
脂っこい食事が何日も続きそうになった所をセリナに注意されたり*2
仕事が忙しくてお昼を食べずに活動しようとした所セリナに注意されて、簡易的なものを一緒に食べたりしていた*3
「私なんて皆以上に不健康で乱れた生活をしていたからね…ほとんどセリナ達の受け売りだよ。」
「先生も苦労されてるんですね…」
…改善されない場合、救護騎士団総出で救護しますと忠告をもらったことを思い出して先生は身震いした*4
その後ケーキだけでなく、クッキーやゼリーなど様々な糖質制限スイーツを試してみるハスミ
「なるほど、悪くないですね。これもいけます。後これも…」
「凄い勢いで食べていくね!?今食べすぎると夜ご飯食べれなくなっちゃうよ!?」
結果として言えばどれも当たりだった
糖質を抑えつつも、ちゃんと甘さも確保されている
最初に難色を示していた姿が嘘のように色々な種類の糖質制限されたスイーツを食べ比べていった
「これだったら、無理なく続けていけそうです。ありがとうございます先生。」
「役に立てたようでよかったよ!」
そんなこんなで一通り試したハスミは満足したようだった
一部合わない物もあったようだが、ほとんどの物がお気に召したらしく嬉しそうにハスミは微笑んだ
「とはいえ、これはあくまでもスイーツを我慢できない時のためみたいなものだから、過信しないでね?」
「無論、理解しています。」
糖質は低くてもカロリーは割と高かったりするから過信は禁物だと忠告する先生
ハスミは勿論心得ているとばかりに頷き─
「ではまず、こちらのショートケーキを20個ほど注文をお願いします。こちらのチョコレートケーキも同じ数いただきたいです。それから──」
「いくら低糖質といっても食べ過ぎたら意味ないからね!?」
業者かと勘違いするほどたくさん買おうとするハスミに先生はストップをかけた
彼女自身が納得する理想の体型や体重を手に入れるにはもう少し時間がかかりそうだ…
キヴォトスは言わずと知れた学園都市
キヴォトス人がどうやって生まれてくるのかわかりませんが、学生メインな以上少子高齢化とは今の所無縁なのではないでしょうか
なので外の世界の方が上回ってるんじゃないかなと思いました
結局食べ物って砂糖や塩は入ってれば入ってるほど美味いし、食べ盛りの高校生には売れなさそうだから進歩させるには労力も時間もコストもかかるし…
なによりキヴォトスの大人達を見るにそういう努力とかしてる企業が少なそうなんですよね…
まともな大人も少しずつ出てきていますが、今までが酷すぎて…