貴方は幾つ元ネタのメイドがわかるかな?
「ではご主人様、早速ご奉仕を始めさせていただきます。」
「あはは…お休みなんだからもっと自由に好きなことをしていいんだよ?」
「お気遣いありがとうございます、でも大丈夫ですよ。これが私のやりたい好きなこと、ですので。」
今日もいつものようにキヴォトスから外の世界
先生の家に着いた途端、メイドとしての本分を果たすべくアカネは行動を開始した
彼女の手には掃除用具一式が準備されている
「とはいっても、そんなに張り切らなくても大丈夫だよ。この間もトキが掃除してくれたし…」
「いえ、ご主人様。よくご覧になってください。」
普段から色んな生徒が来る都合上、部屋は整っているのだが…アカネはまだまだ汚れは残っていると先生の言葉を遮った
アカネは窓のそばに立ち、慣れた動きでツツーと指を滑らせる
「このように埃が残っております。」
「よくドラマとかで小姑がやるやつ!」
"色々な意味"で掃除のプロフェッショナルと呼ばれるアカネの目は誤魔化せない
ついつい見逃しがちな部屋の角、家具の裏などに残されたゴミを見逃さず完璧に仕上げていった
「こんなにピカピカになるなんて、アカネは流石だね。」
「いえ、私などまだまだ未熟です。」
アカネが掃除を始めて早数十分…瞬く間に部屋はピカピカになっていた
他の生徒達が決して劣っているわけではないが、掃除に対する練度が圧倒的に違う
プロ顔負けの完璧な仕上がりだった
「私にできる範囲で何でもお礼するよ。遠慮なく言ってね!」
「あら、それはとても魅力的な提案ですね。」
ここまでしてもらったのならお返しをしなければならないだろう
先生はいつものように危機感ゼロの提案を言ってのけた
「なら、そうですね…」
なんでもという言葉にとても心を惹かれたアカネだったが、答えは決まっていた
かねてから外の世界へまた訪れることがあったのなら、調べてみたいことを既に考えていたのだ
「こちらの世界で有名なメイドや使用人の方はいらっしゃいますか?後学の為にぜひ参考にさせていただきたいです。」
「なるほど、メイドなどの立場で有名になった偉人かぁ…」
アカネはよりメイドの技能を高める為、この世界のメイド達を知ることを望んでいた
アカネは人をお世話し、尽くすことに喜びを覚える根っからのメイドであり、普段から最高のメイドとなるべく研鑽を欠かさない
アカネがC&Cに入部したのも裏の顔を知らず、本当にただのメイドの部活だと思っていたからだ
…任務に集中するあまり、本来の目的を忘れかけたこともあったがその想いは今なお変わっていない*1
「うーん…ごめん、中々思いつかないな。
使用人の立場から成り上がった偉人なら結構いるんだけどね?それも成り上がった後の功績の方が大きいしずっと使用人のままは思いつかないなぁ。」
先生も色々と考えたが、生涯メイドなどの使用人の立場のまま後世に名を残した偉人はすぐに思い付かなかった
物語的にも下級の立場から天下人へと出世し、成り上がっていく者の方が人気も出やすいため中々に難しい
「でしたら現実世界に限らずゲームやアニメ、漫画など…媒体は問いません。
この世界における様々なメイドの姿を見せてください。」
「了解!色々挙げてみるね!」
キヴォトスでも生涯メイドの有名人を調べるのは難しく、出てこないことをある程度予測していたアカネは現実ではなくサブカルチャー文化に名を残すメイド達について知ることを望んだ
人々がメイドにどのような姿を望んでいるのか、それを知ることも立派な勉強になる
こうしてアカネと先生は外の世界で描かれて来た様々なメイドを見てみることにした
まず初めに見たのはとあるシューティングゲームに登場するキャラで、大きな館で働くナイフ使いとして特徴的なメイドだった
「完全で瀟洒な従者とは、すごい肩書きですね。」
「実質1人で館の清掃とかをこなしてるからそう名付けられたみたいだよ。」
「1人だけで全てをこなすのは大変すぎないでしょうか…」
「それは大丈夫。彼女は時間を止めることができるから、それで膨大な数の仕事をこなしているんだ。」
「それは…喉から手が出るほどに素晴らしい能力ですね。メイドに限らず、いろんな人が欲する能力でしょう。」
そのメイドは時間停止という無法とも言える能力の持ち主だった
能力だけではなく、広すぎる屋敷をほぼ1人で管理できるほど優秀な掃除係である
天然で主人に当たり前のように毒を盛ったりするのがたまに傷だが、それを差し引いても二つ名に恥じないスキルを持った少女だ
「先生、一つよろしいでしょうか?」
と、その時アカネはふと疑問に思った点があった
「彼女は一体どこからあれだけの数のナイフを取り出しているのでしょうか?」
「多分、魔法の力…かな?」
確かに尋常ではない数のナイフを投げまくっているので疑問に思うのも無理はなかった
しかし、このゲームの世界には妖怪や神様がいて魔法もあるのだから細かいことに突っ込むのは野暮というものだろう
なんの説明もなく唐突にマジ◯ル⭐︎◯◯ちゃんス◯ー*2なるものが出てくる世界なのだから仕方ない
「私からすれば皆もあれだけの弾薬をどこから取り出しているのかが不思議かなぁ…」
先生は生徒達の戦う姿を思い出して、苦笑しながらそう呟いた
割と生徒達も無限に弾薬を持っているのではないかと錯覚を覚えるほど弾薬を隠し持ってたりする
とある生徒が露出の多い服で戦闘を行っている際、胸からマガジンを複数個取り出しているのを見た時は先生も驚いたものだ
「ふふ、気になるようでしたら確かめてみますか?」
「…次に行ってみようか!」
アカネはむっつり気質があり、割とそういうことにも乗り気な節がある
冗談では済まないことを察知した先生は全力でスルーした
次は亡命した皇族に仕える忍者のメイドを見てみる
「凄い身のこなしですね。それに鮮やかな変装です。」
「彼女はいわゆる忍者のような家系の37代目の当主なんだって。SPだと本人は言ってるけどね。
全身にクナイなどの暗器を仕込んでいるんだ」
メイド服とは本来跳んだり、走ったりすることには向いていない
それでも何メートルも高くジャンプしたり俊敏に動いているのはそれだけ身体能力が高いということになる
キヴォトス人視点から見ても、とても軽やかな身のこなしだった
「ふむ…なるほど、些か火力不足だと思いますがあの世界の敵を排除するならクナイでも十分なんですね。」
「身体能力自体はぶっ飛んでる人が多すぎるけど、耐久力自体はそこまでだしね。参考になる点はあった?」
「はい、C&Cは潜入任務も多いので、あの変装スキルは参考にさせていただきたいですね。
そしてもう一つ、作中に出て来た僅かな量で大爆発を起こすという希少金属…これは非常に興味深いです。新素材開発部に依頼したら再現できないでしょうか…」
「作中でもやばい物質として扱われてたんだからやめて!?」
結果として、メイドとしての技能とは関係のない危険な技術にアカネの興味が向いてしまった
爆弾魔の気質があるアカネがもしも手にしてしまえば大変なことになるため先生は全力で止めに入った
今度は変わり種で人間ではなく、ドラゴンがメイドをやっている作品を視聴した
「人と竜じゃ常識が違いすぎるから、色々と非常識なことばかりだけど熱意は本物だよ。」
「ええ、わかります。大切な主人のことを思い行動することはメイドに必要不可欠なことですから。それに彼女の雇い主の方がもしいればぜひメイドについて言葉をかわしてみたいですね。」
何かと間違いの多いメイドだが、お世話しようとする頑張る姿は本物だった
それに間違っていればしっかりと正しく教える主人がいるため、少しずつ有能なメイドへと成長していっている
それにもし仮にこのメイドに並々ならぬ情熱を燃やす主人が存在していれば、ぜひ話がしたいと思うほどアカネは気に入っていた
「はぁ…魔法とは便利なものですね。
こんな風に消し飛ばしたものを元に戻せるのなら私も遠慮なく爆破できるのですが…」
(割と頻繁に爆破してると思ってたんだけど、あれで自重してたんだ…?)
ついうっかり消し飛ばしてしまった物を軽々と元に戻すその姿を見て羨ましそうに呟くアカネ
これまでの言動や行動を思い出して疑問に思う先生だったが、言葉には出さなかった
「ふふ、予算に際限がなければもっと派手に決めているのですよ。ご主人様?」
「ナチュラルに心を読まないで?」
出さなかったが、顔つきや態度から考えていることは読まれてしまったようだ
もしアカネが際限なく行動したらどうなるのかを一瞬想像し…怖くなった先生は考えないことにした
「次は、そうですね…
銃火器を扱うメイドはいらっしゃらないのですか?」
「もちろんいるよ!確かにそっちの方が馴染み深いかもね。」
今度は範囲を狭めて、キヴォトス生まれにとっては馴染み深い銃火器を扱うメイドを見てみることに
創作物においてメイドが武装しているというのは外の世界でも珍しいことではない
当然銃火器を持ったメイドも数多く存在する
─人は美少女には何かと武器を持たせたがる生き物なのだ
舞台は現代より少し過去の世界、とある貴族の少年が目的を果たす為悪魔と契約を交わしたダークファンタジー
そこには大きな丸いメガネが特徴の可愛らしいメイドが登場していた
「普段ドジしてばかりのメイドは仮の姿…
本当はとても優秀なスナイパーで、メガネを外すことで本領を発揮するんだ!」
「なるほど、装填済みの銃を複数用意しておくことですぐに連射できると。」
「銃が皆の物と比べて古いのも時代背景を考慮してだね。」
普段は丸いメガネをつけた田舎訛りのやぼったい少女だが、狙撃能力は本物であり暗闇の中からでも的確にターゲットを撃ち抜くほどの優秀なスナイパーとしての姿を見せた
「昔の喋り方はなんだかネル先輩のようですね。」
「育って来た環境が環境だからねぇ…」
元々は密航者でマフィアに使い潰されていた過去があり、その時の口調はネルを思い起こさせる喋り方だった
そんなふうに生きてきた上で、喋り方を訛ってはいるものの矯正させたことに2人は感心した
「ですがメイドたる者、ドジばかりなのはいただけませんね。私も視力は良くない方ですが、ここまで酷くはありませんし…」
「でもそこがギャップにもなっているんだ。普段失敗ばかりの姿だからこそ、いざという時に戦う姿がとても格好よく映ったりね!」
「なるほど…ギャップ、ですか。確かにそういった見せ方もあるのですね。」
─普段の姿を知っているからこそ生まれるギャップ
確かに先生の言うとおり、丸いメガネを外した彼女はとても凛々しく美しい女性に変わっていた
(いつかの制服の時のようにメガネを外し、しばらくの間コンタクトに変えてみるのもありかもしれませんね…)
普段のイメージとは違う姿になることで、ギャップが生まれマンネリ化の防止にもつながる
先生に新鮮な気持ちになってもらえるように今度試してみようかと考えるアカネだった
最後に見せるかどうか心底悩んだ作品が画面に映る
アカネからも遠慮せずに見せてほしいと頼まれたため視聴してみようと決めたのだが…
「………」
「………」
結果、色々と衝撃的な作品だったためなんとも言葉に詰まった
面白いことは面白かったのだが、シリアスな笑いというかクセが強すぎるというか…とにかく怪作という言葉がぴったりだった
「これは一体…こちらの春葉原と似たような場所のようですが…」
「その、見せるか悩んだんだけど…こういう変わったのもあるよってことで…これはメイドの姿をした任侠物だから、笑いながら見てもらえると…」
「…確かに、メイドは盃を交わしたりしませんからね。」
メイドという名のヤクザが萌えと暴力を叩きつけ合う常識外れなお話なのだが、決して任侠要素だけではなくメイド要素も入っている物語だった
「もちろん、私達も変わり種の作品としてみてるからね!外の世界における一般のメイドのイメージがこれとかじゃないから!」
「ええ、わかっておりますよ。
……もし万が一誤ったイメージを持たれていたら、指導させていただこうかと思いましたが…」
色々と衝撃的な作品ではあったが、それでも強烈な世界観がファンを獲得した狂気的な魅力のある作品だった
「とまあ、こんな感じかな。楽しんでもらえたかな?」
「ええ、とても個性豊かなメイドばかりでした。
外の世界において、メイドとは多種多様な存在なのですね。」
先生が思いつく限りに様々なメイドを紹介されて、無事に見終えたアカネ
一口にメイドと言っても本当に多種多様な概念が詰め込まれていた
完璧に仕事をこなすメイドもいれば、ありえないほどドジなメイドもいる
鶴や鬼がメイドになっていれば、擬人化した船がメイドになってたり
主人である令嬢と共にアイドルになるメイドもいれば、男の子がメイドをやっていたり
果ては堕天使やら大精霊やらと属性を詰め込み過ぎて訳がわからなくなってしまっているものまであった
「ふふ、とても有意義な時間でしたよ。最高のメイドを目指す為に必要なことの一つがわかった気がします。」
「それは良かった。その答えを聞いてもいい?」
アカネは数多くのメイドの姿を得たことで、一つの学びを得た
答えを聞こうとする先生にアカネは笑顔で答えて見せた
「はい、それは強烈な個性を手に入れることです。」
「……そっか、なるほどね!」
(……今でも割と個性的だと思うんだけど…!?)
─最終的に他のメイド達に個性で埋もれないよう、とても印象的なメイドとなることをアカネは決心してしまったようだ
「メイドたるもの、主人を差し置いて目立つような真似は控えるべきですが…全く印象に残らないのも問題です。メイドの姿そのものが主人の評価に繋がってしまいますから。
ですので、私も彼女達のインパクトに負けないようにもっと精進いたしますね。
そうと決まれば記憶に深く残るような印象的な登場を考えなくては…
その為にはやはり爆発は必須ですね、キヴォトスに戻ったら早速爆弾の改良を…」
(劇的な登場を演出する為に天井を爆破しながら現れるメイドも中々だと思うよ…)
自作の爆弾を改良するなどもっとインパクトを求めるアカネに対して、先生は言葉には出さなかったが…出会って間もない頃のとんでもない姿を思い返して、苦笑いを浮かべたのだった
『先生!スーパーAIメイドのアロナちゃんというのはどうですか!?インパクト抜群ですよ!』
『アロナ先輩、私達の姿は基本的に先生以外に見えないから意味がないかと…』
古今東西いろんなメイドがいますが、もしかして爆弾魔のメイドってかなり珍しいのでは…?