小学校用務員勤務の俺はなぜか魔法少女になってるわけなんだが、最近児童にバレそうになってる。なあ、どうすりゃいい?   作:境 仁論(せきゆ)

3 / 11
なにこれ。


あ、すみません。10分延長お願いします。

「制限時間!」

 

「15分だよー」

 

「前より5分短いじゃん!?」

 

「早くしないと転身とけちゃうよ~?」

 

 

 

 急かされて紫色の魔法少女は音速で怪異の元へ飛んでいく。

 

 先手必勝、ステッキから光弾を十数発撃ちだすと見事に全弾命中した。

 

 そのまま囲むように飛び回り連射し続けるも、蜂の装甲は硬い。

 

 

 

「出力上げろピンク~!」

 

「もう上げてるよーん。だから5分短いんだよ~」

 

 

 

 背中にくっつくように幽霊も追いかけてきている。初代だけあって平然とこのスピードについてこれているのだった。

 

 

 

「前よりかったい……! おい、お前の時はどうやって倒した!?」

 

「針を引っこ抜いたよ~。そしたら自爆するから~」

 

「針だな!……針!?」

 

 

 

 いやぶっといなアレ! あれ目掛けて飛び込むとか相当頭飛んでるだろ!

 

 

 

「ほらもう10分経つよ~」

 

「だぁーもおーーー!!!」

 

 

 

 一か八か、蜂だけにバチ当たっていく気合で突撃し、ガッチリと向けられた針をスッルリと躱しきって根本の部分を掴む。

 

 そしてステッキを当てて魔力を込める!

 

 

 

「この距離ならバリアは張れないな! バリアねえけど!」

 

 

 

 特大光弾を、一発ブチ入れると巨大な爆発が蜂の内側から起こった。

 

 

 

「ガチあぶねえええええ!」

 

 

 

 割れた針を両手に、爆風に突き落とされていく。

 

 上空の爆炎から蜂の肉片が墜落していくのが見えた。

 

 

 

「ピンク着地頼んだ!」

 

 

 

 霊体の相棒に頼むことではないが、まだこの姿の扱い方にはわからないことが多い。

 

 

 

「しょうがないにゃあ……」

 

と呆れるピンクの補助で、ピュアっとパープルは紙のようにふわふわと浮き上がり、地面に降り立ったのだった。

 

 

 

—————————————————————————————————————

 

 

 

「ふぅー、帰ったら一本開けよ……てか、アレは働きバチだよな?」

 

「そだねー。でも女王様は間違いなくこの辺にいるねー。この短期間で二体も湧いたってことは、確実に巣がある」

 

 

 

 虱潰しに探すか……とブレスレットに手を翳して、転身を解こうとした。

 

 

 

 その、途端。

 

 

 

「わぁーーーーーー!!!! やっぱりピュアっとパープルだぁあああ♡」

 

「ンンッッ!?」

 

 

 

 背後からとても聞き覚えのある声。振り返ってみると案の定、詩音ちゃんが目を輝かせて立っていたのだった。

 

 

 

「あのあの! 私デビューの時から見てて、あごめんなさい勝手に握手しちゃって!  でもでも応援してるのは本当で、それでそれで色々と聞きたいことが!」

 

「あ、ありがとう~☆」

 

 

 

 手をぶんぶんと握られていると、どうにもこの状態の俺は詩音ちゃんより背が低いことに気づいた。ホントに児童じゃん俺……。

 

 いやそんなことより!

 

 

 

 脳内会議、発生! 

 

 説明しよう。俺とピンクは普段は声に出して会話しているが、別に喋らずとも心の声だけで会話することができるのである(いいナレありがとパープル~♪)

 

 ではその様子をご覧いただこう。

 

 

 

『15分って言ったよなさっき! 今、……なんびょ、いや何分残ってる……?』

 

『……』

 

『いやなんか言えって!』

 

『60、59、58』

 

 

 

 まずいまずいまずいまずいまずいまいうまずい!

 

 

 

※以下、パープルが顔面蒼白で質問詰めに合っている様子を、

 

FullHDアス比16:9の壮大脳内映像をお楽しみください。

 

かっこ、右下にカウントダウンが表示されてると面白いよ、かしこ。

 

 

 

Q さっきの蜂、歴代でもたくさん出現した種類なんですけど未だに根絶できてなくてその原因を私も探してるんですけどパープルさんはどうお考えですか!?

 

A べ、勉強熱心だね~♪ でも大元をたおせばなんとかなるから、わたしに任せてほしいナ~?

 

(50、49)

 

 

 

Q その衣装なんですけど、どんなコンセプトでデザインされてるんでしょうか!? もしかしてパープルさん自作? それとも魔法少女専門の仕立て屋があって、そこにデザイン案を持っていくとか、それとそれと

 

A かかかわいいよね~お花みたいで~……

 

(40、39)

 

 

 

Q お花! そうですお花! 私の見立てが正しかったらその衣装、アサガオの意匠が組み込まれてますよね! それとこことかこことかココとか

 

A えーとどうなんだろ(パープル、この子言ってること正解だよ)実はそうなのー! よくわかったねー!

 

(30、29)

 

 

 

『30びょう~』

 

『そんな将棋の大会みたいなノリで言うな!』

 

 

 

Q あれ!? そのブレスレット、光ってる!? もしかしてこれが今期の変身アイテムですか!? 前シリーズはカードを使って歴代の魔法少女の力を使うっていうムネアツなコンセプトだったんですけどまるで新時代って感じのデザインですね! そことなくりんごウォッチに似てて未来を感じます! 見れば見るほどカワイイカワイイデスネ……

 

A あっついっ! あいやそうなんだよ~! アツムネ~って感じダヨネ~!!!

 

(15、14)

 

 

 

『おい転身解けるってなんとかしてくれピンク!』

 

『まだいける、まだ、まだいける』

 

『チキンレース中のマタドールじゃねえんだよ!』

 

『変身バレイベなんてまたとない機会は中々見れないよこれ……』

 

『成仏しろ頭ドピンクが! 延長! 延長してくれ頼むから!』

 

『しょうがないワン。はい転身解除の眩い輝き~』

 

『なんでぇ!?』

 

 

 

 身体が光に包まれる! まずい、元に戻る!

 

 夢見る子どもの希望をブチ壊すわけにはいかない!

 

 憧れの魔法少女が、アラサー用務員のおじさんとか誰得って話だろうが!

 

『割と需要あるけどね』

 

『黙れぇ!』

 

 

 

「うわっ! まぶし……!」

 

 ……! 詩音ちゃんが目を瞑った! ここしかない!

 

 

 

—————————————————————————————————————

 

 

 

 今期のピュアっとシリーズ最新魔法少女のパープルに出会えて興奮していた私だったけれど、突然の輝きに目が眩んでしまい、気づいたときには彼女に逃げられてしまっていた。

 

 見渡しても誰もいない。もしかしたら変身解除したのかも。まだ近くにいるかな?

 

 いやでも素顔をこんなに早く見てしまうのはファンとしての風上にも置けない……

 

 

 

 今日は大人しく帰って、撮ったビデオを見返すことに決めた私なのであった。

 

 

 

—————————————————————————————————————

 

 

 

「あっぶねええええええええって今日何回言った俺ええええええええええ」

 

 

 

 電柱の陰に隠れて汗だくで詩音ちゃんが通り過ぎていくのを待ったのだった。

 

 

 

「うん、やっぱり変身バレは後半になってからの方がエモいから、今はまだいっか。ナイス判断パープル!」

 

「いい。そういうのいいからもう帰る……」

 

「しょぼくれてるおじさんも可愛いね……」

 

「お前歪んでない?」

 

 

 

—————————————————————————————————————

 

 

 

「ただいまー!」

 

「おかえり詩音ー」

 

 

 

 私は家に戻ってくるとすぐにお母さんの元に駆け寄った。

 

 

 

「ねえねえお母さん今日もパープル見た!」

 

「あらそう、よかったわね。でも怪物は危ないから、あまり近くに寄ったりしたら……あーもう部屋に戻っちゃった。今日は鍋にするからねー!」

 

 

 

 早く撮った映像を見たい。お父さんのお下がりの4K撮影可能な『LUMEX DCG一億ブラック』で撮影したピュアっとパープルの姿を再確認したい。

 

 

 

「転身転身てんし~ん!」

 

 

 

と興奮冷めきらないまま階段を上がっていった。

 

 

 

「そんな、今は土曜の17時になってるけどイメージ的には金曜のゴールデンタイムアニメの合間に流れていた通信教育のCMみたいな声を出すのはやめなさ~い。私がアグ〇ネス・チ〇ャンみたいになるわ~」

 

 

 

というお母さんの声を背中に浴びて。

 

 

 

「パープルっ、パープルっ」

 

 

 

 扉を開ける。私はこの時、本当に心の奥底から魔法少女のことで頭がいっぱいだったけれど。

 

 

 

「……あ……」

 

 

 

 部屋に入った瞬間、一気に血の気が引いてしまった。

 

 

 

「……詩音。アンタまだそんなものに夢中になってんの?」

 

「……お姉、ちゃん」

 

 

 

 私の苦手な人が、帰省していたのだ。

 

 

 

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 

頭おかしいんじゃねえか?

 

 




こんなものをどうして追おうとするのでしょう。私にはてんで検討もつきません。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。