「おはようございますスズカさん!」
「おはようフクキタル。今日は少し遅かったわね。」
これから登校するウマ娘たちで賑わう寮の玄関口で合流した後、2人は談笑しながらトレセン学園へと向かう。
サイレンススズカとマチカネフクキタルは入学当初から仲が良かったが、金鯱賞以降はより一層距離が縮まり、今では毎日必ず一緒に登校するほどの仲だ。
「そういえばまたスペちゃんの実家から仕送りが届いたのよ。私のは少なくていいのよって言ったのに今度は2箱…」
「あちゃ〜…前は1週間にんじん生活でしたね。ご愁傷様です。」
「だからフクキタルにも食べるのを手伝ってほしいの。具体的には1.5箱分くらい。」
「そんな量食べたら太り気味になっちゃいます〜!この前トレーナーさんに間食を控えろって言われたばかりなんですよぉ!?」
「食べた分走ればいいじゃない。私も付き合うわよ。」
「ダメですダメですぅ〜!!」
そんな他愛もない話を数十分していると学園だ。たづなさんに挨拶をし、正門を抜ける。教室に向かう途中、フクキタルが立ち止まる。
「そうだっ!スズカさん!今日のラッキーアイテムをお渡ししておきますねっ!」
「大きいのはやめて頂戴ね。あと生き物も…」
このやりとりも恒例であり、スズカは毎朝フクキタル曰くラッキーアイテムであるらしい有象無象を半ば押し付けられるような形で渡されている。
時折鯛の置き物などといった置き場に困るようなものを渡されたりもするが、フクキタルは善意で薦めてきているのを分かっているのでスズカも律儀に受け取っているのだ。
「今日のラッキーアイテムはチョコレートです!ささ、スズカさん、どうぞどうぞ!」
「あら、ありがとう。わざわざラッピングまでしてくれたのね。」
言い終わると同時に予鈴が鳴り、2人は駆け足で教室に向かった。
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「―バレンタイン?」
「はい!スズカさん、もしかして忘れてたんですか?私もさっきトレーナーさんにチョコ10箱渡してきましたよ!」
「…随分と気合が入ってるわね。」
「ホワイトデーで3倍になって返ってくるらしいので!」
トレーニングの後、寮で同室のスペちゃんに、やたら色めきだっていたスカーレットを筆頭とする集団のことを話してようやく、今日がバレンタインデーである事を思い出した。ふと、今朝の出来事を思い出し、鞄からチョコレートを取り出す。
・・・このチョコレートはもしかするとそういうことなのだろうか、なんて考えていると、スペちゃんが私の持ってるものに気付いたようだった。
「あれ、スズカさん、チョコ持ってるじゃないですか〜。誰かに渡す用ですか?」
「そうじゃないわ。貰ったのよ。フクキタルに。」
「貰った!?いいな〜、私もトレーナーさんに貰えばよかったなー…」
「ホワイトデーに3倍になるんじゃなかった?」
軽口を叩きつつも、ラッピングを丁寧に剥がしていく。
箱を開けると、中には様々な形のチョコが詰めこまれていた。
「わぁ!美味しそうです〜!」
横から覗き込んで目を輝かせるスペちゃんを尻目に、星型のチョコレートを口に運ぶ。
練習終わりで疲れた身体に染み渡るような甘さ。
続けざまにいくつかのチョコを口に放り込む。手作りのチョコは市販のそれとは舌触りが違って、優しい味がした。
隣で物欲しそうな目をしているスペちゃんにもおすそ分けしてあげようと、箱に伸ばした手がハート型のチョコに触れる。
「スズカさ〜ん…私も一個…」
「ふふっ、ダメよ。これは私のラッキーアイテムなんだから。」