※唯視点
「ふんふ〜ん♪」
私、平沢唯!
今日はりっちゃんたちと待ち合わせするために、ライブハウスに向かってる
ライブハウスの名前は……何だっけ? 回るなんちゃらかんちゃらだったような……
「おっ! 唯も来たな〜!」
「りっちゃ〜ん!」
「ったく、唯が最後に来るのは相変わらずだな。」
「本当ですよ。」
「さて皆揃ったことだし、お茶にしない?」
放課後ティータイムは、私たちが高校生の時の軽音楽部で結成したバンドで、さわちゃんこと山中さわ子先生が名付け親
メンバーは澪ちゃん、りっちゃん、ムギちゃん、あずにゃん、そして私!
「唯、誰と話してんだ〜?」
「あれ? 今誰かと話してたような……?」
「しっかりしろよな? それよりも……」
「本番前に音合わせしておきましょう!」
「え〜、まずはケーキ食べてからがいい〜。」
「そうね、早く食べましょう?」
「何年経っても、私たち変わりませんね。」
高校を卒業した後も、桜高の軽音楽部はあずにゃんが引き継いでくれて、私たちは大学でも放課後ティータイムとして活動していた
大学卒業後はそれぞれ就職したりしたけど、今でもこうやって集まってお茶をしている
「バンドもやってます!」
「お〜、あずにゃん、勿論バンドもやってるよ〜!」
「そういやムギ、トオルとは連絡ついたのか?」
「お手紙は送ったんだけど、まだ返事は来てなくて……」
「あ! 徹くんなら、この前電話で話したよ!」
「何て言ってた!?」
「えっと、行けたら行くって言ってたけど……」
「あいつ、まだあの事気にしてるかもしれないしなぁ……」
「あの事って何ですか?」
「あずにゃん、それはね……」
澪ちゃんが言ったあの事
プロギタリストとして注目を集めていた徹くんが、日本を発つきっかけになってしまった事件
そう、全てはあの日から始まった……
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※徹視点
〜2年前〜
「俺にアイドルバンドのレコーディングですか?」
それは、とある芸能事務所の社長からの依頼だった
最近はガールズバンドブームが起こっていて、昔よりも色んなガールズバンドを見かける機会が多くなった気がする
「俺で良ければ引き受けさせて頂きます。」
「ありがとう、よろしく頼むよ。」
なるほど、バンド名はPastel'Paletts
アイドル研究生、モデル、女優、ドラマー、オーディション合格者……様々な経歴のやつらが揃ってるな
まぁ、CD音源はプロである俺たちがレコーディングするなんてザラにある話だし、変な依頼じゃねぇよな
「彼女たちのライブは一週間後だ、是非観に来てくれたまえ。」
「観に行かせて頂きます。」
アイドルたちが自ら演奏するバンドなんて面白そうじゃねぇか
しかも、観客は1万人という豪華なお出迎えだ
そんな期待を胸に、観に行ったライブは……
「パスパレ、大失敗! 口パク&アテフリが当日にバレる」
俺は何も知らされていなかった、彼女たちがアテフリだったなんて
その時レコーディングした仲間たちに話を聞いても、皆知らなかったと言う
このことは大きくネットニュースに取り上げられ、レコーディングをした俺たちミュージシャンにも飛び火した
その当時、俺はそこそこの知名度を誇っていて、レコーディングメンバーで唯一名前が記載されていたから、批判の的になってしまった
幸い、他のミュージシャンへの誹謗中傷はあまり無かったと聞いてるが、俺は日本へ居ることが苦しくなっていった
「俺は海外に行くから皆にはしばらく会えなくなる、でも俺が帰ってくる頃にはほとぼりは冷めていると思うから、その時はまたセッションしよう。」
そう仲間たちに告げて、俺は日本を飛び出した
いや、逃げたんだ、この現実から
帰ってくるなんてあり得ない、逃げるための口実にすぎない
だから、もう日本の土を踏むことはない……そう思ってたのに、高校時代の幼馴染から手紙が来た
ネット上で俺の名前を検索してみるが、誹謗中傷のコメントは見当たらない
というか、そのコメント自体が2年前で止まっている
俺は完全に忘れ去られたということか?
これをほとぼりが冷めたと言うならば、唯たちのライブを観に行くだけならできるか……
けど、一生かけてでも、日本で音楽をすることは出来ないんだろうな……
社長には悪いが、あの話は無かったことに……
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※紬視点
「そ、そんな事が……」
「たまに連絡取ったりはするけど、本人は日本に帰ってくるつもりは無いみたいだしな……」
「はぁ〜……トオルにもライブを見せたかったな〜!」
「そんな話があったなら仕方ないですよ、尚更帰ってくるのは難しいと思います。」
「……ねぇ、皆?」
「どうしたの、ムギちゃん?」
「これ……」
私がスマホで皆に見せたのは、徹くんの事件のキッカケになったPastel'Palettsの記事だった
「これが徹くんの……皆、可愛いね!」
「おぉ〜! 澪にこういう服着させてみたいな〜!」
「ちょっ、律!?」
「東京アイドルサミットって……テレビでやってるのを観たことあります!」
「あれ? じゃあ別に徹はもう大丈夫なんじゃ……」
「そうなのよ、徹くんはPastel'Palettsのアテフリを手伝っていたから、申し訳ない気持ちになって日本を飛び出したのだと思うのだけど、彼はこのことを知らないんじゃないかしら?」
もし、徹くんが今のPastel'Palettsの活躍を知っているとするのならば、日本に帰ってきて音楽をすることは何も悪いことじゃないはず
でもそれをしないってことは、よっぽどあの事件のことを引きずっているのかもしれない
「だ、だったら、早くその事を伝えるべきです!」
「梓ちゃん……」
「そうだよ、話してあげようよ!」
「分かった、私、社長に取り合ってみる!」
「なぁ律、社長ってまさか……」
「その、まさかだよな……?」
私はとある人物に連絡を取った
そしてこう伝える
「徹くんがライブできる場所を確保して下さい!」