公園から運び出されるブルーシート
土に染込んでいる多量の血
大量の野次馬と警察官にパトカー
「…うっへぇ…こりゃマジものじゃんかよ」
マンションの上から双眼鏡で近くの公園を見ている
この少女は柩 明日香 今はフリーター
整えないボサボサの髪に高校の頃のジャージ
実にだらしない格好で外を見ていた
何でも殺人事件の現場が近所の公園と聞いて
人ごみでは見えない所を運良く自分の
マンションの階から覗き見出来たらしい
「マジでやばいって!みなみも見てみなよ!」
「本物なんて滅多に見られないって!」
声を掛けた先では食事をしている少女がいた
和風に仕上げた食事なのに一つ違和感をいえば
端に置かれた珈琲であろうか
「興味ない…ってかやめなよ、見っとも無い…」
柩みなみ、明日香の妹であり大学生
明日香とは裏腹に一般入試で大学に合格
父親に稽古をつけて貰っている事から
空手のサークルに入っている
大学でも大学でもまぁまぁ有名な身であった
「えー絶対見てたがいいってば」
暢気な声を上げる明日香に対し溜息をつく
「大体、殺人事件なんでしょ?…人が殺されてるのに何面白がってるのよ」
そう言うとみなみは珈琲を飲み始めた
「そうだよねー、何で面白いんだろーあはは」
姉妹と言えどこれほどまで似ても似つかない
むしろ家を出ない姉の存在が友達に知られていない事に
みなみは密かに安心していた様な気もする
「…ごちそうさま、学校行ってくる」
「ん?もうそんな時間ー?」
手さげの鞄を抱えるみなみにやっと明日香が振り返り言う
「今日は早い日なの…あ、そうだ」
振り返ると部屋の置くの仏壇の前に座るみなみ
明日香も思い出したかのように隣に座る
これだけは二人が毎日きちんとこなしている日課だった
「いってきます、お母さん」
両手を合わせながら母の写真に話しかける
もうあれから9年も経つのか
母はとても家族を愛した人だった
勿論みなみも明日香も母が大好きであった
しかし突然の出来事だった
母は引ったくりにあい、抵抗した後
刃物のようなモノにより殺害された
凶器の表現から分かる通り
この事件の犯人は見つかっていない
未だにまだこの町にうろついているのかもしれない
そう二人は心の何処かで思っているかもしれない
「…よし、お父さんは今日も遅くなるらしいから」
「分かってるよー、先に食べちゃうー」
明日香は正座に疲れたようにその場に寝そべりながら返した
「あんまりカップ麺とかじゃなくて…栄養のあるもの食べなよ?」
呆れながら部屋を出ようとするみなみ
「…ねー、みなみ」
「ん?なに?」
明日香が不意に声を掛けてきて振り返る
明日香は天井を見つめながら言った
「ウサギには、気をつけて」
「…え?」
言葉の意味が分からず声を漏らすみなみ
何の事だろうか、ウサギとは
「…あはは、気にしないで!さー学校行ってきな!」
「…う、うん…行ってきます」
言葉の意味を考えた表情でみなみは部屋を出た
明日香は手を振りながらドアが閉まるのを確認すると
さっきまでの疲れっぷりが嘘だったかのように
元気に立ち上がると双眼鏡を手にした
「…噂だけじゃ、無かった」
どこか遠い目をしつつ、明日香はまたベランダの外から
その公園の光景を覗き見し始めた