月詠大学、家庭科サークル
一見地味なサークルであり
殆どが幽霊部員のサークルであった
そのサークルにまたいつもの面子が揃っていた
「はぁ…皆来てくれないねー」
「そ、そう…だね…」
一人は部室の真ん中でぬいぐるみを作っている
三島雛乃、大学でも人気のある生徒であるが
サークルだけはどうも人気がなく
ここでは普通の一部員として活動している
趣味でぬいぐるみを作っているが為
このサークルに入ったのであるが
部員が全然来ない為に一時はやめてしまおうとも思った
もう一人の少年が来るまでは
「で、でも…僕は静かで…落ち着く…」
真っ黒な落ち着いた髪型のボソボソ喋る少年
壱島冬悟、三島とは同じ学部の部員であった
女の子が持っていそうなアンティーク人形の
服を三島の正面の席で編んでいた
なんでも家に沢山あるアンティーク人形に魅了され
こんな男の子では珍しい趣味を始めたらしい
普段も人形を持って歩いてる事があるらしく
周りの学生からは気味悪がられたり
馬鹿にされたりと後に
人を怖がってしまうようになった
ある一人を除いては、だった
「私は!それでも皆と活動したいのよー」
じたばたと足を子供のようにする三島
「あはは…三島さんは人が多いほうが良いんだ…」
その様子を壱島は微笑みつつ見ていた
彼は部活の影響からか彼女に好意を抱いてるようにも見える
そういう面も見られた
しかし彼自身そういう発想まで至れず
いや、自分に素直になれないというのが現状だった
だから2人きりになれるこのサークルに
いつも参加してるのであった
「壱島君は寂しくないの?折角他にも部員いるのに」
「なのに部員の9割が月1参加って何なのよ!」
「しかも様子見だけで少ししたら活動せずに帰っちゃうし!」
熱心に愚痴を喋っていく三島
「み、皆きっと忙しいんだよ…バイトとかで」
それに対しおずおずと返事を返す壱島
「ふーん…そっか、皆忙しいんだなー」
三島は呟くと机に頭を突きながら
窓のほうを向き始めた
どこか寂しそうな、皆から一人置いていかれてるような
そんな目をしていた
「…だ…だい、じょうぶ」
壱島が小さな声で喋りだすと三島は顔を上げた
「ぼ、僕…は、いつも…ひ、暇だし…その」
「いつも来る…から、サークル…楽しいし」
ぼそぼそと小さな声だったが
三島には2人しかいないその部屋で言葉が理解でき
ぱぁ、っと表情が明るくなり服を編んでいる途中の
壱島の両手を握り締めた
どうじに壱島も緊張を露わにするように赤面し
つい肩に力が入ってしまう
「ありがとう壱島君!私もこのサークル好きだし…素直に嬉しい!」
「ど…どうい…たしま…」
想い人に純粋な瞳で見られて、緊張を隠しきれない壱島は
この後、豪華に失神してしまったらしい
同時刻 公園にて
一人の刑事が現場の様子を眺めていた
「これは酷いな…」
その公園は鉄の匂いで鼻がどうにかなりそうだった
さらに目の前には追い討ちを掛けるように
同僚が八つ裂きに、視覚からも精神面でダメージ
本当にどうにかなりそうだった
「犯人は不明、凶器も不明…捜査は絶望的だな」
この刑事、御堂篤志は刑事課でも特に優秀な刑事だった
過去に何度か捜査の軸となって
事件を解決へと導いた事のある刑事であった
その実力は銃の扱いは使わせれば成績優秀
柔剣道もかなりの成績を残している
数々の犯罪者を捕まえるに十分過ぎる実力を備えていて
警察内でもかなり信頼を得た人材だった
「何か小さなものでも良い…犯人に繋がるモノが無いか…」
首の無い死体、それから八つ裂きにされた警官の死体
これ以外は一切何も物的証拠品は見つかっていない
このままでは捜査は完全に滞ってしまう
そうならないように御堂は現場を何度も見返した
「…やはり無いか」
一度車に引き帰そう、そう思って振り返った時
ふと頭の中に調べていない場所が思いついた
「…あの死体…何か無いんだろうか」
調べによるとその2つの死体には不可思議な点が一つ
死体を動かしても、影が残っていない
と言うか、できないのである
日の光に当たるように腕を上げてみた所
影が何らかの現象で出来上がらなかった
これは必ず何かある、そう御堂は見ていた
死体が運ばれる前に御堂は死体の前にしゃがんだ
あの御堂が来たら必ず何かある
信頼を持たれた御堂の周りから鑑識が邪魔にならぬよう
半歩下がった
御堂はゴム手袋をすると死体の腕を動かした
やはり影はできない、ではどうして?
こんな現象が起こりえるモノなのだろうか?
そもそもこの死体は普通の死体なんだろうか?
段々目の前のモノが人意外のモノにも見えてきた
すると御堂が何かを発見した
死体の下に何かが落ちていた
それは、少し大きめのボールペンであった
すぐさま鑑識に渡すとただのボールペンで無いことが分かった
「これは…カメラですね」
「カメラ?どういう意味だ」
鑑識の言葉に首を傾げながらゴム手袋を外す御堂
「最近通販サイトやカタログにも載ってますよ」
「この先端の部分に超小型のカメラが仕込んであって
「中に入っているSDカードに保存される…」
淡々と解説していく鑑識に御堂は呆れ顔をした
「殆ど盗撮用具…そんな物売ってるのか、今の世の中」
溜息をつくと鑑識が「違いますよ」と言い放つ
「確かにその手の使い道もありますが、ビジネス用ですよ」
「会議の風景とか相手の顔とかを撮影したり」
「動画も録画できるらしいですからね」
鑑識の解説に対して驚きを見せていた
「…妙に詳しいんだな」
「じ、実は少し興味もあって偶然知っていたものでしたから」
ちょっと焦りを見せる鑑識に御堂は少しだけ疑いのまなざしを向けて見た
「それで?写真は残っているのか?なにか」
「あぁ、確認して見ます」
鑑識はパソコンを起動させるとSDカードを差し込んだ
中からは複数の女性の写真が出てきた
「誰だ?この女」
「恋人…でしょうか?でも他の女性の写真も…盗撮ですかね」
「やっぱりそういう目的で使う奴が…」
「きっと綺麗な女性を見境なく撮影していたのでしょう」
呆れ顔を隠せない御堂、様子を見計らい他の写真を確認する鑑識
すると途中で
「…御堂さん!この写真…事件当日に撮影された写真ですよ」
途中で見るからに夜を撮影したような写真が並んだ
しかも撮影された時刻も殺害の起こるすぐ前だった
「…あ、ここにも別の女性が写ってる」
鑑識がそう言うと写真を画面に大きく映し出した
その写真には、一人の少女が写っていた
真っ白な服を着た不思議な少女だった
そしてよく見ると撮影場所は…
「おい…これ、この公園のあの樹じゃないか?」
写真に少女の後ろに写っている樹を指差した後
警察の死体が置かれているすぐ隣の樹を指差した
「ほ、本当だ!」
驚きを隠せないまま表情に出た鑑識
そのまま他の写真も確認していく
すると途中で手が止まった
「…?どうした」
「…御堂さん…これは」
鑑識の顔色が次第に怪しくなっていった
御堂が画面を見ると、驚愕した
そこには、少女の前で黒いナニかに
襲われる警官の生前の姿が映っていた
「こ、これは…!?」
「きっと犯人を見たこの男性は犯人を撮影していたんですよ!」
周りの警官が一斉にその台詞に反応し目線を集中させた
御堂は他の写真を自分で確認し始めた
くっきりと、次々に殺害されていく写真がでてきて
段々と写真の中の警官が倒れていく
そして、次の写真には
真っ黒なナニかが固体を残したまま写っていた
これが、犯人?それとも凶器?
凶器という考えはおかしいとは思わなかった
何故なら最も怪しい『人間』がいたのだから
「まさか…この少女が犯人なのか?」
その少女は写真の中で
酷く残酷な、冷たい目をしていた…
そんな気がした