下北沢の大天使をデロデロに甘やかしてドロドロに依存させたい   作:百合好きの獣

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隔日か2日ごとなら無理なく投稿し続けられるじゃ~ん♡ と考えたお馬鹿さんは、休みを与えたらそのままズルズルと投稿間隔が開くことが想定出来ていなかったので尻に火をつけて燃やしておきました。

※いつも感想高評価ここすき、誤字報告やお気に入りありがとうございます。


♯13 おさななじみ の 誕生日

 

 

 

「うぅん……どれがいいかな……」

 

 オーディションに合格し、無事ライブへの参加を勝ち取った結束バンド。翌日はこれまでの疲れと、これから本格的にライブに向けた練習が始まるためその英気を養うために全体休日としていた。

 で、その休日に虹夏は珍しく一人で渋谷にある大型ファッションビルへとやってきており、何やら品定めをしていた。

 

 ディスプレイされた商品を見比べ、ああでもないこうでもないと頭の中で検証をする虹夏に、偶然同じ場所を訪れていた郁代が声をかけた。

 

「あれ? 虹夏先輩?」

「ん? ああ、喜多ちゃん! 偶然だね!」

 

 やほーと声を上げる虹夏に、郁代も近づいて挨拶を返した。

 

「虹夏先輩も買い物ですか?」

「うんそうなんだ。まああたしのじゃないんだけど」

「……? どういうことですか?」

 

 手に取った商品に目を向けたまま、虹夏はあっけらかんと言った。

 

「百合のねー、誕生日が近いんだー」

「へぇー、お祝いしなくちゃですね。いつなんですか?」

「8月8日」

 

 郁代はスマホで日付を確認した。8月2日。

 

「一週間もないじゃないですか!? ああどうしよう……私も何か用意しないと……」

「あー、まあ百合は祝おうって気持ちをこそ喜ぶから、あげるならあまり凝ったものとか高い物じゃないほうがいいよ」

「分かりました! 渋谷に来てて良かった……あ、後藤さんにも教えてもいいですか? せっかくならバンドメンバーでパーティやりましょうよ」

「それいいアイデア! じゃああたしもお姉ちゃんにSTARRY使わせてもらえないか聞いてみるね!」

「はい! あ、ところでなんですけど」

 

 爆速で誕生日企画を打ち立てた郁代は、あたりを見回して困ったように頬をかいた。

 

「……それをプレゼントするんですか?」

「そうだよー」

 

 虹夏が手に持っているのは黒くて、スケスケで、レースもついていて、面積の小さな布地。

 いわゆる下着であり、二人が居るのはランジェリーショップだった。

 

 郁代は何も言わずに苦笑を張り付けたまま、見なかった聞かなかったことにして退散した。

 

 

 

 

 

 

「「「「百合(ちゃん、先輩)誕生日おめでとーーっ!」」」」

 

 パン、とクラッカーが四つ、鳴らされる。舞い散る色とりどりな紙吹雪がひらひらと床に落ちていった。

 8月8日、当日。結束バンドの面々は百合の家へと集合していた。流石にSTARRYは夏休み期間という事もあり利用客がおり、本日も絶賛営業中であった為。星歌は非常に名残惜しそうにしながらも辞退し、プレゼントは今朝早々に百合へと渡されていた。

 

 『本日の主役』と書かれたタスキをかけ、頭に紙で出来たとんがり帽子を被った百合が、少女のようにほっぺたを赤らめ嬉しそうに笑う。

 

「……みんな、ありがとう」

 

 口々に祝いの言葉をかける結束バンドのメンバーは、休日ということで装いも華やかな私服だった。

 フレアワンピースやフォーマルなジャケット、オーバーサイズのシャツにピンクジャージ。

 ……おかしな格好の奴がいるが、こいつはいつも同じ格好なのでヨシとする。ちなみに、百合の家に来た時何を勘違いしたのか『本日の主役タスキ』と『パーティ用のとんがり帽子』、『星型サングラス』を装着していたため、それらは笑顔の郁代に奪われ百合に装備された。星型サングラスだけは鞄に仕舞われたが。

 その格好で下北沢の街を歩いていたものだから、通行人には『令和に現れたパリピ食い倒れ人形』という都市伝説として語られることになったのはご愛敬。

 

 閑話休題。

 

「それじゃあ早速プレゼントタイム!!」

 

 虹夏の音頭で、それぞれが百合にプレゼントを渡す事となった。

 

「じゃあ私から先に。はい百合、誕生日おめでとう」

 

 先陣を切ったのはリョウだった。包装用紙もないシンプルなCDケースを百合に手渡した。

 

「私のプレイリストからおすすめの曲をまとめたやつ。世界に一枚しかないリョウオリジナルアルバム」

 

 なんと驚きの0コスト。ただ、こいつの場合そこそこ親しい相手の誕生日でもティッシュを渡そうとしたり、即席で作った雪だるまを渡そうとしたりするので、事前に準備しているだけ大分祝う気持ちが強かった。

 ネタ晴らしをすると、こちらを威圧感のある笑顔で見つめている虹夏による脅迫――もとい、「普段世話になってるんだからしゃんとしろ」という教育的指導の結果なのだった。ほぼ毎日お弁当を作ってもらっているので、正論である。

 

 百合はそれを嬉しそうに受け取り、机の上に置いた。

 

「じゃあ次は私が! お誕生日おめでとうございます!」

 

 次鋒、郁代。

 

 ぶっちゃけこの結束バンドの中では虹夏と並ぶ常識人である。

 ただ、その常識は我々の知るものとは少し違い、憧れの人物の娘になりたいと宣う等ところどころにやばい人が見え隠れしているが、それでも常識人なのだ。ぼっちとリョウが強すぎるだけ? それはそう。

 虹夏と並ぶとしたのは、虹夏もいわゆる『ザ・普通の女の子』だが、それには注釈として(百合が関わる事を除く)とついてしまうからだ。

 

 さて、そんな常識人である郁代のプレゼントは、可愛らしくラッピングされた小包。正方形で、リボンシールに『Happy BirthDay』と書かれている。素晴らしい。普通だ……。

 

「……あけてもいい?」

「もちろんです! 喜んでもらえるといいんですけど……」

 

 丁寧に包装を解くと、出てきたのは丸い小瓶に入ったもの。外見からは化粧品のように見える。

 

「……ハンドクリーム?」

「はい! 百合先輩は家事をされるって聞いてたので、ハンドクリームなら多くあっても困らないかなって」

 

 さすが陽キャの化身。良く人を見ている。チョイスも相手の事を考えた物であり、外れないものなあたり上手い考えだ。

 

 ただ、普通だ。

 

 悪いわけではない。むしろ友人への誕生日プレゼントしては高得点。

 

 だが、普通だ。

 

 リョウは口には出さなかったが「面白くないな」と思っていた。大変失礼だった。

 

「……ありがとう。大事に使うね」

「本当はコスメとかにしたかったんですけど、百合先輩がどういうの使ってるか分からなかったので……今度一緒にお買い物行きましょうね!」

 

 キターン! という効果音が聞こえるほど輝く笑みを見せる郁代に、百合は微笑んだ。

 

 ここまでが前座。場を温める役割。

 

 一番近しい関係である虹夏は最後にするとして、一同の視線はひとりへと向かった。

 

「あっ、つっ、次は私です……その、すっ、すみません。何が良いか迷って結局選ぶことが出来なくて……」

「……大丈夫だよ、ぼっちちゃん。さっきも言ったけど、お祝いしてくれるだけでとっても嬉しいから」

 

 ひとりは慌てながら弁明をするが、バンドメンバーとはいえ出会って間もない関係であり、かつ誕生日も直前まで知らなかった為仕方のない事ではあった。

 むしろ、こういう場に来てくれた事こそを百合は喜んでおり、誕生日会前にべた褒めして一度溶かしていた。

 

 だがひとりはそれでも何かプレゼントしたいそうで、一生懸命考えたのだという。

 

 そしてひとりはおもむろにギターを取り出した。

 

「あっあのっ、なので、私からはうっ、歌をプレゼントします……!」

 

 確変突入。

 まさかの誕生日プレゼントに自作ソングの披露。

 これだよこれ、これこそが生粋のロッカー、後藤ひとりの真骨頂。

 

 後藤ひとりは普通が分からぬ。ひとりは、ぼっちである。ギターを弾き、ソロで遊んできた。けれども陽キャに対しては、人一倍妄想を重ねてきた。

 重ねた結果、なぜかインパクトを重視してしまう暴走癖により、全身段ボールでライブに出演する等妙な所で思い切りが良い。

 

 ひとりがギターをかき鳴らす。

 

 曲名は『陰キャが誕生日に送るキャロル』

 

 ひとりは必死に演奏した。人前での演奏は百合との特訓があるとはいえ、複数人に見られながらは経験が全くない。そのため緊張で指がカチコチになってしまい、けして本来の実力ではないが、それでも「おめでとう」という気持ちを込めて弦をかき鳴らした。

 

「ごっ、ご清聴ありがとうございました……」

 

 結果。

 虹夏も郁代も引きつった笑みを浮かべており、リョウは「さすがだぜ、ぼっち」とロックンロールそのものなプレゼントに感嘆の表情。

 

 演奏自体は、決して下手ではなく、むしろ上手いと思える代物だった。だが、誕生日プレゼントに歌を送るのは率直に言って『無い』というのが郁代の感想だった。

 

 ちら、と郁代は百合を盗み見た。見ていた側の自分たちですらちょっとどうかと思う物だったので、これを送られた側は――

 

「……ぼっちちゃん、すごく嬉しい」

 

 どちゃくそ刺さっていた!!

 

 ほろりと涙を流しながら拍手をする百合は、さながら幼い娘が描いた絵をプレゼントされた親そのもの。

 

 音に対する感受性豊かな百合は、ひとりの心を込めた演奏に涙していた。

 

「……ぼっちちゃん、ありがとう。すごく心が籠ってて良かった。後でお部屋で一緒に演奏しよ?」

「あっ、うぇへへ……その、喜んでもらえて私も嬉しいです……」

 

 今日いち喜んでいる様子の百合に、ひとりも表情をだらしなく緩めて破顔していた。自分が選んだ誕生日プレゼントが『これ』に負けたという結果を知り、郁代は「うそでしょ……」と愕然としていた。

 故に郁代は放念していた。この後に控えている大将が虹夏だということを。そして彼女が選ぼうとしていたものがなんだったかということを。

 

「はい! じゃあ最後はあたし!!」

 

 少しジェラった虹夏が声を張り、自身に注目を戻した事で、ようやく郁代はこの後待ち構えているであろう事態を察した。

 

(い、いけないわ! このままでは楽しいお誕生日会が卑しいお誕生日会になってしまう! 私が止めないと――!)

 

 だが、行動に移るのはいささか遅かったようだ。

 既に虹夏はプレゼントを百合に渡しており、百合は包みを嬉しそうに開けていた。

 

(終わったわ……これでまた虹夏先輩と百合先輩の二人っきりの世界になってしまう――あら? 別にいつもの事だし構わないのでは??)

 

 それもそうだった。身近な先輩同士ではあるが、目の間でアダルティックな恋愛模様が見れるならそれもそれで悪くないと郁代は思った。郁代はおしゃまな女の子だった。

 

 先ほどから一転、ちょっとわくわくした気持ちで百合の開封を待つと、取り出されたのはごく普通のネックレス。高校二年生の女子が送るものとしては若干背伸びした感はあるが、郁代が期た――危惧していたものではなかった。

 

 結局アレは買わなかったのかな? と郁代が思っていると。

 

「喜多ちゃん」

 

 虹夏が振り向く事もなく、郁代に向けていった。

 

「“あの時持っていたアレじゃないのかな?” とでも思っていそうだね……?」

 

 顔をぐりんと向け、『してやった』ような笑みを浮かべる虹夏。頭上のドリトスが高速で揺れる。内心を当てられた郁代は冷や汗をかきながら弁明しだした。

 

「いやっ、そのっですねっ……?」

「あはは、冗談冗談。分かってるから。ていうか、皆が居る場でアレを渡すわけないでしょー?」

「そ、そうですよね!! あはは、私ったら早とちりしちゃって……!」

 

 幸いお咎め無しだったので、郁代はほっと胸を撫で下ろす。

 

(ん? 虹夏先輩はアレを買ってないとは言ってないし、“皆が居る場では”ということは、他の人が居ない場で渡すということなのでは……?)

 

 郁代がそのことに気づいたのは、誕生日会が終わり帰路の途中での事だった。

 

 

 




仕事上そろそろ本当(リアルガチ)に忙しくなるのでしばらく投稿出来ないかもしれません。許して

・彼氏にしてはいけない3Bの人
流石に雑草生活を防いでくれる恩人相手にポケットティッシュは憚られたらしい。音楽は雑食系な百合を自分好みの音楽に染めようとひそかに画策中。

・陽キャの化身
人の恋愛模様を眺めるのは楽しかろう。だがいずれお前もぼっちちゃんと良い雰囲気にしてやるから覚悟しておけよ。

・パリピ食い倒れ人形
お歌のプレゼントは黒歴史にはならなかった。だがこれに味を占めてしまうので次もし同じことを百合以外にやった場合黒歴史になる。これが修正力ってやつか…。

・アレ
その日の夜プレゼントされた。着てみせてあげた。完全にバカップル。

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