下北沢の大天使をデロデロに甘やかしてドロドロに依存させたい   作:百合好きの獣

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うおおおおおおおっ!! 間に合ええええええええっ!!!!!!(間に合わなかった顔)

いつも感想高評価、ここすきにお気に入りありがとうございます。
前回の続きと、おまけの二本。なぜかおまけはスラスラかけました。なぜだろう??


♯8 おさななじみ と メンバー集結

 

 

 

「きっ、喜多さん!!」

 

 百合がその声を聞いたのは、開店時間になったので通報されないようにバックヤードへと追いやられ、その中で細々とした雑務(在庫整理や領収書と帳簿の付き合わせ等)を行っていた時だった。

 

「百合、あいつら上がらせたからお前も――って何やってんだ」

「……ん、いろいろ。あ、おね――店長、ここ領収書と数字合ってなかったよ」

「げ、まじか。あー、後で直しとくわ。いつも悪いな」

「……だいじょぶ。わたしは裏でしかお手伝いできないから。ほんとは、みんなと一緒にバイトしたいのに」

 

 そう言って、百合はぷぅと頬を膨らませ、そんな百合を星歌はおかしそうに見て笑った。

 

「お前ももうちょっと身長あったらなぁ、即戦力なんだが。ああでも、そうなるといい感じに抱いて寝れなくなるわ。やっぱお前ずっとこのままでいろ。私の為に」

「……なんてことを言うんだ」

 

 伊地知星歌、29歳。彼女はぬいぐるみを抱かないと眠れず、特に寝つきの悪い日は等身大ぬいぐるみである百合を抱き枕にして寝ているという秘密があった。百合を取られた虹夏は次の日大体機嫌が悪くなる。子供体温である百合は最高の抱き枕であり、虹夏の睡眠の質を高める一因なので。

 

 ぽかぽかとお腹の辺りを叩く百合の頭を星歌はわしゃわしゃと乱雑に撫でると、バックヤード出口を親指で指して言った。

 

「ほら、虹夏達が待ってるから早く行ってやれ」

「……もう。じゃあごはん作って待ってるから、おねーちゃんもお仕事頑張って」

「ああ」

 

 手早く荷物を纏めてからバックヤードから出ていった百合の背中を見ながら、星歌はぽつりとつぶやいた。

 

「……良かったな、虹夏、百合」

 

 妹達の門出を祝うように、星歌は優しい笑みを浮かべていた。

 浮かべていたので、そのあと入ってきたPAが信じられない表情をして「熱でもあるんですか……?」とガチ心配をしてきたのでアームロックの刑に処された。台無しだよ。

 

 

 

 

 

 

 百合が虹夏達の元にたどり着いた時には、なにやらイベントは終盤まで進んでいたようだった。

 

「もっ、もしかしたら楽器を弾くのは人より苦手なのかもだけど……どっ努力の才能は人一倍あるから大丈夫です……」

 

 百合はその光景を見て感動した。

 あの引っ込み思案なひとりが、勇気を振り絞って郁代を引き留めようとしている。

 怖かったはずだ。百合のプロファイリングが確かなら、ひとりは自分の行動によって人から変に思われることこそを怖がっている。だから自分の意見をきちんと相手に伝えられていたので、百合はもう飛び出してひとりを思い切り褒めてあげたかったが、何やら重要そうな場面だったので断腸の思いで我慢をした。

 

「あたしも喜多ちゃんにこのバンド盛り上げるの手伝って欲しいな!」

 

 ひとりの援護射撃をするように、虹夏が郁代の手を取って言う。

 

「ギターが増えたら音がにぎやかになるしノルマも5分割だし」

「うわ、素直じゃない言い方」

 

 そこにリョウも続いた。

 

「先輩分のノルマ!? 貢ぎたい!!!」

 

 危うく爛れた関係が爆誕しそうになっていたので、慌てて百合もカットインした。

 

「……郁ちゃん。だめ」

「あっ、百合先輩……」

「りょーちゃんを甘やかすのは、わたしと虹夏ちゃんの役目だから」

 

 おかしいだろうがよ、その割り込み方はよぉ。

 

「ごめん、郁代。私は百合と虹夏の娘だから」

「こんな大きな娘持った記憶ないんだけど????」

 

 はし、と割り込んできた百合の腕と、傍にいた虹夏の腕を取ってよよよと泣き崩れる真似をリョウがすると、郁代は大変ショックを受けたような表情で大げさにのけぞった。

 

「そんな……! はっ! これがさっつーの言ってた寝取られってやつね……!」

 

 寝てから言え。

 そもそも寝取られたわけではなく、リョウが勝手に娘を自称してるだけだった。

 

「あっ、あの! わたしも喜多さんとバンドしたいです……。きっ、喜多さんもバンド好きってわかったし……」

 

 ひとりはつっかえながらも、必死に自分の思いを郁代に伝えようとしている。

 その姿を見た百合と、あと虹夏もひとりの成長にほろりと涙をこぼしていた。後方保護者面の良い例であった。

 

「もっ、もう一度、結束バンドに入りませんか……ひっ、一人で弾くより、皆で弾くのは楽しいですよ……」

 

 郁代はふらふらと視線を彷徨わせた。憧れのリョウ、リーダーの虹夏、そして妖怪の百合。郁代から見て、この中で一番中立的な意見を出してくれそうな百合へと視線を投げかけた。

 言うまで無いが、一度身内判定した相手に一番甘いのがこの妖怪である為、こいつに意見を求めるのは悪手であった。

 

「……実を言うと、最初からギターが出来ないのは気づいてた」

「えっ!?」

「……わたしはその人の声を聴けばどんな気持ちなのかは大体わかる。郁ちゃんはむっちゃ分かりやすく嘘ついてた」

「ええっ!?」

 

 おや、存外まじめな雰囲気だ。

 

「嘘発見器の百合が何も言わないからホントだと思ってた」

「あたしも家で百合が『大丈夫』って言ってたから……」

 

 百合は声に含まれている色からおおよその感情を推測する事が出来る。その応用で、嘘として発せられた言葉に混じった別の色――罪悪感や、悪意など――を見抜く特技を持っていた。そのため幼馴染たちからは嘘発見器として信用されている為、その百合が何も言わないのであれば大丈夫だろうと思っていたのだ。なので虹夏は郁代がギターが出来ないと言ったときに大げさに驚いていた。

 

 では、なぜ百合がそのことを伝えなかったのか。

 

「じゃ、じゃあなんで……」

 

 百合は郁代に近づくと、その手を取って指先が固くなった指を自身の手でそっと包む。

 

「……郁ちゃん。わたしが思う、バンドに大切なことって、演奏が上手な事じゃないの」

「え?」

「……いろんな色が、集まって、混ざって。それで全く別の、きれいな色になる。郁ちゃんの持ってる色は、きっとわたしたちとも合うって思えたから」

 

 百合の言う色というのは、まだまだ交流の浅い郁代には理解の及ばない感覚だったが、百合の独特な雰囲気と、妙に落ち着くような声にすとんと胸に落ちた。

 

「きっ、喜多さん。わ、私も、ギター教えますから。あっ、わっ、私も、ライブだと、ぜっ、全然上手く出来ないんですけど……だからっ! 一緒に、一緒に……やりませんか……?」

 

 いつの間にか近づいてきたひとりが、郁代の制服の裾をつかんだ。臆病なひとりの、精いっぱいの勇気だった。

 優しさや温かさに心を打たれた郁代が、無意識に流れた涙を拭いながら笑う。

 

「後藤さん……。うん、頑張る。…………――結束バンドの、ギターとして」

 

 はい言質。

 

「……郁ちゃん。結束バンド加入おめでとう。これで郁ちゃんも家族だね」

「えっ? あ、はい。えへへ……なんだか改めて言われると照れちゃいますね」

「「「あっ……」」」

 

 つまりそういう事だった。

 察したその他三人はじり、と距離を取った。

 

「……郁ちゃんの指、いっぱい頑張ったんだね。偉いね、ちゃんと嘘を本当にしようって努力したんだね。郁ちゃんはすごいよ、本当に無責任な人は短い間でこんなになるまで努力出来ないよ」

「えっ、えっ、……え? あ、ありがとうございます」

「……いいこいいこ。あ、バイトも頑張ってたね。おねーちゃんがいっぱい褒めてた。初めてなのにすごいね」

「あ、ダメだ。これダメになるやつだわ。せ、先ぱ――あ! なんで距離取ってるんですか!? 後藤さんも!? あ、あぁ――」

「……これから、いーっぱい、みんなと楽しくライブしようね」

 

 郁代はダメになった。

 その後、見かねた虹夏が止めに入るまで百合の甘やかしは続き、郁代は「危うく溶けてしまうところだった」と証言していた。

 

 尚、郁代がどれだけ努力しても上手くならなかったのは『弦が6本あるからギター!』と買った楽器が多弦ベースだったことが原因だった。そして二年分の小遣いを前借りしていた郁代は卒倒し、再度百合がスタートを切ったのだった。

 

 

 

 

◇おまけ おみみのお掃除

 

 

 

 

「ん……んんー?」

「……どうしたの、虹夏ちゃん」

 

 ある日の夜。入浴を終え、髪も乾かし終わって二人でのんびりとしていた時。

 虹夏は耳が痒くなったので綿棒を使って耳掃除をしていたのだが、なんだかすっきりしないと首を傾げる。

 最近ハマり始めたハーブティーを淹れていた百合が、カップを二つ持って虹夏に片方を渡し、ソファに座る虹夏の隣に腰を下ろした。

 

「んー、なんか耳がまだむずむずする……ような……? 微妙になんだけど」

「……ちょっと見せて」

 

 百合がカップを置いて、虹夏の耳に顔を寄せた。長い髪を分けて耳を露出させ、じ、と見つめる。

 

「な、なんかちょっと恥ずかしい……」

「……虹夏ちゃんに恥ずかしいとこなんてないから、大丈夫」

 

 そういう問題では、ないのだが。

 

「……赤くなっては無いみたいだけど。だから病気ではないと思う」

「そっかー、綿棒だから奥に押し込んじゃったのかな」

 

 基本的に、耳垢というものは自然に外に出る仕組みとなっている為、実は特別な人――ある症状があり、医師から掃除するように指示された人など――以外は耳掃除はしなくてもよい。

 それでも綿棒を使って耳をくりくりしてしまうのは単純に気持ちがいいからで、また掃除をした気分になれるからだ。むしろ、綿棒を使うと手前の耳垢を押し込んでしまう結果になることもよくあり、それが洗髪時に耳に水が入るなどの要因でふやけ、聞こえが悪くなるといった悪影響もある。

 なので、健常な人はお風呂上りに濡れタオルで入口と耳たぶを拭くだけで十分なのだ。掃除をする時も1か月に1回程度で良い。

 

「……なら、耳かきしてあげる」

 

 おもむろに、百合は自身の膝をぽんと叩いた。

 

「え? いいの?」

「……もちろん。おいで」

 

 ウェルカムと笑いながら百合が膝を叩くので、虹夏はおずおずと百合の膝に頭を乗せた。

 春という事もあり、二人の寝巻も半袖タイプ。むき出しの白い肌にぴったりと顔を付けたので、柔らかさがダイレクトに伝わって来て虹夏は妙に胸が高まった。

 

「えへへ、百合の膝枕久しぶりかも。いい匂い~」

「……虹夏ちゃん、くすぐったいよ」

 

 百合のお腹に顔を埋めた虹夏が、すぅーっと息を大きく吸うと柑橘系の良い匂いが鼻腔を擽った。

 ちなみに、虹夏に発見された時に嗅いだ匂いと、百合に甘やかされている時に嗅いだ匂いが同じ為、ひとりは百合と虹夏が同じ家で生活をしているのではと勘ぐっていた。ほぼ正解。

 

「……じゃあ、危ないから動かないで、ね」

「はーい」

 

 初めての耳かきに、ちょっと不安のある虹夏は百合の腰に腕を回してしがみついた。そんな虹夏の小さな耳を、百合は軽く後ろに引っ張ってから、上に持ち上げるようにした。こうすることで、耳の穴がまっすぐになるのだ。

 どこからか取り出した耳かき棒を慎重に耳の穴に差し込み、傷つけないように優しく、丁寧にカリ……と掻き出す。

 

「……痛くない?」

「…………………………」

「……虹夏ちゃん?」

「へっ!? あっ、だ、だいじっ……だいじょ……ぶ……っ♡」

 

 虹夏は困惑していた。

 確かに、綿棒でする耳掃除も気持ちがいいので、人にやってもらう――それも最愛の人にやってもらっているのだから、きっと気持ちいいんだろうなとうっすら予想はしていた。

 だが、余りにも気持ちが良すぎるのだ。

 例えるのなら、じわじわと臍の内側からこみあげてくるような緩い快楽。要するに、虹夏はちょっと性的興奮を覚え始めていた。

 

「……かり、かり」

「ひぅっ……♡ ん……はぅ……っ♡」

 

 ひとかきごとに、ぞくぞくとした快感が背筋を走る。

 どうしたことだろうか。虹夏は自分の身体の変化に戸惑っていた。

 

「はぁ……っ♡ はぁ……っ♡ ゆ、百合……」

「……うん? もうちょっとだから、頑張ってね」

 

 耳かきと同時に媚薬でも塗り込んでるんか?

 

「……ん、しょ。ここ……」

「あぅ……♡ ゆ、百合……っ、あたし、もう……っ♡」

 

 そして、虹夏の興奮が臨界点を超えるその直前。ぴたっと百合の手が止まった。

 

「えっ……?」

「……はい、終わり」

 

 耳垢を取り終わったのか、百合がアルコールティッシュで耳かき棒を拭いながら言った。

 虹夏としては複雑な気分だった。よもや耳かきで危うく達してしまうところだったという危機感と、あとちょっとで……という肩透かし感。その両方に板挟みにされ、虹夏は唇をもにょりとさせたが――。

 

「……じゃ、次。反対ね」

「あっ……」

 

 虹夏の忍耐力が試される時――!




・抱き枕百合
普段は虹夏専用抱き枕。たまに星歌に持ってかれる。次の日虹夏は不機嫌になるが、百合にすぐ溶かされる。

・嘘発見器
あくまで声の中に混ざった感情から読み取るので、精度はよくて80%くらい。

・ダメになった郁代
あはっあはっ、家族になっちゃった……たはは、なっちゃったからにはもう……ネ

・おみみのお掃除。
虹夏ちゃんのお耳はきっとちっちゃくて可愛い。そしてちょっと敏感なんだ。そうに違いない。

次回更新は1~2日空けさせてくだし……ご容赦~……
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