火を点けた先、青空の下で。   作:FINDER EYE

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感謝の行方

 先生とレイヴンの二人がホテルのロビーで待っていると、然程待つ事もなく入口にホシノの姿が現れた。彼女の呼吸は少々乱れており、近くに居たのは確かだろうが、それ以上に急いで来たのだという事が見て取れる。

 

「ホシノ!」

「先生──と、レイヴンちゃんも。お待たせ」

 

 軽く呼吸を整えていたホシノへと、先生は席を立って声をかけた。直ぐに反応を返した彼女は彼と、その傍に居るレイヴンの姿を目にして、二人の元へと歩み寄る。ホシノは先生にしか連絡を取っていない。しかしそれはレイヴンを除け者にしたかった訳ではなく、伝えるかどうかを先生に委ねただけだった。

 ここに居るという事は協力してくれるのだろう、と判断したホシノはレイヴンへと軽く会釈し、レイヴンもまたそれを返した。

 先生は近寄ってきたホシノへと空いている席を勧め、座ったのを見てから口を切る。

 

「他の子たちは?」

「みんなには学校に集まって貰ってる。セリカちゃんが単純に道に迷ってて、ついでにスマートフォンの充電が無くなっちゃってるだけの可能性もあるから」

「……そうだね」

 

 言った側も、受け取った側も、その可能性を微塵も信じていない声色だった。特にホシノは表情も硬い。その様子は昼間に見せた姿とは大きく異なり、状況に対する心情が顔へと如実に表れている。心配と不安、そして──懸念。

 彼女の脳裏には先日撃退したヘルメット団の存在がちらついていた。

 内心を胸の内へと押し込めたホシノは、意思を込めた強い眼差しで先生を見つめる。

 

「さっきメッセージは入れたけど、改めてお願い。先生、力を貸して」

「うん、もちろん」

 

 ホシノの言葉に先生は即答し、力強く頷く。簡素な返しではあったが、込められた彼の意志はホシノにも伝わっていた。

 しかし彼の協力を取り付けた後も、ホシノの表情から硬さが取れる事はなく、それは膝上で握りしめられていた拳にも及んでいる。二人には見えない位置で、強く強く握られた拳。そこに込められた力は、彼女の表に出していない感情の大きさを表している様だった。

 

「アヤネちゃんも言ってたんだけど……こんな事、今まで無かった」

 

 ホシノは少し俯き、ぽつりと零す。

 

「シロコちゃんが柴関に電話してくれて、セリカちゃんが定時に店を出た事はわかってる。でも、それ以降の足取りが掴めなくって……私だけで調べるにしても、アビドスは広いから──」

「ホシノ」

 

 ホシノの様子は情報の共有ではなく、独白に近かった。声色は暗く、吐き出せば吐き出す程転がり落ちて行きそうで。そんな、伝えるべき相手ではなく、テーブルを見ていた彼女の名を先生が呼ぶ。言葉を──不安を遮るように。

 大きくはないがよく通る声にホシノは顔を上げ、二人の視線が重なる。

 

「セリカならきっと大丈夫」

 

 真剣な面持ちと、安心させようとする柔らかな微笑みがない交ぜになった表情。そしてそこから放たれた、何の根拠もないであろう台詞。でもその力強さと温かさはホシノの胸に染みて。少しだけ──彼女の表情が和らぐ。

 その変化を捉えた彼は、もう一押しと言葉を重ねる。

 

「だから、まずは落ち着こう」

「……うん、ありがとね。おじさん、ちょっと心配しすぎかなー?」

「それだけセリカが大切って事だね」

「うへ~……よく真顔でそんな恥ずかしい事言えるねー」

「そうかな?」

「そうだよー」

 

 そんな会話を経て、漸くホシノは昼間に見せた姿を多少取り戻す。まだ完全とは言い難いのは、事態が進展した訳ではないので仕方ないだろう。

 二人の様子を傍で黙して見ていたレイヴンは、そろそろ割って入ってもいいかな、とホシノに声をかけた。

 

「ねえ、ホシノ」

「──あっ……えっと、レイヴンちゃんごめんね。先生とばっかり話しちゃって」

「それは別にいいんだけど」

 

 むしろレイヴンとしては、状況が許すのであれば好きなだけ喋って貰っても構わないと思っている。ただ今はそうも言ってられず、少々バツが悪そうに頬を掻くホシノの様子は置いておき、とりあえず彼女は確認したい事を聞く事にした。

 

「アビドスって治安は悪いの?」

 

 唐突かつドストレートな質問にホシノは面食らい、横で聞いている先生は目元を隠すように顔へと片手を添えた。オブラートの重要性を教えよう、と脳内のメモ帳に記載した瞬間である。

 二人の心情を気にする事もなく、じっと答えを待つレイヴンへと、ホシノは戸惑いつつも口を開く。彼女は不遠慮な問いに気を悪くした様子こそなかったが、その表情は回答と同じく、少しの苦さが浮かんでいた。

 

「う、うーん……アビドスの生徒としてはあんまり言いたくはないんだけど、良いとは言い難いかなー……でも、なんでそんな事を聞いたの?」

「日が落ちた頃に爆発音が聞こえた。だから、そういう事がよくあるのかなって」

「……爆発音が?」

 

 レイヴンの言葉に先生は思案顔だった。聞き覚えがなさそうな彼とは異なり、彼女は確かにその音を捉えていた。

 時刻としては丁度、先生と夕食を取りに出る直前。微かに聞こえた爆発音。それはシャーレのあるD.U.でもそこそこの頻度で聞こえたものだった為、音の大きさから距離もあるだろうし、とその時は気に留めて居なかったが──

 

「……銃撃戦なら兎も角、爆発なんてのは早々ないよ」

「──レイヴン、方向はわかる?」

 

 また少し険しさが滲んだ顔をするホシノの言葉に、解決の糸口になりそうだと判断した先生がレイヴンへと問う。

 問われた彼女は一度天井を見上げ、自身の部屋があるだろう位置を確認する。そして音の聞こえた向きを思い出し、指を差す。

 

「たぶん、あっち」

「よし、じゃあ一度行ってみようか」

「そーだねー。近くに行けば何か知ってる人が居るかもしれないし」

 

 

***

 

 

「──ここかな」

 

 爆発があったと思われる場所を鋭い目つきで睨むホシノが、ぽつりと呟く。

 その位置は直ぐに見つける事が出来た。そこは柴関ラーメンがあるブロックのすぐ隣で、最近は人口が減少の一途を辿る地区。そして、柴関からセリカの自宅へと続く──彼女の帰り道。

 砂に塗れてはいるが、まだ道路が見えるそこに大きく残った、砲弾の炸裂痕。周辺には爆ぜ焦げた破片が散らばっていた。

 

「こんな痕跡、今まで無かったはず……ううん、絶対なかった。やっぱり何かあったんだ……」

「空の薬莢も転がってる。どうもここで一戦交えた人たちが居るみたいだね」

 

 周囲の検分を済ませたホシノと先生が、自然と見つめあう。

 この場に残る痕跡にセリカが巻き込まれた確証はないが、状況証拠としては十分。しかし周囲にはこれ以上の情報はなく、人の気配がないここでは目撃者の捜索は厳しい事が目に見えていた。

 セリカの行方に繋がる情報の無さに、ホシノは小さな手を強く握りしめた。そんな彼女へと、平静を保った先生が声をかける。

 

「ホシノ、セリカはスマートフォンを持っていたんだよね?」

「……うん。でも今は電源が切れてるはず。繋がったら連絡してもらえるように、アヤネちゃんたちにお願いしてあるから」

「じゃあ、最後に連絡が取れたのはいつ頃?」

「夕方に対策委員会のグループにスタンプがあったよ」

「……なるほど」

 

 なら、まだできる事はある。そんな彼の考えが現れた声色に、何か手立てがある事を察したホシノが視線を向けた。

 

「……先生」

「うん」

 

 願いの奥に不安を隠した瞳に、先生は力強く頷いた。

 

「大丈夫。私に任せて」

 

 ホシノへと優しく声をかけてから、シッテムの箱にそっと触れて視線と意識を移す。

 

《アロナ》

《はい、先生!》

 

 彼が《声》をかければ、何時も通り快活な返事が来た。

 今から彼女にお願いする事はラインとしてはアウトな行為だ。その事実に気が咎めるが──躊躇はしない。

 

《セリカの位置情報が欲しい。頼めるかな》

《お任せください! キヴォトス中のデータセンターからでも探し出してみせます!》

《……うん、頼りにしてる》

 

 満面の笑みでピースを返すアロナへと、先生は小さく苦笑する。頼られてやる気を漲らせた彼女に少々の不安を覚えたが、釘を刺すような言葉を送るつもりはなかった。

 連絡を通せば情報を融通して貰う事だって出来なくはないだろう。だが、今優先すべきは速度であり──セリカであり、他の事は後で考えればいいのだと。

 

 黙してタブレットに触れる先生と、それを見つめ続けるホシノ。セリカの事を考えている二人を余所に、レイヴンはじっと砲撃痕を眺めていた。

 地面を大きく抉ったその爪痕。それは彼女にひとつ、嫌な記憶を想起させる。

 あれは、深い深い地の底を抜けた先。罪人たちの墓標、エアの同胞が集う場所。そこで、かつてない強敵との死闘を制した後の事。

 

 ──クソッ……! 一手遅かっ

 

 制御不能に陥った機体の中で聞いた、彼の声。

 聞き慣れない悪態と、途中で途絶えた言葉。

 

 思い起こされた状況が今と重なって。

 酷く──不快な気分だった。

 

 

***

 

 

「う、うーん……」

 

 身を揺らす振動を受けて、セリカは薄っすらと目を開ける。

 自分はいつ寝たのか、今は何時なのか。そんな事を考えながら暗闇に目を慣らせば、見上げた先は知らぬ天井。明らかに自室の物ではないそれに、一瞬思考が白に染まった。

 

「……へ?」

 

 間抜けな声が思わず漏れて──思い出す。柴関の帰り道、ヘルメット団と遭遇した事を。

 

「こ、ここは!? 私、さらわれた!?」

 

 セリカは慌てて身を起こし、状況を確認する。杜撰なのか、確実に逃がさない自信があるのか、手足に拘束はない。だが、身に着けていた武装はすべて奪われているらしく、銃弾の一発すら見つからなかった。

 置かれた状況に苛立ち、歯噛みし──

 

「あ、う……頭が……」

 

 ズキンと大きく頭痛が奔る。彼女は咄嗟に手をあてるが、血が付く事もなかった。血こそ流していないようだが、鈍い痛みは続く。動揺から立ち直って思考に余裕が生まれた結果、彼女の身体が不調を訴えたのだ。

 痛みにふらついてるところに、床が大きく揺れる。そこでセリカは漸く、自分がどこに居るのか気が付く事ができた。

 

「ここ……トラックの荷台……? ヘルメット団め……私をどこに連れてくつもりなの……」

 

 継続的な振動とエンジン音。自分がトラックに乗せられているという事は、少し意識を割けばすぐわかる事だった。天井も周囲も、覆っているのは帆布だ。

 

「暗い……けど、隙間から少し光が漏れてる。外……見えるかな」

 

 暗闇に慣れ切った目が、ちらちらと映る強い光に引き寄せられた。荷台を覆う帆はあちこち痛んでおり、いくつか切れ目が走っている。その中のひとつに手を伸ばして広げ──外の明るさに目が眩む。日はすっかり昇っており、セリカはそこで襲撃されてからだいぶ時間が過ぎている事に気づかされた。

 

「……砂漠……線路!?線路がある場所って……ま、まさかここ、アビドス郊外の砂漠!?」

 

 外の明るさに目が馴染んだ頃、視界に入って来た物を見てセリカは目を見開く。

 かつてアビドスは大きな自治区だった。そして、それに比例するかのような鉄道網が敷かれていたのだ。郊外の線路は自治区の外周をぐるりと覆っており、郊外に位置していた為に砂嵐の影響も大きく、使われなくなって久しい物だ。

 

「……そ、そんな。ここからじゃ、どこにも連絡が取れない! もし脱出できたとしても、対策委員会のみんなにどうやって知らせれば……」

 

 人の居ない地域に電波など飛ばす理由もない。かつての基地局も廃線に伴い放棄されていた。

 セリカは外を覗くのを止め、帆を背にする形で力なく座り込む。縛られていない理由もわかった。この砂漠地帯で車両相手に徒歩で逃げ切れるはずがない。

 状況の悪さに頭痛すら遠く感じるようだった。

 

「どうしよう、みんな心配してるだろうな……」

 

 漏らした声は、小さく震えていた。

 

「……このままどこかに埋められちゃうのかな。誰にも気づかれないように……連絡も途絶えて……私も他の子たちみたいに、街を去ったって思われるんだろうな……」

 

 弱音が零れ、考えは悪い方へと転がっていく。

 また明日。なんて言葉を最後に、会えなくなった子たちを思い出す。憤りはすれど、その子たちの行方を探そうと思った事なんてなかった。

 どうせ、借金を返す事を諦めたんだろう。そう思っていた。

 誰にも告げず、ひそかに姿を消す──今の状況は、それと変わらない。

 

「裏切ったって思われるかな……」

 

 胸が締め付けられる。先の頭痛より、余程強い痛みだった。

 

「誤解されたまま、みんなに会えないまま死ぬなんて……」

 

 アビドスに最後まで残った、対策委員会のメンバー。大事な仲間。そんなみんなに裏切者だと思われる事は、自身に迫る危険より、余程怖かった。

 

「そんなの……ヤダよ……」

 

 ぽつりと零れた言葉は虚しく消えていった。震える身体を抑えようと膝を抱えて丸くなる。しかし、それでも震えは収まらない。それどころか、段々と抑えが利かなくなってくる。

 抱え込んだ肘に指が食い込む程強く握っても尚、胸の痛みの方が上回った。

 

「う……うぐぅ……」

 

 泣くのは無意味だ。そうは思っても、身体は言う事を聞いてくれない。

 唇をかみしめ上を向く、些細な抵抗。

 

「うっ、ううっ……」

 

 しかし結局耐え切れなかった嗚咽と共に涙が流れ、頬を伝う。

 それが顎へと届いた瞬間――轟音と共に大きな衝撃が奔り、車体とセリカの身体が宙に浮く。

 

「う、うわあああっ!?」

 

 漏らした悲鳴は続いて起こったトラックの爆発する音にかき消される。セリカは強い衝撃を受け、短い浮遊感の後地面へと叩きつけられて砂地を転がった。

 少しして漸く止まったかと思えば、圧迫された肺が悲鳴を上げ、咳き込む。

 

「カハッ、ケホッ……ケホッ……な、何っ!? 爆発!? トラックが爆発した!?」

 

 衝撃に加えて転がったせいで三半規管に影響があったのか、ふらつく頭を押さえてセリカは状況を確認する。爆発により荷台から投げ出されたのだろう。見れば数メートル向こうでトラックが大破炎上していた。

 

「砲弾にでも当たったのかな……一体どこから?」

 

 セリカが見回せば丁度ドローンが一機、彼女の傍へと飛んできた。そして外部スピーカーから聞き慣れた──聞きたかった声が出る。

 

『セリカちゃん発見! 生存確認しました!』

「……あっ、アヤネちゃん!?」

「こちらも確認した、半泣きのセリカ発見!」

「!?」

 

 気がつけばシロコがセリカの側にいた。いや、シロコだけではない。他のメンバーも続けて集まってきた。

 

「なにぃー!? うちの可愛いセリカちゃんが泣いてただと! そんなに寂しかったの? ママが悪かったわ、ごめんねー!!」

「う、うわああ!? う、うるさいっ!! な、泣いてなんか!!」

「嘘!この目でしっかり見た!」

「泣かないでください、セリカちゃん! 私たちが、その涙を拭いて差し上げますから!」

 

 先ほどまでの沈んだ気分が消し飛ぶくらい、普段通りなみんなの声が聞けて。先ほどとは別の意味で涙が滲んでくる。

 目元を袖で擦り、身もだえするような気恥ずかしさに任せてセリカは声を張り上げた。

 

「あーもう、うるさいってば!! 違うったら違うのっ!! 黙れーっ!!」

「よかった……元気そうで、安心したよ」

 

 セリカは聞こえた男性の声に目を見開き、顔を向ければホッとした顔の先生と目が合った。

 

「な、何で先生まで!? どうやってここまで来たの!?」

「ダテにストーカーじゃない」

 

 無駄に凛々しい顔と声を作り、先生は力強く言い放つ。

 彼はアロナの力を借り、セリカの持つ端末の電源が切られる直前の位置情報を入手。それを対策委員会のメンバーと共有し、その結果ここまでたどり着いたのだ。

 理由はセリカの為ではあるのだが、やってる事自体はストーカーと然程大差無い。そんな考えからの台詞ではあったのだが、セリカとしては先日自身が言った言葉に対する当て擦りにしか聞えない。彼女は思わず目を吊り上げた。

 

「ふ、ふざけないでよ! この変態教師!!」

「……セリカって結構頑丈なんだね」

 

 再び声を張り上げたセリカに、レイヴンが感嘆する。シロコのドローンによる爆撃を受けたトラック。その荷台に居た人物とは思えない元気さだった為だ。

 セリカは声をかけられて漸く、自身の近くに寄ってきていた小柄な少女の姿に気が付いた。

 

「あ、レイヴンちゃんも来てくれたんだ……」

「うん。あとこれ」

「……これ、私の銃?」

「トラックの近くに転がってたよ」

「ありがと……きっと運転手が戦利品気分で持ち歩いてたんでしょーね」

 

 セリカはレイヴンから愛銃を受け取り、礼を言いつつ調子を確認する。自身と共に爆発に巻き込まれたはずだが、銃身に歪みもなく、使用するのに問題はなさそうだった。

 チャンバーチェックまで終わらせたセリカへと弾倉が差し出される。その手の主を見れば、柔らかく笑うホシノの姿。釣られてセリカの口元に笑みが浮かぶ。言葉にされずとも、気持ちは伝わっていた。

 弾倉をセリカが受け取り、空いた手へと愛銃を携えたホシノが口を開く。

 

「よーし、セリカちゃん無事確保完了ー」

『よかった……セリカちゃん……私、セリカちゃんに何かあったんじゃないかって……』

「アヤネちゃん……」

 

 ドローンのスピーカーから聞こえる、アヤネの声。音質が良いとは言えないが、心情は十分に伝わってくる物だった。

 その声に釣られてセリカは、トラックの荷台で沸き上がった気持ちを思い返す。しかしさっきとは違い、今はすぐ傍にはみんなが居る。それが嬉しくて、温かくて。本当に――またみんなと会えてよかった。

 

 再び押し寄せてきた感情に涙腺がやられかけているセリカの背へと、シロコは優しく手を添えた。だが、その表情は険しい。彼女の耳は徐々に近づいてくる音を捉えていたのだ。

 

「まだ油断は禁物。戦術サポートシステムを使ってトラックは制圧したけど、まだここは敵陣のど真ん中だから」

「だねー。人質を乗せた車両が破壊されたって知ったら、敵さん怒り狂って攻撃してくるよー」

『前方にカタカタヘルメット団の兵力、多数確認!!』

 

 音の正体は当然、ヘルメット団だ。せっかくの人質を取り返されてしまい、慌てて準備を整えて出撃してきたのだろう。

 戦いの時間が近づいてる事を察したレイヴンは、セリカへと顔を向ける。

 

「セリカ、先生と一緒に下がれる?」

「嫌よ! あいつらに一発ぶち込まないと気が済まないわ!」

「そ、そう……」

「わあ、セリカちゃんお怒りですね☆」

 

 セリカの体調を気遣ったレイヴンの言葉だったが、やる気に満ちたセリカには届かない。握り拳を眼前にかざすセリカに先生は苦笑をするも、彼女の判断を尊重する事とした。

 

「……うん、じゃあ私だけで一度後方へ引くよ」

 

 気を付けて、と言葉を残して先生は戦場となりそうな場所から遠ざかっていく。

 その間に上空へと位置を移していたアヤネのドローンが声を発する。

 

『さらに巨大な重火器も多数確認しました! 徐々に包囲網を構築しています!』

「敵ながらあっぱれ……それじゃー、せっかくだから包囲網を突破して帰りますかねー」

 

 軽い調子のホシノに対し、セリカの表情は険しい。彼女の脳裏にあるのは襲われた時、気絶する羽目になった原因だ。

 

「……気を付けて。奴ら、改造した重戦車を持ってるわよ」

「知ってる、Flak41改良型」

 

 セリカの警鐘にシロコが頷きを返す。その情報はトラック襲撃前にヘルメット団の基地を偵察した際に入手していた物だった。元々セリカが襲われたと思わしき場所でその痕跡を見ていたのだ。警戒するのは当然と言えた。

 

「それじゃ……」

 

 姿の見えてきたヘルメット団を見据え、ホシノは周りに聞こえるように呟く。

 

「行こうか?」

 

 

***

 

 

 戦いの序章は、アビドス一行が優勢だった。それもそのはず、先に行われた二戦でも圧勝と呼べる物だったのだ。数日で個々人の練度が上がるはずもなく、人数は増えていないどころか、動ける人員が減ったのか少なくなっていた。しかし前哨基地襲撃時と比べると、少しだけヘルメット団の勢いは強い。

 その理由は互いに理解していた。

 

『──敵戦車、来ます!』

「うへ、やっぱり出てきたかー」

「上っ等じゃない! 仕返しするのに丁度いいわ!」

 

 索敵を担当していたアヤネのドローンが真っ先にその理由──相手の最大脅威を捉え、インカムから周知する。それに辟易した声をホシノが漏らし、セリカは目に強い敵意を宿し気炎を上げた。

 そんな中、現れた戦車の姿を見てレイヴンの胸にちりと火が点る。それは暗く、強い火。

 熱を吐き出すように自然と口が開かれる。

 

「先生。アレはわたしにやらせて」

 

 その声は許可を求める物ではなく、むしろ命令にも近いと、先生は感じた。彼には由来の知れぬレイヴンの強い意志の表れ。しかしそこに触れる事はなく、彼女の望みに沿う判断を下す。

 状況的にも、その選択は間違った物ではないのだ。

 

『──わかった。シロコ、手榴弾を相手の手前に。視界を阻害したい』

「ん、了解」

『爆発に合わせてレイヴンは移動、迂回して目標に接近。ノノミは掃射でけん制とかく乱、セリカはそのカバー』

「わかった」

「は~い☆」

「りょーかい!」

『ホシノとシロコは二人で前線の押し上げて。相手の意識を寄せたい』

「任せて」

「うへー、大役だ」

『攻撃の圧が増すと思うから、無理はしないで』

「まー、なんとかなるでしょー」

 

 瞬時に組み立てられた戦術と矢継ぎ早に出される指示。それに否と言う者は出ない。先生の指揮に対する信用は、先日に行われた二回の戦闘で確かな物へと変わっていた。

 

『──行動開始!』

「いくよ」

 

 シロコの声と共に投擲された手榴弾。その爆発と共にレイヴンはその小柄な体躯を更に低くし、砂塵に紛れるように疾駆した。

 ヘルメット団の団員たちがそれに気が付く事はない。直近の猛威への対応に追われたからだ。

 

「行きますよぉ~」

「邪魔するんじゃないわよ!」

 

 ミニガンが起こす苛烈な掃射にそぐわぬノノミの声と共に、敵陣を薙ぎ払うように振り回される。銃弾の嵐が過ぎ去った位置からヘルメット団も果敢に撃ち返してくるが、その相手を好き勝手させないようセリカが的確に押さえていた。

 

「はいはーい、前進前進」

「あのピンク髪にデカいの一発お見舞いしてやれ!!」

 

 黒い大盾を構え敵陣へと接近していたホシノに、戦車の砲身が向けられ──発射。静止した車体から撃ち出された砲弾は的確に彼女を捉え、着弾と同時に爆発と黒煙を立ち昇らせた。

 風によって煙は瞬く間に押し流され──制服を多少煤けさせただけのホシノが姿を現す。彼女は平然とした立ち姿のまま、多少吸い込んでしまった煙に咳込む。

 

「ケホッ。いたたー、衝撃で腰やられちゃうよー」

「ん、平気。私が擦ってあげるから頑張って」

「うへ、シロコちゃんが厳しい!」

「くそっ、なんで直撃して平気なんだよ!」

「馬鹿げた頑丈さしやがって!」

 

 戦車砲を受けても尚、微塵も揺るがぬホシノはその体躯に見合わぬ大きな存在感を放っていた。それに隠れて静かに素早く移動していたレイヴンは、戦車まであと僅か。

 

 胸に点った火の元が、ただの八つ当たりだという事をレイヴンは理解していた。しかし、セリカが攫われたという事も事実だ。だから感情のままに動く身体を止めようという気になれず、熱に浮かされるままに踏み込む。斬るべき場所を少し考え、当てやすいところ(胴体)で良いだろうと判断。

 思考と共に形成されたパルスブレードの光刃は強く輝き、レイヴンの意思を反映しているかのようだった。

 

「──な、なんだ!?」

 

 その光を目にしたヘルメット団の団員が声を上げるも、彼女は意に介さず進む。同じく接近する存在に気が付いた戦車が慌てるかのように履帯を回し始めるが──遅い。

 左腕を大きく斜め上へと広げ、内側へ抱き込むよう袈裟懸けに──

 

『──履帯だ!』

「ッ!!」

 

 声に導かれて振り下ろす先を変更。パルスブレードと接触したは履帯(キャタピラ)は容易く破砕され、意味を成さなくなる。

 

『──砲身!』

 

 続く指示に今度は驚かなかった。踏み込んだ勢いのまま車体へと飛び乗り、砲身目掛けて右下から斬り上げた。たった二振り。それだけで、戦車はただの鉄の塊へと変貌を遂げた。

 そのまま上部の展望塔(キューポラ)へと、力任せに右脚を叩き込む。強い衝撃に装甲は拉げ、人と金属が接触したと思えぬ程の大きく鈍い音が戦場に轟き、やがて静寂へと変わった。

 静まり返った周囲を気にする事もなく、レイヴンは鋭い目つきで戦車を睨んだまま口を開いた。

 

「早く出て来て。出て来ないんだったら──次は胴体(車体)を叩き斬るよ」

 

 

***

 

 

 ヘルメット団との戦闘は、戦車の大破により決着を迎えた。元より彼女たちは前哨基地での戦いで戦力差を文字通り、痛い程理解していただろう。しかし、戦車があるという事を心の支えとし、戦っていたのだ。だがその支えはいともたやすく破壊され、レイヴンの底冷えする声に背を押される形でヘルメット団は一目散に逃げだした。

 その後、一行はアビドスへと戻って来た。セリカは教室へと入り、アヤネの顔を見て心の底から安心したのだろう。喋っている途中で、膝から崩れ落ちるようにして意識を失ったのだった。

 

 アビドス本館の保健室。既に目が覚め、ベッドの上で身体を起していたセリカは、夜を迎えた空を窓から眺めていた。その心にあるのは昼間の出来事だ。

 迷惑、かけちゃったな。

 もちろん対策委員会のみんながそんな事を思わないとはわかっている。悪いのはヘルメット団だという事も。でも事実として、助けて貰って。また、みんなの所に戻る事が出来た。捕まった自分が不甲斐なくて、助けに来てくれた事が嬉しくて、なんとも複雑な気分だった。

 それに、来てくれたのはみんなだけじゃない。アビドスの生徒ではない、あの子も──先生も。

 思えばあの二人が来てからずっと、助けられっぱなしな気がして、自分の態度を思い返して──次会った時にどう接しようかと悩んで。

 少しだけ、気が重かった。

 

「はあ……」

 

 思わず溜息が漏れる。

 と、そこに重なるノックの音。

 

「どうぞー」

 

 それへと返答し、律儀な様子からアヤネちゃんかな、と推測したセリカは入り口を見る。そして引き戸が音を立てて開かれ、顔を見せた先生と目が合った。

 

「やあ、セリカ」

「あ、れ……? 先生!? ど、どうしたの?」

 

 彼女は入ってきたのが先生だと気が付き、慌てて立ち上がり彼の傍へと近寄った。その動揺は、どこか怪我でもしたのかと心配しての物だ。

 しかし、近くで見ても特に外傷も見当たらず、自身の足でしっかりと立っている様子を受けて、訝しげに彼の顔へと目を向ける。

 その視線を先生は、にっこり笑って受け入れた。

 

「お見舞いに来たよ」

「……ああ、私なら大丈夫。いつまでもこうしちゃいられないし。アヤネちゃんや他のみんなも心配してるし……バイトにも行かなきゃだし」

 

 その言葉に嘘はない。救出された直後の一戦だって何とかなった。ただ教室へと辿り着いた時、安心してしまい、気が抜けただけ。それでも先ほどまでぐっすり眠っていただけあって、体調はすっかり元通りだった。

 

「だ、だから、お見舞いとかいいから! ほら見て、元気だし」

「それは良かった」

 

 傍でシャドーボクシングを始めたセリカを見つめながら、先生は微笑む。

 その柔らかで暖かな視線を受け続けた彼女は、徐々に勢いを緩やかな物へと変え、最終的に両手はお腹の辺りで指先を重ねるように収まった。

 そのままの姿勢で、セリカは視線を右往左往させながら、口を開く。

 

「……あ、あの!!」

「うん」

「……え、ええとね……」

「うん」

 

 何かを言いだそうとする彼女を遮る事もなく、先生は穏やかに、ただ傍に在ろうとした。

 そんな彼の様子に、セリカはゆっくりと心を落ち着かせる。

 今なら少し、素直になれそうだった。

 

「そういえば、先生にちゃんとお礼を言ってなかったなあって、思って……」

 

 面とは向かえずとも、しっかりと、聞こえる声で。

 感謝の気持ちを言葉に乗せる。

 

「あ、ありがとう……色々と……」

「どういたしまして」

 

 柔らかく受け止めた彼の顔をちらりと確認し、セリカは頬を赤らめながら口を開く。

 

「……でもっ! この程度でアビドスの役に立てたなんて思わないでよね! この借りはいつか必ず返すんだから!」

 

 明らかな照れ隠しの言葉。それを受けてより一層笑みを深くした先生に、頬を膨らませたセリカが言い募る。

 

「……な、何よ!? 何ヘラヘラ笑ってんの!?」

「いや……セリカに認めて貰えるように、頑張らないとなって思って」

 

 棘のあるセリカの言葉を意に介さず、何の臆面も無く、先生はニコニコと言ってのけた。

 そんな彼の様子に虚を突かれ、毒気を抜かれたセリカは、呆れたように柔らかな笑みを返す。

 

「はあ、まったく」

 

 この大人は──先生は、そういう人なんだろう。そう思わせるには、十分な姿だった。

 

 セリカは微笑み続ける彼から視線を自身へと向け、身嗜みを確認する。寝ていたのだから仕方ないが、少し皺が出来ていたので、正す。

 パッと見て他に問題はなさそうな事を確認し、先生の横をすり抜けて、入口の引き戸へと手を伸ばした。でも、開ける前に振り向いて。

 

「じゃあ……また明日ね!」

「うん、また明日」

 

 大人(・・)ではなく、()を見た。

 

「えっと、せ……先生」

 

 そんな言葉を残してセリカが保健室から出るが──

 

「……あ」

「……」

 

 入口のすぐ横に立っていたレイヴンを見て、思わず声が漏れる。

 気まずい。保健室の薄い扉では、防音に期待出来るはずもないだろう。しっかりと聞かれていたのだと、セリカは気が付いてしまった。

 されど羞恥に思考を染めて、この場から走り去る訳にもいかない。彼女に対しても、恩がある。

 

「え、ええーっと……」

 

 なけなしの自制心を振り絞り、セリカはレイヴンへと向き直る。

 

「その……レイヴンちゃんも、ありがとうね」

 

 しかし、照れくさそうなセリカの顔を見る事もなく、レイヴンは目を伏せて小さく首を振る。

 彼女にとって今回の一件は、過去の清算。違うと知りつつかつてを重ね、その代替としただけの事だった。

 礼を貰う理由など、無いのだ。

 

「別に……貴女を助けに行ったのは、貴女の為じゃなかったから」

「……」

 

 レイヴンの返しを受けて。セリカは少しだけ、カチンと来てしまった。

 彼女が何故そんな事を言ったのか、知らない。

 彼女の声色に乗った悲しみの訳も、知らない。

 だがそれはセリカにとって、感謝を伝えない理由にはならなかった。

 

「それでも……私は助かったの。だから──ちゃんと受け取って!」

 

 張り上げられた声に顔を動かしたレイヴンと、セリカの視線が重なる。

 

「ありがとう!」

「────」

 

 お礼にしては力強く、叩きつけるような声だった。

 しかしその言葉は、その気持ちは、レイヴンの中へとするりと入り込み。

 心の底にそっと触れ──彼女の目尻に涙が浮かぶ。

 

「えっ、な、なんで泣くのよ。言い方キツすぎた? ご、ごめんね?」

「ち、がう……」

 

 流れ落ちる涙をそのままに、言葉を紡ぐ。

 

「助かってくれて……ありがとう」

 

 それはかつて出来なかった事。言えなかった事。

 ありのままの想いを口に出したような、拙い言葉。それを零し、ぽろぽろと涙を流し続けるレイヴンと、彼女をどう扱えば良いかわからずに慌てふためくセリカ。

 そんな二人を、保健室から出るに出れなくなった先生が見守っていた。

 

 そして──廊下の影にもうひとり。

 オッドアイの瞳もまた、その光景を見つめていた。

 

 

***

 

 

 ビジネスホテルの一室。徹夜と移動の疲労でぼやけた頭をシャワーで覚醒させた先生が、レイヴンはもう寝たかなと思いつつ、ベッドではなく椅子へと腰掛ける。そのまま力なく背もたれに身体を預け、視線を天井へと向かわせながら大きく深呼吸をし始めた。

 シャーレを離れ、アビドスに来てからもうすぐ一週間。内三日間はアビドスに来たと言って良いのか不明だが、あそこもアビドスではあるだろうと己を納得させる。

 対策委員会の彼女たちと遭遇してからの三日。ヘルメット団を撃退し彼女たちの事情を聞き、攫われたセリカを救出した。それは日数を加味すれば、怒涛の展開といっても差し支えないと言えるだろう。

 状況に流され続けた事もあり、少し落ち着ける時間が欲しかった。あまり人には見せられない姿勢のまま呼吸に集中する。

 

 暫くして。先生は身体を起こして背筋を正す。さてやるか、とタブレット端末へと向き合おうとしたその時──室内へと響くノックの音。

 先日の一件が脳裏を過るが、音に焦りの色が無かった事に自身を落ち着かせ、ノックの主を確認すべくドアへと歩み寄る。誰だろうとドアアイを覗くと、そこには小柄な少女の姿が。

 

「レイヴン……?」

 

 初日とは異なり、今日はレイヴンを呼んだ覚えはない。そもそも、それぞれの部屋へと別れる際におやすみの挨拶も交わしていたのだ。

 困惑を顔に浮かべたまま、先生はドアを開いて彼女と相対する。

 

「どうしたの、レイヴン」

「先生、今ちょっと時間いい?」

「構わないけど……?」

「……言い忘れてた事があったなって」

 

 首を傾げた彼へと彼女がはぐらかすような答えを返し、そのままスタスタと室内へと入って行き、初日と同じくベッドの上へと落ち着いた。

 その様子に何かあるのだろうと理解した先生は、腰を据えて話を聞く為に椅子へと座る。その様子を観察していたレイヴンが、彼を見つめて徐に口を開く。

 

「そういえば私もお礼、言ってなかったと思って」

「……お礼?」

「うん」

 

 レイヴンは続き促すような視線から目を逸し、一度意識を内に向け、己へと問いかける。

 それは暗いあの地下で、彼のメッセージを聞いた時の事。はたして、礼を口に出来ていただろうか。一度でも彼に、ありがとうを伝えられた事があっただろうか、と。

 この自問はたぶん、後悔の証。戻れない過去を悔やむ気持ちの表れ。

 だからこそと彼女は思い、表情を変える。

 それは、つぼみが綻ぶような淡い笑み。

 

「シャーレに迎えてくれて、ありがとう」

 

 別れは、いつ訪れるか分からない。だからこそ──感謝は伝えられる時に、伝えておきたい。

 そんな想いで紡がれた彼女の言葉に、先生は穏やかな笑みを返す。

 

「こちらこそ。シャーレに来てくれて、ありがとう」

 

 一番身近な、寄り添うべき存在。出会いこそ奇縁だったが、短い間でも成長を見せるかのような少女。自身の役割とすべき事を強く意識させる彼女に、感謝を込めて言葉にする。

 返されたものを受け取ったレイヴンが、穏やかな表情のまま語りかける。

 

「ねえ、先生」

「うん?」

「キヴォトスは、いいところだね」

「……そうだね」

 

 ありがとうを言われて。ありがとうを言えて。

 かつての惑星で出来なかった事が、出来る世界で。

 あの時、わたしが違っていたら──もっと別の結末を迎えられたんだろうか、と。

 レイヴンは、そんな事を考えていた。

 

 そして。経緯はどうあれ、彼のお陰で自分は今ここにいるのだと。在庫ではなく、人として生きているのだと。

 だから──願う。この想いが、彼まで届くようにと。

 

 ありがとう、ウォルター。

 

 

***

 

 

「……ところでレイヴン。部屋へ帰らないの?」

「セリカ、攫われたから。先生も危ないかもしれない」

「い、いや……流石に宿は大丈夫じゃないかな……?」

「……一緒に居るのは、ダメ?」

「………………そんな事ないよ」

「じゃあ、今日はここに居るね」

「……うん、そうだね」

 

 続くようなら対策を考えよう。決意を固めた先生を余所に、時は静かに過ぎていった。

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