ラブライブ!デスティニー!!〜赫翼の鬼神と9人の女神達〜   作:疲れた斬月

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『前回のラブライブ!デスティニー!!』

シン「メサイア戦役終戦後、世界平和監視機構コンパスの隊員として戦い続けていた俺、シン・アスカ!」

絵里「これ読めば良いの?えっと…そんな彼にブルーコスモスのトップ、バルディエル大佐を逮捕或いは抹殺せよとの特殊任務が下される!彼が潜伏しているとされる東京に渡り、国立音ノ木坂学院に留学生として転入する事に!」

シン「生徒会長の絢瀬絵里や理事長先生に色々と気を遣われながら学生生活を開始した俺。しかし…」

『は、廃校…!?』

シン&絵里「さぁ、どうなるPHASE-01!!」


PHASE-01「学校が無くなっちゃう!?」

「じゃあ、コイツの事宜しくお願いします」

 

卒倒したオレンジの髪の女子生徒…高坂穂乃果というらしい…を保健室へ送り届けるシン。

 

扉を開けて保健室を出ると、一緒にいた2人の女子生徒…園田海未と南ことりが頭を下げて礼を言う。

 

「ありがとうございました。穂乃香を運んでくれて」

 

「助かりました…」

 

「気にすんなって。じゃあ俺、そろそろ行くよ」

 

2人に手を振って自分の教室へと向かうシン。

 

立ち去る彼の背中を見送りながら、海未とことりは顔を見合わせる。

 

「留学生の方…一体、どんな人かと思っていましたが…」

 

「優しそうな人で良かったぁ…」

 

 

 

 

 

 

「お待たせ、絵里」

 

「もう…後少しで先生が来るわよ?何してたの?」

 

教室に到着したシンを待ち受けていたのは、絵里による注意。

 

時計を見ると、朝礼開始までもう3分を切っている。

 

「悪い。体調崩して倒れてた生徒がいてさ、保健室に連れてってたんだ」

 

「怒るに怒れない理由ね…なら仕方無いわ」

 

事情を聞き終えた絵里は、呼ばれるまでここで待ってて、と言い残して教室の中へと入って行く。

 

それから少しすると、担任の教師の女性がやって来る。

 

「転入生のアスカ君ですね」

 

「はい、宜しく」

 

挨拶を交わし、絵里同様に少し待っててね、と言い残して先に教室の中に入る教師。

 

それから生徒への連絡事項を二言三言話した後、「どうぞー!」と自分を呼ぶ声が聞こえたので、シンもドアを開けて中へ入る。

 

教室中の生徒達が息を呑む音が聞こえ、中には頬を紅く染めて口元を手で抑えている者も少なくない。

 

無理も無いだろう。

 

噂の男子生徒が自分達のクラスに転入して来たのだから。

 

それも艶のある黒髪、ルビーの様な赤い瞳、雪の様な白い肌、幼さを残しつつも綺麗に整った顔立ち…並のモデルや芸能人では到底相手にならない、絵に描いた様なイケメンである。

 

「…初めまして。転入生のシン・アスカでs「きゃああああああああああああーーーーーーーーーっっ!!!」うおぉっ!?」

 

突然上がる黄色い悲鳴。

 

教室内に反響する姦しい声に、シンは思わず耳を塞ぐ。

 

まるで密閉された狭い空間の中でレーシングカーのエンジンを思いっきり吹かしたかの様な錯覚に襲われる程の大音量だが、音源である女子生徒達は意に介す様子も見せず、目の前の美少年に夢中になっている。

 

「う、噂の転入生君がウチのクラスに…!」

 

「神様!このクラスに入れてくれてありがとう!!」

 

「やだやだやだ!超イケメン君じゃん!!」

 

「ちょっとキツめの目付きに赤い瞳…ああ…!その目で私を睨んで…!!」

 

「え!?ちょっ…!///」

 

次々に降り掛かる黄色い賛美に、嬉しいやら恥ずかしいやら困るやらで、頬を真っ赤に染めて狼狽えるシン。

 

しかしそれも…

 

「「「「「可愛い〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」」」」」

 

と、ギャップ萌えの標的にされてしまう。

 

すると、しどろもどろになっているシンに、救いの手を差し伸べる存在が1人。

 

「はいはい、皆そこまで!転入生君が困っとるよ?」

 

紫色の髪と豊かに実った母性の象徴が特徴的な、どこかおっとりとした雰囲気の生徒が手を叩きながら他の生徒達をやんわりと黙らせる。

 

他の生徒を止めてくれた彼女に心の中で感謝しつつ、他の生徒達からの「騒ぎすぎてごめん」という謝罪に各個対応しながらシンは充てがわれた席へ向かう。

 

ちょうど彼女の隣の席だった。

 

「大丈夫?災難やったね」

 

「ありがとな、助けてくれて。えっと…」

 

「ウチは東條希。宜しゅうね…コンパスの軍人さん♪

 

「っ!?」

 

自分がコンパスの軍人である事を小声で言い当てられ、思わず息を呑む。

 

警戒心を露にするシンに、希は穏やかな笑みを浮かべて答える。

 

「そんなに警戒せんといて。ウチ、生徒会の副会長やからシン君の事情も聞いとるんよ」

 

「ああ、そういう事か…わかった。宜しくな、希」

 

軽く挨拶を交わすと、先生からの話が続く中、希が1枚のカードを眺めていた。

 

「…これからシン君に、大きな転機があるみたいやね」

 

「?」

 

意味がわからず、思わず首を傾げるシンに希は優しく微笑み、手に持っていたカードを見せる。

 

「カードがウチにそう告げるんや♪」

 

彼女の手に収まっているのは、タロットカードの【運命の輪】の正位置だった。

 

占いなど普段は信じないシン。

 

しかし、彼女の言葉には謎の確信や信頼の様なものを感じていた。

 

初対面なのに、ここまで信憑性を感じるのは何故なのだろう…?

 

そう考えている内に朝礼が終わった為、シンは気持ちを切り替えて授業の準備を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

「どうだった?当校初日は」

 

「動物園のパンダの気持ちがよくわかる1日だった」

 

全ての授業が終わり、帰り支度を進めながら絵里と会話するシン。

 

この気まずい環境の中で、積極的にコミュニケーションを取ってくれる彼女の存在が酷くありがたい。

 

「まぁ…友好的に受け入れて貰えてるって見方もできるから、前向きに頑張って行くさ」

 

「なら良かったわ」

 

「それとさ、気になる張り紙見たんだけど…廃校ってどういう事だよ?」

 

シンの質問に、絵里の表情が若干曇る。

 

「…ここ近年、入学希望者が段々減っているのよ。1年生なんか1クラスしか無いし」

 

「もしかして、共学化の理由って…」

 

「入学できる生徒の幅を広げて、入学希望者を募ろうとしたみたいだけど…」

 

「ハッキリ言って…悪足掻きもいいとこだな」

 

女子校への入学を希望する生徒というのは、同性の生徒しかいない安心感というメリットに釣られる者が多い。

 

共学化するという事は、その女子校特有の安心感が潰れてしまうという事だ。

 

当然、女子の入学希望者は減少し、男子も同性の友達が少ないという理由でとっつきにくく、結果として入学希望者が増える事は無いという理屈だ。

 

シン自身がその体現者であり、こんな状況を喜ぶのは変なラブコメアニメやライトノベルにありがちなハーレ厶環境に憧れを抱く極一部の男子だけだろう。

 

「共学化するって事は、女子校特有のメリットが無くなるって事だ。その無くなった分のメリットに見合うだけの別のメリットを用意しないと、生徒なんか集まりっこ無い」

 

「耳の痛い正論ね…」

 

こめかみを抑えて溜息を吐く絵里に対し、シンの方も対案も無いのに批判ばかりするのも無責任だなと感じ、出来る限りの助け舟を出す。

 

「…まぁ、何か手伝える事あったら言ってくれよ。できる限り協力はするからさ」

 

「気にしないで、これは私達の問題だから。貴方は貴方のし…いえ、学校生活に集中して」

 

仕事、と言い掛けた絵里の口が慌てて軌道修正する。

 

仕事について口出ししないのは、彼女なりの気遣いなのだろうか。

 

「…ありがとな」

 

別に気にする事なんて無いのに、と思いながらも、シンは一応の感謝を伝えた。

 

 

 

 

 

「ここが図書室で…ここが実験室か」

 

放課後、シンは音ノ木坂学院の校内を散策していた。

 

学校内で迷子になったりしない様にする為、そして有事の際に迅速に出撃する為に、各教室から出口への最短ルートを調べているのだ。

 

「…ん?」

 

ふと、ピアノの音が聴こえて来る。

 

音源を探して歩みを進めると、最終的に音楽室にたどり着く。

 

扉越しに中を覗くと、赤い長髪の女子生徒がピアノを弾きながら歌っていた。

 

胸元のリボンの色を見るに、1年生の様だ。

 

「…っ!?そこで何やってるのよ!?」

 

すると、ピアノを弾く少女と視線が合ってしまう。

 

変に逃げると余計な誤解を招くだろうと咄嗟に考え、シンは扉を開けて音楽室の中へと入る事を選択した。

 

「ああ、悪い。近くを通りかかったら偶然聴こえてさ…気になっただけだ」

 

「そ、そう…ですか…」

 

気まずそうに赤面する女子生徒に近付き、彼女が弾いていた曲の楽譜を眺める。

 

「…俺にも少し、ピアノ貸してくれるか?」

 

「え…先輩もピアノ弾くんですか?」

 

「始めたのはここ最近だよ…ピアノ好きな親友がいたんだ。そいつに影響されてさ」

 

「ふーん」と適当な反応をする少女だったが、ふと違和感を感じてシンに質問する。

 

「いた、って何?今はどうしてるんですか?」

 

「…死んだんだ、戦争に巻き込まれて。だから、もういないんだよ」

 

「っ!ご、ごめんなさい…!」

 

思っていたよりも重めの回答が来て、とんでもない事を聞いてしまったと自らの配慮の無さを恥じる少女。

 

シンは少し寂しげに微笑んで答える。

 

「良いんだ。こんなご時世だし…戦争で家族や友達が死ぬなんて珍しくない話だろ?俺もその内の1つってだけさ」

 

「…」

 

あっけらかんと話すシン。

 

だが、彼女の気持ちは全く晴れない。

 

全校集会で見た時はもっと明るい雰囲気の青年だと思っていたが…どうやら、相当な悲しみを背負って来ているらしい。

 

「…取り敢えず、ピアノ貸してくれてありがとな。えっと…」

 

「…真姫。西木野真姫」

 

「真姫か…うん、覚えた」

 

シンは椅子に座ると、鞄の中からクリアファイルを取り出し、中の楽譜をセットする。

 

「…それ、何ていう曲ですか?」

 

「『面影』って言うらしい。さっき話した友達が作った曲なんだ。コイツを弾いてる時だけはその友達が近くにいて見守ってくれてる様な気がしてさ…ま、俺の勝手な思い込みだよ」

 

眼の前に楽譜を置いて、シンはピアノの鍵盤に指を乗せる。

 

そして、音を奏で始めた。

 

多少ぎこちなさが残る動きだが、鍵盤に指を丁寧に巡らせて演奏して行く。

 

穏やかで優しい旋律が音楽室の中を満たし、真姫も次第に彼の演奏に惹き込まれる。

 

…ふと、音楽室の中をそよ風が吹き抜けた気がした。

 

「え…?」

 

それと同時に、真姫がきょとんとした顔を浮かべる。

 

何度も目を擦り、瞬きして、首を傾げ…気が付くと、シンの演奏は終わっていた。

 

「やっぱりまだまだあいつには及ばないや…どうだった?」

 

「え?あ…うん、凄く良かった」

 

嘘は言ってない。

 

最後の方で少しぼーっとしてしまったが、彼の演奏に聞き入っていたのは事実だ。

 

「そう言って貰えて良かったよ。邪魔して悪かったな」

 

「い、いえ…」

 

そう言ってシンは楽譜を仕舞うと、椅子から立ち上がって音楽室を出て行った。

 

残された真姫は、1人呟く。

 

「あれ…目の錯覚だったのかしら…?」

 

ほんの一瞬だったが、真姫の目には確かに映っていた。

 

…ピアノを奏でるシンの姿を優しく見守る、赤い服を纏った長い金髪の青年が。

 

 

 

 

 

 

その夜。

 

音ノ木坂学院から徒歩圏内の場所に建つ、在学中の仮住まいとして使用しているマンションに帰宅したシンはテレビ電話でキラに連絡を取る。

 

「…もしもし?」

 

『やぁ、シン。どうだった?登校初日は』

 

「…女ばっかりの学校だって先に言って下さい。すっげぇ気まずかったっす」

 

『あはは、ごめん…一応共学って話だったから、男子生徒も多少はいるかなって思ったんだけど…そんなに少なかった?』

 

「少ないも何も、俺1人でしたよ」

 

『え?ホームページには確かに共学って紹介されてた筈だけど…』

 

「元々女子校だったのが、今年から共学になったばっかりだそうです。だから俺1人しかいなかったんですよ」

 

『そういう事か…本当にごめんね』

 

「まぁ、理事長とか絵里…生徒会長辺りが話し相手になってくれてるんで、比較的マシに過ごせそうではありますね」

 

『そっか、なら良かった』

 

「明日からは学校生活の合間を使って、バルディエルの捜索も開始する予定です」

 

『了解。こまめに報告も宜しくね』

 

「わかりました。じゃあ今日はこれで」

 

『うん、ゆっくり休んでね』

 

 

 

 

 

 

「…如何でしたか?シンの様子は」

 

通話を終えるキラに、ラクスが後ろから声を掛ける。

 

「男子生徒が自分しかいなくて、少し大変みたいだ。もう1つ候補として上がってたUTX学園って所にするべきだったかな」

 

「仕方ありませんわ、先に申し出を受けてくれたのは音ノ木坂学院でしたから」

 

「忙しい前線から少しでも遠ざけてあげようと、違う任務を与えてみたけど…逆効果にならないと良いな」

 

そう言って、キラはラクスが差し出したココアのマグカップに口を付ける。

 

…何を隠そう、この任務をシンに任せる事を選んだのはキラ自身なのだ。

 

FAITHとしての経験から最適だと感じて抜擢したというのも大きいが、年相応な普通の生活を謳歌する時間を少しでも得られるというのが1番の理由だった。

 

「僕達は、デュランダル議長に勝った…いや、勝ってしまった」

 

「…」

 

ぽつりぽつりと語り始めるキラを、ラクスは沈痛な面持ちで眺める。

 

「彼が示す未来を否定して、戦争の無い世界を遠ざけてしまった。それでも…シンもルナマリアも、僕達と同じ道を歩んでくれている。僕達に理想も正義も、何もかも否定されたに等しい筈なのに」

 

「お気持ちはよくわかりますわ。私も…」

 

デュランダルを討った責任を取るべきなのは自分達であるにも関わらず、自分達を受け入れ、力を貸してくれているシンやルナマリア。

 

だからこそ、彼等に背負わせる負担をできる限り減らしたいと考え、この任務を充てがったのだ。

 

本当ならルナマリアも送るつもりだったが、欠員を増やすと人員の補填が難しいという事でシンの単独任務となり、ルナマリアも「寧ろあいつに行かせてあげて下さい」と快諾してくれた。

 

「…僕は、シンにどうして欲しいのかな」

 

一緒に戦ってくれる事を心強く感じる反面、自分達の尻拭いに付き合わせたくないという気持ちもあり、キラの中では相反する2つの感情がぶつかり合っていた。

 

同志として共に平和の為に歩んで欲しいのか、それとも戦いから離れて静かに暮らして欲しいのか。

 

「…それも、ゆっくり考えて行きましょう。キラも、シンも、お互いに」

 

「…うん」

 

そうして、キラ達の夜も過ぎて行った。




シンのピアノが解釈違いと感じた方、申し訳ありません。
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