ラブライブ!デスティニー!!〜赫翼の鬼神と9人の女神達〜 作:疲れた斬月
穂乃果「音ノ木坂の廃校を阻止する為に奔走する私達。妹の雪穂の志望校、UTX学園に視察に行ったらテロに巻き込まれてたちまち大ピンチに!」
シン「そこへ現れたのが正義のヒーロー、シン・アスカ!…って別に俺、ヒーローじゃないんだけどな」
穂乃果「ヒーローだよ!私を助けてくれたんだもん!そしてシン君は新型MSのイモータルジャスティスガンダムに乗って敵をあっさりやっつけたのでした!」
シン「俺達の出会いが音ノ木坂学院に齎すものは?」
シン&穂乃果「さぁ、どうなるPHASE-04!」
「…報告は以上です」
穂乃果を家に送り届けた後、シンは再び音ノ木坂学院へと赴き、理事長に報告をしていた。
「ご苦労さま。でも…まさかこんなに早く動くなんて…本当にありがとう。被害が最小限で済んだのも、貴方のお陰よ」
「まぁ…俺としては、初日から奴らが動いてもおかしくはないかなって思ってましたから。何なら、もっと戦力を投入して来る事も視野に入れてましたし。正直、あの程度で済んだ事に少し安心してる自分がいるくらいです」
あっけらかんと言ってのけるシンに、内心で舌を巻く理事長。
コンパスの兵士として、ありとあらゆる状況に対する備えが常にできているその心構えが、彼が如何に壮絶な環境で過ごして来たのかを如実に物語っていた。
自分の娘と変わらない歳の子供が、こんなにも戦争に馴れてしまっているなんて…と考えたのが何度目かも、もうわからない。
…そしてもう1つ、彼女の頭を痛めている悩みの種が。
「それはさておき…よりにもよって、あの娘にバレたと…」
こめかみを抑えて溜息を吐く理事長。
「何かマズい事でもあるんすか?」
「あの娘、娘の幼馴染でね?私も昔から交流があるんだけど…いかんせん、口が軽くて…」
「あー、そういう…」
旧知の仲だと言う彼女がここまで言うのなら、穂乃果の口の軽さはきっと相当なものなのだろう。
最悪の場合を考え、シンは言いづらそうな顔を浮かべながら提案する。
「…軍の施設に連れて行って、催眠療法でこの件に関する記憶を消さなきゃいけない可能性ぐらいは視野に入れた方が良いですかね?」
「…あまりやって欲しくはないけど、そうは言っていられないかもしれないわね」
あっさりと理解を得られた事に、シンは内心驚く。
しかし、彼女の口元がまるで苦虫を噛み潰したように歪んでいるのが見え、やはりこれは最後の手段だな、と心の奥底で呟いた。
「…何はともあれ、今日はありがとう」
「いえ、これが俺の仕事ですから…失礼します」
シンはそう言い残し、会釈して理事長室を後にした。
『対処ありがとう。君のお陰で、最小限の被害で済んだよ』
「…はい」
帰宅後、シンはキラに連絡を取り、テロを無事に鎮圧した事を報告する。
「でも…民間人にバレたのは、ちょっとマズかったですね。すいませんでした」
『仕方無いよ。あの娘を守るには、ああするしか無かったから。それよりも…』
「…これでバルディエルが東京に潜伏してる事が、ほぼ確定しましたね」
『うん。引き続き、警戒を怠らないでね。何か必要な事があれば、言って欲しい』
「じゃあ早速一言良いっすか?」
『どうしたの?』
「…俺の新型、何でよりによってジャスティスなんです?」
『新しいコンパスの旗印として用意する事になったんだけど…嫌だったかな。君の腕を見込んでの判断だったんだけどね』
「…俺の事を高く買ってくれるのはありがたいですけど、流石に嫌がらせかと思いました」
『あはは…ごめんね』
「まぁ、任された以上はやりますよ。ジャスティス、確かに受領しました」
『ありがとう。それじゃあ引き続き、任せたよ』
「はい」
そう言ってシンは通信を終了する。
「ヒーロー、か…」
ジャスティスの中で穂乃果が言っていた言葉を思い出す。
―――――先輩は…ヒーローなんです…私を、守ってくれた…
自分が守る事のできた少女の顔を脳裏に浮かべつつ、シンは1人呟く。
「穂乃果…俺は、ヒーローなんかじゃないんだよ…」
シンの呟きは、誰に聞かれる事も無く、部屋の静寂の中に消えた。
「おっはy「穂乃果っ!!」ヴェッ!!海未ちゃん!?」
その翌朝、教室へ入ろうとした穂乃果に海未が飛び付いた。
「穂乃果ちゃん!!昨日、怪我したって…大丈夫!?」
そこへさらにことりが詰め寄って来る。
戦闘に巻き込まれた話を聞いて、2人共気が気でなかったのだろう。
「だ、大丈夫だよ!全然大した事無いし!」
「なら良いのですが…」
気丈に振る舞う穂乃果を訝しげな顔で見ながらも、2人は渋々と言った具合で納得する。
彼女の頭に巻かれた包帯は既に解け、現在は傷口にガーゼを当てるのみに留まっている。
「あっ、そうだ!そんな事より、生徒を集める良いアイディアがあるんだけど…」
そして穂乃果は2人に話した。
UTX学園で見たもの。
スクールアイドルという存在。
「それで私、考えたんだ!…あれ」
いざ本題を切り出そうとした所、海未の姿が無い事に気付く。
視線をあちこちに巡らせ、遂に教室から出て行こうとする海未の姿を捉えた。
「海未ちゃん!!まだ話は終わってないよ!」
「わ、私はちょっと用事が…」
「良い方法思い付いたんだから聞いてよーーー!!」
大声で騒ぐ穂乃果に呆れ、海未は穂乃果の言う方法とやらをズバリと言い当ててみせた。
「私達でスクールアイドルをやる、とか言い出すつもりでしょう!?」
「ハッ!?海未ちゃん、エスパー!?」
「誰だって想像付きますっ!!」
驚愕する穂乃果に、当然だと言わんばかりに反論する海未。
彼女の単純な思考の後に続く答えを予測する事には、すっかり慣れてしまっている。
うんざりした海未の様子など露知らず、穂乃果はご機嫌を取る様な猫なで声で海未に話題を切り出す。
「だったら話は早いよね〜♪今から先生の所に行ってアイドル部を「お断りします」何でぇ!?」
バッサリと斬り捨てる海未。
てっきり賛同してくれると思っていた穂乃果は、声を荒げて異を唱える。
「だってこんなに可愛いんだよ?こ〜んなにキラキラしてるんだよ!?こんな衣装、普通じゃぜーったい着れないよ!?」
「そんな事で本当に生徒が集まると思いますか!?」
余りにも軽く考えている穂乃果に徐々に苛立ちが募り、海未の語気もどんどん荒くなっていく。
「その雑誌に出ている様なスクールアイドルは、プロと同じ位努力し、真剣にやって来た人達です!穂乃果みたいに好奇心だけで始めても上手くいく筈無いでしょう!!」
「うぐっ…」
海未に完全に論破され、穂乃果は言い淀む。
「あれ?穂乃果?」
「あっ、先輩!」
そこへシンが姿を現し、3人の視線が彼に集中する。
「おはよ、怪我は大丈夫か?」
「あ、はい!お陰様で!」
「なら良かった」
穂乃果の容態を聞いて安堵するシンに、海未とことりが近寄って頭を下げる。
「穂乃果から伺いました。助けて頂いたと…本当に、何とお礼を申し上げたら良いか…!」
「ありがとうございました!」
「気にすんなって。後輩助けるのは先輩の仕事だしな。で、3人で何話してたんだ?」
「実は…」
「あ〜、だから昨日UTX学園にいたのか…しっかし、スクールアイドルかぁ…」
「先輩も良いアイディアだと思いますよね!」
「だから、上手くいく筈ありません!」
目を輝かせて尋ねて来る穂乃果と、それを諌める海未。
一方のシンは…
「まぁ…やってみる価値はあるんじゃないか?」
「なっ、正気ですか!?」
声を荒げる海未に対し、シンは冷静に答える。
「廃校を検討する程入学希望者が減ってるって事は、今までのやり方じゃ無理が出て来てるって事だ。なら、新しい事を始めてみるのも1つの手だと思うぞ」
「ですよね!やっぱり先輩も「但し」…え?」
喜ぶ穂乃果に水を差す様に、シンは言葉を遮る。
「もし失敗して入学希望者が逆に減るなんて事になったら、その責任は発案者に全部降り掛かる事になる。穂乃果、お前にな」
「…っ!」
そう静かに語るシンの眼は、その焔の様な色からは想像できない程の冷たさを帯びていた。
まるでナイフでも突き付けられているかの様な威圧感を覚え、穂乃果の息が詰まり、顔から喜びの色が消える。
「それを背負える覚悟があるんだったら、やってみても良いと思う。話を通すのなら俺も協力するさ。でも…無いんだったら、学校の未来は大人しく先生達に任せるんだ。その方が良い」
夢を語るだけでなく、叶える覚悟があるのか?
物理的な切れ味を持っているかの様な錯覚すら覚える程鋭い目線で尋ねて来るシンに、穂乃果は何も言葉が出ない。
「私、は…」
漸く口を開いた所で、チャイムが鳴り響く。
「っと、もうこんな時間か。じゃあ、その辺の事よく考えてから答えを出す様にな。俺から言える事はそんだけ」
鋭い覇気をまるで何事も無かったかの様に消すと、シンは3人に背中を向けて教室へ向かった。
「ちょっと脅しすぎたかなぁ…」
教室へ入り、自分の席に付いたシンはそう言って溜息を吐いた。
「おはよ、シン君」
「あぁ…おはよ、希」
「どうしたの?苦ーい顔して」
「ん、あぁ…学校を存続させようとしてる生徒がいてさ、そいつにアドバイスと忠告したんだけど…ちょっと厳しい事言い過ぎたかなって」
「成る程ねぇ…」
どこか興味深げな、或いは面白がっている様な声色で納得する希に対し、シンは1つ要求する。
「…もしかしたら、生徒会にも何かお願いしに来るかもしれない。その時はできるだけ手助けしてやってくれると助かるよ」
「ふ〜ん…わかった。それと、昨日はご苦労さま」
「気にすんなって。これが仕事だからな」
「もう、そこは素直に『どういたしまして』でええんやで?」
優しく微笑む希に、シンの心も幾分か和らぐ。
「…どういたしまして」
「はぁ…覚悟、かぁ…」
その日の授業が終わり、穂乃果はシンに言われた事についてずっと考えていた。
新しい事を始めるリスク。
失敗した時の責任と、それを背負う覚悟。
はっきり言って、考えた事も無かった。
―――――良いアイディアだと思ったんだけどなぁ…
今日は一旦帰ろうと、教室を出て玄関へと歩みを進めた時だった。
『〜♪〜♪』
「…?」
ふと、ピアノの音色が聴こえて来た。
音源を求めて歩みを進めると、音楽室へと辿り着く。
中では真姫がピアノを奏でていた。
真姫の演奏が終わると、穂乃果は思わず扉の外から拍手を贈っていた。
「…!?」
ガラス越しに此方を見る穂乃果の存在に、真姫も漸く気付く。
「凄い凄い凄い!感動しちゃったよ!歌上手だね〜!ピアノも上手だね〜!それにアイドルみたいで可愛い!」
「べ、別に…」
穂乃果からの褒め言葉の嵐に、真姫は頬を赤らめて目を逸らす。
「あの!突然なんだけど、アイドルやってみない!?」
突然の勧誘に、真姫はあからさまに困惑し…
「何それ、意味わかんない!」
勢い良く立ち上がり、部屋を出て行った。
「穂乃果の奴、大丈夫かなぁ」
一方で、穂乃果の事を気に掛けていたシンもまた、授業が終わってから2年生の教室に向かおうとしていた。
「意味わかんない!」
「?」
すると唐突に聞き覚えのある声が聞こえ、続けて扉を勢い良く開ける音が聞こえる。
音のした方を向くと、不機嫌そうな表情の真姫がズカズカと速足で目の前を通過して行った。
「ああっ、ちょっと待って!」
その背中に手を伸ばす1人の生徒。
…穂乃果だ。
「穂乃果?」
「あっ、先輩!」
「…今のって真姫だよな?」
「先輩、知ってるんですか?」
「まぁ、ちょっと知り合う機会があってさ…それで、何かあったのか?」
「実は…」
穂乃果の話によると、偶然聴こえたピアノの音と歌声の主を探した結果、音楽室へ辿り着き、ピアノを弾いている真姫と遭遇したと言う。
そして、共にアイドルをやらないかと誘った所、断られたそうだ。
「あのなぁ…初対面の相手からいきなりそんな事言われたって、反発するに決まってるだろ」
「あはは、それもそっかぁ…」
溜息混じりに穂乃果を見つめ、シンは改めて問う。
「…本気でやるつもりなんだな、スクールアイドル」
「…先輩に言われて、色々考えたんですけど…やっぱり私、音ノ木坂に無くなって欲しくないんです。その為にできる事があるなら、私もやりたい!」
迷いの振り切れた真っ直ぐな瞳で答える穂乃果。
それを見て、シンも自分の想いを固めた。
その頃、弓道場で部活に励む海未。
的を狙って弓を引き絞り…
『皆のハートを撃ち抜くぞ〜!バーン♡』
「っっ!!?///」
放たれた矢は、大きく軌道が逸れた。
「外したの?珍しい」
「っ、た、たまたまですっ!///」
深呼吸して再び弓を引き絞り…
『ラブアロー…シュート♡』
「っっ!///」
今度は自分が狙った的の隣の的に当たった。
「ああ…いけません!こんな…余計な事を考えては…!」
その場に膝から崩れ落ち、赤面して悶え苦しむ海未。
そこへことりが現れる。
「海未ちゃーん、ちょっといい?」
「穂乃果のせいで、全然練習に身が入りません…」
部活を終えた海未が愚痴を吐く。
海未の独白に対し、隣にいることりが尋ねる。
「って事は、ちょっとアイドルに興味があるって事?」
「っ!いえ、それは…!」
恥ずかしげに頬を染めながら否定する海未だが、実際にアイドルへの憧れが密かに芽生えているのは事実であり、否定の声には勢いが無い。
「でも…何時もこういう事って穂乃果ちゃんが言い出してたよね」
懐かしい記憶を掘り返すことり。
幼い頃からずっと、何かに尻込みする自分達をいつも引っ張ってくれたのが穂乃果だ。
「そのせいで、散々な目に何度も遭ったじゃないですか…」
「でも海未ちゃん…後悔した事ある?」
幼い頃、穂乃果に誘われて木登りをした時の事を思い出す。
無理だと泣きじゃくりながらも、彼女に引っ張られる様に登り…木の上で見た夕焼けの美しさに、思わず感動して涙を引っ込めた。
彼女はいつもそうだ。
ことあるごとに何かを思い付いては自分達を付き合わせて…
でも、何だかんだで最後には付き合って良かったと思える結果を得られた。
―――――もしかして、今回もそうなのでしょうか…?
「ふんっ!はっ…!」
「1、2、1、2…そこでターン!」
すると、そこには手拍子を叩き、合図を発するシンと、それに合わせてダンスレッスンに勤しむ穂乃果の姿が。
「うわぁっ!?…いったぁ〜い…!」
「う〜ん…やっぱりもっと初歩的な事から始めた方が良さそうだな、体力作りとか」
シンはスマホで色々と調べながら、穂乃果のコーチングを担当している。
どうやら、2人とも素人という事もあり、悪戦苦闘している様だ。
「ねぇ、海未ちゃん。私、やってみようかな。海未ちゃんはどうする?」
そう微笑みかけて来ることり。
―――――仕方ありませんね…。
心の中でやれやれと溜息を吐きながら、海未は2人に手を伸ばした。
「…!」
「海未?」
穏やかな顔で、転んだ穂乃果に手を差し出す海未。
意地になって無理だと言い張っていたあの面影は、どこにも無かった。
「…貴方達だけで練習しても、意味はありませんよ。やるなら、もっと人を増やさないと」
「海未ちゃん…!」
その後、穂乃果達は部活申請書を持って生徒会室へ行き、絵里に提出した。
「…これは?」
「アイドル部設立の申請書です!」
毅然とした態度で尋ねて来る絵里に、穂乃果は真っ直ぐな目で答える。
「見ればわかります」
「では認めて頂けますね!」
「いいえ」
穂乃果の言葉に対し、冷静に否定を返す絵里。
驚愕の声を上げる穂乃果に対し、絵里は更に言葉を続ける。
「部活は同好会でも最低5人は必要なの」
「ですが、校内には部員が5人以下の所も沢山あるって聞いてます」
「設立した時は5人以上いた筈よ」
「あと1人やね」
海未の反論に対しても絵里は的確に答え、希が更に付け加える。
「なら仕方無いな…出直すか」
シンの言葉に、3人もやむ無しと言わんばかりに踵を返す。
そこへ、絵里が質問を投げ掛けた。
「何でこの時期にアイドル部を立ち上げようと思ったの?」
「廃校を何とか阻止したくて…今、スクールアイドルって凄い人気あるんですよ!だから…」
「…だったら、部員が5人以上集まっても認める訳にはいかないわね」
「えっ!?」
穂乃果の答えに返される、絵里の非情な言葉。
3人が驚く一方で、シンは「だろうな」と言う様な表情を浮かべていた。
「部活動は人を集める為にやるものじゃない。思い付きでやった所で、状況は変わらないわ」
絵里の言葉に、3人は押し黙る。
「変な事を考えてないで、残りの2年…自分の為に何をすべきか考えるべきよ」
絵里の言葉に、どこか不満げな様な、或いは落ち込んでいる様な表情になりながら、3人は部屋を出て行った。
シンもその後に続こうとして…
「シン、貴方は少し残って」
絵里に呼び止められた。
「…何で止めてくれなかったの?」
退出する3人を見送った後、絵里がジト目で睨みつけながらシンに問う。
「だって、この学校を守りたいって気持ちは同じなんだから、無理に否定する必要も無いだろ?」
「失敗して寧ろ入学希望者が減ったりしたら、それこそ本末転倒じゃないの」
「でも…今までのやり方じゃ上手く行かなくなったから、こうなってるんじゃないのか?それなら新しい方法を試してみるのも手だと思うぞ」
不満げに頬を膨らませる絵里。
彼の言っている事は事実ではあるが、まるでこの学校に魅力が無いと言われているかの様だった。
「…シンは、魅力が無いと思ってるの?この学校に」
「まさか。この学校、俺はすっげぇ気に入ってるよ。温かくて、ほのぼのした雰囲気があって…」
「ならどうして…」
問うて来る絵里に対し、シンは溜息を吐いて答える。
「俺が言うのも何だけど…戦争なんかやってる人間の感覚が、まともだと思うか?」
シンの口から発せられたあんまりな発言に希と絵里は言葉を失うが、シンは構う様子も見せずに言葉を続ける。
「どこにでもある、ありふれた日常…そういうものこそが実は本当にかけがえの無いものなんだって、俺達は人一倍感じてるんだ。だから…俺が魅力的で素晴らしいって思ってるものでも、普通に暮らしてる人には大したものじゃない…そんなのはざらにあるんだよ」
神妙な面持ちでその言葉に耳を傾ける希。
一方の絵里は、いたたまれない気持ちになったらしく…
「…じゃあ、貴方は貴方のやるべき事に集中して。貴方はこの学校の未来なんかより、よっぽど重いものを背負ってるでしょ」
ぶっきらぼうにそう告げ、それを見た希が「あちゃー」といった様子でこめかみを抑える。
「…そうだな、悪かった。また明日な」
シンは絵里の言葉を受け、そそくさと生徒会室を出て行った。
「えりち?流石に言いすぎとちゃうん?」
「…完っ全にやっちゃった…」
シンが去った後の生徒会室。
ジト目で咎める希の言葉に、絵里は頭を抑えながら溜息混じりに返す。
先程の心無い発言が、絵里をひたすら自責の念に駆り立てていた。
「…」
自分もわかっているのだ。
彼女達の言っている事も一利あると。
だが…自分は生徒会長。
何の根拠も確信も無い挑戦に、はいそうですかと首を縦に振って良い立場ではないのだ。
「どうすれば…」
そんな絵里の呟きを、希は悲しげな眼で聞いていた。
生徒会室を後にし、玄関で靴を履き替えながらシンは1人呟く。
「結局、俺には何もできないのか…」
この学校に自分が受け入れられたのは、共学化に向けてのテストケースも兼ねているというのに、それが全く意味を為していない現実が、酷く腹立たしい。
まだ過ごした時間は短いものの、自分が歳相応の学生生活を送れる様に最大限の便宜を図ってくれた理事長や絵里達の為に、自分も何かしたかったのに。
絵里の顔からも、初対面の時の明るい雰囲気が完全に消えてしまい、どこかギスギスした雰囲気を漂わせる様になってしまった。
「ほんっとに役立たずだな、俺は…」
どうにかしたい問題に遭遇した時には、とっくに自分にできる事が何も無い状態に陥っている。
こんな不満を何度味わっただろう。
口の中が苦いもので満たされる様な錯覚に陥った、刹那…
「だって♪可能性感じたんだ♪そうだ♪ススメ〜…♪」
…歌が、聴こえた。
桜の花弁が舞う中、前方にいる穂乃果が歌っていた。
「後悔したくない♪眼の前に♪僕らの道がある〜…♪」
その歌声に聞き惚れていると、突然駆け出す穂乃果。
それに合わせて、隣にいた海未とことりも動き出す。
上着を脱ぎ捨て、自分達の想いを吐き出す様に歌い、踊る3人。
そんな3人の姿が、シンの心に巣食った厚い雲を晴らして行く。
…歌い終えた穂乃果が、高らかに宣言する。
「私、やっぱりやる!やるったらやるッ!!」
今回のED『ススメ→トゥモロウ』
ここでちょっと残念(?)なお知らせ。
アスランの出番は当分ありません。
というのも、所属組織が違うのでどう絡ませれば良いのかイマイチわからないからです。
なので本作のアスランは「自分は今までシンに悪影響しか与えられなかったし、きっとこれからもそうに違いない」という負い目から、必要最低限しか会わない様にしているという設定にしてます。
登場は劇場版の時系列に入ってからになると思います。