ラブライブ!デスティニー!!〜赫翼の鬼神と9人の女神達〜   作:疲れた斬月

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『前回のラブライブ!デスティニー!!』

穂乃果「高校2年になった私を待ち受けていたのは、廃校のお知らせ!廃校を阻止する為、スクールアイドルをやる事に。ところが…」

海未『アイドルは無しです!』

シン『失敗したら、責任は全部お前に降り掛かる事になるぞ』

絵里『自分の為に何ができるかを考えるべきよ』

穂乃果「それでも私、学校の為に何かしたい!諦め切れない!私、やっぱりやる!!」

シン「殆ど読まれちまったよ…さて、」

シン&穂乃果「どうなるPHASE-05!」


PHASE-05「アイドルを始めよう!」

「…朝から何?」

 

翌日の生徒会室。

 

絵里、希、シンがブルーコスモスの動向や対策について話をしていた所、穂乃果、海未、ことりの3人がやって来て、講堂の使用申請書を絵里に叩き付けた。

 

怪訝な顔で尋ねる絵里に、穂乃果がきっぱりと答える。

 

「講堂の使用許可を頂きたいと思いまして!」

 

「部活動に関係無く、生徒は自由に講堂を使用できると生徒手帳に書いてありましたので」

 

「新入生歓迎会の日の午後やな」

 

海未の意見に補足する様に、希は書類に記された日付を確認する。

 

「それで、何をするつもり?」

 

「ライブです!」

 

絵里からの問いにきっぱりと答える穂乃果に「まだ言うな!」と言いたげな視線を送る海未とことり。

 

しかし、穂乃果はそれに全く気付かないのか、或いは無視しているのか、気にする様子も見せない。

 

「3人でスクールアイドルを結成したので、そのファーストライブを講堂でやる事にしたんです!」

 

「穂乃果…」

 

「まだできるかどうかわからないよ?」

 

「え〜?やるよぉ!」

 

呆れた様な海未の視線と、まだ気が早いと宥めることり。

 

すると、シンが付け加える。

 

「まぁ、こいつらのやろうとしてる事の是非は兎も角として…別に講堂使う事に問題は無いよな?」

 

「…できるの?こんな状態で」

 

「だ、大丈夫です」

 

心配そうに見詰める絵里に、希が説得の言葉を投げる。

 

「3人は講堂の使用許可を取りに来たんやろ?部活動でもないのに、生徒会がどうこう言う権利無いやん」

 

「それは…」

 

 

 

 

 

「「「失礼しました!」」」

 

部屋を出る3人。

 

そして…

 

「やったぁぁぁぁぁ〜〜!!」

 

穂乃果がガッツポーズと共に歓喜の声を上げた。

 

 

 

 

 

「…何故あの娘達に味方するの?」

 

3人が去った後の生徒会室で、絵里が苛立ちを隠せない様子で希に問う。

 

「何度やってもそうしろって言うんや。カードが…」

 

開かれた窓から吹き込む突風。

 

風に捲られたカードが部屋中を飛び回る。

 

「カードがウチにそう告げるんや!」

 

手元に飛んで来た1枚のタロットをシンがキャッチする。

 

描かれていたアルカナは…幸運や成功を意味する『太陽』。

 

「…」

 

シンは何も言わず、手に取ったそれを静かに見詰めていた。

 

 

 

 

 

「ちゃんと話したじゃないですか!アイドルの事は隠して、借りれるだけ借りておこうと!」

 

「何で〜?」

 

放課後。

 

厳しい声で叱責する海未に対し、呑気にパンを齧る穂乃果。

 

「またパンですか!」

 

「え〜?だってウチ和菓子屋だから、パンが珍しいもん」

 

「太っても知らないぞ?」

 

2人と合流したシンは呆れた様に溜息を吐きながら、自販機で購入したコーヒーを啜る。

 

アイドルやるんならもっと体型維持に努めた方がいいのではないのか?と内心でツッコむが、右から左に聞き流されそうだ。

 

「お2人さん!」

 

そこへ、声を掛けて来る生徒が3人。

 

穂乃果達の同級生のヒデコ、フミコ、ミカだ。

 

「掲示板見たよ!」

 

「スクールアイドルやるんだって?」

 

「海未ちゃんがやるなんて思わなかった!」

 

3人の言葉を聞き、海未は慌てて穂乃果に問い質す。

 

「掲示板に何かを貼ったのですか!?」

 

「うん、ライブのお知らせを!」

 

「ぶふっ!?」

 

流石のシンも、飲んでいたコーヒーを吹き出した。

 

「おまっ、もう貼ったのかよ!?」

 

「幾ら何でも勝手すぎます!!」

 

「え〜?だってことりちゃんはいいって言ってたよ?」

 

海未と共に怒涛のツッコミを入れるが、穂乃果は至って呑気だ。

 

こんなノリに昔から付き合わされてたのか、とシンは海未の心中を察して頭を痛めた。

 

そこへ、ヒデコが疑問を投げ掛ける。

 

「って、先輩も穂乃果ちゃん達を手伝うんですか?」

 

「ん?ああ…俺が部活に入ってもどうせ大会なんか出られないだろうし、それならいっそ穂乃果達の手伝いでもしてようかなって思ってさ」

 

「先輩が…?」

 

ヒデコ、フミコ、ミカの脳内にイメージが浮かぶ。

 

…女装したシンがステージ衣装を纏い、ステージに立つ姿が。

 

『皆〜!私の歌を聴きに来てくれてありがとう!今日は楽しんで行ってn』

 

 

 

 

 

誰がアイドルやるっつったよ!!

 

シンはそのイメージを引っ掴み、明後日の方向へ投げ飛ばした。

 

「そんなもん誰に需要があんだよ!やるとしても精々マネージャーに決まってるだろ」

 

変なイメージを浮かべていた3人にツッコミを入れるシンだが、ヒデコ、フミコ、ミカが口を開く。

 

「え〜?でも先輩、顔かなりいいからいけると思いますよ」

 

「うんうん、イケメンって女装しても違和感無いしね」

 

「肌も白いし…何か羨ましくなってきたわ」

 

「お前ら俺を何だと思ってんだ!」

 

ひとしきりツッコミを炸裂させた後、はぁ、と溜め息を吐き、海未に向き直る。

 

「兎も角、やっちまったもんは仕方無い。一先ず今後についての作戦会議だ」

 

「…ですね、ことりも呼んで早急に行いましょう。ほら、行きますよ穂乃果!」

 

「え〜?何で?」

 

「「お前(貴女)が原因だろう(でしょう)が!!」」

 

息ぴったりのツッコミを入れるシンと海未。

 

穂乃果を引きずりながら2年生の教室へ向かう中、穂乃果は呑気にヒデコ、フミコ、ミカに「ライブ観に来てね〜」と手を振っていた。

 

 

 

 

 

教室へ戻ると、ことりが席に座ってノートに何か書き連ねている。

 

「う〜ん…こんなもんかなぁ」

 

「ことり?何書いてんだ?」

 

「あ、先輩!今ステージ衣装を考えてたんです!」

 

ペンを手離し、ノートを見せて来ることり。

 

「わ〜、可愛い!」

 

「ほんと?ここのカーブのラインが難しいんだけど、何とか作ってみようかなって」

 

開かれたページにはピンク、青、緑の3種類の衣装が描かれていた。

 

声を上げる穂乃果に同意する様に、シンも中々上手いもんだなと感心していると、海未の様子がおかしい事に気付く。

 

「海未?どうかしたのか?」

 

そう気に掛けるシンには目もくれず、海未はイラストを指さして恐る恐る尋ねた。

 

「ことり…ここのスーッと出ているものは…?」

 

「え?足だけど」

 

「…素足にこの短いスカート、という事でしょうか?」

 

「だってアイドルだもん」

 

スカートの裾を抑え、足をもじもじと動かす海未。

 

どうやら本質はかなり内気な性格の様であり、こいつはこいつで色々と心配だな、とシンは内心で溜め息を吐く。

 

「大丈夫だよ!海未ちゃんそんなに脚太くないよ!」

 

「人の事言えるのですか!?」

 

能天気に励ます穂乃果に、海未は勢い良く立ち上がって問い詰める。

 

コイツ隙あらばパン齧ってるし、確かに心配ではあるなぁとシンも同意する。

 

すると、穂乃果は突然自分の脚を擦り始める。

 

「ふむふむ…ふむふむ…」

 

それを続ける事数秒。

 

「よし、ダイエットだ!」

 

と気合いを入れる。

 

「2人共大丈夫だと思うけど…」

 

とことりは苦笑いした。

 

 

 

 

 

「他にも決めておかなきゃいけない事も沢山あるよね〜。サインでしょ?街を歩く時の変装の方法でしょ?」

 

「そんなの必要ありません!」

 

「つか、最初に心配するのそこなのか?」

 

取らぬ狸の皮算用と言っても過言ではない心配をする穂乃果にシンが疑問を呈すると、今度はことりが話題を切り出す。

 

「それより…グループの名前、決めてないし」

 

そう、最初の問題はそこだ。

 

アイドルとして活動するに当たって必要不可欠なグループ名をまだ決めていない。

 

「う〜ん…中々いい案思い付かないよねぇ」

 

「私達に何か特徴があればいいんだけど…」

 

「性格もバラバラですし…」

 

頭を悩ませる穂乃果、ことり、海未の3人。

 

シンも思考を巡らせ、幾つか候補となる案は思い浮かべるが、いずれも「女の子らしさに欠ける」という理由から自分で尽く却下していく。

 

すると、ここで穂乃果が先陣を切って提案した。

 

「じゃあ、私達3人の名前を取って…」

 

 

 

 

『『『どうも〜!』』』

 

『穂乃果』

 

『海未』

 

『ことりで〜す!』

 

 

 

 

 

「…漫才師みたいですね」

 

と、3人がスーツ姿に蝶ネクタイでマイクに挨拶するイメージを一刀両断する海未。

 

「えへへ…あ、そうだ!」

 

苦笑しつつも、穂乃果が次の案を出すが…

 

 

 

 

『海未ちゃんは海、ことりちゃんは空、穂乃果()は陸』

 

『『『名付けて【陸・海・空】!市民の平和は私達が守る!』』』

 

 

 

 

 

「…お前ら軍人でも目指してんのか?」

 

と、やはりバッサリ。

 

「全然アイドルっぽくないし…」

 

「こうなったら…先輩!何かいいアイディアありませんか!」

 

「俺かよ」

 

ことりからも苦言を呈され、遂にシンに議題が投げ掛けられる。

 

「う〜ん…今まで思い付いたのが全部女の子っぽさとかアイドルらしさに欠けるから自分で却下してんだよなぁ」

 

「先輩もダメか〜」

 

がっくり肩を落とすことり。

 

すると、穂乃果が勢い良く立ち上がった。

 

「そうだ!」

 

 

 

 

 

「…で、丸投げかよ」

 

廊下の片隅に置かれた箱と紙を見てボヤくシン。

 

結局、生徒によるアンケートで決める事になったのだ。

 

呆れた様に溜め息を吐く海未だが、穂乃果は自信満々に

 

「こうすれば皆興味持ってくれそうだし!」

 

と答える。

 

「そうかもね」

 

ことりはそう納得するが、そもそも誰も入れない可能性は無いのだろうかと不安も拭い切れない。

 

だが、結局いいグループ名も思い付かなかったのでやむ無しか、とシンは自分の想像力不足を反省する。

 

そんなシンの事情などつゆ知らず、穂乃果は気持ちを切り替える。

 

「よ〜し、次は歌と踊りの練習だ!」

 

 

 

 

 

…と意気込んだはいいものの、運動場や体育館は他の部活が使用しており、鍵の掛かった空き教室を使わせて貰おうと穂乃果達の担任の山田先生に鍵を借りに行く。

 

「空き教室を何に使うんだ?」

 

「スクールアイドルの練習に!」

 

意気揚々と答える穂乃果だが…

 

「お前がアイドル?…プッ」

 

「あ〜!鼻で笑った〜!?」

 

ムキになる穂乃果と対照的に、やはり簡単にはいかないか…と冷静な様子のシン。

 

すると、山田が今度はシンに問いを投げる。

 

「何だ?お前もやるのか?」

 

「マネージャーですけどね」

 

にやけながらそう尋ねて来る山田に対し、シンはぶっきらぼうにそう答える。

 

何となく展開が読めたからだ。

 

「何だ、私はてっきり…」

 

そう言うと、山田は先程のイメージをぐっと掴んで引き寄せる。

 

…シンが女装してステージに立つイメージを。

 

『皆〜!私の歌を聴きに来てくれてありがt』

 

誰がアイドルやるっつったよ!!

 

予想した通りの展開になったので、今度はイメージを殴り飛ばした。

 

 

 

 

 

「…現状、使えるのはここしか無さそうだな」

 

それからも使える場所を探し求めて学校中を歩き回ったが、屋上しか空きが無いという結論に至った。

 

「日陰も無いし…雨とか降ったら大変だけど、贅沢は言ってられないね」

 

「夏とか冬とか大変そうだしね〜」

 

少し残念そうなことりに同調する様に、穂乃果も溜め息混じりにボヤく。

 

やはり3人共、どこか無理矢理納得しようとしている様だ。

 

「まぁ、周りの迷惑とか気にしなくていいってのはメリットかもな」

 

シンがすかさずフォローを入れると、漸く少し前向きな表情になる。

 

そして、気持ちを切り替えて穂乃果が先陣を切った。

 

「よ〜し、まずは歌の練習からだ!」

 

「「はい!」」

 

意気揚々と返す海未とことり。

 

…しかし。

 

「…曲どうすんだ?」

 

「「「…」」」

 

早速頓挫した。

 

 

 

 

その頃、穂乃果が設置したアンケートボックスの前。

 

1人の眼鏡を掛けた女子生徒が、その前に佇んでいた。

 

「アイドル…」

 

食い入る様にその箱を見つめる女子生徒。

 

そんな彼女に声を掛ける存在が1人。

 

「かよち〜ん」

 

「凛ちゃん!」

 

やって来たのはオレンジの髪をショートカットにした少女…『星空凛』。

 

箱を見つめていた『小泉花陽』の幼馴染だ。

 

「どうしたの?」

 

「ううん…何でも無い」

 

「そうなの?じゃあ帰ろうよ!」

 

凛に促されるがまま、生徒玄関へと向かう花陽。

 

―――――できる訳無いよね、私なんかじゃ…。

 

…傍にいる凛にも聞かれる事無く、花陽は心の中で呟いた。

 

 

 

 

 

 

「…」

 

2人が立ち去った後。

 

黒髪をツインテールに纏めた女子生徒が、その箱とポスターをどこか恨めしげに眺めていた。

 

 

 

 

 

「「お邪魔します」」

 

放課後、シンと海未は穂乃果の家を訪れていた。

 

結局屋上での練習はまた後日という事になり、まずは歌を何とかしようという話になった。

 

「あふっ、んぐっ…あら、海未ちゃんにシン君もいらっしゃい」

 

暖簾をくぐると、穂乃果の母が食べかけの団子を慌てて頬張り、喉の奥へと流し込んだ。

 

商品を摘み食いする能天気さは穂乃果の母親らしいな、とシンは内心で感じながら会釈する。

 

「穂乃果達ならもう上にいるわよ。あ、お団子食べる?」

 

「結構です、ダイエットしないといけないので」

 

「あ、じゃあ俺は頂いていいっすか?」

 

団子を受け取り、頬張りながら海未と共に穂乃果の部屋へと向かうシン。

 

「海未ってほんとストイックだな」

 

「当たり前です。これから体型維持の必要性が格段に上がるんですから」

 

「和菓子は糖質低いからダイエット中でも食べていいの多いって聞くけどなぁ」

 

雑談しながら階段を上がり、穂乃果の部屋の襖を開くと…

 

「「お疲れ様〜」」

 

机の上にどっさりと積み上げられた団子を頬張っている穂乃果とことりがいた。

 

シンはコントの様な見事なずっこけを披露し、海未はがっくりと肩を落とした。

 

「お団子食べる〜?」

 

「お茶淹れて来るね〜」

 

能天気に団子を勧めて来る穂乃果と、お茶を淹れようとすることり。

 

そんな2人に対して海未が、

 

「貴女達…ダイエットは?」

 

溜め息混じりにそう問うと…

 

「「…あぁ〜っ!?」」

 

漸く2人も思い出したらしい。

 

「…真面目に努力しようという気は無い様ですね」

 

「忘れるの早すぎるだろ…」

 

まさに前途多難、一寸先は闇。

 

 

 

 

閑話休題(それはさておき)

 

「それで、曲の方はどうなりました?」

 

改めて海未が切り出す話題に、穂乃果が自信満々で答える。

 

「うん!1年生にすっごく歌の上手い娘がいるんだ!ピアノも上手で、もしかしたら作曲もできるんじゃないかなぁと思って。明日聞いてみようと思うんだ」

 

「…もう変な切り出し方するなよ?」

 

穂乃果の言っている1年生が誰だか一瞬で理解したシンがやんわりと忠告すると、ことりが質問して来る。

 

「先輩、その娘の事知ってるんですか?」

 

「ああ、ちょっと知り合う機会があってな…それと、穂乃果が変な誘い方して反感買ったってのは知ってる」

 

初対面でいきなりアイドルやってみないかなどと誘った穂乃果よりも、俺から頼んだ方がいいかもしれない…と考えながらシンはことりに説明する。

 

しかし、そもそも頼んだ所で作曲ができるかどうかはまた別問題かと考えると、真姫の事は穂乃果に任せ、自分は真姫がダメだった時の代替策を考える方がいいか、と結論付けた。

 

こんな時レイがいてくれれば或いは、と亡き親友を思い浮かべるが…次いでもう一つの疑問が。

 

「一先ず作曲は真姫(アイツ)に頼んでみるとして…歌詞は?何か手はあるのか?」

 

そう、歌詞だ。

 

曲があっても、それに乗せて歌う詞が無ければアイドルの歌曲は成立しない。

 

すると、穂乃果とことりの視線がとある人物へと集中する。

 

「!?」

 

その人物…海未は事態を一瞬で察したのか、勢い良く立ち上がって扉へ向かって一目散に逃げようとする。

 

慌てて穂乃果がその腕を掴み、必死に止める。

 

「ちょっ、海未ちゃん!逃げないで!!」

 

「離して下さい!帰ります!!」

 

必死に足掻く海未とそれを止める穂乃果を眺めながら、今度はシンがことりに質問する。

 

「何だ?海未って作詞できるのか?」

 

「えっと、中学校の頃にポエムを…」

 

「あーあーあーあーあー!!!」

 

大声でことりの解説を遮ろうとする海未。

 

ただ、何となく事情は察したので、シンは深く追及するのはやめよう、と自己完結した。

 

 

 

 

 

「お断りします!!」

 

…とは言ったものの、やはり背に腹は代えられないという事で穂乃果が海未に頼んだ所、あっさりと断られてしまう。

 

「ええっ!?何でぇ!?」

 

「絶対嫌です!中学の時のなんて、思い出したくも無いくらい恥ずかしいんですよ!?」

 

疑問の声を上げる穂乃果にそう答える海未だが、よくそんな恥ずかしいもんを見せてたな、とシンはツッコミを入れそうになる。

 

しかし、余計に海未の機嫌を損ねるのもマズいなと思い、何とか喉の奥へと押し殺した。

 

「穂乃果がやればいいじゃないですか。言い出したのは貴女なんですよ?」

 

「いやぁ、私は…」

 

海未の提案に対し、穂乃果は苦笑いを浮かべる。

 

3人が思い浮かべるのは、自分達が小学生だった頃に穂乃果が書いた作文。

 

 

 

 

『おまんじゅう うぐいすだんご もうあきた!』

 

 

 

 

「…無理だと思わない?」

 

「それは…」

 

ことりの言う通りなので、流石の海未も納得せざるを得なかった。

 

しかし、やはり海未としては余りやりたくないらしく…

 

「その…つかぬ事をお聞きしますが、先輩は…」

 

助けてと言わんばかりにシンに目線を向ける海未。

 

一方のシンは頭を掻きむしりながら…

 

「う〜ん…小説なら1回書いた事あるんだけどなぁ」

 

海未はパッと頬を輝かせる。

 

「かなり暗い感じの内容になったから、多分作詞しても似たような感じになると思うぞ」

 

と、当時を振り返りながら答えるシン。

 

アカデミー時代、休日に暇つぶしで書いたものだったのだが、その時の精神状態が丸ごと反映されてしまったのか、かなりバイオレンスな内容と化してしまっているのだ。

 

一方の海未は頼みの綱のシンも宛にならないとわかり、酷く落ち込んだ。

 

それでもやはり渋る海未。

 

すると…

 

「海未ちゃん…っ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お願いっ!

 

「「っ!?///」」

 

ことりの必殺技が炸裂。

 

見てしまった2人の胸が高鳴りを覚え、その破壊力に思わずシンは絶句する。

 

「うぅ…狡いです…」

 

遂に折れてしまう海未。

 

余波程度しか受けていない自分ですらときめいてしまうのだから、直に喰らった海未が揺らいでしまうのも無理はないなと勝手に納得し…次いで、心の中で呟いた。

 

―――――別れた彼女(ルナマリア)が今の俺を見たら、どう思うんだろうな…。

 

そんなシンの様子などつゆ知らず、海未は穂乃果とことりに発言する。

 

「但し、練習メニューは私が作ります」

 

「「練習メニュー?」」

 

首を傾げる穂乃果とことりに、海未はスマホでA-RISEのライブ映像を見せる。

 

それを暫く見て、シンは意図を察した。

 

「…成る程な。これは確かに体力勝負だ」

 

まだ意図が理解できていない穂乃果とことりに、シンはある注文をする。

 

「2人共、腕立て伏せの姿勢作ってみろ」

 

「こう…ですか?」

 

言われた通りに腕立て伏せの姿勢を取る穂乃果とことり。

 

「それで笑顔を作って、それを崩さずに腕立て伏せしてみろ」

 

「「い〜、ち…うわっ!?」」

 

言われた通りにやろうとするが、1回もできずに崩れ落ちてしまう2人。

 

「…俺と海未が言いたい事、わかったか?」

 

「弓道部で鍛えている私は兎も角、穂乃果とことりは楽しく歌えるだけの体力を付けなくてはいけません」

 

「そっか…アイドルって、大変なんだね」

 

穂乃果も漸く、スクールアイドルの難しさを真の意味で理解した様だ。

 

しかし、その目に諦めの色は無いのを見て、今はまだ大丈夫かとシンは確信した。

 

 

 

 

 

翌朝、神田明神の男坂門。

 

階段を往復する穂乃果とことり、それを見守るシンと海未の姿があった。

 

「「はぁ…はぁ…」」

 

数往復繰り返した所で、2人は息も絶え絶えになって座り込む。

 

「ふぇ〜…もうキツいよ〜…」

 

「もう足が動かない〜…」

 

やはり身体を動かす事に馴れていないらしく、短時間でかなり疲弊している様だ。

 

「これから毎日ここで朝と晩、歌とダンス以外に基礎体力を付ける練習をして貰います」

 

「1日2回も!?」

 

「そうです。やるからにはちゃんとしたライブをやります。そうでなければ、生徒は集まりませんから」

 

絶望の色を浮かべる穂乃果に、淡々と答える海未。

 

シンも2人にドリンクを手渡しながら、海未の言葉に更に付け加える。

 

「音ノ木坂を守りたいんだろ?なら、ちゃんとそれを実現できるだけのクオリティにまで仕上げなきゃダメだ。学校生活に支障が出ない程度には、練習内容は調整するからさ」

 

その言葉に、穂乃果とことりも漸く気持ちを固める。

 

「…はい、私、頑張ります!」

 

「私も!」

 

穂乃果とことりの返事を聞き、シンも口元に笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

「君達♪」

 

そこへ、声を掛けて来る存在が1人。

 

「あれ、希?」

 

巫女服を纏った希だ。

 

「副会長さん…?」

 

「何?その格好…」

 

希の姿に首を傾げることりと穂乃果。

 

希はにこやかに微笑みながら答える。

 

「ここでお手伝いしとるんや。神社は色々な気が集まるスピリチュアルな場所やからね。4人共、階段使わせて貰っとるんやから、お参りくらいしてき」

 

希に言われるがまま、穂乃果、海未、ことりは神社の中へ向かう。

 

「シン君は行かへんの?」

 

「あ〜…プラントじゃあんまり神様とかって信じてないからさ。お参りのし方なんかわからないし」

 

神様というものを余り信じていないシンは、まだ信仰という概念が残っているこの土地に珍しさを感じながら答える。

 

…仮にいたとしても、信じる気にはならないだろうけどな、と内心で呟きながら、シンは参拝する3人を眺めていた。

 

ライブの成功を祈念しているのだろう、と察しながら、シンも歩を進める。

 

―――――意味あるかどうかわかんないけど…。

 

…参拝の手順が書かれた案内板を見ながら、見様見真似でシンも手を合わせた。

 

困った時のおまじない程度にはなればいいなと願って。

 

そんな4人を、希はどこか面白そうに見守っていた。




ぶん投げるシーンは仮面ライダービルド第2話で戦兎が万丈の第一章をぶん投げた時のイメージで。 

そして作中でも述べた通り、本作のシンとルナマリアは破局しています。

経緯としては、

傷の舐め合いでくっついたものの、メイリンの生存を知ってルナマリアが立ち直った結果、シンは自分だけが一方的に依存する形になっている事に気付き、本当に互いに相手を好きで付き合ったのかわからなくなってしまう

こんな気持ちで付き合い続けてもルナマリアに迷惑だなと考えたシンが「一旦別れて互いの気持ちを見詰め直したい」とルナマリアに意思表示

ルナマリアはそれを承諾、以前までと同様の友人関係に戻る

といった具合です。

ルナマリアの扱いについては考え中ですが、読者の皆さんにも納得して頂ける様に、そして自分としてもただの負けヒロインで終わらせたくないので、決して悪い様にはならない様、熟考して答えを出す所存です。

そして遅くなりましたが、ラブライブシリーズ15周年&久保ユリカさんご結婚おめでとうございます!
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