ラブライブ!デスティニー!!〜赫翼の鬼神と9人の女神達〜   作:疲れた斬月

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『前回のラブライブ!デスティニー!!』

穂乃果「ファーストライブに向けて準備を始める私達!」

シン「絵里との一悶着やら真姫との紆余曲折やら、色々ありながらも新曲『START:DASH!』が遂に完成!」

穂乃果「後はライブ本番に向けてもっと煮詰めていくだけなんだけど…今回は海未ちゃんに大問題発生!?」

シン「こんなんで大丈夫なのかファーストライブ?」

シン&穂乃果「さぁ、どうなるPHASE-07!」


PHASE-07「ファーストライブ!」

「ハッ…ハッ…!」

 

朝の神田明神。

 

いつもの様にトレーニングに励む3人と、そのサポートをするシンの姿があった。

 

発足当初に比べて穂乃果とことりも確実に体力を付けつつあり、トレーニングも順調にこなせる様になって来ている。

 

かなりの急斜面である男坂階段を海未にも負けない速さで往復できる様になって来ており、シンは3人の成長をひしひしと感じていた。

 

―――――この調子なら、本番も大丈夫そうだな。

 

 

 

 

「ふぅ〜…終わったぁ」

 

物陰で休憩を取る3人。

 

「お疲れ様。だいぶ仕上がって来たな」

 

「まだ放課後の練習がありますよ?」

 

シンが3人に労いの言葉を贈りながら、ドリンクを差し出すと、海未が水を差す様に言う。

 

「でも、随分できる様になったよね」

 

ことりの言葉に対し、シンも頷く。

 

現に2人共、開始当初に比べると明らかにスムーズに練習をこなせる様になって来ている。

 

「傍から見ててもわかるくらい体力付いて来たよ。穂乃果なんか絶対寝坊すると思ってたし、ほんとよく頑張るよな」

 

「大丈夫です!その分授業中ぐっすり寝てますから!」

 

「寝るなバカ」

 

穂乃果の能天気な発言に、シンの辛辣なツッコミが入る。

 

学生の本分である学業を疎かにしていては元も子もないし、もう少し練習メニュー考え直すべきか…と思案を巡らせていると、物陰に誰かがいるのを見付けた。

 

「あいつは…」

 

見覚えのある赤い髪。

 

人影は自分の視線に気付いたのか、慌てて踵を返して立ち去ろうとする。

 

「西木野さーん!真姫ちゃーん!」

 

それを当然の如く呼び止めるのは、やはり穂乃果。

 

ぎょっと肩を跳ねさせた真姫は、振り返って顔を赤く染めながら下りかけていた階段を上って来る。

 

「大声で呼ばないで!!」

 

「ほぇ?どうして?」

 

「恥ずかしいからよっ!!」

 

首を傾げる穂乃果にそう言い返す真姫だが、

 

「そうだ!この曲3人で歌ったから聴いてみて!」

 

どこ吹く風の穂乃果。

 

お前は真姫の話聞いてやれと穂乃果にツッコミを入れようとするシンだったが、今の穂乃果に何を言っても聞く耳を持たないだろうと判断して押し黙る。

 

「はぁ?何で?」

 

「真姫ちゃんが作ってくれた曲でしょ?」

 

「だから、私じゃないって何度も言ってるでしょ!」

 

「まだ言ってるのですか…」

 

穂乃果と真姫のやり取りを見て呆れた様に溜め息を吐く海未。

 

シンも穂乃果に振り回される被害者がまた1人増えたな、と軽く呆れながらその様子を眺めていると…

 

「ぐるるるるるる…」

 

…突然穂乃果が唸り声を上げ始める。

 

何事か、とシンは怪訝な顔で穂乃果の顔を覗き込むと…

 

「がおおおおおおおおお!!」

 

「ひぃっ!?」

 

突然、獣の様な咆哮を上げて真姫に引っ付いた。

 

怯えた目で短い悲鳴を上げる真姫に対し、穂乃果は不気味な笑みを浮かべてじりじりと顔を近付ける。

 

「うぁ、ちょっ、はぁ!?何やってんのよ!?」

 

「ひひひひひひひひひ…!」

 

「い…嫌ぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

 

真姫の悲鳴が境内に響き渡り…

 

 

 

 

 

…その耳に、穂乃果がイヤホンを付けた。

 

「ぃよぉし!作戦成功!!」

 

「どんな作戦だよ…」

 

どうやら、単に引っ付いて真姫が戸惑っている間にイヤホンを付ける作戦だった様だ。

 

作戦と呼んでいいのかもわからない脳筋プレイに、シンは呆れた様に控えめなツッコミを入れる。

 

そして、真姫の方も遂に観念したのか、ガックリと肩を落とした。

 

「μ's!」

 

「ミュージック…!」

 

「「「スタート!!」」」

 

掛け声と共に曲を再生する3人。

 

苦い顔だった真姫も何だかんだ真剣に聴いており、やはり真姫に頼んで正解だったな、とシンは密かに笑みを浮かべた。

 

 

 

 

「ふぁぁ〜…」

 

「眠る気満々ですね…授業中に寝るのはダメですよ?」

 

朝練を終え、校門を潜りながら欠伸をする穂乃果にそう注意する海未。

 

あの後、3人の曲を聴いた真姫は「こんなのまだまだよ」と言ってそのまま去ってしまった。

 

中々に辛口だが、3人のやる気を焚き付ける事を考えると変に媚びを売る様な意見よりいいかもしれない。

 

後は如何に穂乃果の学業の妨げにならない様に練習メニューを調整するかだな…とシンは思考を巡らせる。

 

「ねぇ、あの娘達じゃない?」

 

すると、後ろからそんな声が。

 

振り向くと、数人の女子生徒が自分達を指して話をしている事に気付く4人。

 

リボンの色からして、どうやら3年生の様だ。

 

「もしかして貴女達?スクールアイドルやってるっていう…」

 

「あ、はい!μ'sってグループです!」

 

「μ's?あぁ、石鹸の…」

 

「違います」

 

穂乃果の説明を聞いて女子生徒が誤認し、海未がすかさず修正を入れる。

 

そういやミューズって石鹸あったな、とシンが内心でどうでもいい事を考えていると、女子生徒が思い出した様に言った。

 

「あ、そうそう!ウチの妹がネットで貴女達の事見たって!」

 

「本当ですか!?」

 

その言葉にハッとなる4人。

 

どうやら思った以上に注目が集まっているらしく、まずまずの手応えを感じる。

 

「明日ライブやるんでしょ!?」

 

「はい!放課後に!」

 

「どんな風にやるの?ちょっと踊って見せてくれない!?」

 

「えっ!?こ、ここでですか!?」

 

「ちょっとだけでいいからぁ!!」

 

ヒートアップする3年生。

 

しどろもどろになる穂乃果を見て流石にこれは少しまずいか…とシンが助け舟を出そうとするが。

 

「いいでしょう…もし来てくれたらここで少しだけ見せちゃいますよ〜?お客さんにだけ特別にぃ…」

 

「お友達を連れてきて頂けたら更にもう少し!」

 

まるで悪代官と怪しげな取り引きをする時代劇の悪役の様な穂乃果とことりの言葉に、シンは軽くずっこけた。

 

何ともまぁちゃっかりした女達である。

 

…次の瞬間、突風と共に何かがシンの横を通り抜けた。

 

何事かと思っていると…

 

「あれ?もう1人は?」

 

不意に3年生の1人がそう尋ねた事で、シンも漸く気付く。

 

…海未がいなくなっていた。

 

 

 

 

 

「やっぱり無理です…」

 

その後、屋上で体育座りをして俯いている海未がいた。

 

「え〜!?どうしたの?海未ちゃんならできるよぉ!」

 

「できます…」

 

「「え?」」

 

首を傾げる穂乃果とことりに、海未は更に続ける。

 

「歌もダンスもこれだけ練習して来ましたし…でも…人前で歌う事を想像すると…」

 

「緊張しちゃう?」

 

ことりの質問に対し、海未は首を小さく縦に振った。

 

元々内気な性格だとは理解していたが、これ程とは…とシンが頭を掻くと、穂乃果がハッと閃く。

 

「そうだ!そういう時はお客さんを野菜だと思えってお母さん言ってた!」

 

「何だよそのアホな対処法」

 

穂乃果の変なアイディアに辛辣に言い放つと、海未が涙目になりながら、

 

「私に1人ぼっちで歌えと!?」

 

「お前はお前でめんどくさいなこの野郎!!」

 

「ひ、人前じゃなければ大丈夫だと思うんです!人前じゃなければ…」

 

人前で歌うのが怖いんじゃなかったのかとか何でそんな発想になるんだとか色々言いたい事がありすぎて一言で纏めたツッコミを炸裂させるシンに対し、海未もしどろもどろになりながら返した。

 

よくこのザマでスクールアイドルなんかやろうと思ったなと心の中で悪態を吐きつつも、既に後の祭りなので何とかステージに立てる様にしなければと思考を巡らせる。

 

「ったく…しっかりしろよ!応援してくれてる人とか、見に行くって言ってくれてる1年生だっているんだぞ!?」

 

そう叱咤するシンの言葉に、3人が反応する。

 

「え…?見に来てくれる人、いたんですか!?」

 

「ああ、まだ1人だけなんだけどな…応援してるって言ってたぞ」

 

ことりの質問に対してシンがそう答えると、穂乃果が明るい表情になる。

 

その一方で、海未は見に来る人間が1人は確実にいるとわかった事で更なる不安に駆られ、顔を青ざめさせる。

 

すると、穂乃果がハッとした顔で言い出す。

 

「そうだ!」

 

 

 

 

そして、4人は秋葉原の街中まで移動する。

 

穂乃果が3人に紙の束をそれぞれ手渡し、

 

「今から昼休みまでライブのチラシを配って貰います!配ればライブの宣伝にもなるし、大きな声を出せばその内慣れてくると思うよ!」

 

海未には些か荒療治だが、人と接する事に慣れて貰わないとライブなど上手くいく筈も無い。

 

シンも「ライブやりまーす」と適当に謳いながら通りすがる人達にチラシを配りつつ、3人の様子を見守る。

 

穂乃果は和菓子屋の手伝いをしている事もあって接客に慣れているのか、次々とチラシを捌いていく。

 

ことりもやけに手慣れた様子でチラシの山を崩していく。

 

何かアルバイトの経験でもあるのだろうか…と思いながらも海未に目線を向けると…

 

「あ、レアなの出たみたいです…」

 

「海未ィ!?」

 

現実逃避してガチャガチャを回していた。

 

やむなく一旦チラシを配る手を止め、海未の方に歩み寄る。

 

「お前何やってんだ!配らないと終わんないぞ!?」

 

「ひ、人が多すぎて…!」

 

「仕方無いなぁ…おーい、穂乃果!」

 

順調にチラシを捌いていた穂乃果に声を掛ける。

 

「どうかしたんですか?」

 

「俺と海未は場所変える。ここはお前とことりに任せるよ」

 

そう言って、シンは海未を連れてとある場所へ移動した。

 

 

 

 

 

「…ここなら何とかなりそうか?」

 

シンが海未を連れて来たのは、音ノ木坂学院の校門前。

 

見知らぬ人間ばかりの場所でやらせるよりも、人数が少なく、尚且つ見知った人間もある程度いるこの場所で肩慣らしをさせる方がいいだろうと判断し、この場所を選んだのだ。

 

「…俺にできるサポートはここまでだ。ここからは自分の力でそれ配り切ってくれ」

 

「む、無理ですっ!!」

 

相変わらず渋る海未に対し、シンも痺れを切らして厳しい言葉を掛ける。

 

「…お前、穂乃果が階段5往復もできない時に何て言った?」

 

練習中に穂乃果に「できないは禁止です!」と言った事を思い出し、ぎくりと肩を跳ねさせる海未。

 

「…わかりました、やりましょう!」

 

そう言って海未はチラシを配り始める。

 

最初は声が小さく、振り向いてすら貰えない事もあったが、徐々に慣れていき、順調に配る事ができる様になっていく。

 

シンが手持ちのチラシを全て配り終え、海未の方に目を向けると、かなり減っていた。

 

だいぶ慣れてきた様だと安心していると、校門の方からすっかり見慣れた2人組…穂乃果とことりが入って来る。

 

「海未ちゃーん!シン先輩ー!」

 

「2人はもう配り終えたのか?」

 

「はい!」

 

元気良く返事をする穂乃果。

 

何時にも増して明るい表情に、何かいい事でもあったのかと尋ねてみると。

 

「まだ1人だけですけど…いたんです!見に来てくれる1年生の子!!」

 

その答えを聞き、シンはその1年生が誰なのかを瞬時に理解した。

 

穂乃果に会って直接言葉を伝えた様だ。

 

「そっか。じゃあ、尚の事本番は頑張らないとな」

 

穂乃果達が自信が持てた事に喜びながら、シンは3人を激励した。

 

 

 

 

 

 

 

 

後日、ライブ本番前。

 

「先輩!この機材、どこ持って行けばいいですか?」

 

「あ〜、あそこにセットしといてくれ」

 

シンは2年生と一緒に準備作業に取り掛かっていた。

 

穂乃果達の手伝いをしたいと名乗り出る生徒達は意外にも多く、準備は着々と進んでいく。

 

協力的な生徒達が多い事には頼もしさを感じるが、本命である1年生からの注目度は未知数だ。

 

まだまだ予断を許せる状況ではないなと気を引き締め、淡々と準備を進めていく。

 

「じゃあ俺、穂乃果達の様子見て来るよ。ここは任せていいか?」

 

「わかりました!」

 

シンは2年生達に残りの準備を任せると、3人が待機している部屋へと向かった。

 

 

 

 

 

「お〜い、準備できたか〜?」

 

扉をノックし、部屋の中にいる3人に声を掛ける。

 

すると、扉を開けて穂乃果が姿を現す。

 

「先輩、私達も準備オッケーです!」

 

既に3人共ステージ用の衣装に着替えており、準備は万端の様だ。

 

やや肩肘張り気味な様子を見せる3人の緊張を解すべく、シンからもせめてもの簡単な激励の言葉を贈る。

 

「多分…そんなに人は来ないと思う。でも、ひよっこアイドルのデビューライブなんて、そんなもんだ。だから、あんまり肩肘張るな。ライブの結果に一喜一憂する必要も無い。気楽にやって来い」

 

「「「はい!」」」

 

シンからの言葉を受け取った3人は元気良く頷き、舞台に向かった。

 

 

 

 

 

講堂内の証明が消える。

 

唯一の光源は、途中からでも入れる様に開かれた出入り口の扉から入り込む外の光だけ。

 

ステージの上で今か今かと待ち侘びる3人の姿を、シンも舞台裏から見守る。

 

そして、開演時間を迎え、ブザーの音と共に遂に幕が開く。

 

…開いた幕の向こうに広がっていた光景に、3人は絶句した。

 

 

 

 

 

まさかと思った。

 

信じられなかった。

 

…確かに、そんなに多くの観客は来ないだろうと思っていた。

 

だが…そんな自分の予測すら、あまりにも甘かった。

 

「おい…幾ら何でも…

 

 

 

 

 

無観客(これ)は無いだろ…!」

 

()()()()()客席を見詰め、シンは苦々しげにそう呟く。

 

手伝ってくれた穂乃果のクラスメイト達も、申し訳無さそうに俯いていた。

 

「ごめん…頑張ったんだけど…」

 

チラシ配りを手伝ったクラスメイトが謝罪するが、穂乃果は呆然とその場に立ち尽くして何も返事を返さない。

 

「穂乃果ちゃん…」

 

ことりに声を掛けられ、やっと反応する穂乃果。

 

笑みを浮かべ、気丈に振る舞おうとするが、その目には悲しい光が滲んでいる。

 

「そりゃそうだ!世の中そんなに甘くない…っ!」

 

涙声になりながらそう言い放つ穂乃果を見て、シンの心の中に巣食っていた苛立ちが徐々に強くなる。

 

―――――また、何の役にも立てなかった…!

 

その怒りに駆られる様に、シンは壁に拳を叩き付け…

 

 

 

 

 

…その音と重なる様に、ガタン、と音がする。

 

音の聞こえた方を見ると、花陽が出入り口にもたれ掛かり、肩で息をしていた。

 

「あ、あれ…?ライブは?」

 

漸く訪れた、たった1人の観客。

 

果たして、今の3人に気力が残されているかどうか…シンはステージの上に視線を向ける。

 

「…やろう!」

 

穂乃果がそう勢い良く言い放つと、沈み込んでいた海未とことりがハッとした様な表情になる。

 

2人の背中を押す様に、穂乃果は更に続ける。

 

「歌おう、全力で!」

 

海未とことりが頷き、3人が位置に付くのを見届けると、シンはクラスメイト達に目配せをして準備する。

 

曲が再生され、たった1人の観客の為のライブが始まる。

 

ーーーーーI say…♪

 

3人の歌に、花陽は聴き入る。

 

Hey, hey,hey START:DASH!

 

流れる曲に合わせて、歌い、踊る3人。

 

1人しかいない観客を前に、懸命に練習の成果を出し切る。

 

産毛の小鳥達も いつか空に羽ばたく 大きな強い翼で飛ぶ…♪

 

諦めちゃダメなんだ その日が絶対来る

 

君も感じてるよね 始まりの鼓動

 

手伝ってくれたクラスメイト達も、いつの間にか満面の笑顔で3人の歌を楽しんでいる。

 

シンも先程まで感じていた悔しさはどこへやら、3人のライブを見て自然と笑顔になれるのを感じていた。

 

明日よ変われ!

 

希望に変われ!

 

眩しい光に 照らされて変われ START!

 

…そして、曲がサビに入る頃、シンは人影の数が増えているのを見た。

 

花陽のクラスメイトと思しき、短いオレンジの髪の少女…星空凛。

 

そして、もう1人。

 

「真姫…」

 

作曲を依頼した西木野真姫が、出入り口の扉の陰に隠れ、まるで盗み見るかの様にひっそりと眺めている。

 

悲しみに閉ざされて 泣くだけの君じゃない

 

熱い胸 きっと未来を切り拓く筈さ

 

悲しみに閉ざされて 泣くだけじゃつまらない

 

きっと(きっと)君の(夢の)チカラ(いまを)動かすチカラ

 

信じてるよ…だからSTART!

 

…成功か失敗かと言われれば、間違い無く失敗であろう稚拙なライブ。

 

しかし、それでも彼女達はやり遂げようとしている。

 

その強い心に感心しながら、シンは彼女達のライブを最後まで見届けた。

 

 

 

 

…寂しい講堂でのライブが終わり、花陽が、クラスメイト達が盛大に拍手を贈る。

 

真姫もまた、誰に気付かれる事も無く小さな賛辞を贈っていた。

 

すると、音響室から1人の女子生徒が出て来て、ステージに繋がる階段をゆっくりと下りて来る。

 

「生徒会長…」

 

穂乃果が小さく呟く。

 

拍手が止み、その場にいた全員の視線が絵里に集中する。

 

「…どうするつもり?」

 

短い質問。

 

「続けます」

 

「何故?これ以上続けても意味があるとは思えないけど」

 

「やりたいからです!」

 

絵里の冷たい問い掛けに対し、穂乃果は迷う素振りも見せずに素早く答えを返す。

 

「今、私…もっともっと歌いたい、踊りたいって思ってます。きっと、海未ちゃんとことりちゃんも…!こんな気持ち、初めてなんです。やって良かったって、本気で思えたんです!」

 

絵里に対して真っ向から自分の想いをぶつけに行く穂乃果を、シンは舞台裏から密かに見守る。

 

学校を守りたいという2人の気持ちは同じ筈なのに、こうも交わらない事に悲しみを感じるが、その反面、強い決意を宿した穂乃果の眼差しを見ていると、不思議と彼女に期待したいという気持ちが湧いて来るのを感じていた。

 

「今はこの気持ちを信じたい。このまま誰にも見向きもして貰えないかもしれない、応援なんて、全然して貰えないかもしれない…でも、一生懸命頑張って、私達が兎に角頑張って届けたい!今私達がここにいる、この想いを!いつか…いつか私達、必ずここを満員にしてみせます!」

 

「…貴方はどうするつもりなの?シン」

 

その答えを聞いた絵里は、今度は舞台裏にいるシンに尋ねる。

 

質問の矛先が自分に向けられ、シンもステージの上に姿を現し、絵里に目線を向ける。

 

「正直…あんまりにも酷いライブだったら、流石に諦めた方がいいんじゃないかなって説得する事も考えてたよ」

 

「…貴方はこれが成功だと思ってるの?」

 

「まさか。大失敗だよ」

 

絵里の冷淡な質問に対し、シンはそう答える。

 

3人の目に辛そうな色が浮かぶが、気にも留めずに更に続ける。

 

「でも、何でだろうな…こいつらのライブ見てて、思ったんだ。それをやったら、俺は絶対後悔する…って」

 

息を呑む3人を尻目に、シンも絵里の目を真っ直ぐに見つめ返して答えを返す。

 

「だから、そう思った理由がわかるまでは俺も続けさせて貰うよ」

 

その答えを聞いた3人の頬がパッと輝く。

 

「…私には無駄にしか思えないけど?」

 

「逆に聞くけどさ…絵里は何か思い付いたのか?いい方法」

 

「…っ!」

 

その問い掛けに、今度は絵里の目が見開かれる。

 

シンからの問い掛けに対し、絵里は何も答えられず、ぎり…と歯を食い縛ると、踵を返して階段を上り、出入り口から姿を消した。

 

…扉の傍に立っていた希が、悲しげな目で自分を見送っていた事にすら気付かずに。

 

 

 

 

 

「…はぁ」

 

立ち去った絵里の背中を見送ると、シンはまた怒らせちまったか…とでも言いたげに溜め息を吐く。

 

「シン先輩…」

 

すると、穂乃果に名前を呼ばれた事に気付き、シンは改めてμ'sの3人を見据える。

 

「…明日からの練習、もっとビシバシ行くからな。覚悟しとけ」

 

「「「はい!」」」

 

シンからの予告に対し、威勢良く頷く。

 

こうして、μ'sのファーストライブは失敗に終わった。

 

…大きな可能性を産み出しながら。




最近になってニジガクを見直してる私ですが、

虹ヶ咲学園に留学するシン

スクールアイドル同好会メンバーとの交流の中で「自分のやりたい事を全力で表現する」皆の事をシンが徐々に羨望する様に

侑ちゃんorかすみんorせつ菜or嵐珠の提案で史上初の男性スクールアイドルとしてデビュー(仮面と偽名で素性を隠しながらの活動)

キラやラクス、ルナマリアが正体に気付く中、何も知らないアグネスがシンのガチ恋勢に

後に正体知って絶望

っていう展開を思い付きました。
…執筆予定はありませんが(オイ

でももし執筆するとしたらヒロインはエママ一択になりそう…
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