透き通る青の仮面(ペルソナ) 作:仮面をつけた一般キヴォトス人
「はぁ……なるほど。そう言った用件があったんですね」
イロハは溜息を着きながらにコトネを案内する。イロハもその件については周知しているが、どうせろくな事は起こらないと考えた所、ゲヘナでも有名になりつつある、"ヘイロー無しの風紀委員" 有馬コトネがこの件で万魔殿に足を運んでくるとは思わなかった。
(行政官や委員長が直々に来る方がまだマシですかね?いや、話し合いとなれば風紀委員長より幾分か圧はマシでしょうが……。怪我でも負って帰ったとなれば……)
考えただけでも面倒さと起こりうるであろう惨劇に身震いがするイロハ。ゲヘナを万魔殿と風紀委員会での全面戦争もじさないとあの風紀委員長なら言い出すのでは無いかとイロハは考えた。
コトネは
(イロハがこんな面倒事に付き合ってくれるなんて意外だな。いや、言葉通りに受け取るべきか?ただのお人好しと見るべきか?よく、こんな抗議地味た訪問を通す気になるなぁ)
と考えていた。案内されるまま再び議長室前まで来る。その場には先程、手荒くコトネを追い出した生徒が居た。
「お前は先程の!」
「げっ……」
コトネは嫌な表情を浮かべる。痛い目に合えば印象が良くなくなるのは当然のことである。その生徒はもう一度、コトネを追い出そうとするが、イロハが間に入り
「大事な客人ですから、荒々しい事は無しでお願いします」
「ですが、そいつは」
イロハは小さく溜息をつきながらに門番の生徒の目を見ながらに
「私が時間に遅れたんです。彼女はせっかちですから先に行って、そして門前払いされてる所で合流したんですよ。伝えてなかったのはこちらの落ち度ですが、尋ねてきた人をあの様に追い出すように頼まれましたか?」
そう尋ねた。心無しか圧を放っているようにも見える。だが、イロハの内心はそれが風紀委員会にバレて面倒事が起こりうる最悪の未来を予感しての釘を指しているのである。門番をしていた生徒は震えながら首を横に振る。
「そういう事なんで通して貰ってもいいですか?」
「は、はい!ただいまお開けします!!」
そう言うとその生徒は扉を開ける。
「着いてきてください」
イロハは何事も無かった様に歩き出す。コトネは先程手酷くされたが、門番の生徒に同情していた。
「あ、うん」
イロハに案内されるまま着いていくコトネ。そこには議長の椅子に座るマコトが居た。
「キヒヒヒ、戻ったかイロハ。うん?その後ろの人物は……?」
「マコト先輩に用だそうですよ?」
イロハの後ろからコトネが横にずれて対面する。その人物を見てマコトは驚く
「あ、有馬……こ、こ、コトネだと!?」
椅子から転げ落ちるんじゃないかと言う勢いで驚くマコトに少し驚くコトネとイロハ
「大袈裟すぎじゃないですかマコト先輩。別に取って食われるというわけじゃないでしょうに」
イロハのその言葉を聞き、ハッとするマコト。
「そうか……。記憶も無ければヘイローも無かったな。だが、そんな稀有な人物がこうして足を運んでくれたんだ自己紹介するとしよう!私はゲヘナ学園の3年名前は羽沼マコト!この万魔殿の議長である!!」
ドン!と効果音が着きそうなポーズを決めて自己紹介をする。本人は決まったと思っているが、コトネは
「風紀委員会所属の有馬コトネです。以後お見知り置きを……。とは言っても知ってますよね」
普通に自己紹介をする。マコトはガクッとずり落ちそうになるが咳払いをして立て直す。
「それで、どう言った用件なのだ?風紀委員がわざわざここまで足を運んだんだから相応の理由があるのだろう?」
足を組み見下ろすようにマコトはコトネに尋ねる。コトネは手に持つ資料を机に置く。マコトは手に取り確認を行う。その資料に見覚えがあった。
「確か、風紀委員会の予算削減の通知書だったな。これがどうかしたのか?」
「予算削減を撤廃して欲しいと直談判に来ました。ただでさえ、前も下げられた今回も下げられるとなると、活動に支障が出るのは必定です」
コトネはそう話しながらマコトを見据える。一方のマコトはコトネを見下ろし、
(めんどうだな……)
と見て取れる表情を浮かべている。マコトは風紀委員会を敵視し、特にヒナに強い敵対心を燃やしている人物である。そして目の前には風紀委員のコトネが居る。ことさら面白くは無いのだが、コトネは芝居がかったように言う
「このままこの案が通された場合、統治するゲヘナに面倒事が起こることぐらい、"優秀"かつ"聡明"な万魔殿の議長たる羽沼マコトなら、お分かりだと思いますが」
「ッ!」
マコトは目を見開き固まり、イロハは若干引いた目で二人を見る。マコトの思考がフル回転していた。
(あの有馬コトネが私のことを褒め称えている!?キヒ、キヒヒヒ、素晴らしい素晴らしいぞ!!さすが有馬コトネ見る目がある!!自分の親友であろうヒナなんかよりも私の方が優秀で素晴らしいと見えているではないか!!記憶を失えどその目に曇なしということか!!ただ、そのまま承諾するには惜しい……。そうなれば、話が早い!)
マコトは口角を吊り上げてながらに仰々しく言う。
「良いだろう!!そこまで私のことを褒め称え、優秀である事を認めているコトネに免じて風紀委員会の予算の削減を前回の分も合わせて取り下げよう!」
イロハは予想通りだと言わんばかりに驚いた表情を浮かべ、コトネも内心ガッツポーズをとっていた。次の言葉を聞くまでは
「だが条件がある!」
「……条件?」
コトネは綻びそうな表情を戻しながらにマコトを見る。どういう無理難題を言われるか内心穏やかではなく狼狽えている。何を言われるんだと
(録な事じゃないと言うのは分かる…!)
そしてマコトは口を開き条件を提示した。
「万魔殿の仕事を手伝う事だ!!」
「は?」
「はぁ……」
コトネは驚き目を見開き、イロハは溜息を漏らす。何を言っているんだとイロハは思った。風紀委員会の為に抗議に来た人物に万魔殿の仕事を手伝えとは何を考えているのかと、下手をしたら風紀委員長が直接抗議という名の襲撃に来てもおかしくは無いと。
コトネはコトネで考えていた。
(てっきり『私の軍門に下れ!!』と言うと思ったが……。流石にその辺は配慮しているのか?そこは実際は器があるんだな。……確認してみるか?)
コトネは息を吐きマコトを試すように質問を投げかける。
「私の、万魔殿に下れと言うのかと思ったけど。手伝うだけで良いいんですか?」
その言葉を聞いたマコトは真顔でコトネを見据えながら。
「ああ、お前は何があっても風紀委員会から離れないのは知っているからな。それに、お前の意志をねじ曲げてするのでは議長としての器が知れるだろう?」
そう答えキヒヒと笑って見せた。コトネは心底驚きながら
(実際のマコトはこんなカリスマ染みた事を言うんだな。これは記憶を失う前のコトネが印象付けた結果なのか?だが、一本取られたな)
息を吐き苦笑いを浮かべて手を差し出す。
「非礼を詫びます。万魔殿議長、羽沼マコト。伊達にこの学園のトップに君臨している訳じゃないですね。個人的な要請なら、何とか時間を作って出来る限り手伝うようにする。それでも良いですか?」
「キヒヒ、それで構わない。それじゃあ、契約成立だな」
マコトとコトネが握手を交わす。イロハは心底驚いた表情を浮かべ固まっていた。そして、コトネの頭の中に声が響いた。
『我は汝…汝は我… 汝、新たな絆を見出したり。 汝『悪魔』のペルソナを生み出せし時、我ら、更なる力の祝福を与えん…』
新たなコミュが解禁されたのだ。握手を終えるとマコトは
「イロハ、コトネの見送りを頼む。玄関までな」
「……わ、分かりました」
呆気に取られながらイロハはコトネを先導し先程出会った入口まで見送られる。
「今日はありがとうイロハ」
「私は何もしてませんよ?まぁ、これからの仕事なら少しあるんですけどね」
「そうなんだ、大変だね」
その言葉にイロハは内心溜息をつきながらに
(ええ、本当ですよ。話を聞かずに貴女を追い出した方にしっかり話をつけないと行けないですし。あの娘、確か1年生ですよね。入学して日が浅いし事件から一年以上経過してたら知らないのも無理はありませんが、今後はマコト先輩の……万魔殿の協力者と言う立場になった事を伝えないとまた同じ事が起こるかもしれませんしね)
仕方ないと諦めながらにコトネの方を見て
「それではまた、道中気をつけてくださいね。コトネ先輩」
「イロハも程々にね」
「それが出来れば苦労はしません」
そんなやり取りを行いコトネは風紀委員会の元へ帰る。
そして、ヒナ、アコ、イオリ、チナツの四人の前で正座を行っていた。コトネ本人は縮こまりながらも、現実逃避をしていた。正座をされられていた原因は風紀委員会の建物に戻り、予算削減撤廃の抗議が通った事を伝えると、その場にいた4名が驚いた。アコが少し悔しそうな表情を浮かべながら、どう言った風に交渉を行ったか質問し、コトネが個人的に度々万魔殿の仕事を手伝う事になったと伝えると四人の形相が変わり、コトネを正座させて事情聴取が行われた。
要約すると、
『自分一人で抱え込むようなことをしないで、自分を大切にして』
等の事なのだが、コトネはマコトと絆が生まれた訳で得るものがあり、無駄では無い所か、今後の手伝いの事を差し引いても得をしたと一人で納得しながら、続く説教を聞いていた。しかも、当の本人は無茶をした覚えも、自分を蔑ろにしたつもりも無いので反省と言う色はそこまでなかった。そのため、その後、反省文を書かされたのは言うまでもない。