透き通る青の仮面(ペルソナ)   作:仮面をつけた一般キヴォトス人

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RUGAGAGAさん評価9ありがとうございます!

遅れましたが10話超えることが出来ました!皆さんの応援のおかげです!ありがとうございます!


一手に担う不器用な後輩風紀委員

「きちんと休んでる?疲れが顔に出てるけど……」

 

「え?」

 

資料室にて、資料の整理を行っているチナツに対してコトネが声をかけた。その手にはペットボトルに入ったオレンジジュースとサンドイッチが入った袋を持ち、チナツの後ろから声をかけていた。

 

「これ、差し入れだから。少し休憩した方が良いと思うよ?」

 

「あ、ありがとうございます」

 

礼を言い資料室の机で差し入れのサンドイッチを食べ始めるチナツ。その様子を眺めながら、チナツが広げていた様々な資料を見る。広げている資料は1つや2つではなく、数えるのも億劫になるほどに広げられていた。それだけの資料を一人で纏めようとしているのは感心すると同時に、コトネは少々残念そうに肩を落として息を吐いていた。

 

風紀委員会の業務の見直し等によってヒナを含む、風紀委員の業務は比較的に楽になっていった。もちろん、不良が一斉に暴れて、暴走して人手が足りないとなれば、実務、事務共に偏りが出たり、集中することもある。それでも、分担すればレベルである。だが、チナツのその生真面目な性格故に周りを頼らなかった。それだけでなく他の困っていた生徒の仕事を代わりに受け持ち、今こうして資料室に籠り作業をしていた。コトネが風紀委員会に復帰後から、ヒナの業務量、他の風紀委員会メンバーの業務量を見ることで、アコと協力し、業務の見直しが行われたが、実際にこうして一人に集中している状況は良くないと考ていた。

 

だが、現状を見ると、その認識は甘いと突きつけられているように感じた。見直した結果がこれなら、コトネもヒナも納得はしないだろう。広げられた資料を手に取り苦虫を噛み潰したような表情を浮かべて見ていると、チナツから声がかけられる。

 

「あっ、すみません。資料の整理まだ出来てなくて……」

 

チナツが謝ってくる。コトネの思考は一瞬止まる。チナツが謝って来た理由が分からなかったからである。そして、次の瞬間には理解して首を慌てて横に振り、

 

「違う違う!そう言うつもりで見ていたわけじゃねぇんだ!」

 

「え?」

 

思わず出た元の口調。それを理解するまでにそう時間は要することは無かった。慌てて訂正しようするがそれはチナツの反応で気づいたからだ。

 

「コトネ先輩今のは?」

 

「あっ!何でもない何でもない!あ!家で漫画見てて、それが咄嗟に出たというか!」

 

急いで誤魔化すコトネ。勿論、"有馬コトネ"という人物に憑依する前は、漫画やアニメ、ゲームで気に入った台詞を言ってみたりする事は学生時代はほんの少しだけあった。そのため、嘘では無い。ただ、本人的にはこの誤魔化し方は精神的ダメージを受けることとなる。コトネは自分で言っておきながら、目を逸らしたい過去の所業を自身で掘り下げてしまったのだ。内心で涙を流して項垂れるコトネを見て、チナツは呆気に取られながらも、その様子が可笑しくて小さく笑ってしまう。

 

「ふふふ、先輩も漫画とか読まれるんですね」

 

予想外なチナツの言葉に驚きながらも

 

「え?あ、うん!そりゃ、私だって読むよ?面白くて笑ったり、熱くなったり、切なくなったり、漫画と一言に言っても色々あるしね」

 

返答する。コトネは改めて資料を見る。一人で続ければ何時間もかかるのは明白であり、チナツの疲労は増し、後の業務に差し支えるだろう考え、チナツの隣に座り

 

「チナツ、一緒に資料整理をしよう。分担してやればそう時間は掛からないと思うからさ」

 

「え?で、でも!私の仕事なのに―――」

 

チナツが何かを続けて言う前に、コトネがチナツの口に指を当てて

 

「たまには先輩を頼ることも大切だよ?それに、チナツもやるんだから、自分の仕事を全うするのに変わりはないでしょ?」

 

チナツに笑いかけて話す。コトネが思いもよらない事をしたのでチナツは恥ずかしくて顔を赤くする。それでも、手伝うと言ってくれたのだから

 

「す、すみません、一緒にお願いします」

 

そう言う。コトネはその言葉を聞き

 

「もちろん」

 

返答して、共に資料の整理を行う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チナツは隣で共に作業を行うコトネを横目に見る。チナツがこうしてコトネと作業するのは初めてでは無く、何度も機会はあった。だが、コトネと言う人物について深く触れたのは今回が初めてである。ここまで話をして、コトネに関する認識が少しズレていたと考えた。

 

そもそも、チナツが"有馬コトネ"を知ったのは、風紀委員会での話では無い。チナツは風紀委員会より以前は救急医学部に所属していた。その際に、何度かコトネのバイタルチェックを行った事もある。その際に、救急医学部の部長の氷室セナにコトネと言う人物について聞いたことがあった。

 

『コトネさんについてですか?彼女はそうですね……仲間思いで好戦的な方だと、同じ学年の風紀委員からは聞いてますね。まぁ、彼女と対峙した負傷者はかなり手酷くやられていたり、建物は半壊していたりと、いつも通りと言えばいつも通りなんですが、彼女の攻撃性は高かったですね。私の主観ですと、裏表の無く、人懐っこいと言いますかね?あとは世話焼きですね。世話になってるからという理由で救急医学部の備品の整理を手伝ってくださったりしてくれましたし。ええ、良き友人です』

 

そう話すセナのその時の顔は寂しそうな表情にも見えた。『良き、友人』とセナが語るのも珍しいくらいなのだから、目覚めたらどんな人なのかと気になっていた。いざ蓋を開けると、自分自身に関する全てを失っていた。それを聞いた時にはそんな話があるのかとチナツは思った。記憶を失うという事は、本人にとっても、周囲の人物にとっても『死』を意味する。さらに、ヘイローを失うとは聞いたことも無かった。だが、コトネは目がリハビリを行い、眠っていた間の勉強もし、風紀委員に復帰を果たした。そんな人物が現在隣で資料の整理作業を手伝ってくれている。そこでチナツの頭に浮かんだのは

 

『仲間思いで、世話焼き』

 

あの日聞いたセナが言っていた言葉は今のコトネにも当てはまると、コトネが資料室に来てから何度目かの小さな笑いが込み上げてくるが、どうにか押し止めて作業を続ける。資料をめくる音と時計の針が動く音、そして互いの呼吸だけが支配する部屋で二人の少女は資料の整理を続けた。

 

 

 

 

 

整理が終わったのは、開始して2時間後のことである。一人で作業を行っていた場合はまだ終わっていない可能性もある。作業が終わり一息をつきながら、コトネは背を伸ばす。

 

「うーん!終わったー!チナツよくこれ一人でやろうと思ったね。大変だったでしょ」

 

「ええ、まぁ、それでも頼まれたことですし……」

 

チナツの生真面目な性格がそうさせた。それを手伝う前に知ったコトネは微笑み、チナツに話す。

 

「さっきも言ったけど、先輩を頼ることも大切だって。いざと言う時に仲間を頼ることも覚えないと辛いよ?」

 

いい事を言ったと満足するコトネにチナツは苦笑いを浮かべながら

 

「それ、先輩が言いますか?パトロールでも無茶するのは先輩じゃないですか」

 

「グフ!?」

 

痛い所を突かれたと胸を抑えてうずくまる。コトネは反撃に何か言い返そうとしたが、思いとどまる。

 

「とりあえず、抱え込むとろくな事がないという事だから。助けを求めるのも1つだし、先輩を頼ったら良いんだよ!」

 

小さい胸を張って言うコトネ。それに対して笑顔でチナツは手を差し出して答える。

 

「はい、頼りにさせていただきます。コトネ先輩も私達を頼ってくださいね」

 

コトネは差し出された手を迷わず握り答える。

 

「もちろん!頼らせてもらうよ!チナツ!」

 

その時、声が頭に声が響く。

 

『我は汝…汝は我… 汝、新たな絆を見出したり。 汝『女教皇』のペルソナを生み出せし時、我ら、更なる力の祝福を与えん…』

 

新たなコミュが解禁される。そして、確かな絆という繋がりを感じる。チナツは纏まった資料を持ち、

 

「それでは、私は纏まった資料をアコ行政官に提出してきます」

 

「うん、行ってらっしゃい。私も出るけど」

 

二人は資料室を出てそれぞれ用事がある所に向かう。その別れ際、いつもより嬉しそうな顔をしているチナツに、コトネも嬉しくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ある路地裏、袋小路。不良ですら寄り付かないような異質な雰囲気が支配する場所に、コトネは一人で足を運んでいた。そこにある青い扉の先へと向かうためだった。

 

「路地裏かぁ。まぁ、風紀委員会の所や自室に出てこられるよりかはマシだけどな」

 

数日前、アコとパトロールの帰り道、微かに気配を感じていた。それ以来、気にはなっていたが、時間が作れずになかなか訪れる機会を作れずにいた。しかし、今日は時間が空いたので訪ねることにしたのだ。ドアノブに手をかけ、扉を開く。その瞬間意識が遠き、気付けば一人椅子に座っていた。

 

「ようこそ、ベルベットルームへ。お待ちしておりました」

 

目の前に座るイゴールの言葉と共に、コトネはベルベットルームに辿り着いたことを認識した。




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