透き通る青の仮面(ペルソナ) 作:仮面をつけた一般キヴォトス人
臨戦ホシノとシロコ*テラーを迎えることが出来ました!
「ようこそ、我がベルベットルームへ。お待ちしておりました」
コトネは椅子に座りながらイゴールの言葉に頷く。
「こうして、会うのは久しぶりですね」
「そうかも知れませんが、私達は貴女の旅を手助けする者。助けを求めていない人に手助けはしないでしょう?」
イゴールの隣に控えるサフィはコトネを見ながらに言う。その通りだがとコトネは苦笑いをしながら、気になっていたモノを取り出す。
「この前に拾ったんだこのカードを……。何か知らないか?」
コトネが取り出したのは、アコとのパトロールの際に拾ったカード。数字のゼロと愚者の絵が描かれたカード。言わゆるタロットカードである。しかし、ただのタロットカードと言うには存在感があり青白く光っていたのだ。タロットが関わるとベルベットルームで聞くしかないと思ったコトネはずっと持ち歩いていたのだ。
そのカードを見たサフィは、驚いたように目を見開く。
「おや……それはかつての『客人』の……。しかし本来は貴女の手に渡るはずが無いのですが。……我が主よ、どう致しますか?」
サフィは本当にどうするべきか分からないと言った風にイゴールに聞く。イゴールも興味深そうに、タロットカードとコトネを見つめる。
「…ふむ、これも"運命"と言いますかな」
イゴールの纏う雰囲気が柔らかくなり、何処か懐かしむようにカードのことを話し始める。
「それはかつて、ここに訪れた客人が旅路で培って手にした『力』です。元来その力は貴女に扱えるものではありません」
コトネは頭で浮かべるのはペルソナ5、ペルソナ3リロードのDLCである。金を払うことで異なるナンバリングのペルソナを序盤からでも使えるというDLCを思い浮かべていた。しかし、あれはゲームであり、ファンサービス的な意味合いが含まれている。その為、イゴールから言われた言葉には納得していた。
「ですが、貴女は見届けてこられた。かつての客人が育んできた絆・心・力、そしてその旅路の果てを。それがどうやら、貴女にまた別の力を与えてるようです」
そう言われコトネは思わずカードを見る。するとカードは淡く青白く光り、その次には黄色、その次には赤色と優しく光が灯る。それぞれの『客人』を表す色に変化したと思えば、カードは元の愚者のカードに戻る。
「命の答えに辿り着いた御方、真実を見極めた御方、反逆の心を持った御方。客人方のその軌跡を見届けた貴女様にそのカードが来たということは、その軌跡が貴女様の旅路助けとなりますでしょう。故に、それは貴女が持っているべきでしょう」
コトネはそう言われて改めてタロットカードを見る。胸が熱くなり鼓動が速くなるのを感じる。嬉しいと言う気持ちでは言い表すことの出来ない感情が込み上げてくる。キヴォトスに来てから、怒涛の日々を過ごし、仲間や友人と言える人物ができた。だが、もうあの日々、あの場所に戻れないと言う寂しさがあった。忘れるように風紀委員として動いていたのも事実。だが、このタロットカードは自分に宿るであろう力は、自分がプレイしてきたシリーズの力が宿ると言う。唯一、有馬琥暁としての証でもあり、元の世界の繋がりとも言える。それが、何処か嬉しくて涙が出ていた。コトネは涙を拭い、席を立ち
「ありがとうございます。それではまた、来ます」
コトネは礼を言う。
「それでは、またのお越しをお待ちしております」
イゴールがそういうのと同時に、再び視界が暗転する。気がつくと、路地の青い扉の前に居た。空を見上げると暗くなりつつあり夕闇の世界が広がっていた。ポケットからスマートフォンを取り出し連絡が無かったかを確認をする。
「モモトーク……ヒナからだ……。15件も来てる!?」
そのメッセージは最初は『久しぶりに泊まりに行っていいかしら』の可愛らしいものだったのだが、徐々に『ねぇ?大丈夫?何ともない?』や『お願い、返事……既読だけでも…大丈夫よね?何にも巻き込まれてないわよね?』やと色々と憂慮すべき事態になりつつある。
「ヤバイ…洒落にならない。メッセージ送らないと」
コトネは急いでメッセージを送りヒナに無事を知らせた後、急いで風紀員委員長執務室に全力で走ったのは言うまでもない。
次の日、コトネはいつも通りの業務をこなしながら、落ち着かない様子だった。それもそのはずで、幼馴染で風紀委員長 空崎ヒナが泊まりに来るからである。前日、ベルベットルームでイゴール、サフィと話をしている間に連絡が来ていたらしく、返信して執務室に行くと、シナシナになったヒナが居た。コトネを見つけるなり抱きしめに突撃してきたのは言うまでもない。流石に連絡がつかなかった理由をベルベットルームに行っていたからとは言い難かったのでマナーモードになっていて気づかなかったとコトネは誤魔化した。その埋め合わせを兼ねて、今日泊まりに来る事を了承したのである。
「ふわぁ……。おかげで昨日は部屋の掃除とか買い物に奔走する羽目になったよ」
そう小さく呟きながら書類を片付ける。ヒナがコトネの部屋に訪れるのは約2ヶ月ぶりの話である。その間の掃除はあまりしておらず、インスタントやコンビニの弁当やサラダ等のゴミが入った袋が幾つも出来ていた。面倒というのと疲れて何もする気が起きないと言う2つが重なり、大変な目にあった。ひとえに自業自得なのだが。だが、それでもコトネは内心、ドキドキしながら業務に当たっていた。なお、先程述べた通りに2ヶ月前にもヒナが来たが、コトネ的にはそこは乙女心・漢心的にも掃除の件は一度目とカウントしたくないので、今回が初めてと言っておく。
「よし、これで書類は片付いた。あとはパトロール!」
コトネは何人か引き連れてパトロールに出る。そして、何事も無ければヒナが泊まりに来るだけだったのだが、
「ここを掘れば温泉が出るんだ!」
「邪魔をするなよ風紀委員!」
「……ちくしょう、どうしてこうなった」
温泉開発部と遭遇し、戦闘が起こる。コトネ自身もペルソナを出しながら風紀委員と連携し戦う。早く事を終わらせたいと思っているが、こうなっては残業コースはほぼ確定である。さらに現場には部長の鬼怒川カスミ、副部長の下倉メグがそろい踏みと言う地獄である。
「とりあえず、温泉を掘るために建物撤去しないとね!」
メグが楽しげにそういうと、火炎放射器である『メグマパワー!』で範囲を焼き払おうとする。
「させない!ブフ!」
コトネがペルセポネにブフの指示を出し、放たせるが……
「何!?」
高熱高火力の『メグマパワー!』の前にはブフ程度はいとも簡単に溶かされる。思わず悲鳴を上げそうになる。だが、それだけでは無い
「それ!行くよ!!」
メグの攻撃はペルセポネを捉えてダメージを与える。
「くっ……ああああ!!」
ペルセポネは"火"が弱点である。そしてペルソナのダメージは召喚者にフィードバックされる。普段なら体勢を崩されないが、体勢を崩され、ペルソナも身体にノイズが走る。
「おっ!もしかして大きいのは火に弱いのかなぁ!」
「風紀委員長の幼馴染と聞いた時にはヒヤリとしたが、我々は君の天敵だったみたいだね!有馬コトネ!」
更に畳み掛けるように大型のドリルの様なものがペルセポネに襲いかかる。ペルセポネは斧で受け止めるが、
「相手は部長だけじゃないよ!」
ペルセポネの横から火炎放射が襲いかかる。ペルセポネは焼かれ、膝を落とす。そして、
「奇妙な力を使うと言えど、弱点が分かればどうということは無いさ!」
大型ドリルの様なものがペルセポネの肩を捉え大爆発を起こす。爆風で飛ばされながら地面を転がり、俯けに倒れ伏す。ペルセポネは辛うじてその姿を保っているが、消滅寸前と言っても差支えが無い程にノイズが体を覆っている。召喚者であるコトネの意識は気を抜けば失いそうな程にダメージを受けていた。
「コトネ先輩!」
そのタイミングでイオリが率いた風紀委員達が合流を果たす。しかし、ヒナが居ないことにはそう易々と制圧とは行かない。何しろ、カスミとメグの両名が揃っている時の温泉開発部。普段でも厄介だがそれに輪をかけて厄介な状況である。イオリもメグの火炎放射器『メグマパワー!』の前に攻めあぐねていた。
「チッ!迂闊に近寄れない……その上数が多い!」
イオリはメグの相手をしながら、持ち前の機動力とコトネと鍛えた戦況把握で確実に数を減らしていたが戦力差が大きいのだ。周囲が火の海となるほどの戦闘が繰り広げられている。
「アハハ!今回は押し切らせてもらうよ!」
メグが再び『メグマパワー!』をイオリに向ける。そのタイミングは狙ったかのようにイオリがメグから視界を外したタイミングでもあり、それは部員に指示を出しそうなるように仕向けたカスミの手腕でもある。
「イオリ…!」
片膝を着いたまま叫ぼうとしても身体に焼けるような痛みが走り叫べなかった。だが、どうにかしないと行けない。その時、頭に声が響く。
『貴女は絆により、新たなアルカナを手にしてます。貴女も複数のペルソナを操ることが出来る能力を持ちます。それが『ワイルド』。選ばれし者』
サフィの声で頭に響く。そして、頭に『戦車』のアルカナが浮かび上がる。それを理解する前に直感従って動く。召喚機を1度ペルセポネの方に向ける。
「チェンジ…!」
ペルセポネは青い光になりコトネの元に戻る。そしてコトネは新たなペルソナの名を叫ぶ。
「キマイラ!」
自身の頭を撃ち抜き、新たなペルソナを召喚する。キマイラが姿を現し、イオリとメグの間に入り、メグの放つ『メグマパワー!』の炎を受け止める。
「うっそ!?」
「何だこのバケモノみたいなの!?」
メグもイオリも驚く。炎を受け止めきり、大きく咆哮を上げる。獅子と牡山羊首を持ち、蛇の尾を持つ怪物がイオリを守る様に立っていた。
「キマイラ!ソニックパンチ!」
キマイラがメグの前に飛び出し、足を丸めてメグに殴り掛かる。メグは驚き反応が遅れまともに入る。
「ぐっ!?」
メグは体勢を崩す。直ぐに体勢を立て直そうとするが、その隙を見逃させまいとコトネが叫ぶ。
「イオリ!」
「分かった!」
瞬時に理解したイオリはメグに『クランクショット』で攻撃を叩き込み、瞬時に拘束する。副部長を拘束されたとなり、温泉開発部は隊列が崩れそうになるが
「メグが捕まったのは予想外だが、そっちだって満身創痍だこのまま押し切らせて―――」
まだ、カスミがいる。だが、言葉は続かない。カスミの後ろに立つ人物が言葉を遮り話したからだ。
「押し切ってどうするつもりなの?教えてくれる?」
「!?」
カスミが振り返ると風紀委員長のヒナが立っていた。しかも、見るからに怒っている……何て生易しいというのが分かるくらいに圧を放っていた。そんなヒナを見たカスミは
「ひ、ひ、ひええええ!!!」
パニックを起こしてその場に倒れ込む。
「部長がパニックを起こした!」
「これはダメかもしれない!」
温泉開発部の悲鳴が木霊する中、合流したヒナと他の風紀委員によって温泉開発部は呆気なく制圧される。
「…お邪魔するわ」
「どうぞ~」
温泉開発部との一件を片付けた後、手当を受けたコトネはヒナを部屋に上げていた。少しボロボロなっているコトネだが、ペルセポネのディアで少し回復して大分マシになっているのだ。まぁ、そんな事は知る由もないヒナはコトネに
「その……ごめんなさい。救援間に合わなくて。それに怪我で辛いはずなのに、押し掛けるように家に……」
「ううん、あそこで来てくれたからこそ助かったんだよヒナ。それに、来てくれて嬉しいよ。そのために色々張り切ったんだから」
コトネはヒナの手を引っ張りリビングに案内する。簡素な部屋だが、ソファーが使えるようになっていた。
「せっかくだし、今回も私が……」
コトネが台所に立とうとすると、ヒナが止める。
「今回は私が作る。材料も買ってきたから」
そう言うとヒナは台所と台を借りて料理を作り始める。エプロンをつけて料理を作る様は新婚のお嫁と言われても違和感が無かった。
「ヒナをお嫁に貰える人は絶対に幸せになるんだろうなぁ」
「なっ!何言ってるの!?」
言葉にしていたようでヒナは顔を真っ赤にしながら言ってきた。そして夕飯を食べ終わり、順番に風呂に入り、布団を並べて入る。なんて無い泊まり会みたいなものなのだが
「緊張してるのコトネ?」
緊張している事を察されたコトネは少し気まずそうに頷き緊張している理由を誤魔化して話す。
「その、記憶を無くしてるからだからなのか何だけど、同年代の子が泊まり来てさなんか舞い上がって緊張してるというか、記憶を失う前の私はどんな風にしてたの?」
そう言われたヒナは考えコトネの布団に入ってくる。
「ひ、ヒナ!?」
「私を抱き枕にして寝ることが多かったわ。そして、よく遊んだ時の事を話したわ」
懐かしむようにヒナは話す。小さい時のコトネはヒナの手を引っ張り色々な所に連れ回したり、友達の輪にもヒナを連れて行ったりしていたらしい。それもヒナとったらいい思い出らしい。だが、それを皮切りに、ヒナは嗚咽をもらしながらに
「記憶が…無いって聞いた時……今まで歩んできたコトネが死んでしまったと突きつけられた気がした……。どうしよう無いのは分かってる……。でも、あの時の何も……出来なかった……私を!許せなくて……!!もう、あの頃には…!」
ヒナの悲痛な叫びを聞く。風紀委員長の肩書きを背負い、校則違反者を容赦無く拘束する、風紀委員長・空崎ヒナはそこにはなく、只々歳相応に涙を流している空崎ヒナが居た。コトネはそんなヒナを優しく抱きしめる。
「コト……ネ?」
そして、コトネは話し始める。
「確かに、私には目覚めたあの日より前の記憶は無い。それは、紛れもなくヒナにとっては苦しくて辛い真実だと思う。叫びたかったと思う、怖かったと思う、震えて泣きたかったと思う……」
その声はヒナの心情を思って紡ぐ言葉なのか、声は震えていた。大切な人を失う辛さは計り知れない。推し量ることなど出来もしない。
「私が思う以上に苦しんだと思う……。それでも前に進み続けたヒナは凄いよ……ヒナは本当に強くて優しい。優しいから、私が傷ついたらあんな顔していたんだよね……」
コトネはヒナの悲痛な顔を思い出す。出会ったあの日も、ペルソナを覚醒させたあの日もそして今日も。そんな顔を
「今の
ヒナの顔を、眼を見て言う。
「そりゃ、前より弱くなったんだと思う。未だにどの銃を使うかもはっきりしないし、他の人より怪我がしやすい。だけど、強くなるから。だから、これからもよろしく!ヒナ!」
コトネは笑顔でヒナに言う。それを聞いたヒナはポロポロと涙を静かに流し、コトネはヒナを抱き寄せて静かに頭を撫でる。
「うん……!」
胸の中でヒナの小さな肯定の返事が帰ってくる。その時、頭に声が響く。
『我は汝…汝は我… 汝、新たな絆を見出したり。 汝『女帝』のペルソナを生み出せし時、我ら、更なる力の祝福を与えん…』
その言葉が響いたと思った瞬間思い出したように顔が赤くなる。理由はヒナを正面から抱きしめて寝ているからである。しかし今止めたらヒナを逆に悲しませるのではと感じそのまま目を瞑ろうとすると
ヒナの頭がちょうどコトネの顔の近くに来て匂いが鼻に入る。その匂いはお日様の匂いと感じて、意識が手から離れるのには時間が掛からなかった。
次回から対策委員会編に入って行けたら良いなぁと考えています。
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