透き通る青の仮面(ペルソナ) 作:仮面をつけた一般キヴォトス人
るのんさん
裏路地の自称9級フィクサーさん
評価9ありがとうございます!
いよいよ原作に入っていきます!
それでは本編どうぞ
軌跡の力
ヒナとの一件から数日が経ち、いつものように騒がしく忙しい風紀委員としての日常……。にしては些か騒がしすぎる日々を送っていた。
曰く、矯正局から不良生徒が脱走した。
曰く、ブラックマーケットで武器が大量入荷した。
曰く、連邦生徒会長が失踪した。
曰く、曰く、曰く……と、愉快な噂が沢山流れる位、キヴォトス全体が混乱状態に陥るという異例な状態に見舞われていた。かくいうゲヘナ学園も、数割増しで不良やヘルメット団、温泉開発部等が活気的に活動する事態となっていた。美食研究会の方は平常運転だが、言い換えればいつも通りテロが起こるだけなので、迷惑この上ないのは変わり無い。
「い、いつもの3倍はき、キツイ……」
ため息をつきながら事後処理の書類整理を行っていた。傍には自分で作った弁当の食べかけと飲み残したお茶がある。昼食の時間にも作業を続けないと本当に帰れなくなる。そうなると、アコに注意された昼食の弁当が作れなくなる。それ故に今やるしか無いのだ。それと同時に噂の事について考える。
(連邦生徒会長の噂……、それにチナツが向かった件……。つまり"先生"が来て、物語が始まるってことだよなぁ)
現在、急激に増えた交通機関のトラブルの件と、件の不良生徒の脱走の件について問い合わせるため、チナツは連邦生徒会へと向かっていた。他の風紀委員はと言うとアコは別所で事務対応、ヒナとイオリは各々別ルートでパトロールに、そして自分は溜まりに溜まった書類と格闘というわけである。
(先生……先生かぁ。政治家や医者の人をそう呼ぶならともかく、会ったこともない人を先生と呼ぶのは、なんだかなぁ……)
そんなことを考えていたら、自然と手が止まり作業が停滞する。集中力が落ちてきていたので、タイミングもいいので休憩がてら残っていた弁当を食べ始めた。
そして昼からの業務も取り組む。アコと合流し再び事務作業を行う。そんな折りにアコが話し掛けてきた。
「コトネさんは、エデン条約って知ってますか?」
「エデン条約?トリニティ総合学園とゲヘナ学園でエデン条約機構を作っての……だよね」
自信なさげに答えるとアコは頷き肯定する。
「ええそうです、そのエデン条約です。連邦生徒会長が失踪とになってしまった場合無くなるかもしれないので……。締結されれば、ヒナ委員長の負担が減ると思ったのですが……」
残念そうに言いながらもなにか考えているように見えるアコ対し、苦笑いを浮かべる。
「うん……まぁ、何かするなら一声かけてよね。止めるから」
「私が何かしでかす前提なのやめてくれません?」
アコが眉を顰めながら言う。アコからしたら心外だ表情から見ても読み取れる。だが、アコはヒナを大切に思っているため、その思いが行き過ぎて度々暴走しそうになっているのも事実である。
「ごめん、ごめん。そんな顔しないでよ!今のは本当に悪かったって!」
「本当に悪かったと思っているなら、止まっている手を動かしてください!」
「ひぃん!」
アコからの喝の後、再び二人は書類仕事に専念する。
その後、先生がキヴォトスにやって来て、シャーレに所属することになったは良いものの、ゲヘナのトラブルは言うほど収まらなかった。
お陰さまで、来る日も来る日も書類は留まる一方であり、家に帰れる頃にはゴールデンタイムはをすぎることはざらにあり、度々泊まってすることになり、朝起きて書類仕事して昼食って仕事して夜食って仕事してそのまま朝を迎えて仕事して仕事して仕事して……。
「魔剤が無いとやってらんねぇよ!!」
エナジードリンクを片手にギリギリの状態で昼夜仕事することになっていた。性格すら豹変したと勘違いされたが、致し方なし。全ては終わらない仕事が悪いのだ。
「ダメだ!コトネさんがガンギマリで書類仕事をしてる!」
「確か三徹目だったような……!」
「止めないと体調崩すよアレ!」
「だけど、無理やり止めようとしたら怪我させちゃいそう」
他の風紀員もドン引きと心配の視線を向けていた。しかし無理矢理止めようにも、ヘイローが出ていない状態なので、コトネに怪我を負わせるかもしれないと考え手を出せずに居た。そんな時にヒナがコトネの後ろに立つ。
「コトネ」
「うん?ヒナ、どうし……ぐっ!?」
ヒナの絶妙な力加減によって放たれた手刀によって、敢えなくダウン。意識を手放す最後に聞いたのは
「……後はお願いできる?」
「は、はい!勿論です!」
「ありがとう」
という、慈愛に満ちたヒナの声と、それに受け答えする風紀委員の声であった。
……結局、目覚めた頃には夕方で、書類は片付いており、睡眠も8時間程取っていた。睡眠と言うよりは気絶なんだが。
そんな多忙な日々を過ごしていたある日。パトロールを行っていると歳下の風紀委員の子がとある報告をしてくれた。
「アコがイオリとチナツ、風紀委員の面々をアビドス自治区境界に?どうして?」
「分かりません。ですが、アビドス自治区に便利屋68が目撃されたと情報もあります」
「便利屋68って……確か陸八魔アルを社長として4人のグループの便利屋よね。なんだ捕まえにいくなら誘ってくれれば良かったのに」
皆で協力すれば楽なのに、そんな事を考えてたら風紀委員の子な声を張り上げて叫ぶ。
「何を呑気に言っているんですか!もしもこのまま自分達が便利屋を捕まえるために攻撃を仕掛けると自治権の侵害ですよ!」
それを聞きコトネは固まり、約5秒フリーズの後に
「止めないと不味いじゃん!!!」
そう言うのと同時にコトネは走り出す。
「君はヒナに連絡よろしく!私は行ってくるから」
「え!?あっ!?行くって徒歩d……!?」
後ろで聞こえる声も耳に入らずコトネは走り出す。しかし、今の彼女はヘイローを出していない状態である。
それが意味する事は……。
「ぜぇ……ぜぇ……い、急がないと行けないのに、さ、流石に全力疾走が……持たない…」
全力疾走でアビドス自治区に向かおうとしたが、少し無謀な話であった。肩で息をして呼吸を整えながら周りを見渡すが、公共交通機関は見当たらず、探して向かうにしても時間がかかる。
「だめだ、我ながらやってしまった……情けなさすぎるでしょ!」
自分の選択ミスを悔いながらも息を整える。時間が惜しい状況には変わりはしない。それ故に
「公共交通機関を探しながらアビドスに向かうしかない」
そう考え再び走り出す。そしてしばらくすると、
「コトネ?」
「ヒナ!」
パトロールで外に出ていたヒナと運良く合流する。ヒナは少し驚いた様な表情を見せながらも
「話は聞いたわ、アビドス自治区に向かうのよね?それならもう、電車で向かっているものと思っていたわ」
そう言われつい顔をしかめてしまう。つい先程悔やんだことであり、痛い所である。
「あー……そのー……。ま、まぁ……私の悪い所というか……思わず飛び出したというか」
「そう見たいね……ペルソナも出さずに走って来た辺りで察しは着くわ。正直に言うとアビドス自治区の一件より、コトネがペルソナを出さずにゲヘナの街中を走り回ってる方が私には重要だけどね」
ヒナの後ろからは校則違反者を一掃する時のオーラが漂っていた。明らかに怒っているのだ。
「ご、ごめんなさい!で、でも!とりあえずは!アビドス自治区に向かおうよ!このままじゃアビドスの学生と衝突しかねないし!問題にもなる!」
コトネの言葉を聞きながらため息を付き、それも無視できない問題と頭を振る。
「私がコトネを抱えて走れば近くの駅までなら」
「それは何か大事なものを失いそうだから……少し待って」
そう言うと召喚機を取り出す。しかし、
(ペルセポネは乗せて運ぶのは向いていないし、キュマイラもそこは同じ……!急がないと行けないのに何か……!)
早る気持ちで思考がぐちゃぐちゃになりそうな時に頭に声が響いた。
『客人方のその軌跡を見届けた貴女様にそのカードが来たということは、その軌跡が貴女様の旅路助けとなりますでしょう』
コトネはハッと気づいてポケットの中にしまってあったカードを取り出す。握られた手を見るとその中にあったカードは赤く光っていた。まるで、今ここで呼ぶべき名を指し示すように。
「コトネ、それは?」
ヒナが近くまで来て同じ様にカードを見る。
「とりあえずやってみる」
そう言って握りしめていた手を開く、するとカードは答えるかのように宙に浮かび、留まる。再び召喚器を構え、こめかみではなくカードに向け狙いを定める。
(この状況、私とヒナが二人で同時に移動が適うペルソナは今の私にはこれしか思いつかない!!)
息を吸い込みそのペルソナを思い浮かべる。彼女のペルソナを。カードも更に光り、絵柄を女教皇へと変えていく。告げる、その名は
「お願い……力を貸して、ヨハンナ!!」
引き金を引きカードを撃ち抜く。カードは青い光に撃ち抜かれて、赤い光と混ざり姿を変える。光の中からはバイク型のペルソナ、ヨハンナが姿を現した。
「こ、これは!?」
驚くヒナを余所にヨハンナに跨り、ヨハンナに声をかける。
「よろしくね、ヨハンナ」
答える様にエンジン音らしき音が唸る。そしてヒナに手を伸ばし
「後ろに乗って!!」
ヒナは言われるまま後ろに乗る。
「ねぇ、コトネ運転大丈夫?」
「大丈夫!ペルソナだから凄くわかりやすいよ!……しっかり捕まっててよ!フルスロットルで行くから!!」
「うん……!わかったわ!」
ヒナはコトネに体を預けて、腰に手を回す。それを確認したコトネはアクセルを回してヨハンナを走らせる。現場に急行すべく、二人の風紀委員がアビドスに向かう。
アビドス自治区ではゲヘナ風紀委員会とアビドス対策委員会&便利屋68が戦闘を繰り広げていた。数の上であればゲヘナ風紀委員会が圧倒出来であるが、アビドス対策委員会と便利屋68にはシャーレの先生が着いていた。その兵力差を物ともせずに押し返しつつある状況だった。だが、それでもタダでは終わらないのがゲヘナ風紀委員会、そして切り込み隊長の銀鏡イオリと1年でありながら指揮を執ることもある火宮チナツである。分断されながらも、何とか対応する。
チナツは便利屋68の伊草ハルカとアビドス対策委員会の十六夜ノノミと対決をしていた。チナツの不意打ちに対しても場数が違うとばかりに切り込んでくるハルカ。腕を拘束されそうになるが
「舐めないで……ください……!」
掴まれた腕とは反対の腕でハルカをつかみ、足を払う
「え!?」
拘束しようと掴んでいた手を驚きと体勢を崩したことで離すハルカ。チナツは拘束から逃れ距離を取りながら、ガトリングの射線を切る。
「大丈夫ですかハルカさん!?」
「すみません!」
ノノミはハルカに手を貸しながらチナツの方を見る。チナツはチナツで胸を撫で下ろしながらリロードをしながら二人を警戒しながらに
「コトネさんとイオリの鍛錬を見たり、私も参加していたから何とか、動けているという感じですかね……。帰ったら、今回の件なんと言われるかですかね……!」
再び二人の前に出ながら距離を詰めさせないように戦う。一方のイオリは便利屋68の浅黄ムツキとアビドス対策委員会の黒見セリカを相手取っていた。持ち前の距離を詰める機動力を武器に二人を相手取っても十分に応戦していた。
「これで仕留めてやる!」
イオリはクラックショットを逆手に持ち、持ち手でムツキを殴りつける。
「うわあ!?」
ムツキは後ろに飛ばされながらも狙い通りと笑う。
「任せたよバイトちゃん」
イオリの足元に落ちる不自然なバック。一瞬それに気を取られるがイオリはムツキに視線を戻す。その時にふと頭に過ぎるのはコトネとのやり取りである。
『イオリは起点を作ったり、戦況を動かすのは上手いけど熱くなるよね。だから、簡単な罠にかかるんだけど。だからこそ、ここぞっと時に一度自分の立ち位置とわかっている敵の位置を確認して見たら?そしたら戦闘中は今以上にイオリの長所が生きると思うよ』
その言葉を思い出してふと、後ろも見る。そこには姿は見えないが、もう一人居る可能性があると思い浮かんだ。そして、足元はムツキのバックと自身の足場はマンホール。
(確か、浅黄ムツキのバックには手榴弾やダイナマイトが入っていたはず。現に他の奴らがやられてる、なら!)
イオリは目の前のムツキから視線を外し、足元のバックをクラックショットで引っ掛け、上空に飛ばし、バックを撃ち抜く。撃ち抜かれたバックは空中で大爆発を引き起こし、衝撃で建物の窓にヒビが入る。
「あーらら、見ない間に賢くなったんじゃない切り込み隊長さん」
「今の読んでたというの!?」
ムツキとセリカは並んでイオリを見る。爆発が真上で起こったためノーダメージではないが、まともに受けるよりかは安く済み、継戦は可能である。
「あの人の言葉を思い出してなかったら、危なかった。さて、こっちは反省文が確定しているんだ、それに見合うものはしないとね!覚悟しろよ子ネズミ共!」
イオリはクラックショットを二人に向けて突貫する。左右の二人は未だに二人づつ抑えているが、正面はそうは行かない。先生、奥空アヤネ、鬼方カヨコのサポートを受けている、便利屋68社長の陸八魔アルトとアビドス対策委員会の砂狼シロコの快進撃は止まらず、大きく隊列が崩れていた。
「これでおしまい……!」
シロコのドローンによる爆撃が風紀委員会を襲おうとした瞬間、バイクの音が全員の耳に入る。風紀委員会の後方よりバイクが飛び出し
「マハフレイ!」
青白い光がミサイルの全てを爆発させ消滅させる。そして、ゲヘナ風紀委員会と便利屋68、アビドス対策委員会の間に割って入る。
ゲヘナ風紀委員会、便利屋68はそのバイクと搭乗者を見て驚く。そして搭乗者の一人がバイクから降りて言う。
「この状況、説明できる?」
ゲヘナ風紀委員長、空崎ヒナがそう言う。そしてもう一人も
「間に合ってない……か……」
有馬コトネも肩を落として呟いた。
コトネのペルソナ(登場順)
愚者…ペルセポネ
戦車…キマイラ
女教皇…ヨハンナ