透き通る青の仮面(ペルソナ)   作:仮面をつけた一般キヴォトス人

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初仕事と帰宅

「この書類が、演習の計画で、こっちがそれに対する予算でいいんですよね?何コレすっくな」

 

「ええ、万魔殿が嫌がらせで削減とかしてくるからこんな感じなんですよ」

 

コトネはアコに書類仕事を教えて貰いながらに、書類を見て溜息を着いた。予算の削減や無茶とも言える仕事の量。これを学生時代からしているのかと戦々恐々とするコトネ。

 

「やり方はわかったよ。取り敢えず資料に目を通していくから、最後に判子とサインをお願い」

 

「分かりました」

 

コトネはアコの言葉に頷きながら、作業を始める。

 

(ゲヘナ学園の治安と秩序の維持のための機関なのに、万魔殿からこうも仕事を振られたら、そりゃ忙しくてヒナがシナシナにもなる。これは万魔殿との交流も早急に考えた方がいいかも知れない。羽沼マコトの情報網はバカに出来ないし、仲良くなれたら頼りになるはず。でも、羽沼マコトの対抗心をどうにかしないといけないっていう問題が……。まぁ、元下っ端サラリーマンの俺に何ができるかっていう話だけど)

 

なにか手を打たないとと考えるが、考えて自分の情けなさに内心ため息を漏らす。

 

(そう言えば、部屋とか家とかあるのか?住処分からないのは割と深刻じゃない?え?野宿しないと行けない系か?どうしたものか、書類整理するついでに、自分のことでも調べるか?)

 

そんな事を思いながらに作業をしていると、気づいた時には任された分の仕事が終わっていた。時計を見ると1時間半は経っていた。部屋を見渡すと、ヒナと二人きりだった。ヒナは気丈に振る舞い仕事をしているが、気負っているようにも見えた。そこでコトネはヒナの方に書類を持っていき、

 

「この書類の確認をお願いします。それとこっちの書類のはヒナ委員長じゃなくても良さそうなので引き受けますね」

 

書類に山の1つを両手で抱えてコトネが言うとキョトンとしてヒナが言う。

 

「え?そんな事しなくても」

 

「ミスないかチェックお願いしても?」

 

「……分かった」

 

手を止めて別の仕事をするように言う。チェックしている間も仕事には変わりは無いが、少しだけ休める。

 

その間にコトネは深く息を吸い、集中して事務処理を行う。被害状況の確認や消費弾薬の報告、建物の修繕費等の経理まで行う。事務作業をしているとサラリーマンの時を思い出し、その経験が生きたなぁと感じていた。だが

 

(や、やることが多い。こんなの学生の領分じゃないだろ!)

 

内心叫びながら作業をこなす。そして更に時間が経ち、4時間後。

 

「で、出来た……」

 

「そっちも終わったの?珍しく何時もより早く帰れる」

 

時刻は19:00である。ヒナからしても珍しく早めに帰れるのだが、コトネは疲れきって机に突っ伏している。

 

「コトネ大丈夫?病み上がりで教えてもらったとは言えどこんなに事務作業して……」

 

「無問題、勉強に比べたら全然平気」

 

コトネは立ち上がり背伸びをして体をほぐす。

 

「うーん、よいしょっと。それじゃ帰ろっか」

 

コトネがヒナに言う。ヒナも頷き出口に向かって歩いていく。が、ヒナが思い出したようにコトネに質問をする。

 

「そう言えば、コトネ。貴女、自分の部屋分かるの?」

 

それを聞かれた時、コトネの時が止まったように固まる。そのフリーズは10秒程で解けたが、大きく溜息をつき

 

「しまった……!!自分の記録も見ようと思ってたのに……!すっかり忘れていた!なんて情けない奴!!」

 

「そ、そこまで言わなくても。でも、自分に関することは覚えていないもんね。……私が案内するわ。何度か遊びに行ったこともあるし、部屋の鍵は無くしてない?」

 

「え?あ、これだと思うけど」

 

コトネはポケットから鍵を取りだし見せる。ヒナは頷き

 

「しっかり保管されていたみたいね。それじゃあ行きましょう。あと、何か買って行った方がいいと思うわ」

 

「え?どうして?」

 

コトネが質問するとキョトンとした表情でさも当たり前のように言う。

 

「だって1年半も帰ってないんだし、言いたくはないけど、冷蔵庫の中身は想像したくない状態になってると思うわ」

 

それを言われたコトネは手で顔を覆い隠して再度溜息をつく。

 

「ダメだ、本っ当に頭が回ってない。普通考えればそうじゃん。ごめんヒナ、買い物少し付き合って、とりあえず晩飯と朝飯の分だけでいいから」

 

「言い出したの私だし付き合うわ」

 

そして、適当なスーパーで食材を買い、ヒナの案内で、自分が住んでいた部屋に向かう。その道中辺りを見渡す

 

(周りを覚えておくかぁ。通学とか買い物くらい……1人で出来ないと話にならないし)

 

目印になる物をピックアップし覚えるように努める。何回も通る道になるのだから覚えないと行けないのだ。ヒナに着いていき10分後

 

「ここよ」

 

コトネの部屋に辿り着く。コトネは少し緊張していた。それもそのはず

 

(こ、これからこの体の本来の人の……女の子の部屋に上がるのか……。なんか罪悪感と緊張感があるな……)

 

そんな事も考えながらも鍵を開け、部屋に入り、電気を付ける。1年半も人の出入りが無い部屋は埃が溜まっており、掃除を余儀なくされるものだ。だが、

 

(い、今から掃除か……!)

 

こんな晩に掃除なんてする気が起きない。見た瞬間に大きく溜息を付く。そんな内心を察してかヒナは髪を纏めあげ

 

「掃除するわよ。こんな埃だらけの部屋で寝られないでしょ?」

 

「え?まぁ、そうだけど……。仕方ない、疲れてるだろうけどごめん、手伝って」

 

「勿論、断る理由はないわ」

 

そして19:30掃除が始まる。1時間の掃除の後に部屋は幾分かマシになった。元から整理整頓はされている部屋だったため、冷蔵庫の中身や埃、軽く拭き掃除をすれば事もなしだった。ただ布団に関しては諦める他ないのだが。

 

(部屋の契約は生きていて、電気と水とガスが止められてないのは有難い話だったなぁ)

 

拭き終えたソファーに腰をかけて息を吐く。ヒナもその隣に座る。

 

「ご飯が炊けるまではゆっくりしてよ。まぁ、ご飯ができるまでの間違いかもだけど」

 

「気にしなくても、もう少ししたら帰るつもりだから」

 

「いやいや、ここまで色々して貰ったんだし、ご飯くらい食べていってよ。あと、ゆっくりしてていいから」

 

そう言い、コトネは調理を開始する。それを言われた通りにゆっくり待つことにしたヒナ。だが、

 

(……前までのコトネなら、自分から台所に立つことなんて無かったような?気の所為……?)

 

そんな事を感じながら調理するコトネを見る。手際は普通。調理の様子は手馴れている様な感じではある。普段からしていたそれではあるが。だからこそ違和感を感じた。一年半ぶりの調理でそうも普通にできるのかと、それと普段から作っているイメージが無い人物がである。

 

「できたよー!」

 

出来上がったのはオムライス。それを二人分作り上げ、

 

「「いただきます」」

 

ヒナがひと口食べると驚いた表情でコトネに言う。

 

「凄く美味しい……コトネって料理できたの?」

 

「え?か、体が覚えていたと言うか、やったらできたんだ!」

 

コトネは誤魔化して食べ進める。そして2人で食べ終わった後に洗い物をして

 

「それじゃあ、私は帰るね。おやすみ、コトネ」

 

そう言って帰ろうとするヒナの背に向かってコトネは一言

 

「…ヒナ、今日も一日お疲れ様」

 

労う言葉をかける。ヒナが振り返ると微笑んで手を振る親友が居た。その時本当にコトネが目を覚ましたと実感出来た。

 

「ありがとう、コトネ」

 

そう言いヒナは帰る。一人になったコトネは疲れきったのかマットレスの上に体を預ける。布団は翌日クリーニングに出すとしてと考えていた。それと同時に腰のホルスターの召喚機に目がいく

 

「召喚機……」

 

ホルスターからだし、銃口を自身の頭に近づけ引き金に指をかける。引き金を引けば事を起こせる。だが

 

(……分かっている筈なのに、体が引き金を引くのを躊躇わせる……!どうなっているんだ…!)

 

引き金を引けないでいた。召喚機の引き金を引こうとする手は振るえて頭から離しても震えているままであった。

 

「体が拒絶している……?」

 

理由は分からない。だが、引き金が引けない。モヤっとした気持ちと、1日の疲れで意識を手放した。




ペルソナを早く召喚したい今日この頃。

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