透き通る青の仮面(ペルソナ) 作:仮面をつけた一般キヴォトス人
「ありがとうね、チナツ。怪我の手当てして貰って」
「全然構いませんよ。こっちの方が得意なので。それに庇って貰ったのは私ですので」
ゲヘナ学園の医務室にてコトネはチナツに手当を受けていた。二の腕に包帯をキツめに巻くチナツ。
パトロール中、事を起こそうとする不良生徒を発見し二人で対応した。その際に不良数名からの銃撃からチナツを庇ったのである。幸い、ペルソナの耐性とペルソナ使用時の神秘のおかげで軽い怪我程度で済んでいる。勿論、其れを考慮に入れた行動なのだが、軽傷と言えど怪我を負った。応援も来てその後はすぐに不良を鎮圧することは出来た。
(まぁ、よろしくないよなぁ)
内心反省はする。救援要請をしてゆっくりでも確実に対応すれば自分たちは怪我をすることは無かったと、それにチナツの罪悪感やほかのメンバーに心配かけることも無かったと。
(要反省だなぁ、あとはペルソナを過信しないことだな。ペルセポネは貫通耐性があるから銃撃戦には強く出れるが……打撃と火に関しては弱点……。イオリには戦闘スタイルの相性で苦手だし。何回も模擬戦してるけど、6:4で負けるし。ペルソナあるからほぼ拮抗的な感じでできてはいるけど……動きはまるで話にならない)
コトネは思わずため息をつきそうになったが、イオリの戦闘力は風紀員でもかなりの実力者だと思い返す。肉体が戦うことを多少なりとも覚えていたり、学んで動けるようになってきたと言えど、肉体は1年半のブランクがあり、精神はまだキヴォトスに順応しきれていない。人に銃やペルソナを向けるのが心の奥でセーブが掛る。
(とはいえ、そうも言ってられない。メンツとかプライドはともかく、これ以上迷惑はかけてられないし、足を引っ張るなんて以ての外だ)
頭を振り、頬を叩き気合いを入れる。本来の"有馬コトネ"がどう言った強さなのかは分からないが、今は自分にできる限りの事をしないと行けないと切り替える。
「よし、次は書類仕事するかな。チナツありがとう」
「いえ、お力になれたら幸いです」
コトネはチナツに礼を言って部屋を出る。そして、用意された机にて事務作業を行う。備品の追加購入についてや演習の日程割等やることは沢山あり、気合を入れたのに関わらず思わず目を背けたくなる気持ちを抱えながらも……。
(くぅー!やることが多すぎる!だけど他にできるの、イオリかアコかヒナだけだしなぁ。ヒナは言わずもがな仕事を減らさないといけない、アコも同様、イオリはフィールドワークの方が性に合うだろうし……結局やるしか無い!)
再び気合いを入れて書類仕事に取り掛かる。復帰したての学生の人物だが、中の人物が社会人という事もあり、書類に関しては慣れれば直ぐに対応できるようになっていた。そして、書類仕事を行っている時にある所からの書類が目に入る。
「『
コトネは目を凝らしながら書類を見る。そして、5分後には天を仰ぎ手で顔を覆って居た。それは悲しさなのか呆れなのかは分からないが、コトネが大きく溜息を漏らす。
「また、像を建設する為に風紀委員会の経費を削減するのか……」
そのまま背もたれに思い切り持たれていたため、そのまま大きな音を立てながら
「うわあ!?」
後ろに転ける。床に頭をぶつけて頭を抑えて蹲る。
「痛っつ……」
「大丈夫ですか!?」
後輩の風紀委員の子に心配される始末である。そりゃ、目の前で椅子ごと転けたら誰もが心配するものである。
「だ、大丈夫!……少し、委員長の所に行ってくる」
コトネは頭を擦りながら万魔殿から来た資料を手に持ち部屋を出る。
「ただでさえ、備品を買い足さないと行けないんだ。今減らされたら……困る!」
そして、委員長の執務室前に来てドアをノックし
「ヒナ、今入っても大丈夫?」
「コトネ?うん、大丈夫」
ドアの向こうからヒナの声がかかる。扉を開き入室するとヒナは事務仕事を行っていた。だが、コトネの復帰に伴い、委員長のサインを必要としない事務仕事の半分をコトネが請け負い、ヒナの仕事は比較的に落ち着いたのだ。その為、ヒナの机の上には以前ほどの書類の山は無い。それでも多忙なのは委員長だからこそなのだろう。
「珍しいわね、こんな時間に来るなんて……。ねぇ、その包帯は?」
制服でほとんど見えることは無いがチラッと見えた包帯にヒナはコトネの用件より先に追求する。眉も顰めて、怪訝そうな表情を浮かべている。コトネは考える。
(大した怪我じゃないが、言うのもあれなんだけど……変に誤魔化すとか通用しないだろうしなぁ。ヒナそれだけ、有馬コトネを大切思っている訳だし……。正直に話すか、何も全部を話さなくてもいいだろうし)
コトネは包帯を触りながらに言う
「チナツとパトロールの時に事を起こそうとする不良が居て対応した時に、少しヘマをして。大した怪我じゃないよ!他の風紀委員の子も来てくれたし」
「……本当に大丈夫なのね?」
「うん、念の為にということだから大丈夫」
コトネが腕を動かしながらに伝える。内心少し痛むのを我慢しながらに言う。ヒナはそれを見てそれ以上追求するようなことはせず。肩を落とし
「ごめんなさい、少し気になったの。それで、用件は何?書類の確認なら何時もならアコに頼んでる見たいだけど……。私宛の書類が紛れてた?」
「まぁ、似たようなところかな。一応、目を通して欲しいと思って。それで、その内容について万魔殿に抗議しに行こうかと」
コトネはヒナの机の上にその書類を置く。それを見るヒナは嫌悪感を隠しもせずに表情に出す。
「また?この間も予算が削られたと思うのだけれど……。なるほど、それで万魔殿に行ってくると言うのね」
納得したようにヒナは言う。本来ならヒナもついて行き、たまにはお灸を据えるのもやぶさかでないが、今回は期限が近い仕事がまだ残っているのだ。それに、いつ応援要請がかかるか分からない。アコをつけようとも思ったが、アコも別件の仕事で留守にしている。
「分かったわ。でも、気をつけてね。流石に、周辺で銃撃戦とかは起こらないとは思うけど、何時でも出せる様にだけは」
「分かってるよ。それじゃあ行ってくるよ」
コトネはそういうと委員長の執務室を後にする。ヒナはその背中を見送り。
「はぁ……残りも終わらせないと……!」
先程より速度をあげて書類に取り組む。
コトネはヒナに送り出してもらい万魔殿の議長室の前まで来ていたが、扉の前に立っていた万魔殿の生徒に腕を後ろに捻り上げられて拘束され
「ダメだ、突然の来訪は受け付けていない。ましてや、どこで手に入れたか知らないがヘイローも無い奴がゲヘナ学園の生徒な筈がないだろ!ましてや万魔殿・議長である羽沼マコト様に会うのに風紀委員会の腕章まで付けてくるとは何様だ!即刻立ち去れ!」
と、取り付く暇も無いまま外まで締め出されるという荒々しい門前払いを食らう。最後に背中を蹴られるというおまけ付きで。もちろんペルソナを出していないためかなりの激痛であり、未だに立ち上がることも出来なかった。
「ゴホッ!ゲホッ!痛ってぇなぁ……!人の話を聞かずに腕を締め上げやがって……危うく折れるかと思った。オマケに背中を蹴りやがって……」
痛みに耐えるように大きく深呼吸を行い、立ち上がる。そんな時、こんな状況で声をかけるもの好きな人物がコトネに声をかける。
「大丈夫ですか?凄く辛そうですけど?」
多少なりとも心配そうに声をかける人物が風紀委員会と救急医学部以外に居るのかと驚きながらも体に力を入れて、痛みに堪えながらに答える。
「だ、大丈夫ですよ……。手酷く追い返されただけですから」
そう言って書類をコトネが拾おうとすると
「はぁ……。貴女をこんな手酷仕打ちをして帰したとなったら、あの風紀委員長が全力で報復するのが目に見えてます。そんな面倒は避けたいです……」
その声の主は先に書類を拾い始め、コトネに手渡す。
「あ、ありがとう……!?」
コトネの眼前にはヒナに勝るとも劣らない非常にボリューミーな濃い紅い髪に万魔殿所属を示す制帽を被り、丈が長く袖の余ったコートを身に纏う少女が居た。その人物にコトネは驚いていた。
「とりあえず、自己紹介ですね。万魔殿所属の棗イロハです。初めまして、有馬コトネ先輩。マコト先輩に用でしたら案内しますよ」
そう言ってイロハは扉を開きコトネを招き入れる。再び議長である羽沼マコトに会うためコトネはイロハの後ろを着いて歩く。