All For Oneとの戦いから三日後
病院の一室、志村菜奈の部屋に三人が集まっていた。
「『One For Allは完遂された』……か」
「本当にそう聞こえたんだな?志村、俊典」
「……」
「…あぁそうだ」
下を向いていた八木俊典の代わりにベッドに座っていた志村菜奈がグラントリノに答えた。
「……」
それを聞いたグラントリノは窓から外を見上げてた。
One For Allの完遂…それは、長年の宿敵であった魔王All For Oneの死亡を意味している。本来なら喜ぶべき事であったはずだ。だが誰も素直に喜ぶことが出来なかった…なぜなら
「空彦…日録は?見つかったか?」
「……」
「…そうか」
全員にとっての大事な存在が、犠牲にしたくない存在が犠牲になってしまったのだ。
「……!!」
後悔ゆえか不甲斐なさゆえか俊典は自らの拳を強く握りしめていた。そして、それを志村は見逃さなかった。
「俊典…ごめん、ごめんな。私なんかのせいでお前n「違います!!」…ッ!!」
「師匠!!!…貴方は何も悪くありません!!だからそれ以上は……言わないでくださいッお願いします」
「あ、あぁそうだな、ごめん…」
再び静寂が戻ろうとしていた…その時
ゴンゴン
扉がノックされた。
「…何だ?」
「私……見てきます」
ガララ
キシッキシッ
「ショウタのクワガタ携帯?」
(…なんで?)
扉を開くとスタッグフォンがいた。
何故いたのか?その疑問はすぐに解消された
「あの…」
「ん?君は確かショウタのお隣の弧太郎君?」
俊典も少しだけ遊んだことがある少年、弧太郎がいたのだった。そして、弧太郎はある事を口にした。
「僕のお母さん…『志村菜奈』はいますか?」
「「「!?」」」
(え…!?もしかして、師匠から聞いていた、縁を切った子供が弧太郎君?!)
「ッ!!入れるな!!俊典ィ!!!」
グラントリノは母子が会わせないように俊典に命令をした、しかし
「あ、ちょ…待って!!!」
少し遅かった。
「お母さん!!…お母さん!!…だよね?」
志村菜奈の呼吸が一瞬浅くなる…そして、
「…君は誰だい?君の様な子供は…」
「嘘をつくなっ!!!」
「!!」
「兄ちゃんも言っていた…過去とか罪はどうでもいいって、自分のしたい事をするべきだって!僕はお母さんに会いたいから会いに来たんだ!!」
「やめろ…坊主」
空彦の制止されても、弧太郎は止まらなかった。
「…それは、恨んでもいるし、怒ってもいる!!けど、それ以上に…!!」
「…会いたかった!!お母さんとまた暮らしたかった!!」
その思いにぶつかり…志村菜奈のいつかの決意(呪い)は
「……」
ポト…ポト…
解けていった
「また…一緒に暮らそう?」
「…ッ!!ごめんな弧太郎……ごめんなぁ!!!」
志村親子は過去の楔を引きちぎり抱き合った。
三人は改めて実感する。長きにわたる宿命は幕を閉じたのだと、それは一時に過ぎないのかもしれない、まだ終わっていないのかもしれない…
けど確かに『終わった』のだ、己の不甲斐なさを感じながら…
ー更に日が経ちー
「どの街も奴の息がかかった者ばかりだ」
グラントリノとオールマイトは雄英高校にて組手を行っていた。
ダンッ!!
ズサッ
「魔王が消え、暴走している奴らに」
ゴンッ
「このままじゃ殺される」
いつものならグラントリノの攻撃をかわせているオールマイトは受け止めてしまう。
「やってみなければ…分かりませんっ!!」
「私は平和の象tドゴン!!」
オールマイトは自分の決意を言い切る前にグラントリノの蹴りに当たり、膝をついてしまった。
グラントリノはその上に乗り話をつづけた。
「敵は怪物に賛同し、世界に恐怖を振りまく、およそ100年分の悪意」
「無理だ」
そう、宿命が終わったとしても、魔王に従っていた存在や影響は、戦いは決して終わってはいなかったのだ。
「ショウタは根源を断ち切りました…ワン・フォー・オールを持つ私なら!!」
「…前まで勝ててた中年すら負けているワケだが」
「ショウタは師匠を…自らをなげうってまで私たちの…ワン・フォー・オールの使命を全うしました」
「…それをすべきだったのはお前だ」
「親友だと思っていました」
オールマイトは涙を流していた。少し考えればわかったかもしれないのに…親友はそれでも向かってくるという事が
「俊典」
「お前に足りねぇのは経験だ」
「経験を積め、100年相当の経験を…学校に守られている間は俺や志村が鍛える」
「卒業したら海を渡れ」
「!!」
「海…?この国を見捨てろと!?」
「アイツが救おうとしたこの国を!!」
「お前のイカレ具合は重々承知なんだよ!!」
「!!」
「奴らに手が届く場所にいたら」
「お前は……耐えられない」
「俺の愛弟子が何故戦ったのかわかるよな…?」
「俊典」
「分かるよな…?」
グラントリノの頬に光るものが流れている。それを見たオールマイトは何も言えなくなってしまった。
「…ッ!!」
「力を蓄えろ」
訓練の後
オールマイト…八木俊典は帰路についていた。
分かっている、ショウタの夢を知っているから。彼は未来を守る為に戦った。私が柱となる未来を信じて…だけど
「違う」
違うんだ、私が柱となった未来には…
「君がいたんだよ…」
その未来に君はとても大事な存在だったんだ……守りたいものや守るべきものは見えている。だけど、
「何のために戦うのか分からないよ……!!」
どうしようもなく、立ち止まりそうになった時、俊典の頭の周りを何かが飛んでいた
キシッキシッ
「…クワガタ携帯君?」
スタッグフォンは俊典の手に乗り
ピリリピリリリ
「!!」
電話を鳴らした。
「え!?え?!」
で、出ていいのかな?!
ピッ
電話に出て耳を掛けた俊典は驚く、なんと相手は
『よう…久しぶりだな!!とっしー』
死んだと思っていた人間なのだから
「ショウタッ!!?なんで…どうして」
『あーもし嬉しそうにしているなら、悪いんだけどさー…これ、録音』
俊典の淡い期待は本人によって打ち砕かれた。
「…そっか」
『これをスタッグフォンが流している時は…つまり、俺になんかあってしばらく帰れそうにないってときだ。』
『お前と喧嘩別れしたけど…俺は今でもお前の事親友だと思っている。…俺だけかもしれねーけどな』
「…そんな事」
『それでも、お前には知る権利がある事が、俺自身が話したかったことがあったからこのメッセージを残した。』
『俺の真実…俺の使命って奴を』
「使命…?」
その話を聞き俊典は驚きの事実だった。
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俺の個性は2つ…嫌、4つの個性を持っていたんだ。
信じられねーかもしれねーけど…な
1つ目の個性は「転生」
名の通り、死んだら別の人間として新しい人生を歩める個性
2つ目は「ジョーカー」
オーラを力にする個性だ
そして、3つ目は「メモリー」
記憶を抽出し、その記憶を行使する個性
そして、最後は「ガイアメモリ」
コイツは知っているだろう?
その4つだ…何が言いたいのかもしかしたらわかったかもな
黎明期で魔王の…全の兄と、初代の…与一の兄をやっていたのは俺なんだ。
信じてもらえるような証拠はスタッグフォンが録音しているはずだぜ?
俺は今まで三回の人生を送って来た。三回目…つまり今回の人生以外ろくな目に合ってない。
一回目の人生は…まぁ俺は敵をやってたんだ。正直話したくもねーし、お前の決意を鈍らせるかも知んねーから別に録音しておく、聴きたいと思ったら聴け。
二回目は地獄の世界だった。新たな人種が突如として発生し、混沌とした世界、超常黎明期。
その世界で俺は与一と全…初代OFAとAFOに出会った。俺はその双子に出会って、そいつらの兄貴になった。
あの時代で、自分も余裕がない癖に…アイツらを放っておけなかった。…いつの間にか兄貴になっちまったけどな。
色んな事があった。地下水道で移動したり、捨てられた団地で変なじいさんと生活したり…紛争に巻き込まれたり。
苦い事も楽しい事も三人で一緒にやった。
この時の俺の個性…「ジョーカー」の力や全の個性を上手く使い、乗り越えていった。もちろん、与一と一緒にな
だけど、全が自分の個性、本当の使い方を理解してしまってからは変わってしまった。
与一が戦闘で傷ついた時に理解したらしい。
アイツは……元々そういう所があったけれども個性を知ってからあからさまに豹変した。
…俺はそれを止められなかった。力で抵抗しようとも…もう遅かった。そして、俺も与一と一緒に屈服させるために個性を与えられた。「メモリー」という個性をな。
勝ち目がなくても俺はアイツに正気を戻したいから戦った。次につなげるためにも与一を逃がした。俺の命を犠牲にしてな…結局意味がなかったが。
そして、また転生した、その時に個性『転生』についても気付いた。
正直、もう全と戦うモチベーションなんて持ってなかった。
当然だ、勝てないと分かっている相手に痛い思いしながら戦おうなんて思わないだろう?
『全然良くはねーけど、アイツがそれを選択したんだ。文句なんてない』って感じの言い訳垂れて知らん顔を決め込もうとでも思っていた。
そんな時にお前と出会った。
お前の勇気ある行動は俺に勇気を与えた、どっかでくすぶっていた俺の心を奮い立たせた。
弟への責任に自分の贖罪に気付かせてくれた。夢を…また見ようと思えた。
お前も…俺も今でもヒーローの卵っていう奴なのだろう…けどお前は
俺にとっての最高のヒーローだッ!!!!
そのヒーローが救うであろう未来を、そいつがこぼしちゃいけねーものの為に俺は戦いに行くんだ。
たった一人でも、誰にも知られてなくても、追いつけなくとも、"涙の滲んだ仮面"に全てを懸けて勝ちに行くんだ!!!
まぁ…これを聞いている時にはもう『勝ちに行った。』だけどな
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…情けない
『と、こんな感じだな、俺の真実は』
…知ったつもりでいた。彼の事を
『…嫌ーめっちゃ長かった。まさか、最終戦の前にのど潰しかけるなんてなー』
けど、何も知らなかった、一番因縁を持っているのは彼じゃないか…
『けど、ま何が言いたいのか簡単に言うとな』
「そんなに…」
『俺は自分の贖罪の為に、自己満足する為に戦ったんだ。別にお前のせいで…なんてことはない』
「私が頼りなかったのか!!!」
ドゴンッ!!
俊典は大事な事を誰にも相談すらしていなかった友に怒った、そして、自分の不甲斐なさを悔やんだ。
八木俊典にとって日録章太郎は身近で誰よりもヒーローであった。それは例え彼を追い越して、オールマイトになっても変わらなかった。自分が柱となり平和になった世界で共にヒーローとして世界を守り続けるなんてことを夢に見た事もあった。親友だと、相棒だと思っていた。それなのに頼られなかった事が何より悲しかった。
そんな後悔とは裏腹にメッセージは続いていく。
『俺はもう満足だ』
『お前と一緒にヒーロを目指せた事も』
『バカやった事も』
『何気ない下らねー会話も』
『…黎明期での事も』
『全部キレーな思い出だ』
『…楽しかったなぁ』
『…さて、もう行かねーと』
『俺の事を思うのなら…悲しい顔をしないでお前の夢を叶えてほしい。俺はそれが一番見てぇ』
『志村さんも言ってたけど世の中笑顔の奴が一番強いし、安心させられるからな。』
『後、こんなメッセージごときに縛られるんじゃねーぞ』
『もし、魔王が生きているなら…決して許そうと思うな、そうなっていたらもう…アイツはきっと止められない。』
『これでお別れだ…』
『この世界をよろしく頼む…お前の相棒より』
青い星座が浮かんでいた…
-Long Hope Philia/六十一章-
「オールマイト(八木俊典)」
大事な存在を守る為に離れさせるようなことをしたのにそれが逆効果になってしまった男。何か隠している事も、彼の親から教えてもらった闇もある事は知っていたが、何だったのか教えてすらくれなかった。自分の不甲斐なさや頼ってくれなかった彼にめっちゃ怒っている。
「志村一家」
日録章太郎が助けた、もしくは母親の決意を踏みいじった一家。弧太郎は色々言いたい事があったけど、それ以上に母親に会いたかった気持ちが強かった。菜奈さんは弧太郎が来ていた事に驚いたし、耐えようとしていたが、メンタルボロボロでAFOの姿が消えた今その気持ちも決意と共に音すら立てずに崩れていった。
「グラントリノ」
ようやっと本音を出したヒーロー。章太郎と自分の事を重ねていたというのもあるが、3年以上の師弟関係を持っていて彼の事が嫌いじゃなかった。…嫌、好きだった。結局全然口に出せなかったに後悔している。それはそれとして、弧太郎の事は菜奈の代わりに叱らなきゃななんてことを思っている。ちなみに章太郎のグラントリノの最終的な印象は「ツンツンツンデレスパルタクソジジイ」である。
「スタッグフォン」
弧太郎の誘導から始まり、章太郎の遺言、彼が転生者である証拠の録音など今回大活躍したメモリガジェット。転生者の証拠は魔王と彼の会話(第45話、第46話参照)である。使われるのは嬉しいのだが、こんなことに使ってほしくなかった。もし、会話する機能があったら文句垂れている。ちなみに非常時の為にロストドライバーの設計図など隠し持っている。