Trust Last 〜PUNISHING:BRANK FOX〜   作:春風駘蕩

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続くかどうかはわからない……ただ衝動のままに書いてしまった(いつもの病気)。
YOUTUBEで『パニグレ × Desire/湘南乃風』のMAD作ってる人いたからつい我慢ができなかったんです(о´∀`о)。


黎明
F:死毒ノ世界ノ白狐


 

 

この地獄のような世界で、

一体いつまで逃げ続ければいいのだろう。

 

力のある者は宇宙(そら)へと逃げた。

力のない者は逃げ場のないこの地球(ほし)に取り残された。

 

黄金の時代はとうに過ぎ、

争う時代はあまりにも長く、

 

けれど──それでも人類は

生まれ育った母なる地球(ほし)を諦めきれない。

 

選択せよ。

無様に逃げ続けるか 無謀に抗うか。

世界を望む通りに変えたいのならば、

 

願いのために 戦え。

 

 

 

 

 ぴん、と宙に一枚のコインが舞う。

 ひどく磨耗した金色の貨幣。かろうじて、女性の横顔であることはわかる。

 

 荒れ狂う波、吹き荒れる風。

 激しい水飛沫が舞う海岸で、ひとりの長身の女が佇んでいる。

 

 長い黒髪を風に揺らし、女は曇天が被さった海の彼方を見つめながら、不意に口を開いた。

 

???

「……ええ、わかってるわ。……わかってる。リスクも代償も重々承知よ。だけど余計なお世話、そのためにこれまで散々準備してきたんだもの」

 

 耳元に手を当て、誰かに向けて話し続ける。

 相手との会話がしばらく続くと、やがて彼女の表情に笑みが浮かんだ。

 

???

「なら、始めましょうか……記念すべき初戦(ファーストゲーム)を」

 

 

 

 

 走る。

 

 荒れ果てた街中を、ただひたすらに走る。

 父親に手を引かれながら、もつれそうになる両脚を必死に動かして走り続ける。

 

 鈍色の空、砕けた道路、崩れた建物……そして転がる骸。

 この世の終わり。黄金時代から創作上で何度も想像されてきたその光景の中を、親子はひたすら走り続ける。

 

???

「ギギィィ――――!!!」

 

 背後から迫るバケモノから、逃げるために。

 

少年

「お、お父さん……!」

 

父親

「足を止めるな!あいつらに捕まったら一巻の終わりだぞ!」

 

 息子を励まそうとしてか、平時よりも荒々しい口調で父親が語りかけてくる。

 

 息も絶え絶えでいまにも倒れそうな体。父親の右脚は血を流し、痛みと疲労で意識が朦朧としている。

 それでも生き残るために──安全な場所にたどり着くために、体に鞭を打ち続ける。

 

 安息の地など、この星のどこにもありはしなくても。

 

 

 パニシング(Punishing)――それは、最先端科学がもたらした厄災。

 

 人類の科学に対するあくなき探求は遂に禁忌の領域に至り、夢の新エネルギー開発は、世界を壊す厄災を呼び起こした。

 

 驕り昂った人類への『罰』であるかのように発生した病魔は、人間の肉体を蝕み命を奪うだけではなく。

 機械の論理回路をも侵し、人類への異常な破壊衝動を有した殺戮兵器へと変えた。

 

 かつて栄華を誇った人類の文明は、たった数十年の間に赤く輝く病魔のために衰退していった。

 多くの命が厄災に呑まれて絶たれ、生き残った人類は以前の暮らしから追われ、権利を得た一部の者は宇宙へと逃げた。

 

 厄災に侵された地球を奪還するため、宇宙へと逃れた人類はスペースコロニー『空中庭園』を拠点に、パニシングの根絶のために戦いを繰り広げていた。

 

 

少年

「あっ──」

 

 疲れが限界に達した少年が、足をもつれさせ、勢いよく倒れ込む。倒れた勢いで、父の手の中から少年の手がするりと抜け落ちる。

 うつ伏せになった少年の背に、機械体が腕を振り上げて迫る。

 

父親

「やめろぉ!!」

 

 無意味とわかっていながら、死ぬと直感しながら、父親はすぐさま反転し、少年に覆い被さる。

 

 盾になったところで、機械体にはおそらく無意味。

 強靭な鋼の腕は簡単に親子の体を引き裂き、血肉の塊へと変えるだろう。

 

 それでも我が子を守らんと、父親は迫りくる赤い光を前に息子を強く抱きしめ、自分の体の下に庇う。

 

 

 これが、現代の地上の日常。

 病魔に怯え、暴走する機械に怯え、狭まった生存圏で逃げ惑う。地上に残った人々が抗う術は、今や無いに等しい。

 

 ……だが、人類も負けを認めて宇宙に籠り続けている訳ではない。

 パニシングを駆逐し、機械体を退け、母なる地球を取り戻すために、日夜あらゆる方面で奔走し続けていた。

 

 その最前線、パニシングに侵食された機械体と戦うために生み出されたのが――――

 

 

???

「――伏せてください!」

 

 あるひとりの少女の声が響き、直後に親子の背後で金属音が響く。

 突如振るわれる赤い一閃。それを受けた機械体は火花と破片を撒き散らし、派手な音を立てて崩れ落ちた。

 

 不気味に輝く赤い眼光が消えていき、機械体はその活動を停止する。

 

 沈黙した機械体を見下ろし、少女は手にした刀を振る。

 長い黒髪を持つ、赤い意匠の少女は親子に振り向くと、跪いて声をかけた。

 

???

「大丈夫ですか?ご安心ください、空中庭園の者です」

 

父親

「こ、構造体……!?」

 

 現れた少女を凝視し、父親が呆然とその名称を口にする。

 少女──マネキン人形のような質感を持ちながら、確かに生きた人間の気配を醸し出すその存在は、こくりと小さく頷いてみせた。

 

???

「指揮官、避難者2名を確認しました!うちひとりは右足を負傷しています!」

 

???

「侵蝕体を撃破しつつ後退!ルシア、先頭をお願い!」

 

ルシア

「了解!指揮官の道は、私が切り開きます!」

 

 少女が告げる先で、もうひとりの人物が次なる指示を出す。

 

 深い灰色の強化装甲を身に纏い、コートを羽織った若い女。

 その背に刻まれた紋章──鴉の翼をはためかせ、ジャキンと拳銃をリロードし、銃口を侵蝕機械体へ突きつける。

 

 ドンッ!

 

 引き金が引かれ、迫りくる機械の敵の脳天を鋭い弾丸が無慈悲に貫いた。

 

 

 構造体──パニシング、そして侵蝕機械体に対抗する人類の切り札。

 適性を持つ人間を改造し、魂を『意識海』と呼ばれる人間の精神を再現した器に移し替えた戦う人形。

 

 無論、機械である以上パニシングによる侵蝕の危険性は依然として残る。

 それを防ぐため、構造体は指揮官とリンクすることにより侵蝕を防ぐ障壁を生成する『逆元装置』を搭載している。

 

 人を襲う機械に対抗するため、人と機械が共闘する──それが今の地球における最良の戦闘方法だった。

 

 

 カイネ・クロウは構造体の小隊を率いる指揮官のひとりだった。

 ファウンス学院を首席で卒業し、地上にて戦闘任務を担う『グレイレイヴン小隊』に配属された軍人。

 

 この時間のために、学び続けてきた。

 この戦いのために、訓練を重ねてきた。

 

 母なる星を奪還するために、多くの戦いを経験し、多くの人を救い、多くの窮地を乗り越え、多くの戦友を見送ってきた。

 

 だがそれでも……地球に蔓延る病魔の力は強く、理不尽だった。

 

カイネ

「ああもう……!多すぎる!!」

 

 思わず悪態が口から溢れる。

 

 構造体ルシアの戦闘力は決して低くはない。長い経験を有する彼女は、構造体の中でも上位に位置する実力者であり、そこらの敵に遅れを取ったりはしない。

 

 そんな強者でもどうにもならないのが……数だった。

 

侵蝕機械体

「ギギギギギ……!!!」

 

 倒しても倒しても、敵は次から次へと湧いて出る。

 

 あらゆる物事を機械に頼ってきたツケが回ってきたというのか、現代の文明圏に機械は溢れている。

 パニシングに侵される機械に差別はなく、どんな用途のものであろうと容赦無く人類に牙を剥いてくる。

 

 医療用機体、工事用重機、育児ロボット──

 構造があまりにもシンプルな初期の機械以外ならば、全てが敵になりうると言っていい。

 

 地上で戦うということは……前後左右、全てを敵に囲まれることに等しかった。

 

 ガキッ、と拳銃から嫌な音がする。

 次から次へと向かってくる機械体の脳天に、数え切れないほどの弾丸をぶち込み続けてきた愛銃の弾倉が空になる。

 

 敵のあまりの多さに、リロードのタイミングがズレた。

 自分の身を守るだけではない。避難者を守るためにも相当な弾丸を使い切ってしまっていた。

 

ハイネ

「【規制音】!!」

 

ルシア

「指揮官──────!!!」

 

 口汚く罵るハイネ、絶望の顔を青く染める親子。

 

 弾丸の装填に一瞬手間取った指揮官に、侵蝕機械体の剛腕が迫る。

 慌てたルシアがその盾にならんと走るが、思い切り跳躍しても届きそうにないほどその距離は遠い。

 

 鈍く光る鋼鉄の爪が、立ち尽くした指揮官の目を抉る……

 

 その寸前──ブオンッ!!!

 

侵蝕機械体

「ギッ────!!?」

 

 けたたましい爆音とともに何かが突っ込んできて、機械体を撥ね飛ばす。

 強烈な衝撃を受けた機械体は火花と自身の破片を撒き散らし、宙を舞って激しく地面に叩きつけられる。凄まじい轟音があたり一帯に響いた。

 

 目を見開く指揮官の前で、一台の赤いバイクがドリフト走行をしながら制止する。

 

???

「──不躾なご挨拶で、ごめんあそばせ?」

 

 ドルン、ドルンと唸りを上げるバイクの上で、その人物はからかい混じりの口調で笑う。

 大きく足を上げ、バイクの座席から降りると、彼女は──長い黒髪と長身の女は、ハイネに一瞥をくれた。

 

???

「えっと……グレイレイヴン指揮官で間違いないかしら。救援要請はまだだったけど、ちょうどいいタイミングだったみたいね」

 

ハイネ

「……あなたは」

 

 困惑の声を漏らすハイネに、黒髪の女の持つ金色の瞳が向けられる。

 

 凄まじい存在感を放つ女性だった。

 成人男性の平均身長に届くかそれ以上という長身に、鴉の濡羽と呼ぶにふさわしい艶やかな髪を腰まで伸ばしている。

 顔立ちは整いすぎて人間離れしており、体の曲線も極端に凹凸が激しい。

 

 同性であっても目を奪われるほどの美女がそこにいた。

 

???

「安心して、私が援軍よ。戦闘はこっちに任せて、その子たちを早く非戦闘エリアから離脱させてあげて」

 

ルシア

「……ま、待ってください!援軍って……あなたひとりでこの数を相手にするのは……」

 

???

「ん〜、話は後でいいかしら?団体のお客さんを待たせちゃってるから」

 

 辺りを見渡しても、目の前の女性以外に味方らしき人影は見えない。なのにまるで、今からこの侵蝕機械体の軍勢を相手に戦うとでもいうような態度だ。。

 止めようとした時、目の前の女が困った様子で前に向き直り……じりじりと近付いてくる機械体の群れを見すえる。

 

???

「困った子たちね……『待て』もできないなんて。躾のなってない子は男性にも女性にも嫌われるわよ」

 

侵蝕機械体

「ギギギィ────!!!」

 

 女の忠告に、当然だが機械体たちは何も答えない。赤く光る目に宿るのは、人類への殺意のみ。

 徐々に徐々に、軋む金属音が包囲網を狭めていく。

 

???

「あらあら……なら、仕方ない」

 

 苦笑した女は、目を細めると懐に手を入れ、何かを取り出す。

 白い、6連のリボルバー銃を模したような、ハンドルの片割れのような形状の機械。

 

 それを、女は自分の腰に巻いたベルトの右側にはめ込む。

 

SET

 

 ベルトから機械の音声が鳴り響き、ともに音楽が鳴る。続いて、女の前に『MAGNUM』とロゴらしき幻影が浮かび上がる。

 

 何が起こっているのか、何が始まるのか。

 呆然とそれを凝視するハイネとルシア、避難者の親子、そして侵蝕機械体たち。

 

 彼らの視線の先で、女は右手の指で狐の顔を作ると、パチンと小気味よくフィンガースナップを利かせる。

 

???

「──変身」

 

 そう呟いた直後、ベルトに嵌めたリボルバーの弾倉を回し、トリガーを引く。

 

 ドキュン!

 

 銃声とともにベルトから弾丸が発射され、ロゴを撃ち抜き粉々に砕く。

 かと思えば、飛び散ったロゴの破片が宙を舞い、女の前進にまとわりついて一着の黒い装甲となっていく。

 

 更には宙に、白い仮面と上半身の鎧が出現し、それを巨大な腕が掴んで女の体に押しつける。

 

MAGNUM

 

 ──現れたのは、仮面の戦士。

 

 胸と肩と背を守る白い装甲を備えた、白い狐面の兵士。

 首からたなびくマフラーが、狐の尾のように揺れる。

 その手に一丁の銃を握り、女はゆらりと、その銃口を侵蝕機械体の群れに突きつけた。

 

ハイネ&ルシア

「キツネ!?」

 

???

「さぁ……ここからが、ハイライトよ」

 

READY FIGHT

 

 ハイネとルシアの驚愕の声を無視し、女性は──白狐の戦士はベルトの放つ無機質な音声の告げる通り、銃の引き金を引く。

 

 ドォン!!

 

 白い銃の銃口から放たれた弾丸が機械体の脳天を撃ち抜く。

 回路を破壊された機械体は銃撃の衝撃によってひっくり返り、激しい金属音を響かせて倒れる。

 

MAGNUM SHOOTER-40X

 

???

「ふっ!」

 

 倒れた同類を踏み越え、次なる機械体が白狐に迫る。

 だが、機械体たちは近付く端から蹴り飛ばされ、あるいは殴り飛ばされる。

 

 しなやかで長い脚から繰り出される蹴撃は、装甲の力も重なり鋼鉄の体を容赦なく砕いた。

 

侵蝕機械体

「ギギィ!!」」

 

 パニシングに侵された機械体たちは、彼らの本能とも呼ぶべき思考回路に基づき、そして最大の優位性である数を利用して白狐の命を狙う。

 だが、元が戦闘用ではない機械体の動作は単純なものが多く、数の差もほとんど意味をなさなかった。

 

???

「甘いわね」

 

BULLET CHARGE

 

 呟きながら白狐は建物に向かって走り、壁を駆け上がって蹴り、大きく宙を舞う。

 機械体たちの頭上をとった白狐は白い銃を構え、同時に左手の装甲を変形させ、もうひとつの銃口を機解体たちに突きつけ発砲する。

 

 ドォン!ドォン!ドドドォン!!

 

 金属音が機械の悲鳴のように響き渡り、がしゃがしゃと耳障りな音が辺りにこだました。

 

ルシア

「……すごい」

 

 見る見るうちに減っていく機械体たち。

 感嘆の声を漏らしながら、ルシアも近付いてくる機械体を刀で切り裂き仕留める。

 

 決して彼女が弱いわけではない。むしろ彼女も強者に数えられる構造体だ。

 だがそんな彼女からしても、白狐の戦士の見せる戦闘能力は異様としかいえないほど高い。

 

 何よりも驚きなのは──白狐の戦士が構造体ではないことだった。

 

ルシア

「指揮官、一体あの方は……!?」

 

 側で避難者の親子を導くは稲に訊ねようとした時、突如すぐ近くの壁で爆発が起こり、全員で同時に立ち止まる。

 

大型

「ガ、ガ、ガ、ガ、ガ────!!!」

 

 建物に大穴を開けて現れた巨大な機械体……本来土木作業に使用される二足歩行の重機『大型収穫機』が、スピアを振り上げハイネたちに迫る。

 

 降り注ぐ壁の破片を防ぎつつ、ルシアは黒と黄色に彩られた機械体に向かって飛び出す。

 ぶん、と屈んだ状態で横薙ぎに振るわれる片腕。紙一重でそれをかわし、刀を一閃するが、太く硬い装甲を切り裂くには威力が足りない。

 

ルシア

「くっ……!それでも!!」

 

 指揮官と避難者たちを背に庇い、ルシアは機械体に果敢に挑む。彼らが戦闘に巻き込まれないよう、刀を振るい続ける。

 刃と装甲が激しくぶつかり、大量の火花と金属音が辺りに撒き散らされる。

 

 その様に、向かってきた侵蝕機械体の最後の一体を撃ち抜いた白狐が、仮面の下で困り顔を浮かべる。

 

???

「あらあら……あの様子では流石にちょっと骨が折れそうね。なら──」

 

SET

 

 そう言って取り出したのは、もうひとつの機械を取り出す。

 赤いそれにチュッと口づけをすると、リボルバー型の機械を取り外し、入れ替えるように赤い方をセットする。

 

 右側から伸びるバイクのハンドルに似た箇所を握り、捻ると、表面のパーツが上下に展開し火を噴いた。

 

BOOST

 

 機械音声が鳴った直後、白い装甲が消失してまた新たに赤い装甲が出現。再び現れた巨大な機械の腕が、鎧を白狐に装着させる。

 

 胸と肩、二の腕を覆う真紅の装甲。

 バイクのマフラーを両腕に備えたその鎧は、白狐が身構えると爆炎を噴き出し、その身を宙へと躍らせる。

 

???

「ハァ〜〜イ、そこどいてぇ!!」

 

ハイネ

「なっ……!?」

 

ルシア

「え?」

 

???

「お……らぁ!!!」

 

 爆炎による加速で一気にの前へと飛び出し、白狐が拳を頭部に叩き込む。

 凄まじい衝撃で、大型収穫機は大きく上半身を仰け反らせ、よろよろと後方にたたらを踏む。

 

 地響きを立てて後ずさる標的を見据え、白狐は再びベルトに手をかけると、突如前面を時計回りに回転させる。

 

REVOLVE ON

 

 ベルトのバックルが回転し、赤い機械部分が左側へ移動する。

 すると、白狐の纏う装甲が一度外れ、ベルトと同じように時計回りに回転し、変形して再度装着される。

 

 下半身を赤い装甲に覆わせた白狐は、再びハンドルを握り幾度も捻る。

 

BOOST TIME

 

???

「はっ!!」

 

 気合いの一声をあげ、跳躍。両足に備わったバイクマフラーが爆炎を噴き、白狐の体を空中へと押し上げる。

 

 視線を白狐に引き寄せられるハイネたち。

 その時、放置されていた赤いバイクがひとりでに疾走し、突如変形して狐に似た形状へと変わる。

 

???

「いくわよ〜〜〜〜コンちゃん!」

 

 バイクマフラーから炎を吐き、空へ駆け上がった、『コンちゃん』と呼ばれた鋼鉄の狐。

 その上に乗った白狐がもう一度ハンドルを捻り、真下の大型収穫機に向かって跳ぶ。

 

BOOST GRAND VICTORY

 

???

「イヤアアアァ────ッ!!!」

 

 両足のバイクマフラーによる加速に続き、背中を炎を纏う鋼鉄の狐に押され、白狐は自らを砲弾へと変えて地上へ翔ける。

 

 放たれた業火の蹴撃は大型収穫機の胸を貫き、大穴を開ける。

 容赦無く核を破壊された機械体は耳障りな金属音を響かせ、ぐらりとその場に倒れ込むと──直後に大爆発を起こした。

 

???

「……はい、おしまい」

 

 すたっ、と軽やかに降り立つ白狐。着地する鋼鉄の狐が、甲高い悲鳴のような声で勝利の雄叫びをあげる。

 

 

 その姿に、ハイネたちは声もあげられない。

 まるで現実離れした光景……はるか昔のアニメーションやコミックの中の出来事のような、自分の目を疑う景色。

 

ハイネ

「……あれが、『ブランフォックス』小隊隊長……構造体の部下を持たずに任務を遂行する、唯一無二の指揮官……」

 

 半ば放心したまま、ハイネは思わず呟く。

 実際の顔も見ないまま、その名が知れ渡る空中庭園の最大戦力、その人物の名を。

 

ハイネ

「空中庭園最強の女……エッカ・ウキヨ」

 

エッカ

「ん〜……その呼び名嫌いなのよねぇ。最強の女……ってなんか厳つい豪傑みたいなイメージしちゃうじゃない?」

 

 ハイネの声が聞こえたのか、白狐の戦士──エッカがぽりぽりと頬をかく。

 少しの間、エッカは考え込む。やがて、パチンと指を鳴らすと、どこか得意げな表情を浮かべて振り向いた。

 

エッカ

「……そうねぇ、どうせ呼ぶなら、昔レオニーちゃんが教えてくれた名前がいいわ。あれ、好きなのよ」

 

 戸惑いの視線を向けるハイネたちに、エッカは告げる。

 

 慈愛に満ちた眼差しで、歌うように、語り聞かせるように。

 夜闇への不安で眠れない自らの子供たちに聞かせる寝物語(ベッドサイドストーリー)のように、たおやかに。

 

エッカ

「黄金時代の子供たちが愛した、正義の味方……仮面で顔を隠し、バイクで地を駆り悪を討つ無敵のヒーロー」

 

 

 

 

 

仮面ライダー、ギーツ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

P:GRルール

 

ドライバーとIDコアを手にしたら

それは命を賭す戦士(仮面ライダー)への片道切符。

 

もう 後戻りはできない。

 

 

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