これからは早めの投稿を心掛けたいです。
「ただいま〜〜〜」
「只今戻りました」
「「「お邪魔しま〜す」」」
ヒビキとユウマ、次いで穂乃果達がでたちばなの入り口をくぐる。
するとそこにはトドロキが団子を大量に頬張っていた。
「トドロキさん!」
「ん゙!? ほっほはっへ」
「ちょっと待って」と言ったらしくお茶を一杯飲み口の中を胃に流し込む。
「ん! お久しぶり。ユウマ君、ヒビキさん」
「トドロキさん、さん付けはよしてくださいよ。俺の方が年齢も熟度も低いんですから」
「あ、そうか。でも長い間前のヒビキさんをこう読んでたからつい」
「まぁ構わないですけどトドロキさんはバケガ「ゆっくりしてってくださいねトドロキさん! ヒビキ、ちょっと」
「「「?」」」
ヒビキの口を素早く塞ぎ物陰に連れてったユウマを不思議がる穂乃果達。
「なんだよ」
「ヒビキ、穂乃果ちゃん達の前で僕達の仕事について話すのはまずいよ」
「あっ。悪い」
「以降は気を付けてね」
「ああ」
「どうかしたのヒー君」
「あああ。なんでもないよ? なんでもな〜〜〜い♪ なぁユウマ?」
「うんうん」
顔を覗かせる穂乃果をごまかす二人。
すると奥から勢次郎が顔を出す。
「お〜お〜、いらっしゃ〜〜〜い」
「ご無沙汰です支部長」
「「「支部長?」」」
「わ〜〜わ〜〜。なんでもな〜〜〜い!」
「ほらトドロキさん。奥に奥に! 積もる話も有りますし。ねっ! ねっ!」
「あっ、ちょっとまた団子が〜〜〜〜」
絶妙なコンビネーションを見せつつトドロキを奥へ連れ込むユウマ。
静かになる空間では頭を傾げる穂乃果達。
「ま、まぁゆっくりしてってね。おやっさん注文」
ヒビキもその場をまかせ奥へ。
「あ、ああ。そうだね。ご注文は?」
「えっと・・・・、じゃあきび団子を3つお願いしま〜す」
「はい。ちょっと待っててね」
勢次郎は注文を聞くとまずはお茶をくみに奥へ入っていった。
そしてこのドタバタ、ちゃんと閉めていなかったのもあり、ある一ヶ所が「開いていた」ことにまだこの時は誰も知らない。
───────────
たちばな地下
「済まなかったッス!」
頭をテーブルに当てる勢いで謝るトドロキ。
「いいですよトドロキさん。気にしなくて」
「そうそう。ヒビキ君もそう言ってますしトドロキ君もわざとじゃないんですから」
ヒビキと日菜佳のフォローを受けようやくトドロキは頭をあげる。
「ヒビキ君が助けた女の子達が彼女らだと思ったもんで」
「いや、あの子達は別です。俺が子供のころ溺れかけたところを助けた穂乃果っていう子とその友達です」
「へぇ〜〜〜」
「そうだったんですかぁ。確か穂乃果ちゃんは高坂さんの所の娘さんでしたよね。いや〜〜〜。凄い偶然ですね〜〜〜」
「はい。まさかまた会えるなんて思いもよらなかったです」
「お正月のおみくじが当たったってことですね」
「そういえばいい縁が来るって書いてあったような・・・。ああ! 懐かしい友達と会えるってことだったんですかねぇ」
「果たしてあっちはただの友達と思ってるでしょうか?」
「へっ? どういうことですかそれ?」
「さぁ?」
わかったように笑う日菜佳にヒビキはやや不満げに首をかしげた。
「ところでトドロキ君、今度のお出かけなんですが・・・」
「ん! ほれは(それは)・・・」
「あ、ちょっと! トドロキ君! 逃げるな~~~!」
「あれ? そういえば財介は?」
───────────
GOHANYA内
中では財介がどんぶりの山を築いていた。
「すいません。おかわりお願いしますッス」
「はい。ただいま」
さっきからわずかなたくあんをおかずに白米を胃袋に入れていく財介を昼食に来ていたサラリーマンたちが唖然となって見つめる。
吉野〇のような店内のカウンターに座るそんな財介の目の前では花陽がお椀に山盛りになった白米を前に目を輝かす。
「ああああ~~~。この光る白い新米の輝き。このつや。しあわせぇ~~~♪」
ゆっくりと舌で米を満喫する花陽。
ふと財介と目が合う。
「「・・・・・ど、どうも・・・」」
たまたま目があい気まずそうに互いに目を背け白米に視線を移す。
この二人の行動はその後ほぼ同時に退席するまで続く。
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「・・・・・ヒー君まだかな・・・。ねぇ海未ちゃん・・・。ヒー君まだかな・・・。ねぇ海未ちゃん・・・。ヒー君まだ・・・」
「穂乃果・・・。さっきから何度同じ言葉を繰り返すんですか。耳にタコができるぐらい聞きました。それにまだ数分もたってませんよ」
暖簾の先をそわそわして見つめては海未の肩をゆする、それを繰り返す穂乃果を一括する海未。
「だ、だってぇ」
「仕方ないよ海未ちゃん。ここまで来たのはヒビキさんに会いたくてなんだもん」
「それはそうでうが・・・。でも多分今奥を覗いてもヒビキさんはいないでしょう。何やら関係者のようですし」
「う~~~ん。ヒー君何してるんだろう」
机に頬をつける穂乃果。
すると勢次郎がきび団子をお盆に乗せて戻ってきた。
「はいお待たせしました~~~。うち特製のきび団子で~~~す。何々? ヒビキとお話したくて来てくれたのかな?」
「はい! あっ。そうだ。あの・・・立花さん!」
「別にいいよ。おやっさんで。そうヒビキは言うし」
「はい。えっと・・・おやっさんさん!」
「・・・あは。まぁいいか。で? 私に聞きたいことかな?」
「ヒー君って・・・、つ・・・つ・・・付き合ってるひとっているんですか!?」
「穂乃果ちゃん?」
「何を聞いてるんですか穂乃果」
奇妙な名前で呼ばれ笑う勢次郎はさらに笑う。
「いや~~~。彼はうちに下宿してるけどそういう話は聞かないかなぁ」
「本当ですか!?」
「あれ? なんだか嬉しそうだね」
ほっとしたように肩を撫で下ろす穂乃果。
「もう穂乃果ったら失礼ですよ」
「ごめんごめん。つい気になって。だってヒー君あんなにかっこいいんだよ! 彼女さんができてたって不思議じゃないもん」
「ま、まぁ・・・」
「うん。ヒビキさんはカッコいいもんね」
「さすがはことりちゃんは話がわかる~~~」
「ははは。やっぱり前のヒビキにそっくりだな彼は」
「「「前の?」」」
「あ・・・・・、いや・・・・こっちの話・・・」
思わず口を滑らす勢次郎。
その直後勢次郎のスマフォが鳴り出す。
「ちょっと失礼」
勢次郎は一言謝ると暖簾をくぐってすぐ電話をする。
「もしもし私だけど・・・、・・・・・わかった・・・ヒビキを向かわせるからそっちは”それ”に専念してもらって大丈夫。・・・・うんうん・・・・じゃあ気を付けてね・・・。はいはい・・・」
勢次郎は暖簾をめくり顔を出す。
「ごめんねぇ。ちょっと席を外すけど大丈夫かな?」
「「「はぁ」」」
「ごめんねぇ」
勢次郎が奥に消えていくと穂乃果たちはゆっくりときび団子を食べ始めた。
───────────
「サバキさんがシロアリを見つけた?」
「うんちょうどバケガニ退治にでてるとこの近くに見つけたみたいなんだぁ」
「そうですかぁ」
地下の書庫で地図をにらむヒビキと勢次郎。
「でもこの時期、ここにシロアリですか・・・」
「まぁね・・・。頼めるかいヒビキ。ダンキやカブキ達も出払っててね」
「了解です♪」
ヒビキは敬礼のポーズをすると階段をかけ上りたちばなの客席に出る。
「ヒー君!」
その瞬間、穂乃果が犬のように寄り添ってきた。
「おー、ほのちゃん。うちのきび団子気に入ってくれた?」
「う、うん。ねぇヒー君、この後時間あるかなぁ?」
「ごめん。急な仕事が入っちゃって今から出なきゃいけないんだ」
「え〜〜〜〜」
「悪いね。また今度」
ヒビキは駆け足で階段を登っていってしまった。
「も〜〜〜〜〜。ちょっとお手洗い行ってくるぅ」
しょぼくれながらトイレに行く穂乃果。
「なんか穂乃果ちゃん可哀想・・・」
「せっかく会いに来たんですからわかります・・・。でもヒビキさんも随分と多忙な方・・・、! あれって」
「え?」
「いえ、その壁・・・」
海未が指差す先、ヒビキが登っていった階段の壁には僅かな隙間が開いていた。
「・・・・なんだろう」
ことりと海未は恐る恐る近寄る。
そしておもむろに開いていない側を触ってみる。
その直後壁が回転し脱力したことり、引っ張ろうとして海未までもが反転した壁に吸い込まれた。
「ただいま・・・ってあれ?」
手洗いから帰ってきた穂乃果を待つのは三人分のお茶ときび団子、手荷物のみだった。
「あれ? ことりちゃん? 海未ちゃん?」
見渡す穂乃果。
すると登山着にリュック、バイクのカギを握りしめヒビキが二回から降りてきた。
さらに勢次郎も奥からあらわれる。
「そんじゃ行ってきます」
「うん。気をつけてね」
敬礼するヒビキに勢次郎は笑顔で見送る。
するとヒビキは穂乃果に視線を合わせる。
「ごめんねほのちゃん。なんだか俺に用事があったみたいだったけど?」
「あ・・・、えっとね・・・。前はすぐに別れちゃったからもし空いてれば遊びに行きたいなぁって・・・」
もじもじしながら上目使いで思いの淵を告白する穂乃果に勢次郎が何かを察したように笑う。
「そっかぁ~~~。ごめんね。私がヒビキに急な仕事を頼んだばっかりに。それじゃあ近いうちに土日ヒビキを非番にしとくよ」
「ホントですか?」
喜ぶ穂乃果に対し突然の勢次郎の発言に頭をかしげるヒビキ。
「おやっさん? なんで?」
「ヒビキ・・・・。これ系の話の鈍さはお師匠さんと一緒だねぇ君は」
「はい?」
「自分で考えなさい。でも考えすぎて事故を起こさないようにね。とにかく行ってらっしゃい」
「はぁ・・・。行ってきます」
不満げに頭をかきながらヒビキはたちばなを後にした。
その後海未とことりの所在を探していたことを穂乃果が思い出すのは数分後の話。
───────────
その頃ことりと海未は壁の先にある急な滑り台を滑り落ちていた。
「きゃああああああ!」
「怖いよおおおお!」
ババ抜きの時のような表情の海未と泣き顔のことりだったがようやくゴールについたのか平らな場所にたどり着く。
「ここは一体・・・」
「怖いよぉ海未ちゃん・・・」
「私だって怖いです・・・」
真っ暗な空間で海未に抱きつくことり。海未はとりあえず手探りで壁を触ると開き、その先に足元にあかりがついた道が。
「・・・行ってみましょうことり」
「えええ?」
「このままここにいてもらちが空きません。幸い明かりはありますし足元は問題なさそうです」
「・・・わかったぁ」
恐る恐る道を歩いていく二人。
すると行き止まりにつくがすみ間からは光が差し込む。
恐る恐る壁を押すとその先には明るい部屋が。
「「・・・・」」
しかしその部屋の全貌に二人は言葉を失う。
妙な空間にはあちこちに妙なものが置かれていた。
壁には大量の変わったCDに楽器が並び、大きな鷹のようなオブジェが置かれ、太鼓の模様のような木彫りの壁紙が壁に張り付いている。
「なんなんだろうここ・・・・」
「・・・・これって確かカブキさんが使っていた・・・」
海未はふとカブキが使っていた変わった音叉と腰に下げたディスクを思い出す。
その空間にはよく似たものが置かれていたからだ。
「ん?」
すると気配に気づいたのか隣の部屋からユウマが顔を出した。
「あれ? 確か園田さんに南さん?」
「「ユウマさん!」」
「「「なんでこんなところに?」」」
ユウマも海未たちもこの状況をよく飲み込めずに訪ねる声がシンクロする。
しかし会話のドッジボールと化している現在の状況からすぐに答えが返ってくるわけがなかった。