オルフェノクになったので敵全員●す 作:スターク(元:はぎほぎ)
ちなみに作者、555は幼少期に見たっきりでパラリゲも未履修。舐めてるのかな?
オルフェノク、という種族がある。
死を超えて人が至る進化。頑強な肉体と異能を誇りながら、最期は灰と散って消えゆく儚き怪物。
人類社会にて古来より発生していた彼らは、現代において“スマートブレイン”という依代を以て結託。旧人類を淘汰し、生態系の頂点に立とうと暗躍した。
その果てに───敗れた。
自ら生み出した殺戮兵器。ファイズギアによって、繁栄の要たる“王”を死の淵へ追いやられた事で。
『嘘、ウソよ、うぅうそうそぅそよいやこんなの嫌よダメぇぇぇええええ!!!』
傷を癒す薬液槽の中で、それでもボロボロと崩れてゆく王──アークオルフェノクの身体。それを揺らして、側近たる影山冴子は絶叫した。
まだ何も始まっていないのだ。王が齎す支配と永遠の命、それが与えられたのは彼女のみ。急激な身体変化ゆえに短命を突き付けられたオルフェノクという種には、王の存在が不可欠だというのに。
目の前で夢が朽ちてゆく。冴子の部下が側で力無く首を振り、その動作がオルフェノクの野望が潰えた事を告げていた。
冴子は、認められなかった。
『何か手がある筈よ!!』
このままでは終われない。王を再び立ち上がらせるその日までは。
『お金はいくらでも出すわ!世界最高の名医でもなんでも、有能な人間を
「冴子様、これ以上は手の施しようが……!」
『お黙りなさい!今壊れようとしてるのは私達の
そう言っている間にも壊死は進む。アークオルフェノクの身体は最早腰から下は存在しない。
万事休す。冴子以外の全員が覚悟した、その時の事だった。
「ならばその明日、私から提供して差し上げましょう」
崩壊が止まる。どれだけ手を尽くしても死に行くしか無かった王の身体が、死ぬのをやめる。
その瞬間、まるで時でも止められたかのように。
『……誰?』
不可思議な奇跡の実行者。いち早く存在を感じ取ったのは冴子だった。
誰も闖入する余地の無い完全密室で、彼女の背後に立つ何者か。その隣で、医療チーム従事者が今更気付いて腰を抜かしたほど、彼は気配を全く悟らせなかったのだ。
「警戒ご無用。私の名は“ハイド”、世界を渡る斡旋業者といったところでしょうか。適材適所、私の好きな言葉です」
『貴方が信頼に足るかどうかは、私達が決める事よ』
「それは失敬。しかし、貴女方の王の命を救った……それでこの場を収めてはもらえませんか?」
『……そうね。まずは貴方に感謝を、ハイドさん』
「いえいえどうも」
慇懃にそう宣うハイドへ、冴子達は返す言葉を持たない。現に自分達の生命線を繋ぎ止めてもらっている以上は。
双方、礼を経て再び向かい合う。冴子はハイドの真意を探るべく、そしてハイドは自らの意向に冴子達を
「改めて、王の容態についてですが……今はまだ病の進行を止めただけで、助かった訳ではありません。とはいえライダー共によって表の世界を見張られていては大っぴらに治療する事も叶わず、解決の見通しは立たないまま時間だけが過ぎ去ってしまいます」
『なんとか出来るとでも言いたげですね』
「ええ」
二つ返事の肯定。ハイドは笑みを深めて、告げた。
「王の本領は捕食、現状は致命的に栄養が足りていない──ならば移ってしまえばいいのです、
『そんな都合のいい場所が、どこにあると?』
「ここにはありません。言ったでしょう、“世界”と!!」
次の瞬間、冴子は思わず目を見開く。ハイドの背後に突如開いた光の
穴は渦巻き、最奥へと彼女達を呼ぶ。その先には、
影山冴子は、決断した。
『──乗せられましょう。足元を見られるだなんて屈辱だけれど、他に方法も無いしね』
「冴子様、それでは!」
『現スマートブレイン所属における中級以上の全オルフェノクへ通達しなさい。ハイドさん、その穴はいつまで開いていられるのかしら?』
「その気になれば一日、閉じても何度でも開き直せますよ。お仲間を置いていく心配はございません」
『羽振りが良いわね……まず私達と王で行かせてもらうわよ』
「是非どうぞ!」
水槽とその中に眠る王を押して、冴子の姿が光の中に消える。続いて医療班の面々が、ハイドへ訝しげな視線を向けながら。
先遣チームがゲートの向こうへ去り、伝令も部屋の外へと出ていって──ハイドは1人、ほくそ笑んだ。
「せいぜい踊ってもらいましょう。貴女方の王が、我らが星狩りの“贄”となるその日までね……」
2004年1月18日。その日、大企業スマートブレインを牛耳っていたオルフェノク達の大半がこの世界から消えた。
夢見心地に在った“仮面ライダーファイズ”こと乾巧が、その事を知る事は終ぞ無く。
2024年3月某日、その日曜日は少し遠出して遊んでいた。
「あー、美味しかった」
「美味かったもんなぁ」
「でもそれよりシンエンペラーですよ、弥生賞ですよ!良い末脚でしたね」
「コスモキュランダの早仕掛けが功を奏したなぁ」
連れは異性。しかし話す事が競馬と如何なものか、と世間一般には思われそうなモンだ。
でも俺とコイツが話す事としちゃ、これ以上似つかわしい話題も無い。とはいえ時間が時間。
「じゃ、今日はここまでという事で」
「……あの、家までもう少し歩きません?私夜道怖くって」
「ここまで来れば大丈夫だろ。というかこれ以上っつったらホントに門の前まで行くしか無くなるぞ、俺はお前の親を勘違いさせる趣味は無ぇ」
……という俺の意向が心底気に食わないようで。
「……勘違いさせたいんですけど。ホラ私、そろそろ婚期ですし?」
「その日暮らし野郎に夢見てる暇があったらもっと良い相手探せな?」
「いくじなしー!」
背を押せば、返されるのは舌を出しての遺憾の意。臆す事無く押し続け、彼女を観念させたのは1分を費やしてやっとの事だった。
「はぁ……帰ったら電話ください」
「はいはい」
「10分以上、私に今日のデートの感想を教えてください」
「オーケー」
「朝にもおはようのLINEを」
「はいはいオーケーオーケー」
「適当に返事してません!?」
「する訳無いだろ、俺のお姫様」
そう告げるとニッコリ、満面の笑み。グラリと信念が揺れる音がして、かろうじて持ち直してから俺も笑った。
「ではおやすみなさい、牧路さん!また今度!!」
「ああ……おやすみ、桐雨」
大きく手を振って去っていく背中を見つめ続ける。やがて夜の帷の向こう、目的地だった彼女自身の家に入って行くのを見届けて──爪先を、近くの路地裏へ向けた。
奥は奥へと突き進めば、漂ってくるアスベストの香りと腐敗臭。アイツの居るべき日の当たる世界とは真逆。
ゴミは散らばり埃が吹き溜まり、浮浪者が居眠りこいてチンピラが彷徨う、そんな屑な場所で───血の臭いがした。
次いで、一つ吹いた風に乗ってくる、
「………よう」
『っ!?誰だ!!』
少し歩けばすぐに見つかった。大理石の彫刻みたいな、真っ白な化け物がそこにいた。
身長2m強。編み込みみたいな意匠が施されたこれは……兎か?となると、強みは脚と聴覚かなぁ。
「そうカッカすんなって。
『……んだよ、ビックリさせんな』
ちょっと表情筋を力ませれば、相手は警戒を解いて脱力。兎にあるまじきチョロさに笑いそうになって、だがブラフの可能性も踏まえて気を引き締めた。
奴の足元には夥しい量の灰がある。遺灰。目算3人分ってところ。
「これまた随分と欲張ったな」
『気の良い奴らだったからよ、プッスリやって
さっきまで気の良い奴らだった物を踏み締めて、ソイツは宣う。俺はと言えば、そんな物言いに対して義憤に駆られ──るなんて事は無い。見知らぬ阿呆が信じちゃいけない奴を信じて死んだ、そんな当然の帰結に何を思えと?
「勿体無ぇなぁ。知らねぇのか、刺し方にもコツがあるんだぜ」
『マジか?知らないぞそんなの』
「まぁ見てろって。ほら、この場に大の字に人間が寝転んでるとするだろ?」
左隣に歩み寄り、地面を指差せばそこを見つめてしゃがみ込む兎。俺は左手で指差したまま口を動かし続けた。
「ここが頭、ここが首として、じゃあ胸はここだ」
『心臓を刺すんだろ。それぐらいは知ってるって』
「分かんねぇ奴だな、だから刺す場所じゃなくて刺し方だってば。胸骨をブチ抜くんじゃなくて、鳩尾から骨の隙間を縫うように」
『ほうほう』
そうだ。何事も障害物を避けてスムーズに、強引な突破は禍根を遺す。経路を見極め計画立てて、組み上げた手順を踏む事で予兆を刻むな。相手に悟らせるな。
あぁそうだ、まさに。
「こんな風になァッ!!!』
『ギャッ──!?!』
右手から
激痛に飛び退こうとして、だが力が入らずつんのめる兎。その首を掴み、喉仏の隣へ親指を強く押し込んでやる。
するとどうだ。悲鳴すら上げられず、兎はその場でジタバタ足掻く他無くなった。
『──!?』
「気道を塞いだ。化け物になってんだ、意識は暫くもつだろうが……助けは呼ばせない」
『っ、〜!〜〜〜──っ!!』
突然の裏切りに遭い、パニック状態で声無き悲鳴を上げる。それに構わず、俺の右手は仕事をし続ける。
馬乗り状態でまずは右肩。切先を突き立て、捻り、関節を外す。ボキンという手応え、成功。左肩も同様に。続いて両肺を刺して呼吸を阻害、これで指を離しても満足には叫べない。
「俺はさぁ。お前が何してようと、実は構わないんだ」
『?!』
「けどさ。
俺は屑だ。この路地裏で腐り死ぬのがお似合いな人間のゴミだ。人を愛するより、人を殴ってる時の方が安心出来る悪性の塊だ。
そんな俺と、約束してくれた奴がいるんだ。
「せめて、手の届く範囲ぐらいはさ。社会秩序に貢献してやらないとって思ってさ」
『〜ッ〜』
「でも俺くらい底辺になると、その手段すら暴力以外考えつかない訳なんだわ」
ここまできても抵抗を試みる兎を黙らせるべく、剣の
快感は無い。安らぎがあった。
安寧を覚える自分に吐き気がして、それでも相手の頭蓋を叩き続けた。
「だから俺は……あぁ、もう聞こえちゃいないか」
『コ……ヒュ……』
気付けば目視可能なレベルで凹み切った頭、それによって兎は微かに痙攣を繰り返す有様になっていた。自分語りにのめり込むモンじゃないなと反省してから、大剣を両手で逆手に持ち上げる。
力みと同時に、肌の下から浮かび上がる凹凸。皮膚に浸透し、硬く、白く、生気を失って。眼下の兎と同じ、彫刻のような肉体へ。
(……俺の場合は“馬”だけど)
酷い冗談だよ。成るにしても他の動物が良かった、がしかし選り好み出来るほど大層な人間じゃない自覚はある。
狙うは心の臓。隙間を縫えばうまく行くなんてハナから出鱈目だ、大剣でそんな事が出来る訳無ぇだろ。
だからせめて──
『まぁアレだ。桐雨の生活圏内にいたお前が悪い』
『タ、シュ』
『死ね』
ドスリ、思い切り打ち込んだ。一息に
兎の四肢かピンと張り詰め、震え、そして力無く落ちた。俺の願いが叶えられた証左だった。
『……安眠出来ちまいそう』
顔を上げると、割れたガラスに自分の姿が映る。兎の死体から灰に湧き上がる青い炎、それに照らされた馬男の顔。野蛮で無慈悲で残酷で、真面目な騎士サマがいたモンだよ。
冷たい蒼炎が燃え尽き、兎もまた灰へと還る。他の犠牲者と見分けがつかなくなったそれを踏み躙って、人としての姿になった俺は帰路を急いだ。
……こんな化け物になって1ヶ月。今も昔も、俺に出来る事なんて変わらない。
変われない。
色々と喪う前のオルフェノ君でした
これから作者の趣味とか全開になるので、多分読者の方々はついてこれません(予防線)