ポケットモンスター剣盾二次創作シリーズ   作:dwwyakata@2024

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4、次の日のために

マスタード師匠のヨロイ島を離れて半年。

 

懸念していたエースバーンのキョダイマックス化もそのとき実施できて、後顧の憂いもなくなった。今は、万全とまで行かなくとも。相応に余裕がある。

 

また、余所の地方を回って戻って来たユウリが、ガラルに向かう飛行機に揺られながらニュースを見る。ジムの人員変遷についてである。

 

マイナーリーグのジムリーダーが変わった。

 

メジャーリーグのジムが、マイナー落ちする事はここしばらく滅多に無い。そもそもメジャーリーグマイナーリーグの区別を無くして、総力で色々なポケモンとトレーナーが戦えるようにしたいとダンデさんが提唱している事。更には、今まで以上に各ジムでの公式試合が多く組まれている事もあって。メジャーリーグは今レベルがどんどん上がって、脱落の恐れは無い。

 

一方マイナーリーグも、メジャーほど人気は無いにしても、相当な試合数が組まれている。

 

マイナーリーグ全体のレベルも上がっているはずだが。何があったのだろう。

 

新聞の内容を確認して、ああと頷いていた。

 

そういえば丁度半年だった。

 

マイナーリーグ所属のジム、毒タイプジム。そのリーダーが、十五年ぶりに変わったというのである。

 

新ジムリーダーはクララさん。

 

前と同じく、ど派手に化粧して、ど派手に蝶の髪飾りをつけて。そして、以前とは違って、影が薄れた笑みである。まだちょっと影があるようだけれども、こればかりは仕方が無いだろう。

 

近々、マイナーリーグや、野良のトレーナーも参戦可能な、大規模トーナメントリーグを開催するとダンデさんから連絡が来ている。

 

チャンプにも初回は必ず出てほしいとも。

 

今回はその打ち合わせのために戻って来たのだが。

 

どうやら、クララさんとは。ヨロイ島では無く、新大規模リーグで顔を合わせることになりそうだった。

 

ダンデさんからメールが来る。

 

今度の大規模リーグは、人材発掘を目的としている。

 

このため、もう引退した元チャンプや、元ジムリーダーにも声を掛けているという。

 

野良にいる有力なトレーナーにもだ。

 

それは凄いとも思うけれど。

 

さて、どれだけ参加できるか。

 

狂拳とまで言われたユウリだけれども。あれから半年で、変われただろうか。

 

相変わらず他地方では、容赦ないと怖れられている。

 

潰した悪の組織は三十を既に超えた。

 

直接自分の手で刑務所に放り込んだ人数も二千人を超えた。

 

ガラルの魔女だとかガラルの殺戮自転車なんて呼び方が悪の組織の間では定着しているらしく。

 

地元を掌握し、国際警察を舐めきっていたような組織が。

 

ユウリが来たというだけで、逃げ出すという事態が実際に起きるようになっている。

 

一方で、殺し屋に狙われることも増えてきたけれども。

 

その悉くを返り討ちにしている。

 

結局、血を浴びる生活は変わっていない。

 

既に大人として扱われ。

 

最大戦力として期待されているのだから当然だ。

 

地方によっては、ポケモンリーグチャンピオンが頼りない場合もある。最悪の場合、悪の組織と癒着している場合すらある。

 

この世界は綺麗なものだけではない。

 

当面、ユウリは拳によって、暴と悪を叩き続けなければならないだろう。

 

飛行機を降りて、まっすぐガラルのスタジアムに向かう。

 

一緒に連れているのは、既にすっかり育った元ダクマ。今はウーラオスというポケモンである。

 

ウーラオスは直立した熊のような姿をしたポケモンで、兎に角格闘技に長けている。人間の格闘技を覚える事が得意で、マスタード師匠の教え込んだ格闘技を自在に使いこなす文字通りの達人。背はあのキテルグマを超え、ユウリより頭二つくらい大きい。

 

ユウリにとって四体目の伝説級の手持ちだ。

 

だが、極限まで鍛え上げたわけでは無い。

 

まだ伸びしろがある。

 

だからこそ。

 

ダンデさんが提唱する試合には、参加させてやりたかった。

 

打ち合わせ場所である、マクロコスモスの本社に出向く。

 

会議室に行くと、懐かしい顔ぶれが揃っていた。

 

最上座についたダンデさんが、隣にユウリを迎える。

 

それに反対する者はいなかった。

 

「それでは、今後開始する予定の、大規模トーナメントについての打ち合わせを始めようと思います」

 

ダンデさんが提唱すると、拍手が起きる。

 

ダンデさんが現役チャンプで圧倒的一強の時代、ガラルのリーグは全くレベルが落ちなかった。誰か絶対的な最強が生じてしまうと、全体のレベルは却って落ちる事が多いのに、である。

 

ダンデさんは、少なくとも。リーグを盛り上げるという才覚に関しては、確実にユウリより上である。

 

「今回のリーグは二ヶ月後の開始を予定していますが、基本的にジムリーダーでなくても参加は可とします。 予選を受けて貰うのは当然として、その予選にはチャンピオンも加わって貰います」

 

「チャンピオンも予選を受けるのかい」

 

「はい。 埋もれている人材の発掘を。 それが目的ですので。 誰にでも平等な試合をというのが大前提です」

 

「私はかまいませんよ」

 

ユウリが笑顔で応えると。

 

流石に場がざわめく。

 

ダンデさんが更に続けた。

 

「前リーグ委員長は、道こそ踏み外しましたが、思想そのものは間違っていなかったと俺は思っています。 千年後の未来を明るくするには、やはり地方を盛り上げていくのが一番でしょう。 そのためには、誰もが戦え、誰もが機会を得られる。 そんな場所を作っていく必要があります」

 

生き生きしているなあ、ダンデさん。

 

そう思いながら、新しい形式のリーグについて聞くユウリ。

 

さて、そんな大会なら出たいけれど。

 

国際警察が頼りない今、出られるかは少し不安だ。

 

ただ、出来るだけ出たいものである。

 

熱弁をたくさん浴びた後、会議室を出る。スマホロトムが鳴った。ガラル警察の署長からである。

 

話によると、ガラル南部。もっともガラルが貧しく人口密度が低い地帯で、何か起きたという。

 

まだ、新しいリーグの開始までには時間がある。

 

詳細は現地で説明したいと言う事なので。すぐに出向くことにする。

 

屋上のヘリポートに出ると、既にアーマーガアのタクシーが来ていた。ダンデさんにスマホロトムでメールを入れると、すぐにタクシーには現地に向かって貰う。

 

今後、狂拳に落ちず。

 

ガラルの光となり続けられるのか。

 

もう少し年を取ったら、ダンデさんのようになれるのか。

 

それらは分からない。

 

だが、一つはっきりしている事は。

 

ユウリにもまだ伸びしろがある事。

 

そしてその伸びしろを、間違えないように気を付け続けなければならない、と言う事だ。

 

タクシーの運転手にサインを求められたので、笑顔で応じる。

 

ユウリの未来は、まだ闇とも、光とも決まっていない。

 

 

 

(終)




ヨロイ島での物語、如何だったでしょうか。
次はポケモン世界での凡人が、泥水を啜って這い上がる話です。

ポケモン世界の主人公トレーナーはいずれ劣らぬ超人揃いですが、誰も彼もがそうとは限りません。

そんな凡人が、どうやって挫折し。どうやって這い上がるのか。そんな話です。

お楽しみに。
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