ポケットモンスター剣盾二次創作シリーズ   作:dwwyakata@2024

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ポケモン剣盾のDLC2、冠の雪原のお話です。
このDLC2、コミカルな展開が多く、某アマゾンの奥地とかで毎回大げさなタイトルとともに何かを探すあの探検隊など年かさのゲーマーにも刺さるネタが目白押しです。
その中でもガラル地方で新たな姿を得た「三鳥」と、ユウリとマリィとの戦いを描いた話になります。
楽しんでいただければ何よりです。


頂点対伝説の三鳥
序、最強の友人


人心経済ともに豊かなガラル地方。ポケットモンスター、略してポケモンと呼ばれる不思議な存在達と共存するこの地方では。1年ちょっと前に大きな事件があった。

 

ガラルの誇り。無敵のチャンプ。

 

他地方のチャンプと比べても見劣りしない最強の中の最強。世界最強のポケモントレーナーの一人。

 

そうとまで呼ばれた男、ダンデが敗北。

 

10歳の新チャンプが登場したのである。

 

チャンプであった間、ずっと公式試合では無敵を誇ったダンデの敗北は地方の内外に大きな衝撃を与えた。

 

ダンデがチャンプになったのも同じく10歳だった時の事。

 

これは、ガラルを問わず。

 

この世界で大人と見なされる年。

 

大人になって、すぐにチャンプになった天才が。同じく、大人になって、即座に上り詰めてきた天才に敗れる。

 

こんなドラマチックな事件はそうそう無い。

 

更には、他の地方では政情不安や社会不安で暴れる連中がどうしてもいるのだが。

 

ガラルは、ダンデがそれらの全てを昔に片付けてしまったという噂があり。

 

今ではあらゆる意味で穏やかで安定した地方になっている。

 

ただ、それでも。

 

どうしても、何か問題が起きるときは起きるのだ。

 

ポケモンジムという施設がある。地方の各地に存在し。18の「タイプ」に分けられる様々なポケモンを扱うエキスパートが構えるものである。

 

その施設の長をジムリーダーという。

 

スパイクタウンには「悪」タイプのジムが存在しており。

 

マリィは11にしてそのジムのリーダーを務めている俊英である。

 

あのダンデを倒した新チャンプユウリとは同い年で何度か対戦した仲であり。他に数人いる同年代のトレーナー共々、「新しい時代の星」と呼ばれているマリィは。

 

そり込みの入った黒髪をツインテールにしているという攻めに攻めた髪型で、しかもレザー系のトゲトゲした服装を普段は好んで着ている。その上表情筋が死んでいるとさえ言われる無表情のため、周囲から誤解され易いが。至って良識的である。

 

そんなマリィがくしゃみをする。普段と違って厚着であるのに。

 

今立っているのは、ガラル南部の高山地方。その駅の前。

 

天候が無茶苦茶で。

 

強力なポケモンが多数存在する事で有名な地方だ。

 

ガラルは中央部にワイルドエリアという、強力なポケモンが多数棲息する地域が存在するのだが。

 

其所以上の魔境とさえ言われていて。

 

現在でも人口は極端に少ない。

 

ただし人口が少ない分獰猛なポケモンによる被害もあまりないため。

 

基本的にレンジャーはあまり多く無く。

 

またその代わりにインフラも貧弱で、此処に通じている駅は一つしか無いのだった。

 

駅でしばらく待っていると。

 

来る。

 

同年代の珍しい友人。

 

現チャンプユウリが。

 

プラチナブロンドの一目で育ちが良いと分かる女の子で。なんとダンデの隣の家の娘さんだという。ダンデから推薦状を貰ってガラルのチャンピオンリーグに挑戦し。そしてそのままダンデを倒して新チャンプに就任した生きた伝説。

 

海外に遠征することも多く、各地で悪の組織をしばき倒しているらしく、時々マリィもぞっとするような表情を浮かべることもある。修羅の人生を送っている11歳である。マリィと同じ年で。同じポケモントレーナーなのに。立っている位置が違いすぎる。

 

人殺しを当たり前のようにする組織とやりあい。

 

その全てを叩き潰し。

 

各地のチャンプとの親善試合でも負け知らず。

 

そして帰ってくる度にワイルドになり、生傷が増えている。

 

そんな実際の所はあまり気が強くないマリィとは中身が正反対のワイルドガールが、現チャンプユウリだ。

 

もう10歳を過ぎているから成人扱いではあるのだが。

 

実質上、ガラルの最大戦力であり。

 

様々な事件でも、頼りにされていると聞いている。

 

今回マリィが来たのは、そんなユウリがひょっとしたら困るかも知れないと言う事件。

 

つまり伝説級のポケモンが出たらしい、という話があったからである。

 

本当はダンデや他のベテランが来れば良かったのだが。皆忙しい。

 

其所で、たまたま余裕があったマリィに白羽の矢が立ったというわけだ。

 

満面の笑顔で可愛く手を振って来るユウリ。だが、顔にはまだ十字傷が消えずに残っている。

 

この間海外の大きな悪の組織をぶっ潰したとき、二百を超えるポケモンに飽和攻撃を食らったらしく、それで受けた傷らしい。消えつつあるにはあるが。育ちの良さと共存する圧倒的な「暴」を見ると。この子が無敵の現チャンプであり。そして戦鬼であると思い知らされるのだった。

 

「マリィ、おはよー!」

 

「おはよう。 寒くない?」

 

「このくらい平気平気」

 

長袖半ズボンのユウリは、コートを肩に掛けていたが。なんとマリィに譲ってくれる。

 

周囲は雪が降っている。

 

流石に足下だけは結構大きめの靴で固め。手はグローブをしていたが。これは体の末端は凍傷になりやすいから、らしい。以前寒い所で、足も腕も露出した状態でけろっとしているのを見て度肝を抜かれ。聞いてみて、そう答えられた。今でも同じである様子だ。今日の上着は気分で長袖だそうである。別に半袖でも平気だとか。

 

マリィはセーターまで着てなお寒いのに、これが鍛え方の差か。

 

時々ワイルドエリアに籠もって修行しているという話だが。

 

その時も、その辺に生えている草とか果物とか平然と口に入れているという。

 

あまり育ちが良いとは言えないマリィでもとても真似が出来ないワイルドさである。

 

勿論それで腹をこわす事も無い。

 

多分ユウリは、文明がなくても生きていけると思う。

 

ポケモントレーナーとしてのマリィから見て、同時代にこの子が出てきてしまったことが、最大の不幸とも言えるが。

 

マリィにとっては数少ない同年代の友達でもあるので。

 

あらゆる意味で、複雑な気持ちを抱く相手だった。

 

ひょいと側に手持ちのポケモンを出すユウリ。滅茶苦茶鍛えられたツンベアーである。これは大型の熊に似たポケモンだが。寒冷地で有名な此奴を出す事で、雑魚ポケモンが無駄に突っかかって来るのを防ぐために出したのだろう。一目で強いと分かる個体だが、多分これでも本命の戦力ではあるまい。

 

だいたい、ユウリの場合。不意を突かれても、だいたいの相手はポケモン含め素手で制圧出来る。人間の場合、相手が銃で武装していようがナイフを持っていようが関係無い。反応速度が違いすぎるのだ。そもそも象を一撃気絶させるポケモンだろうが容易に素手で制圧するユウリだ。素人のナイフなんか意味を成さない。

 

あくまで手間を減らすための行為である。

 

それを知っているマリィは、笑顔を引きつらせるしかなかった。

 

「それで、これからどこにいくんね」

 

「ええとね、この地方の最南端」

 

「雪がすごそう」

 

「それがね、その辺りは暖かいんだよ」

 

そうなのか。

 

マリィもスパイクタウン周辺は土地勘があるが、ガラルの隅々まで知っているわけでは無い。

 

ジムリーダーの仕事は、担当地区の最大戦力として、有事に活動する事でもある。

 

だからマリィも危なめの仕事はした事があるし。

 

戦力が足りない場合は、招集されて戦う事もある。

 

何も華々しくスタジアムで戦うだけがジムリーダーの仕事では無い。

 

チャンピオンに推薦状さえ持てば誰もが挑戦できるチャンピオンリーグの時には、挑戦者の査定でとても忙しくなるし。

 

またプロリーグが開催されるときも試合に出なければならないが。

 

それ以上に、そもそも有事の最大戦力としての仕事が最優先で。

 

そういう場合、試合は当然後回しだ。

 

ガラルは人心経済ともに豊かで。

 

滅多にジムリーダーが必要とされるような、大きな荒事は起きない。

 

他の治安が悪い地方では、ジムリーダーが悪の組織に荷担していたり。ジムリーダー自身が悪の組織の総帥だったりするそうだが。

 

ガラルでは、ダンデがチャンプになった時以降。

 

殆どそういうタチが悪いジムリーダーの話は聞かない。

 

マリィの兄。

 

先代悪タイプジムのリーダーだったネズも、見かけは子供が泣きそうな姿をしているが。

 

実際には穏やかでごく良識的な人物である。

 

悪タイプのジムでさえそれなのだ。ガラルが如何に平和だという話でもある。

 

自転車で行くかと聞かれたので、首を横に振る。マリィも移動手段としては自転車を使う事が多いが。

 

流石にこの豪雪の中を、平然とチャリで飛ばすようなユウリと同じ真似は出来ない。

 

後ろに乗せてあげようかと言われたが。

 

顔が真っ赤になって火が出るかと思った。

 

首をブンブン横に振るマリィを見て。

 

ユウリは何故かにこやかな笑みを浮かべていたが。

 

恥ずかしがるのを見て楽しむのは趣味が悪いと思う。

 

時々ユウリはこういう行動を取るので、色々と一緒にいると心臓に悪かったりするのだが。

 

まあともかくだ。

 

言われた通り、南に行くとする。

 

足首まで雪が積もっているような場所だが。

 

最近この辺りに何度も出かけているユウリの話では、今日は雪が穏やかな方なのだという。

 

というか、少し前に何か事件があったらしく。

 

あからさまに前よりも雪が穏やかになっているそうだ。

 

これでいつもよりマシなのかと閉口するが。

 

特に歩きづらそうにもせず。

 

ユウリはひょいひょい行くので、ついていくのが大変だった。

 

「マリィ、大丈夫? ポケモンに乗る?」

 

「平気」

 

「そう。 でも無理はしないでね」

 

「……そういう気を遣われるとくやしか」

 

マリィの気持ちを察したか。

 

以降は、何もユウリは言わない。

 

このプラチナブロンドのおない年の女の子が。無敵と思えたチャンプダンデを下して。現在では新しい伝説になっている。

 

伝説になって一年経って、挑戦より難しいとさえ言われるチャンプ防衛戦をユウリが圧勝した今も時々信じられないけれど。

 

それでも、こうやって普段から何事にも泰然としている様子を見ると。

 

それもあながち嘘では無いのだと思えてくる。

 

やがて村が見えてきて。ほっとした。

 

「前に来たときは、あの村で色々あったんだよねえ」

 

「色々て?」

 

「ええとね、前に短い間チャンプしていた人、ピオニーさんって知ってる?」

 

「ああ、知ってるけん」

 

それはそうだ。

 

ダンデの前には、長く伝説が不在だった。中には黒い噂が絶えないチャンプも珍しく無かった。

 

ダンデのずっと前に、18年に達する無敗記録を作ったマスタードという凄いチャンプがいたのだけれど。

 

その頃のガラルはまだこんなに豊かでは無く。

 

悪い人もたくさんいたし。

 

他の地方のように、悪の組織も存在していたそうだ。

 

マスタードは何度かある理由で顔を合わせた。

 

その頃の話は聞かなかったし。聞かない方が良いとも思ったので。敢えて聞いてはいないが。

 

噂によると、マスタードは当時のポケモンリーグ委員長に八百長試合を持ちかけられたらしく。

 

それで引退を決意したそうである。

 

以降は長期チャンピオン不在、悪の組織も跋扈するガラル闇の時代が始まったが。

 

その時代でも何もチャンプ全員が臑に傷ある者ではなく。

 

普通にまともなチャンプも何人かはいたらしい。

 

そんな中の一人。

 

はがねタイプポケモンの使い手であるピオニーは、確か一年だか二年だか。短時間だけ、チャンプになった経験を持っている人である。

 

今は引退して隠棲していると聞いているが。

 

マリィも、ユウリと知り合ったチャンピオンリーグに参加する際に、散々過去のチャンプについては調べ、研究した。

 

その時名前は出てきたので覚えている。

 

とにかく粘り強く戦うチャンプで、最後の一体になってから粘り勝ったケースも何度もあるらしく。

 

在位期間は短かったが。

 

それなりに印象に残るチャンプだったそうだ。

 

「そのピオニーさんと短時間、この村である事件を解決していたことがあったんだ」

 

「ダンデさんとじゃなくて、ピオニーさんと?」

 

「元々ピオニーさん、まああんまり口にはしたくないんだけれど。 ちょっとした理由で、ポケモンリーグからは距離を置いていたらしいんだよね」

 

ユウリは口が堅い。

 

口にしたくないと言ったら、多分言う事は無いだろう。

 

マリィが頷くと。

 

その「理由」には触れずに、ユウリは話を続ける。

 

「難しい年頃の娘さんと一緒に三人で民宿借りてね。 うちはお父さんいないから、ちょっと楽しかったかな」

 

「はあ、そんなもんなんね」

 

「うんうん。 まあその事は後にして。 とりあえず一旦村で休憩して、其所からは自転車でいこう。 この辺から雪も薄くなってくるし」

 

そういえば。

 

確かに言われた通り、さっきは足首まで来ていた雪が、もう足跡がちょっと残る程度にまで減っている。

 

気温も露骨に暖かくなってきていた。

 

さっきは喋る度に息が白くて。

 

口元を寒いから覆わなければならない事もあったのだけれども。

 

今はそんな事もない。

 

そしてこんな僻地だ。

 

ユウリがしばらく借りているらしいのだが。

 

その三人で泊まったという民宿は、空いていた。中の事はユウリも知り尽くしているらしく。

 

もう自分の家のように、すらすらと動けている。

 

料理をすると言い出したので、慌ててマリィが自分でやると言った。

 

ユウリは料理下手ではないのだが。

 

具材がワイルドすぎて怖いのだ。

 

その辺で拾った骨とか平気でカレーに入れてくるので、前に具材を知って真っ青になった事がある。

 

おなかは壊さなかったけれど。

 

以降、ユウリが料理をすると言い出したときは、殆ど反射的にマリィが代わるようにしていた。

 

笑みのままこっちを見ているユウリ。

 

マリィも兄に花嫁修業だとか言われて、料理はそれなりに嗜んだ。

 

10歳から大人と見なされる現在の世界では、マリィもその気になれば結婚は出来る。流石に10歳で結婚する人は殆どいないのが現実だが、五年六年と過ぎればそれも話は別になる。

 

ましてやマリィはジムリーダー。

 

結婚相手としてはこれ以上もないほどの優良物件である。

 

格闘ジムのジムリーダーである、何歳か年上のサイトウさんや。水ジムのジムリーダーである現役モデルのルリナさんは。殆ど毎回こういう話題を振られるらしく。

 

面倒なので、サイトウさんに至っては父親に協力して貰い。彼氏がいると装っているらしい。

 

マリィも今はともかく。

 

数年後は、そういう事をしなければならないかも知れない。

 

だとすると面倒だなあと今から思うばかりだ。

 

やがて料理が仕上がった。

 

カレーばかりユウリはいつも食べるので、あり合わせの材料からちゃんとした料理を四品ほど作る。

 

そして良い所の育ちであるにも関わらず。

 

ユウリは何を出されても文句一つ言わずに笑顔で食べる。

 

まあ作る側としては見ていて気持ちが良いのだけれども。

 

それはそれとして、凄い食欲だなと。マリィは自分の倍以上の速度で、四倍は食べているユウリを見るのだった。

 

これで一切合切太るどころか、場合によっては足りないと言い出すのだから。普段からどれだけ動いているのか。

 

年を取ってから太らないか心配である。

 

まあこの子は生涯現役だろうし。

 

太る事は無さそうだけれど。

 

ともかく食事を終えると、一休み。

 

マリィから見たユウリは、何から何まで規格外。あの伝説のチャンプを下した新しい伝説というのも頷ける。

 

身体能力の時点で異次元。

 

相手の何手も先を読みながら、即座に行動を取る行動力も頭脳も。

 

あからさまに殺意のあるポケモン相手にもまるで動じない胆力も。

 

ただそれでも人間だ。限界はある。

 

一眠りするというので、見送る。

 

奥にはベッドが四つ。

 

多分ファミリー向けの民宿なのだろう。

 

数としては妥当だなと、マリィは思った。

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