ポケットモンスター剣盾二次創作シリーズ   作:dwwyakata@2024

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元々強かったユウリですが、完全にスランプを乗り切ってからは、各地で不甲斐ない国際警察を支援する意味もあって悪の組織と戦うようになり。その過程で無茶苦茶本人が鍛えられています。物理的な意味で。

ただこれでも25年間ピカチュウと一緒に世界を回ったあのカントーの彼にはまだ及ばない程度の実力である、という設定です(笑)

ポケモンのスピンオフタイトルでは更に怪物じみた人も出てくるのです。

まあこれくらいは、ありということで。


1、遭遇!ガラル三鳥!

一休みしてから、そのまま村を出る。ユウリが言う通り、本当に雪がなくなり。下草が生えている比較的豊かな土壌の土地に出た。

 

ただポケモンが非常に多い。

 

ワイルドエリアで普通に見かけるようなものから。

 

図鑑でしか見た事がないような奴まで、本当に色々だ。

 

あまり広い土地ではないはずだが、この数。

 

ひょっとするとだが。

 

或いは何かしら理由があるのかも知れない。

 

自転車で行くとユウリは言ったのだが。マリィは流石にこのポケモンだらけの中、上手に避けながら自転車で行く自信は無いと答え。それならばとユウリも歩くことにしてくれた。

 

ユウリはこの辺り、相手にあわせてくれるので優しい。

 

マリィもモルペコを出す。

 

ずっと昔からの相棒。

 

このモルペコと一緒に、チャンピオンリーグまで勝ち上がった。

 

チャンピオンリーグでユウリとぶつかり、手も足も出なかったけれども。それはそれだ。

 

今は悪タイプのジムリーダーとして、相棒のモルペコと一緒にジムを守っている。

 

幼い頃からの相棒であるモルペコは、直立した鼠のような姿をしたポケモンだが。感情によって大きく姿を変える事で知られており。

 

その特性を利用して、トリッキーな戦い方を得意としている。

 

マリィのモルペコはこの特性に加えて、色々な戦い方を叩き込んでいるため、可変性が非常に高い。

 

近距離での密着戦から、高機動を生かしての遠距離戦まで何でも出来る。

 

ジムリーダーが鍛えたポケモンだ。

 

いわゆる廃人がやるような、同条件を無理に整えての試合なら中途半端になってしまうだろうが。

 

実戦だったら生半可な相手には遅れを取らない仕上がりである。

 

側にモルペコがいてくれれば、これだけの数のポケモン。それも見るからに強いのが多い中でも。

 

マリィは平然としている風を装える。

 

ユウリはというと、ずかずか歩いていて、怖れるどころか何一つ普段と変わらない。

 

まあユウリの場合は、ワイルドエリアでもこんな感じだ。

 

そのうち拳で地割れくらい作りそうだと思うし。

 

この間は、アームレスリングの賭け試合に飛び入り参加して、筋肉ムキムキの大男をあっさりねじ伏せまくるのを見てしまった。勿論優勝である。みていないフリをしたが。その後、悪夢にうなされたのは秘密である。

 

「それで、南って」

 

「この辺からならそろそろ見えるかなー」

 

「?」

 

「地形が複雑だから気を付けてね。 私も最初来たとき、ここ結構迷ったんだ」

 

開けたのっぱらなのに。

 

そう思ったマリィだが、すぐにその考えが間違っている事に気付く。

 

複雑な起伏。

 

入り組んだ道。

 

畑だったらしい場所や、昔は人が住んでいたらしい石壁の後。碑文のようなものもある。学者にとっては垂涎ではなかろうか。ただここに来るには、今まで来た状況から考えて、ジムリーダークラスの護衛がいるけれど。

 

学者の中にも、そんな護衛をほいほい雇える者はそう多くは無いだろう。

 

というか、此処を自転車で行くつもりだったのか。

 

人外じみた身体能力の持ち主だと言うことは分かっていたし。ユウリの自転車がその身体能力に合わせて、スポンサーが作った事も知っている。

 

ガラルのチャンプにはスポンサーがつく。

 

ダンデがいつも羽織っていたマントに、スポンサーのロゴがゴテゴテついていたのは有名だが。

 

ユウリは持ち物で、スポンサーアピールをしているようだ。

 

自転車の他には靴や手袋なんかが、どれだけ使っても壊れないアピールで有名らしいのだが。

 

ユウリが実際にあり得ない所を自転車で走り回っていたりするのは、マスコミが時々特集していたりするので。

 

まあ宣伝にはなっているのだろう。

 

ともかく、坂だったりいきなり沼があったりの複雑な地形を、ユウリを見失わないように必死に行く。

 

時々ユウリは左右を見回しながら呟く。

 

「やっぱり暖かくなってるなー。 王様頑張ってるんだなー」

 

「王様?」

 

「ああ、何でも無いよ。 守秘義務」

 

「……」

 

そっか。

 

まあ此処にユウリがしばらく派遣されていたというのは聞いている。何か大きな事があったのだろう。

 

守秘義務なら仕方が無い。

 

まあ話してくれれば嬉しいけれども。

 

マリィもジムリーダーとして、今は大人と同じで。大人同様の仕事もしている。

 

守秘義務の重要性は理解しているつもりだし。

 

追求するつもりはなかった。

 

「この辺り」とユウリが言った範囲はかなり広くて。

 

結構へとへとになりながら、グダグダの平野地帯を抜けると。やがて、ユウリがあれあれと指を指す。

 

其所には、巨大な木が鎮座していた。

 

凄まじい木だ。

 

あんな大きな木、見た事がない。

 

ガラルで言うと大都市には大きな建物が幾つもある。とても大きなビルもある。

 

だがあの木は、小さなビルなんかよりもずっと大きい。

 

流石に大規模ビルに比べると見劣りするけれども、それでも吃驚するほど大きい木だった。

 

はあと、思わず溜息が漏れてしまう。

 

桜色に染まった葉と。此処からも見える大きな実。

 

そして、何だろう。

 

木の周囲は、丸い。

 

不自然なほど丸い、湖に囲まれているのだった。木の辺りだけが、盛り上がっているような感触である。

 

「凄い木……」

 

「あの木の辺りで、ちょっと変なのが目撃されていてね」

 

「変なの?」

 

「この辺りは、変なポケモンの宝庫なんだよ。 中には余所の地方では、幻とか伝説とか呼ばれる品種もいるの。 で、あの木には三鳥が来てるらしいんだよ」

 

絶句するマリィ。

 

三鳥。ポケモンに関わって、その名を知らない者はいない。

 

炎、氷、雷をそれぞれ極めているという三体の鳥ポケモン。いずれもその力はポケモンの中でも上位に食い込むもので、生半可なトレーナーが御せる相手では無いという。

 

炎を扱うファイヤー。氷を扱うフリーザー。雷を扱うサンダー。

 

あまりにもそのままの名前だが。それはそれぞれを極めているからこそ、つけられている名前である。

 

そんな大物が出るのか、あの木は。

 

「それと、あの湖ねー。 ちょっと不思議だと思わない?」

 

「い、いや、不思議というか、頭がこんがらがって大変やし」

 

「深呼吸」

 

いや、そんな事を言われても。

 

むっと口をつぐんだ後。何度か深呼吸して、そして何とか頭を整理する。

 

ユウリは確か何体か手持ちに伝説と伝説に近い実力のポケモンを持っている筈だが。それでも、あまりにも平然と出てくる言葉に、驚きを禁じ得ない。

 

「むかーしガラルに星が落ちたって話、聞いた事がない?」

 

「ええと、神話だっけ」

 

「アレって本当の事だと思うんだよね」

 

まさかとは言えない。

 

マリィも色々とチャンピオンシップの前後に色々ごたごたがあり。凄まじい巨大なポケモンの目撃報告や。ユウリが何かを倒して鎮めたらしいと言う話は聞いている。更にユウリの手元にいる二体の伝説ポケモン。

 

それらを考えると。

 

ユウリが嘘を言うとも思えない。

 

そもそもユウリが嘘をつくのを、マリィはあまり見た事がない。

 

「星ってさ、落ちるとああいう丸いくぼんだ地形を作るんだって。 更に言うと、真ん中は衝撃の反動で反り返って、あんな風に膨らむらしいんだよね」

 

「……でも、あの湖、相当大きいよ。 どんな星が落ちてきたの?」

 

「んー、多分だけれど。 ああ、これも守秘義務か。 でも、あの碑文の内容とか、伝説とか照らし合わせると、色々分かるんだよね。 それと……多分三鳥が彼処に来る理由もだけれど」

 

促されたので。

 

一緒に、崖のような坂を下る。

 

自転車ではとても無理だが。

 

このくらいの坂なら、まあ何とか自力でいける。

 

走って降りる。

 

湖はかなり大きくて、上から見るより間近で見た方が迫力は凄かった。そして、木の大きさもである。

 

橋が架かっている。

 

朽ちかけているが、石造りの橋だ。この辺り、昔人は住んでいたのだろうし。きっとそういう人が掛けたのだろう。

 

ユウリが大丈夫と言って、ずんずん橋を進んでいくので。マリィは息が止まりそうになったが。

 

こんな所に置いていかれるのも更にイヤなので、慌てて後を追う。

 

何しろ周囲には肉食恐竜を思わせるガチゴラスをはじめとした巨大で凶暴なポケモンがウヨウヨいるのだ。

 

ユウリからは離れたくない。

 

橋を渡っているとき、これが崩れたらと思ったけれど。

 

流石にそれはなかった。

 

幸いにも、と言うべきか。

 

橋を渡り終えているユウリが、手を振って急ぐように促してくる。冗談じゃあない。マリィはこれでもある程度は普通なのだから、手心がほしい。

 

怖いのを我慢して何とか橋を渡り終え。

 

そして、其所で完全にフリーズした。

 

ユウリの方が先に気付いていて、見上げている。

 

その先には。

 

三つの影があった。

 

一つは青紫をした鳥。優雅に、翼さえ動かさず、空を舞っている。

 

一つは、赤黒く燃える一目で獰猛だと分かる巨大な猛禽。荒々しく空を舞っている。

 

そしてもう一つは、とげとげしい黄色の鳥。飛ぶ事も出来そうだが、それより発達した足が走る事を得意とする鳥だと告げている。

 

あれは。

 

図鑑のとは違う。だがポケモンは、地方によって姿を変える事が多いと聞いている。と言う事は、アレがガラルの三鳥か。

 

三鳥は、即座に争い始める。

 

青紫の鳥、恐らくフリーザーが目から光線を放つと。それを回避したファイヤーが、赤黒い炎を吐き出す。なんというまがまがしさか。

 

更に、空中に躍り上がったサンダーが、ファイヤーに後ろから躍りかかるが。それを獰猛に避けるファイヤー。

 

地面に着地したサンダーを、フリーザーの光線が襲うが。残像を作りステップしてかわして見せる。そして、突貫したファイヤーを、なんと三分身したフリーザーが、優雅にあしらって見せた。

 

激烈な死闘は。

 

それぞれ、この木を巡って争っていることは、即座に分かった。

 

だが、その死闘は唐突に終わる。

 

ユウリが、咳払いをしたからである。

 

咳払いの声に、反応する三鳥。

 

そして、ユウリを見ると。

 

一斉に凄まじい声を上げた。

 

少し後ろから見ていたマリィが、思わず耳を塞ぐほどの、凄まじい声だった。怒りと言うよりも、恐怖だと感じたが、それは間違っていなかった。

 

三鳥がそれぞれ、一目散に逃げ出す。

 

ユウリは何も動じることなく。

 

スマホロトムを。ロトムというポケモンを憑依させた通信器具を取りだすと、何処かに連絡し出す。

 

「予想通り現れました。 別方向に逃げ出したので、一匹ずつ捕獲します」

 

通信は短い。

 

そしてユウリは、それぞれの鳥が逃げていく後ろ姿を、カメラで撮るように手で四角をつくって見送るのだった。

 

「フリーザーはガラル南部の山の方、サンダーはこれは本島のワイルドエリアかな。 ファイヤーはヨロイ島か……。 山の方はフリーザーより明らかに強い王様いるし、ヨロイ島はマスタードさんもいるから大丈夫だとして、人と接触する可能性があるサンダーが一番危ないね」

 

「ちょ、ちょっとユウリ?」

 

「マリィ、此処まで連れてきて御免ねえ。 二つほどお願いがあるんだけれど」

 

「な、なんね!?」

 

嫌な予感しかしない。

 

モルペコはさっきからぶるぶる震えてマリィにしがみついたままである。真顔のユウリは、マリィも凍り付きそうな笑顔に切り替えてきた。

 

逃がさないぞ。

 

そういう意思を感じる。

 

「まず最初に、あの三匹しばき倒して捕まえるから、見届け人よろしく。 チャンプになった今でも、伝説級を持ったり捕獲するのって色々手続きが面倒でねー。 ジムリーダークラスのトレーナーの立ち会いがいるんだよ。 だからマリィに来て貰ったの」

 

そういえば。

 

ジムリーダーになった後受けた研修で、そんな話を聞いたことがある。

 

でもそもそも自分には縁がない話だろうと思って、すっかり忘れていた。

 

そうだ、その可能性があったのか。

 

となると、下手をするとだが。人外であるユウリと伝説級の死闘に巻き込まれる可能性があるという事か。

 

何年か前。まだマリィが本当に幼い頃。

 

ガラルの中心都市の一つ、エンジンシティに。ワイルドエリアから千を超えるポケモンが押し寄せ。当時のトレーナー達が総出で追い返したが、多くの死者が出た凄惨な事故があったという。

 

その時チャンプだったダンデは、手持ちを多数失いながら、伝説級に遜色がない実力のポケモンを捕獲したと言うが。

 

世界的に見てもトップクラスのトレーナーであるらしいダンデでさえ、伝説級を相手にすると、そんな損害を覚悟しなければならないという事だ。まあ伝説級と一口に言っても、実力はピンキリだという話もあるのだが。

 

足下から、震えが這い上がってくる。

 

「も、もう一つは……」

 

「あ、ちょっと待っててね」

 

腕まくりをするユウリ。

 

さっきの三鳥の戦いを見て、周囲から逃げ出したポケモン達が。此方をこわごわ伺っていたのが、また逃げ隠れる。

 

腕まくり。

 

そんなのユウリがするの、初めて見た。

 

木のすぐ側に歩み寄るユウリは。

 

何か怪しい動きを始める。

 

サイトウさんがやっているガラル空手の、戦う前にやる奴。「気を練る」だったか。それに似ている気がするが。

 

まあ何だかともかく、ユウリから凄いプレッシャーを感じる。見ているだけで力が抜けそうである。

 

やがてユウリは胸の前でパンと小気味よい音で両手を合わせると。

 

踏み込み、木に両手をついていた。

 

「……はあっ!」

 

その声は、とても同じ年の女の子が出したものとはマリィには思えず、全身がびりびりと震えるようだった。

 

モルペコがもう少し大きかったら、抱き合って震えていたかも知れない。

 

めきめき、ごごごと凄い音がする。

 

な、何が起きているのか。

 

湖が震えている。湖の水が、バシャバシャと跳ねている。

 

地面もだ。まるで怖れるように震えている。

 

地震が起きているのか。

 

そんな筈は。完全にフリーズしたまま、ただ呆然とユウリを見ているしか無いマリィと違って。周囲の野生のポケモン達は、ガチゴラスなどの大物も含めてもう隠れるどころでは無く、一目散に我先により遠くへと逃げ出している。

 

ヤバイ。この場にいると殺される。何かとんでもないのがとんでもないことをしている。

 

野生の勘でそう察知しているのだ。

 

そして、ユウリが気合い一閃。

 

どんと、衝撃波が周囲に迸っていた。大木が、揺れるのが分かった。

 

「せいっ!」

 

同時に、人間ほどもある木の実がマリィの目の前に落ちてくる。どしゃとか凄い音がした。

 

更に、ユウリの上に、通常の十倍くらいあるリスのポケモンヨクバリスが落ちてきたが。即応したユウリが片手を振るうだけで吹っ飛び、湖の向こうまで石切りならぬリス切りしながら飛んで行った。ついでに着弾点で爆発していた。死んでいないといいなとしか思えない。

 

色々起こりすぎてマリィはその場で失神しそうになった。おしっこをちびらなかっただけでも褒めてほしいくらいである。

 

ユウリが笑顔のままこっちに歩いて来ると、背筋が伸びる思いをした。

 

友人であるユウリの。

 

全力の「暴」を、始めて見た気がする。

 

ユウリが人間離れしている事は分かりきっていたが、それでも此処まで凄まじいとは思っていなかった。

 

伝説に残るようなポケモントレーナーは、それぞれ人間離れしたエピソードをたくさん持っているらしいが。

 

此処までとは。

 

多分カントー地方で伝説に残る「彼」とか、今いたらこんな感じなんだろうなとマリィは思い。

 

笑顔のまま間近で止まったユウリに、引きつったぎこちない笑みしか返せなかった。

 

泣きそうである。

 

「ふー、ちょっと汗掻いちゃった。 流石にあの木を動かすと疲れるね」

 

「木……動かした……」

 

「うん。 彼方此方の地方で仕事を受けているうちに気の使い方とか知ってる人に教わってねー。 練り上げた気で筋力を瞬間的に上げたんだよ」

 

「そ、そうなんかー」

 

意味がよく分からないし、何よりも今でもまだ恐怖で震えが止まらない。

 

健康的に輝きそうな汗を、取りだしたタオルで拭うユウリだが。別にそれほど消耗している様子も無い。

 

冗談抜きに、ちょっと運動しただけ、という雰囲気だ。

 

「二つ目のお願いなんだけれど、その木の実、マグノリア博士とソニアさんの所に持っていって、検証して貰ってくれる? その後でワイルドエリアに来てね。 私は先に、ワイルドエリアでサンダーが悪さしないように見張らないといけないから。 後、ヨロイ島とさっきの村にも連絡入れとかないと。 やる事が多くて忙しいや。 今はともかく、昔は小さな村がポケモンに潰される事は時々あったらしいから、気を付けないと」

 

飄々と言うと、ユウリはそのまま何か呼ぶ。

 

やがて来たのはガラル名物の空輸タクシーだ。それもご丁寧に二つ。大きな鳥のポケモンであるアーマーガアが運ぶこのタクシーは、ガラルの名物となっている。

 

その間にマリィは、さっきの木の方をおそるおそる見てみたが。

 

なんと木と地面の間に隙間が出来ていた。

 

もう一度木の大きさを見て。マリィは改めて、友人の恐ろしさを思い知るのだった。

 

このユウリに、チャンピオンリーグに挑戦中、毎回因縁をつけて喧嘩を売っていたらしい現フェアリージムのジムリーダービートは。良く無事だったなと思う。

 

本当に、ガチゴラスを挑発するキャタピーみたいな事をしていたのだろうから。

 

マリィはともかく人形のように歩くと。

 

ユウリが出してきたビニールシートに、何体かのポケモンを出して落ちてきた木の実を包む。

 

先にユウリはワイルドエリアに。

 

まあ、サンダーほどのポケモンが相手となると、ユウリが出ないと駄目か。

 

ガラル地方のサンダーがどれくらい原種と戦闘力が異なるのかは分からないけれども。

 

それでも、あの走り回る様子からして、かなり縄張りを広くとる筈だ。

 

ユウリ曰く人口が少ないこのガラル最南端の、しかも雪山に行ったらしいフリーザーや。あのマスタードがいるヨロイ島に行ったファイヤーはまあ後回しで良いと言う判断も間違っていないと思う。

 

空輸タクシーに、人間以上の重さは確実にある巨大な実を積み込むと、タクシーの運転手は流石に眉をひそめた。

 

「チャンプから特別料金は貰ってるが、何だねこの木の実は。 それとあの木は」

 

「しらんね」

 

「あんた悪タイプのジムリーダーのマリィだろう。 あんたほどの人間でもかね」

 

「……」

 

黙り込んだのを、肯定だと判断したのだろう。

 

これ以上聞くとまずいと判断してくれたのか。タクシーの運転手は、アーマーガアに指示を出して、出発してくれた。

 

実際には、怖くて考えたくも無かったのが事実だし。

 

このおっそろしい木の実をガラルでも有名なマグノリア博士とその助手をしているソニア(ちょっとだけマリィも面識がある)に引き渡して。

 

そうだ。

 

その後は、サンダーとユウリの戦いに立ち会わなければならないのか。下手をすると、ファイヤーやフリーザーとも。

 

失神しそうになるが、我慢する。

 

もうジムリーダーなのだ。

 

ちょっとやそっとの事で恥ずかしがったり怖がったりしていては駄目だ。もう立派な大人として振る舞わなければならないのだ。

 

そう言って、マリィは自分を奮い立たせる。

 

ジムリーダーは、地域最強のポケモントレーナーだ。

 

ポケモンを使って悪さをする人を捕まえることもあるし。

 

人々を襲う凶暴なポケモンと戦う事だってある。

 

相手が伝説級だって同じ事である。

 

場合によっては、マリィが盾になって、人々を逃がさなければならないのだ。その覚悟を忘れてどうする。

 

しかし、さっき怖かったのは事実である。

 

じっと手を見る。

 

マリィが百人いても、あの木を揺らすのは無理だろうと思う。

 

やっぱり体の方ももっと鍛えないと駄目か。

 

トップクラスのポケモントレーナーは、体の方も強い事が多いとも聞く。今度、真剣にサイトウに相談して、ガラル空手について勉強するか。

 

タクシーがやがて山を越え。

 

そして、マグノリア博士の家が見えてきたのは夕方過ぎだった。

 

ヘリポートがあるので、其所に降りる。

 

何しろガラルにおける権威の一人である。

 

家は相応に大きい。

 

人心経済ともに豊かなガラル地方では。研究者に相応のお金が支払われている。マグノリア博士も、研究に相応しい立派な待遇を受けているのだ。

 

マグノリア博士は優しそうな年老いた女性で、いつかこういうお婆さんになりたいものだとマリィも思う。

 

ソニアはまだ若くて色々と頼りないけれど。

 

もう何年かすると、マリィもこのくらいの大人っぽい女性になりたいと思うものだ。

 

ソニアは、ダンデと同期の幼なじみで。ダンデやドラゴンジムの現ジムリーダーであるキバナと一緒に旅をしていたという噂があると言う。

 

昔はポケモントレーナーだったけれど挫折した。

 

それは、何となくだけれども、理由は分かる。それを責める事は出来ない。

 

マリィだって、何度折れそうになったか分からない。

 

ただ、マリィは今後も折れずにいたい。勿論、ソニアを見下すつもりもない。ポケモントレーナーとしてではなく、学術の方に進む立派な道を見つけられた人なのだから。

 

木の実を引き渡すと、もうユウリから連絡は行っていたらしく、マグノリア博士はさっそくポケモンの手を借りて研究室に木の実を運び込んでいく。

 

後は、マリィに出来る事はない。

 

もう遅いので泊まって行きなさいと、ソニアに言われて。

 

首を縦に振ることしか出来なかった。

 

もうユウリはワイルドエリアでサンダーの監視を始めているだろうけれど。

 

人には人の領分があると、マリィは自分を納得させるしかなかった。

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