ポケットモンスター剣盾二次創作シリーズ   作:dwwyakata@2024

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古くはふぶきの性能もあって圧倒的最強だったフリーザー。ガラルの姿では幻惑を得意とする残忍な性格となっています。

ただ、今回は単純に相手が悪かったのです。


4、冷徹!雪を舞う氷の鳥!

民宿に夕方に到着。

 

軽く、ユウリに追加説明を受ける。

 

「このガラル南部は、ある事件のおかげで伝説級が散々集まって来ていてね。 殆どはもう捕まえたんだけれど、今もまだ残ってるのがいるの。 それで時間を掛けてちまちま捕まえてたんだよね」

 

「あの三鳥も?」

 

「あの子らは起きてくるのが遅かったのかな。 いずれにしても捕獲済みの伝説ポケモン達は、今は殆どマグノリア博士の研究所で見てもらってるところ。 それで問題が無いと判断したら、ダンデさんに預かって貰うかな。 三鳥みたいに性格が悪い子はほとんどいなかったから、扱いは難しく無いと思う」

 

ダンデは現在でもポケモントレーナーをしている。チャンプを降りてから、むしろ生き生きとしている程だという声もある。

 

現在は主に後進の育成や、ガラルでの治安維持。ガラルを如何に経済的に盛り上げていくかという事を考えていて。

 

ガラルを此処まで豊かにした立役者、前ポケモンリーグの委員長ローズの代役を完璧に務めている。

 

ローズは何か問題を起こしたらしく、現在は刑務所にいるらしいが。

 

何度かあったことはあるが、悪い印象は一度も受けない人だったし。

 

ダンデがチャンプになり。

 

ローズが委員長になってから、ガラルが劇的に暮らしやすい穏やかで豊かな地方になったのも事実なのだ。

 

何かしてしまったのだとしても。

 

恐らく悪意ではなかったのだろうとマリィは思っている。

 

そしてダンデにしても。

 

その政策を基本的につぐと明言している。

 

そんなダンデである。

 

伝説級のポケモンを多数預かっても、悪いようには使わないはずだ。

 

「明日は朝一番に出るから、早めに休んでおいて」

 

「うん」

 

ユウリはそう言うと、シャワーを浴びに行く。

 

さっきファイヤーを殆ど自力で捕まえたようなものなのに、タフな子である。

 

あれくらいタフでないと、伝説のチャンプを破り。新しい伝説にはなれない、ということなのだろう。

 

それにアレでも一時期スランプになったと聞いている。

 

そうなると、どれだけ強くても、限界があるという事か。

 

だったら、それを突くしか無いのかな。

 

マリィは、あんまり良い子とは言えないことを思った。

 

ユウリは烏の行水で、風呂は結構すぐに出てくる。マリィも民宿のお風呂を長く使う気にはなれなかったし、何よりユウリが料理を始めたら大変なので。すぐに風呂を出て、食事を作り始める。

 

夕食に何品か作るが。

 

聞かされて絶句する。

 

「明日は四時起きね」

 

「四時!?」

 

「うん。 だから早めに」

 

「そんなに早くどうすんね」

 

流石にマリィも四時には起きない。だいたいいつも六時から七時くらいである。

 

四時はいくら何でも厳しいなと思ったが。

 

確かに八時くらいに寝れば、それなりに時間は確保出来るか。

 

夕食をぱっくぱくむっしゃむしゃと食べるユウリ。

 

あれだけ動くんだから、それはたくさん食べるだろう。食べた分全部動いているんだし。

 

マリィは自分の何倍も食べているユウリに、ちょっと不安になって聞く。

 

「四時ってまだお日様も出てないけん。 どうすっか」

 

「フリーザーを一番長く放置していたからね。 出来るだけ捕まえる時間を長く取りたいんだよ」

 

「……」

 

「一番人間に被害が出ない場所に向かったフリーザーだけれど、三鳥の中で一番残忍そうに見えたからね。 ファイヤーは単純に凶暴なだけだったけれど、フリーザーはなんというか、楽しんで殺しそうな雰囲気だった」

 

凶暴か-。

 

その凶暴なのを殆ど実力で制圧していたユウリのことを思うと、マリィは思わず食事の手が止まってしまうのだが。

 

いずれにしても、意図は分かった。

 

寒さ対策はするようにとも言われたので頷く。

 

ユウリはまあ鍛えているから大丈夫なのだろうと考えて、それで納得する。鍛えている。そう、あのファイヤーの精神攻撃を至近距離で二発も貰って平然としていたのだから、まあ大丈夫なんだろう。限界はあるのだとしても。

 

食事の後はすぐに眠る。

 

今日は途中で軽く横になった事もあって、少し眠りづらかったが。

 

意外にお行儀良く隣のベッドですやすや寝ているユウリを見ると。まあマリィもこう言うときだけはユウリも人間ぽいなと思うのだった。

 

「うふふ美味しそうガチゴラス……」

 

ユウリが寝言でとんでも無い事を言うので。

 

一瞬で可愛いところもあるとか考えていたのが消し飛んだが。

 

逆に怖くなって、布団にくるまってさっさと寝る事にする。

 

明日は四時。

 

せめて、ユウリについていかないと。

 

今後、ガラルスターリーグで争うこともあるだろう。

 

ずっと負け続けというのはやっぱり悔しい。

 

少しでも追いつく努力はしたい。

 

例え、相手が今はどんなに遠くても、である。

 

 

 

翌朝。

 

四時に目覚まし時計に叩き起こされる。流石にこんなに早く起きるのは珍しいというか初の経験なので、マリィも良く体が動かない。

 

それに対してユウリはぴたりと目を覚ますと、その場でいつもと変わらない様子で動き始める。

 

頭を振ると、着替えをもたもた始めるが。

 

或いはユウリは、それも計算に入れていたのかも知れない。

 

朝ご飯は、昨日の残りを食べる。

 

ユウリが晩ご飯を食べるときに、その話をしていたのだ。

 

冷蔵庫を空っぽにしていく。

 

これは、この民宿を長期で借りているとは言え、次に来るのはいつか分からないから、というのがあるかららしい。

 

シャワーは浴びるな。

 

そう言われる。

 

寝起きにシャワーを浴びる習慣のある人もいるけれど。これから行くのは雪山だ。出来れば避けた方が良いそうである。

 

その辺の理屈はよく分からないのだが。

 

いずれにしても、体温を急激に上下させず、雪山用の衣装に身を包んだ方が良いのだろう。

 

マリィは用意してきたもこもこのジャケットを被るが。ユウリに幾つか言われて、特にフードをがっちり被る。ゴーグルもつけた。

 

「基本的に末端が一番危ないんだよ。 指先とか耳とか。 雪山だと、凍傷で最悪腐り落ちちゃうからね」

 

「ヤケに詳しいね」

 

「そりゃ他地方でも散々雪山行ってるもん」

 

「……」

 

それはそうか。

 

経験値が違うと言うわけだ。

 

ある地方では、悪の組織が雪山に要塞を作っていたらしく、其所を攻めたらしい。

 

下手に攻めると雪崩が起きてしまうので、静かな中サイレントキリングをしていき。全員を沈めたそうである。

 

物騒な単語が飛び出すので、マリィは引きつったが。ユウリは慣れた様子で手袋を嵌め。今日はコートを被り。更に耳にはイヤホン。足下も、長ズボンをはいていた。

 

なるほど。前はすぐに雪がなくなることを知っていたから、ラフな格好だったのか。

 

今回は本格的に雪山攻めをするから、それなりの格好をするというわけか。

 

そのまま、暖かい中でしばらく慣らす。

 

服の中に熱を貯めるのだという。

 

「そろそろいいかな……」

 

ユウリがそう呟いたのは、予定通りの五時だ。マリィを見て、更にユウリはマスクもくれた。

 

殆ど露出する所がなくなったが。

 

外に出てみて、ユウリに促されて雪山を見て納得である。

 

あんなところ、いつもの格好で行ったら死ぬ。

 

自転車で行くかと言われたので、首を横に振った。他地方ではポケモンに乗る事もあるらしいのだが。ガラルではあまり見られない風習だ。

 

仕方が無いと言うと、最短距離を行くとユウリは言う。

 

そのまま、ついていく。

 

村から出ると、すぐに雪は消えるが。

 

やはりこの辺りは、気候が色々とおかしい。

 

天気も変わりやすく、さっきまで晴れていたのに、今は雪がうっすら降っている。ワイルドエリアも天候が代わりやすいのだけれども。此処はそれ以上だ。

 

やがて、唐突に雪山に入っていた。

 

此処が雪山なのだと分かったときには、もう膝くらいまで雪に埋まる場所に来ていた。

 

ぞっとする。

 

これは、本当に土地勘がないと危ない場所だ。

 

駅があったが、ユウリやジムリーダーのマリィだったから無言で通してくれたのであって。

 

普通の観光客だったら、きっと色々注意されたんだろう。或いは村から先には行くなと言われていたのかも知れない。

 

ユウリはマリィの様子を見て、ロープをつける。

 

何だか犬みたいだなと思ったが、この様子だと吹雪いてきかねない。そうなったら、確かに生命線が絶対に必要だ。吹雪の中で孤立なんて、考えたくも無い。

 

ユウリが足を止める。

 

見ると、かなり大きなポケモン。多分モスノウだろう。美しい蛾の姿をしたポケモンだが、ガラル本土で見かけるのよりずっと大きい。それが凍らされた挙げ句に、残忍に半分食い千切られていた。

 

他にも似たような死体が点々としている。

 

「こりゃ王様怒るな……。 早く倒さないと、王様が出てきて伝説同士のぶつかり合いになるよ。 そうなったらどんな天変地異になるか」

 

「その王様ってなんなん?」

 

「前にここに来たとき知り合った存在だよ」

 

「へ、へえ……」

 

やはり聞かない方が良さそうだ。ユウリもこれ以上は話してくれそうにない。

 

ポケモンは明らかに彼方此方に隠れている。

 

震え上がっているのは、寒さから、だけではあるまい。

 

此処に来ている奴は、ファイヤー以上の残虐な性格の持ち主だというのは、確かにマリィにも分かった。

 

別に必要もないのに殺して回っている。

 

悪い人みたいだ。

 

ポケモンにも色々いるのは分かっているけれど。これは、なんというか酷い。自然の摂理の範囲を明らかに超えている。

 

やがて、ユウリが身を隠すように指示。

 

見つけたのだ。

 

それは、前見た通りの青紫の鳥。翼も動かさず宙に浮いている。そして、顔は仮面のようでもある。丁度今仕留めたらしいポケモンを嬲っていた。凍らせた後、食べるでも無く割って殺している。死体もちょっとだけ囓って、それでおしまい。

 

フリーザーという存在は、他の地方にもいると聞いている。だがガラルの個体は、残虐極まりない様子だ。

 

「さーて、どうやって捕まえるかな……」

 

ユウリが呟く。

 

すっと浮き上がるフリーザー。何のために翼があるのかはよく分からない。

 

すっと、此方を見るフリーザー。

 

マリィに気付いたのか。

 

殆ど間髪入れずに目から光線を放ってきて、雪原を切り裂くようにして光が迸っていた。

 

ぞっとする。氷の列が出来ている。

 

ぱちんと音がする。マリィに此処にいてと言うと、ユウリがロープを外したのだ。そして雪の中にもかかわらず、剽悍に躍り出る。

 

目から第二射の光を放つフリーザーだが。

 

ユウリは着弾点を知っていたように避け、至近まで接近。

 

フリーザーが、分裂する。

 

前は三分身だったが、十分身くらいになっている。

 

ヤバイと思ったのだろう。

 

残忍なだけに、自分以上の危険な相手の実力を察知するのにも長けているという訳か。全力で分身をして、相手がミスをした瞬間逃げるか、総攻撃を掛けるか。そういうところか。

 

ユウリが大岩を担ぎ上げる。

 

思わず生唾を飲み込んでしまった。

 

自分と同じくらいある岩を、文字通り持ち上げた。フリーザーも、流石に呆然として一瞬固まる。

 

ユウリはそのまま振り向き様に、大岩を投擲。

 

分身が一個、消し飛んでいた。

 

ははは、ひっかかったひっかかった。そう言わんばかりに、フリーザー達がけたけた笑い出す。

 

そして、岩が遠くでドカンとか音を立てて着弾していたときには。ユウリはモンスターボールを放り、ハンドサインを出していた。

 

モンスターーボールから出てきたのはマホイップ。ユウリが時々ワイルドエリアなどで使う、恐ろしい程冷たい目をした、血のような色をしたマホイップだ。エースの一角らしいが、試合で使っているのは見た事がない。マリィも最初にその目を見た時はぞっとした。愛くるしい人型のホイップクリームのような姿をしたポケモンのマホイップなのに。こんなに闇に濁った目をするなんて、知らなかったからだ。

 

そのマホイップが、何の躊躇も無く小さな手を握りこむ。

 

同時に、けたけた笑っていたフリーザーではなく。

 

そう、マリィの後ろに音も無くいたフリーザーが、全身を握りこまれたように、動かなくなった。

 

ぞっとして振り返って、それで気付いたのである。

 

恐らくマホイップが展開しているのは、サイコキネシスだろうが。フリーザーが必死になって外そうとして外せていない。マホイップはフェアリータイプのポケモンであり、エスパータイプではない。要するに専門の技ではないのに、どんな出力だ。

 

ユウリは悠々とフリーザーに向け歩いて行く。マリィの隣を通り過ぎるとき、表情が無になっているのが見えた。おしっこをちびりそうになった。途中、枯れ木を一本、雑草でも引き抜くように引っこ抜いていくユウリ。勿論片手でだ。

 

「マリィちゃんに気付いてこっちを見た時点で、何をするつもりかは分かってたんだよね……。 ちょっとお仕置きが必要かなー」

 

「! !! ー!!」

 

慌てて暴れようとするフリーザー。だがぴくりとも出来ない。既にたくさんいた分身は全部消えていた。つまり、そんな余裕も無いくらい締め上げられていると言う事だ。

 

ユウリが何の容赦も無く、跳躍して枯れ木を降り下ろす。

 

フリーザーの頭を直撃。

 

雪山に叩き込まれたフリーザーは、すかした様子で飛んでいた時の余裕も無く。更にもはやあの規格外マホイップのサイコキネシスに抵抗するパワーも残っていないようで。ユウリが放り投げたモンスターボールに抵抗できず吸い込まれたのだった。

 

「さーて、お仕事完了、と」

 

今の一撃で、ぐしゃとかめしゃとか音がした。

 

マリィは強くなろうと誓ったのに、怖くて膝が震えて何もできない。暖かい格好の筈なのに。

 

ユウリがスマホロトムで連絡を始める。

 

「ユウリです。 三鳥、捕獲完了しました。 はい。 夕方にはマグノリア博士の所に届けます。 特にガラル南部雪山周囲の生態系がかなり荒らされているので、レンジャーを派遣して調査をお願いします」

 

通話を切る。

 

ユウリがこっちを見た。

 

にこりと笑うが。頬の辺りには、多分フリーザーの返り血らしいのがとんでいた。ごしごし擦って拭うが。余計怖い。

 

「さ、帰ろうかマリィ。 見届け本当にありがとう。 後は書類仕事がある筈だからよろしくね」

 

こくこく頷くことしか出来ない。

 

駄目だ。

 

まだ勝てない。

 

絶望が、マリィの心を黒く侵食していたのだった。

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