ポケットモンスター剣盾二次創作シリーズ   作:dwwyakata@2024

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3、神の機能は二つ

現在獄中にいるローズが作り上げたガラル経済の支柱。それがシュートシティに大半の機能が存在しているマクロコスモス社である。正確にはマクロコスモスグループであるらしいが。まあともかくマクロコスモスだ。

 

その担当分野は多岐にわたり、ユウリも手持ちのポケモンを労働力としてかなり貸与している。

 

勿論話を聞いては、仕事があっていないようなら引き上げさせるし。虐待を受けるようなら当然抗議する。

 

今まで流石にチャンプのポケモンを虐待するような命知らずは見た事がないが。

 

それでも虐待を目撃したポケモンはいて。

 

その情報については、マクロコスモスの上層部に直接話をして、対応が行われるのを見届けるようにしていた。

 

さて、そんなマクロコスモス本社に。

 

昼過ぎにユウリは到着。

 

ガラルの経済を回している大物達や。

 

ダンデをはじめとする重鎮級のトレーナー達が。

 

全員では無いにしても。

 

かなりの数、集まっていた。

 

マグノリア博士も来てくれている。ユウリが此処を仕切るのは難しいと判断したのだろうが。

 

仕切ってみせる。

 

ユウリもわざわざ正装して来ているのだ。ネクタイなんて似合わないものまでつけて。

 

「それでは、ガラル南部で起きている状況について皆様に説明します」

 

「チャンプ自らの調査だ。 面白い話が聞けることを期待しておりますぞ」

 

そう言ったのはマクロコスモスの重役である。

 

ローズが逮捕されたのはユウリのせい。

 

そう考えている人間が一定数いる事をユウリは知っているし。それに対しても、きちんと毅然とした対応をして行かなければならないとも思っている。

 

「まずガラル南部ですが、伝説のポケモンバドレックスによる影響が調査の結果確認されました」

 

多くの映像を出す。

 

順番に説明していく。

 

遺跡の古さや、その数。遺跡と供に多数の畑が存在していた事。

 

現在のガラル南部から北部ほどでは無いが。

 

とても豊かな土地だったことが、あらゆる証拠から分かるのである。

 

ムゲンダイナのことは話には挙げない。

 

ややこしくなるだけである。

 

実際ローズが、ムゲンダイナをエネルギー資源として活用しようとしていたことを知っているマクロコスモスの重役は存在していて。ローズ派の残党とも言われている。

 

獄中からローズが、もう余計な事はしないようにと言い聞かせたらしいが。

 

それでも色々と、納得出来ないのだろう。

 

人間とはそういうものだ。

 

「つまり、現在不毛の土地と認識されているガラル南部は、バドレックスの力が戻れば戻るほど豊かな潜在能力の高い土地に生まれ変わります。 10年計画で現在ガラル南部の開発計画を進めているようですが、これを前倒しで進めましょう」

 

「チャンプ、質問が」

 

頷く。

 

質問を発してきたのは、マクロコスモスの重役だ。神経質そうな、痩せたおじさんである。

 

ローズがおおらかな、太めのおじさんで、いつも笑顔を絶やさなかったことと対照的である。

 

こういういかにも神経質そうな人もまとめていたのだと考えると。

 

ローズの手腕の確かさがよく分かる。

 

「マグノリア博士の研究と、貴方による実地調査は信用しても良いでしょう。 土地に高い潜在能力がある事も認めます。 鉄道については既に通っているので、後はインフラを整備することだけというのもね。 パワースポットもあるから、何ならジムを作るのもありでしょうな」

 

ジムを作るならあの木の周辺だろうなとユウリは思う。或いは湖をまるごと囲んでジムにしてしまっても良い。

 

ただ、今この重役が言っているのは。

 

明らかにそういう話では無い。

 

「ただ、マクロコスモスとしては、現在でも10年計画で土地を豊かにすることは決めています。 伝説のポケモンバドレックスは、二万年の昔から存在していたと聞いていますし、10年を5年に変えても、大して変わらないのでは」

 

はははと笑い声が起きる。

 

下品な笑いだ。

 

今の重役に賛同するマクロコスモス重役の声だろう。

 

この世界が、ポケモン無しではなり立たないことくらい、誰でも知っている。

 

勿論この重役達もだ。

 

伝説のポケモンが、環境を激変させることだって分かっている。

 

何しろ、その代表格であるムゲンダイナの研究に関わっていた連中だって、この中にはいるのだから。

 

ローズは一人で責を背負って獄に入ったが。

 

この人達を野放しにしたことだけは、あまり褒められないとユウリは思う。

 

今はダンデが抑えてくれているが。

 

そうでなければ、それこそ悪の組織みたいに振る舞いはじめてもおかしくないだろう。

 

「前倒しにするには相応の理由があります」

 

「ほう、お聞かせ願いたい」

 

「バドレックスは神に等しい力を持つポケモンです。 そして神に等しい存在と言う事は、信仰を力に変えると言う事です」

 

怪訝そうな顔をする重役達。

 

咳払いすると、順番に説明していく。

 

「そもそも古くは豊かだったガラル南部が、どうして今のような土地になったのか。 それは、住民が「豊かさを当たり前」だと判断したからです。 当たり前にあるものに、人間は感謝などしません。 例えば今は誰もの家に便利な家電がありますが、あって当たり前のものとして考える事はあっても、感謝するでしょうか。 家電がなければどれだけ生活が不便になるか、分かっていたとしてもです」

 

「……」

 

「まず我々がするべきは、ガラル南部に「豊かさへの感謝」を取り戻させる事です。 それには現状の10年計画では不十分だと判断します。 私は今は全盛期ですし、当面はこのままでしょう。 でも、いつまでも私は全盛期ではありません」

 

さらっと自分で言って。

 

ちょっと、これは色々と問題だったかなと思った。

 

ダンデが少し呆れたように此方を見ているが。

 

ユウリも咳払いして、気分を入れ替える。

 

「ガラル全域にしてもそうです。 ガラル南部は、未来のガラルの姿だと考えてもいいのではないでしょうか」

 

「そ、それはどういうこと……」

 

「先も言ったとおり、豊かな生活は当たり前にあるものではなく、誰かが努力して作っている事を忘れてはならないと言う事です。 マクロコスモス内で権力のパワーゲームなんかして、私やダンデの足を引っ張る暇があったら、少しはガラル全域の事を、国家100年の計で考えてはどうですか」

 

強烈なカウンターを入れると。

 

マクロコスモスの重役達は揃って黙り込む。

 

青ざめる彼らだが。

 

勿論、彼らの機嫌を損ねると、資金を引っ張り出せなくなる。

 

「なああんた」

 

不意に口を開いたのは、フェアリージムの前ジムリーダー。

 

あの伝説のチャンプマスタードと若い頃はライバルだったポプラである。

 

ガラル史上最年長で現役ジムリーダーを続けていた、通称「魔術師」。流石に今は若い頃のキレはないが、それでも一線級に充分立てる実力がある。

 

ポプラが名指ししたマクロコスモスの重役は。

 

青ざめて、背筋を伸ばしたようだった。

 

「ローズ前委員長に拾って貰う前、あんた借金地獄で首を吊る寸前だったんだろう、マクロコスモス鉄道部門統括の専務さん」

 

「……」

 

「知っている筈だろう。 豊かな時代は勝手には来てくれない。 既得権益を独り占めしているとろくでもない事になる。 そして豊かな時代は、簡単に終わるって事をね」

 

その通りだ。

 

ガラル南部で見て来た多数の遺跡。

 

あれは繁栄の跡。

 

いつまでも豊かだと思い込んでいた人達に降った天罰。

 

豊穣への感謝を忘れ。

 

何もしなくても豊かに生きていけると努力を怠った人達が見て来た、地獄の跡だ。

 

「今のガラル南部が、あの暗黒の時代……ダンデの坊やがチャンプになって、ローズの坊やがリーグ委員長に就任する前の時代ほど酷いとはいわないさ。 だが、あの映像を見て、似ているとは思わなかったのかい?」

 

「そ、それは……」

 

「大人になったばかりのチャンプに主導権を握られるのが頭に来るのは何となく分かるさ、アタシもいい年の……もう18歳だからね」

 

此処でジョークを入れて行くのがポプラらしい。

 

自称18歳は、ポプラが持つ持ちネタだ。勿論実年齢はそれ+71歳である。

 

「つべこべ言わずに、本格的な投資を考えな。 稼げる場所にだけ金を投資していると、いずれ何もかもが枯渇するよ。 あんた達が頼りないから、ローズの坊やは焦ったんじゃないのかね」

 

引きつった笑みを浮かべるマクロコスモスの重役達。

 

まあそうだろう。

 

流石にこのガラルでも高い影響力を持ち、暗黒の時代を生き抜いた生き証人に、しゃらくさい口は利けない。

 

何よりマクロコスモス自体が、ローズが大きくした会社だ。

 

役員は比較的若い。

 

そして役員達は比較的若いと言っても。

 

さっきポプラが言及した地獄の時代を知っているし。何なら味わってさえいるのだから。

 

「後は任せたよチャンプ」

 

「はい、有難うございます。 それでは、計画の前倒しについて、具体的な話を……」

 

資料を出す。

 

この辺りは、少し前から準備をしていたものだ。

 

まずは南部へのインフラの整備。更に寂れている村の拡充。周辺の安全確保。更に各地の遺跡への丁寧な調査。

 

祭の復活。

 

バドレックスについての資料も提出済み。

 

これを研究する事により、バドレックスへの信仰を高め、土地を更に豊かにしていく工夫。

 

これらを五年計画で行う。

 

気を付けなければならないのは。ガラル南部に住んでいるポケモン達の住処を追うような事があってはならないという事だ。

 

場合によってはワイルドエリアに移住して貰う必要もあるし。

 

或いはガラル南部の一部をワイルドエリアにする必要もある。

 

雪山になっていて人が入れない場所もあるから。

 

そこは王様に、バドレックスに頑張ってもらうしかない。

 

土地を蘇らせるのには大変な苦労が必要だが。

 

これはもう、長期計画でやっていくしかない。だが、その長期計画の前に、地ならしがいるのだ。

 

マクロコスモスからも、当然出資して貰う。

 

計画について提示すると。やっと経済の専門家として、マクロコスモスの重役達が動いてくれる。

 

予算などについて甘い部分があれば指摘してくるし。

 

計画の不備などについても指摘してくれる。

 

それは有り難い指摘だ。

 

さっきまでの、感情論による揶揄では無い。建設的な物事の進め方である。

 

そういった行動なら大歓迎なのだが。

 

こういう風に年を取ると。

 

大人って面倒くさくなるんだなと、ユウリはため息をついた。

 

結局決裁を取るまで、丸一日会議は続いた。

 

途中何回か休憩を挟んだが。

 

まるで疲れを見せないユウリを見て、重役達は驚愕していたようだった。

 

筋肉ムキムキの大男達が出るアームレスリングで優勝しているのを見せたり。時速三百キロを誇る伝説の三鳥の一角、サンダーを自転車で捕獲する映像などは此奴らも見ている筈なのだが。

 

やっぱり、至近で接してみないと、人間の力は実感できないのかも知れない。

 

夜中に会議が全て終わったので、後片付けを軽く手伝う。

 

ダンデが残りはやってくれると言ったのだが、ユウリは首を横に振った。

 

「ダンデさんはこれからが大変でしょう。 内心では納得していないマクロコスモスの重役も何人もいたようですし」

 

「気付いていたんだなユウリ君。 その通りだ。 ローズ社長がどれだけ大変な仕事をしていたのか、後を引き継いでみて分かったよ」

 

「ダンデさんでさえうんざりするほどなのは前から何となく分かっていました」

 

「まあ俺は君が持ち帰ってきてくれた伝説のポケモン達を見るのが楽しいし、何よりも後進の育成が楽しいから、それで相殺は出来てはいるけれどもね」

 

あまり遅くならないようにと釘を刺すと、ダンデは戻っていく。

 

ユウリは書類などの処理を全て終わらせると、記録をしっかり残した上で帰宅した。

 

帰りはアーマーガアのタクシーだが。

 

他の重役はとっくに帰宅済みである。

 

いっそ、今日はホテルで良いかと思ったのだが。流石にもうこの時間帯だとビジネスホテルしか空いていない。

 

ビジネスホテルは豊かなガラルでもあまり良いイメージがないし、他の地方では露骨にヤバイものもたくさんあった。

 

やむを得ないので帰宅する。

 

結局家に着いたときは日付が変わっていた。

 

タクシーの運転手に深夜料金を払うと、大変だなあんたもと言われて。苦笑い。

 

もっと大変な目に会っている人はたくさんいる。

 

ユウリも、無理をすると後で体に来る事は分かっているから、可能な限り無理はしないようにしてはいるが。

 

それでもこう言うときは、無理をしなければならない。

 

家に帰ると、母が起きたまま待っていた。

 

今日は帰ると言っていたからだろうか。

 

寝て良いと言ってあったのに。

 

ココアだけ貰って、後は眠った。

 

ユウリは思う。

 

これで、本当に良いのだろうか。

 

お偉いさんたちの方はどうにかできた。

 

だが、ここから先。

 

大事なのは、王様がどう振る舞うかなのではあるまいか。

 

ダンデのような、ほとんど地方の顔になる最高のチャンプにユウリはなれない。最強のチャンプにはなれるかも知れないが。ダンデにはなれない。

 

王様も同じ事。

 

無理に豊穣神の側面である破壊神の姿を見せるのは、あまり好ましい事ではないのかも知れない。

 

ひょっとしたら、誰かが悪役をする必要があるのだろうか。

 

考えている内に、眠くなってくる。

 

此処は、眠った方が良い。

 

ユウリはそう判断して。

 

眠るべくして、眠っていた。

 

 

 

翌朝は少し遅く家を出る。普段はもっと早くから活動しているのだが。昨日が遅くなった分を考慮したのだ。

 

幾つか仕事があるが、ユウリが直接出向かなければならないものはそれほど多くはない。

 

むしろ、来月からまた海外の地方に来て欲しいと言われていて。それまでにこの仕事を一段落させないとまずい。

 

国際警察も何もしていない訳では無い。

 

現地のジムリーダーやチャンプだって色々頑張っている。

 

ユウリに国際警察から声が掛かるのは、それらでもどうにもならないような地方で、暴威を振るう悪の組織や、手に負えない強さのポケモンがいる場合。

 

国際警察でも当然人材育成はしているらしいのだが。

 

それでも、スペシャルを育てるのはとても難しいらしかった。

 

幾つかの場所を回って、仕事をこなしてから。

 

ガラル南部に、タクシーで向かう。

 

電車で行くのが一番楽なのだが、今回は時間を優先したい。ちょっとお値段も割高になるが。

 

ユウリはお金には困っていない。

 

困っていないのなら、使うべき時に使う。

 

それでいいと思っている。

 

海外の地方で、悪の組織を叩き潰すと。規模にもよるが、国際警察から億単位の謝礼金が入る。

 

今ユウリはガラルでも上位十人に食い込んでくる資産家の筈で。

 

それが金を貯め込んでいても仕方が無い。

 

お金があるなら使うべきで。

 

ましてやユウリはお金に殆ど執着がない。勿論無意味すぎる散財は避けるべきだが。使える所に、使うべきお金は使うべきだ。

 

ガラル南部に到着。

 

王様の所に行く。

 

王様は玉座で待っていた。もう、いちいちやりとりは必要ないと言うように。ユウリを出迎えてくれた。

 

「覇者よ。 それで如何なった」

 

「こちら側で出来る事は全てしました。 後は、王様の方で出来る事を考えないといけないと思います」

 

「ふむ、流石であるな。 あの老獪なる者達の首を縦に振らせたのであるか」

 

「私一人ではできませんでしたよ」

 

頷くと、王様は言う。

 

実際に、土地を豊かにしていく所を、見せていきたいと。

 

だが、それだけでは駄目だろうとも。

 

「余も考えたのだ。 土地を豊かにしていくところを見せれば、民はそれに対して敬意を払い、余に対する信仰心を取り戻していくだろう。 だが、余が土地を豊かにしていくことを当たり前と考えてしまうだろう」

 

「その通りです。 それで何をしますか」

 

「民に負担を強いるのは良くない。 だが世界が決して豊かでは無い事を、知って貰わなければならぬ。 そのためには、やはり祭をしなければ力を見せぬという判断も必要であろう」

 

ああ、なるほど。

 

この王様、本当に良い人もといポケモンなんだなとユウリは思った。

 

守る以外に暴を振るうという発想がないのか。

 

本来は理想的な王様なのだろうに。

 

この土地の人達は。

 

そんな王様の好意に甘えて堕落しきってしまった、と言う訳か。

 

なんというか、重役達にも言ったが。

 

これは多分ガラルの未来の話だ。

 

ローズが焦っていた理由が何となく分かってきた気がする。

 

ローズが必死の思いで豊かにしたガラル。人心も経済も豊かになった。

 

だが、それが当たり前だと思った時。

 

また、人々の心は、いとも簡単に腐り行ったのではあるまいか。

 

ユウリはガラルの外を知っている。

 

いろんな地方を見て来たし。

 

それらの地方で、心が荒れ果てている人をたくさん見て来た。だからこそ、分かるのだ。王様は理想的な王様であろうとしているが。

 

それだけでは駄目なのだと。

 

「もう少し厳しくても良いと思います、王様」

 

「民は多くなれば、富を争うようにもなろう。 このくらいが落としどころではないかと余は思うのだが」

 

「いっそのこと、祭を怠れば邪悪な存在が姿を見せて、厄災となるくらいの事が必要ではありませんか」

 

「何かを解き放とうというのか覇者よ」

 

悪者をしてもらうポケモンを用意するという手はあるが。

 

それは一種の出来レースになる。

 

ユウリが捕まえて、今ダンデに確保して貰っているポケモンの中にも、何体か良さそうなのがいるが。

 

彼らがユウリの言う事を聞く事があっても。

 

後継者の言う事を聞く事があるだろうか。

 

だから、首を横に振った。

 

「王様、堕落を防ぐには優しいだけでは駄目なのだと思います」

 

「……」

 

「民が祭を行わなかった年には、豊穣の力を使わないどころか、荒廃を加速させる。 それくらいの覚悟をしてください。 祭についての重要性については、此方で周知いたします」

 

「……分かった。 余はポケモン、そなたらは人だ。 違う理屈で生きている存在であって、決して同じでは無いのだな」

 

その通りだ。

 

更に言えば、ポケモン同士でさえ違う。人間でさえ皆それぞれ少しずつ違うほどだ。

 

この世界の人間はポケモンの一種だという説があるが。

 

もしも、この世界の人間が、ポケモンとは違う存在であっても。同じ存在であっても。王様が余りにも甘やかしすぎたら、堕落する結果は変わらないだろう。

 

嘆息する王様。

 

この王様は、あまりにも義理を返しすぎた。

 

善良すぎた。

 

だからこそに、人間という生物の悪意の恐ろしさを理解出来なかった。ガラル最強の暴を振るう事が出来るユウリでさえ、たまにぞっとするような悪意を見る事がある生物なのだ人間は。

 

だから、王様も。

 

それを理解して貰わなければ困るのだ。

 

人間の意思をある程度理解できる筈の王様は、堕落に気付けるはず。その気になれば、出来る筈だ。

 

今のガラルのリーグ委員会や。

 

ダンデやユウリがいなくなった未来。

 

その時、王様はまだいるだろう。

 

王様がその時にも、まだ人間の善意を信じて。それで同じ事態を引き起こしてしまうようでは困るのである。

 

「覇者よ。 そなたが未来を見据えていることは理解出来た。 ならば、余も今だけではなく未来を見据えよう」

 

「分かりました王様。 お願いいたします」

 

「うむ……」

 

考える時間が必要だろう。

 

ユウリはその場を離れる。

 

さて、此処からは人としてのユウリの仕事だ。

 

麓まで降り。

 

既に来ている、マクロコスモス社のチームと合流する。

 

専門家がかなりの人数来ていて、祭の内容についての聞き取りなどについて、始めてくれていた。

 

この辺り、ポプラが睨みを利かせて。きちんとやるように役員の尻を叩いたのだろう。

 

ユウリが出向くと、気付いて一礼してくる。

 

礼を返すと、責任者を呼んだ。

 

話をしておく必要がある。

 

これから此処でやらなければならない事は、ガラル南部の未来のために絶対に必要な事で。

 

この小さな村だけの話では無い。

 

それを理解して貰わなければならない。

 

よくパニック映画などで、被害が出ても誰も気にもしないのに。有力者が危機を認識するとすぐに動き出す市民がいるが。

 

まさにこれがその状況だろう。

 

丁寧に、順番に話をしていく。

 

更に、調査チームを遺跡に案内する。人数が少し多いので、護衛のためレンジャーにも同行して貰う。

 

遺跡を見て、調査チームは予想以上にまずい事を理解出来たらしい。

 

昔、これほどに栄えていたガラル南部が、衰退したという事実。

 

それは、ガラル本土にとっても、他人事ではないのだ。

 

「というわけで、お願いします。 村の人達には、くれぐれも神の正体について口外はしないように」

 

「分かりました。 それにしてもこれほどまでに潜在力がある土地だったとは……」

 

「……」

 

エサに食いついたか。

 

金をちらつかせてやれば基本的に人間はこうなる。

 

これについては、もはや仕方が無い事だ。

 

利用していくしかない。

 

金は命より大事、何ていうことは無い。

 

命の方が金より大事に決まっている。

 

いずれにしても、これでマクロコスモスは本気で動くはずだ。レンジャーにも目礼をしておく。

 

レンジャー達にも、口外不要と言う事は絶対だ。

 

さて、後は祭りなどの信仰について、しっかり整備をしていかなければならない。

 

マグノリア博士とソニアにも、来て貰わなければならないかも知れない。

 

ソニアは此処に一度来て貰った事がある。

 

伝説のポケモンがわらわら沸いたときに、必要性から来て貰ったのだ。

 

その時は、王様についての話にソニアは関わらなかったが。

 

今回はフィールドワーカーとして、辣腕を振るって貰う事になるだろう。

 

まだ助手の立場だが。

 

そろそろ博士号を取得に行くと言う話もしていた。

 

ソニアが一人前になってくれれば。

 

その分その下で働いている幼なじみであるダンデの弟、ホップの負担も減るだろう。

 

ユウリとしても、好ましい事だった。

 

一度村に戻って、村長と話す。

 

多くの人が、王の乗るブリザポスを目撃している。

 

一度、ブリザポスが村を襲撃し、ユウリが撃退したからである。

 

それについて、少し話しておかなければならない。

 

出来るだけ恐ろしい話が良いだろう。

 

今日の移動中、ガラルに伝わる伝承の中で。

 

最も恐ろしい人食い馬の伝承について、調べておいた。

 

元々獰猛なブリザポスだ。

 

そもそもその伝承の元になっている可能性だって低くない。

 

だから、今更であるだろう。

 

村長は、素直にユウリに感謝しているし、話は聞いてくれる。

 

後は。

 

大人達が、全て丁寧にやってくれれば。

 

全ては丸く収まる。

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