ポケットモンスター剣盾二次創作シリーズ   作:dwwyakata@2024

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2、小さな炎を手の中に

数日間、カロスを見回る。

 

その間、何回かリンチを見かけた。フレア団に情報を売っていたり、或いはもっと酷い事をしていた人間。

 

それらが今更ながらにあぶり出されて、そしてつるし上げられているのだ。

 

ユウリは見かける度に、それをとめて。

 

ユウリが来た事を悟ると、人々は畏怖を顔中に浮かべながら離れた。

 

必死に許しを請うリンチされる者達。

 

その者達を容赦なく警察に引き渡す。

 

ユウリは耳も良くなっているから、聞こえる。周囲の声が。

 

「聞いたか。 軍基地を生身で制圧したって話だぞ。 戦車をひっくり返したそうだ」

 

「カントーの彼も凄いという話だったが、それ以上じゃないのか」

 

「フレア団が負ける訳だぜ。 もし機嫌を損ねたら、カロスは終わる……」

 

「バカ、声が大きい」

 

明らかに歓迎している内容では無い。舌打ちしたくなる。そんな事はしない方がいいと分かっているのに。

 

フレア団はカロスそのものと言う程、公権力に潜り込んでいた。その全てを破壊し尽くすのはカロスに大きなダメージを与える。だから一部を残すべきという意見も上がった程なのだ。

 

そんな生ぬるい事を言っていたから、ああいう犠牲がたくさん出たのに。

 

ユウリが助けられなかった子供達だってたくさんいる。

 

事実、ユウリが潰した施設では、口に出来ないような死に方をした子供の死体もたくさん見つかったのだ。

 

人間の死臭は慣れたが。それでもあの時の悲惨過ぎる有様は今でも思い出して怒りが沸騰しそうになる。

 

街を歩きながら、フレア団の残党を探す。

 

見つけた。残党では無いが、不自然な動きをしてるのがいる。ユウリから隠れて逃れようとしている。

 

即座にポケモンを放って、捕まえさせる。

 

ユウリ自身がやらないのは。

 

殺さない自信があまりないからだ。

 

捕まえた其奴は、ユウリを見ると悲鳴を上げ、必死に命乞いをした。ニャオニクスをモンスターボールから出して、読心させる。

 

ニャオニクス経由で、情報をある程度引き出せる。そういう特殊訓練をさせている個体である。

 

警察が来たので、全て引き渡す。

 

情報もセットで、だ。

 

カロスの警察は地の底まで落ちた信頼を回復しようと必死だ。必要以上に乱暴に、其奴を引きずっていった。

 

お洒落で綺麗な町並みなのに。

 

無言で歩いて、ランデブーポイントに。

 

自転車を使おうとは、思わなかった。無言で歩いていると、心配そうにニャオニクスが見上げてくる。

 

肩にニャオニクスを載せると、無理矢理に笑顔を作った。

 

大丈夫。

 

きっちり仕事をできているよ。

 

そう言いながら、ビルの地下を経由して、国際警察のアジトの一つに。

 

そこに、状態が比較的良い子がいた。

 

頭に包帯を少し前まで撒いていたらしいのだが、それもとれている。ただし、頭は産毛がやっと生えてきたくらいの状態だ。目も虚ろで、昔の自分の名前も覚えていないそうである。

 

何より、頭には手術の跡がある。もう傷は塞がっているようだが。見ているだけで痛々しかった。

 

アオイという名前だそうだが。

 

それもユウリが潰した研究所で、適当につけられたコードネーム。

 

母音だけで構成した名前ということで。

 

そもそもこの子を研究員が人間扱いしていなかった事が分かる。

 

この子はそこそこ出来が良かったらしく、手酷い暴力を受けながらも、相応に「大事にされていた」らしい。

 

反吐が出る話であったが。

 

ユウリは腰を落として、視線をあわせる。

 

アオイは、何とか簡単な会話は出来るようになっていた。ただそれでも、大人には怖がって近寄ろうとしないともいう。

 

ユウリもそれほど長身ではないのだけれども。

 

それでも、やはり少し怖いようだった。

 

名前を教える。

 

言葉を発する事も中々難しいようだ。

 

だが、それでも少しずつ、ユウリを見る事はしてくれた。何もかもが怖いようで、ちょっとした物音にもびくりと身を震わせている。

 

少しずつ、感情が戻り始めて。

 

それに伴って、今までどれだけ異常な環境にいたのか、体が思い出し始めているのだろう。

 

「チャンプ、どうですか」

 

「私に出来るのは、自衛手段を教える事くらいですね」

 

「自衛手段」

 

「今は大人しくしていても、フレア団の残党が仕掛けて来る可能性はあります。 その時のターゲットは私でしょうけれど、この子になる可能性もありますので」

 

それに、仕掛けて来る可能性があるのはフレア団の残党だけじゃない。

 

カロスの醜聞を怖れた大人が、トチ狂って何をしてもおかしくは無いのである。そういう意味で、カロスと利害関係がない大人を里親にするのは正解だろう。

 

しかも事情を知らないとまずい。

 

だから、国際警察の隊員というのは、正解になる。

 

警察の隊員は後で顔を合わせるとして、まずはこの子との信頼関係の構築からだ。少しずつ、話をしていく。

 

比較的大人しいポケモンをボールから出す。

 

ラッキーがいいだろう。

 

大人しくて献身的なラッキーは、進化形のハピナスも含めポケモンセンターなどで働いている事も多い。

 

今は手持ちにいるのがラッキーなので、それを出しただけ。

 

いずれ、この子にはポケモンなしでも、地力で身を守れるようになってもらわないと。

 

だがその前に。

 

まずは、言葉を取り戻して。

 

自分で何でも出来るようになることからだ。

 

初等教育などの手配についても、既にしているらしい。それらが終わったら、各地方で共通して使える公用語を覚えてもらい。

 

その後は、赴任するパルデア語か。

 

公用語は、三千年も前に出来たと言ううわさがある言語で。

 

公用語が出来た頃は人間がもっと優れた文明を有して、更にはポケモンを使って「国家」の間で戦争をしていた時期らしい。

 

いまでも戦争は地方同士で行う事が希にあるらしいのだが。

 

今の時代、殆どの軍人の仕事はレスキューが主体だ。

 

或いは、強大になりすぎた悪の組織が主体になる事もあるのだけれども。

 

人間の兵器よりも極限まで育ったポケモンの方が強い現状。更には、人間も鍛えれば戦車くらいはひっくり返せるようになる現在は。

 

やはり自分を鍛える方が早い。

 

ラッキーはアオイを気に入ったようで、世話を焼き始める。アオイも困惑しながら、それでもラッキーが危害を加えないことを理解したのだろう。一緒にいることを嫌がっていなかった。

 

あのラッキーは、いつでもハピナスに進化できる個体なのだが、それは後回しにしよう。目の前で進化されても、アオイを混乱させるだけだ。

 

一度、その場を離れる。

 

そろそろ時間が迫っている。

 

一度、カロスを離れなければならない。ユウリは彼方此方で仕事がある。

 

フレア団の脅威を怖れて、カロスを離れた著名人も、少しずつ戻ってくるという話があるそうだ。

 

その中にはチャンプ経験者である大女優カルネもいる。

 

少しずつ、カロスの主軸だった人物が戻ってくる事で、この地方もまともになる筈だ。勿論そういった大人達の不甲斐なさには思う所もあるが。それでもその手助けは、カロス以外でもしなければならない。

 

チャンプとしてでは無い。国際警察に協力する、手練れのトレーナーとしての仕事だ。

 

ユウリは特記戦力として認識されていて、国際警察でもどうにもならない相手の駆逐に繰り出される。

 

その後始末にも。

 

各地でのトレーナーとの公式対戦もあるが、それ以上に今は始末屋としての仕事の方が忙しい。

 

ユウリは相応の資産を持っている事も、スポンサーもガラルの最大企業であるマクロコスモスをはじめとした複数存在する事もある。

 

何よりも、ユウリ本人が裏社会で死神とか悪魔とか呼ばれて怖れられている事もあって、存在そのものが抑止力になる。

 

よって、彼方此方で引っ張りだこなのである。

 

次に会うのは二ヶ月後だ。

 

その時には、もう少しあの子達の状態が良くなっている事を祈りたい。

 

そういえば。

 

パルデアには、確か有名なアカデミーがあったか。もしも本人が望むのなら、初等教育が終わった後、より高スキルを求めて通う大学……アカデミーへの編入を考えてもいいか。

 

その程度の支出はなんでもないし、何ならカロスのお偉いさんにでも出させる。

 

カロスの人間には、特にお偉いさんにはそれをする責任はある筈だ。

 

空港に。今回は、流石に通常の飛行機で別の地方に行く。

 

空港もしゃれているが、人はまばらだ。警察も、必死にテロ対策などで荷物を確認していた。

 

また、武装している警官と、重量級のポケモンも目立つ。

 

フレア団の残党がカロスを脱出するなら、陸路か空路がメイン。海路はリスクが高すぎる。

 

陸路も彼方此方で検問が張られているし、空路もこうやって見張りがついていると言うわけだ。

 

手続きを終えると、飛行機でカロスを離れる。

 

思考を一度閉じる。

 

しばらくは、此処の事を考えたくは無かった。

 

 

 

二ヶ月が経過した。

 

忙しい日々を過ごしつつ、ポケモンバトルの公式大会にも出る。ユウリはその荒々しい戦い方から、見本のような紳士的な戦い方をしていた先代ガラルチャンプのダンデさんと良く比較される。人竜なんて言われる事もあるが、ドラゴンタイプを別に好んで使っている訳でもない。

 

カロスにまた戻る。

 

飛行機の中で眠るが、その間周囲の警戒は手持ちの子達に任せる。もうカロスは安全とは、言い切れないからだ。

 

何時間か小刻みに寝て、体力は出来るだけ回復する。

 

飛行機はテロに会う事もなく、普通に着陸。

 

前に利用したときよりは、人も増えているようだが。フレア団壊滅というニュースに加えて。

 

各地の治安はあまり良くなっていないこともある。

 

どうも、あまり良くない人もそれなりにいるようだった。

 

治安が悪ければ、悪い人だって集まってくる。

 

今のカロスは、フレア団という悪しき秩序がなくなって、新しい秩序が作られている過程である。

 

其処につけ込もうとする山師は、幾らでも姿を見せる。

 

良い人ばかりだったら、どれだけ良かっただろう。

 

残念ながら、世の中に良い人はむしろ少ないのだ。

 

無言で街に出て、ホテルに泊まり。そこで一泊。その間も地元のニュースを確認するが。カロス警察は殆ど不眠不休で問題に当たっているようだ。銀行強盗も起きている。ただ。それはまだ駐屯している国際警察の部隊が対処したようで、ユウリには声が掛からなかった。

 

翌朝早くに、アオイの様子を見に行く。

 

二ヶ月で、髪の毛も少し増えて、ベリーショートくらいの量にはなっていた。少しずつ、言葉も喋れるようになっている。

 

それについては既に医師からメールなどで聞いていたが。

 

直接会うと、ユウリも少しだけ安心した。

 

ラッキーにはすっかりなついているようで。今では側から離れたがらないという。人体実験を行った大人達に関する恐怖はまだ強いようで、知らない大人には絶対に近付かないそうだが。

 

医師などには、少しずつ話をしてくれるようになってきたそうだ。

 

文字の読み書きなども、催眠学習で少しずつ覚えているという事で。推定される十歳の頃には多分初等教育が終わる。

 

出遅れたが。それはアオイのせいじゃない。

 

ユウリのことは、覚えてくれていた。

 

少しだけユウリを見てアオイの表情が明るくなったのを見て、とても嬉しくなる。笑顔を見ていたいが、それだけでは駄目だ。

 

アオイは生まれが悪すぎる。自衛の能力を身に付けないと、生きていく事は厳しいだろう。

 

国際警察を完全に信用するわけにもいかない。

 

最悪の場合、地力でどこでも生きていけるようにしなければならない。

 

医師と軽く話をする。

 

「外に出られるようになるのは、いつくらいですか」

 

「アオイくんは酷い心の傷を受けている。 今でも大人に恐怖を感じているのが一目で分かるほどだ。 そして心の傷は、体の傷よりも治るのが遅い。 いつだという事は、断言はできない……」

 

「分かっています。 ……ただあの子は、これ以上の理不尽とは地力で戦えるようになってもらう必要があります」

 

知育玩具で遊んでいるアオイを一瞥。

 

知育玩具といっても、かなり難しいものだ。かなり素の頭が良いようで、パズルを簡単に組み立てている。

 

頭が回るのは大事だ。

 

後は体がついてこられれば、言う事はない。

 

「次にここに来られるのは、早くても二ヶ月以上後になると思います。 その時に、一緒に私と外に出られますか」

 

「それは、何とも言えない。 チャンプ、貴方の実力は知っている。 連れているポケモン達の力も。 だが、こんな状態の子に無理をさせてはいけない」

 

「分かっていますが……」

 

それでも、あまり時間がないのも事実だ。

 

いずれ、ユウリの手から離れて自立することもアオイには当然考えて貰う必要があるし、それには既存の教育だけでは無理だ。

 

普通の子供だったら、初等教育が終わった時点で親から自立できる。

 

だがアオイは、出発点が悪すぎるのである。それに普通に自立しただけでは、どうにもならない状況でもあるのだ。

 

少し、沈黙が流れた後。

 

ユウリは提案していた。

 

「ポケモンの捕獲免許取得を優先して貰えますか」

 

「かまわないが、どうして」

 

「ガラル地方のワイルドエリアで一緒に過ごして鍛えます」

 

「正気かね……」

 

ユウリはそうして自身を鍛えた。ただ、それでは鍛えられない部分もある。まずは、体を健康体にする必要がある。

 

今の状態だと、無菌室にいるのと同じだ。

 

勿論いきなり暴風雨に連れ出しても吹き飛んでしまうだけだから。

 

最低限の事は仕込む必要がある。

 

その後は、地力で自分を鍛え抜けばいい。ユウリはその手助けだけでもしたかった。

 

それが、間に合わなかった人間の責任。

 

知らなかった事への贖罪だ。

 

もう少し早くフレア団を潰すべく動いていれば、こんな事は起きなかったのかも知れない。少なくともあの研究所に積み上げられていた子供達の死骸は、そうはならなかっただろう。

 

医師は嘆息する。

 

「分かった。 どうにかする。 他の子供達は、はっきりいって……症状が厳しい子もいる。 一生病院から出られない子もいるだろう」

 

「カロス地方が責任を持って面倒を見るようにしないといけませんね」

 

「国際警察の方でも助力はするだろうが、あまり無茶はしてくれるなよ」

 

「ええ……」

 

余程好戦的なオーラでも浮かんでいたのか。医師が釘を刺してくる。

 

ユウリとしてもこの件で妥協するつもりは毛頭無い。

 

話をした後は、アオイと一緒にパズルを遊ぶ。やはり基礎的な知識はとても高い水準にあるようだ。

 

後は体だが、まだ出来ていない子供の体だ。ユウリも母と一緒に基礎的な体作りはして。ガラルに越してからは、前チャンプのダンデさんに更に鍛えて貰った。その後は、地力で鍛えた。

 

全てを教える必要は無い。

 

十歳になれば大人の世界だ。少し出遅れた子に、基礎を教えるだけ。後はアオイが自分で自分を鍛えていけば良い。

 

その後は道を違えるかも知れないが。

 

それはそれ。

 

アオイの運命は、アオイが歩いて行けば良い。

 

ユウリは、その最初の一歩を、手伝う義務がある。アオイの実の親が放棄した義務を、背負うだけだ。

 

ラッキーの他に、ゴーストポケモンであるフワライドを置いていく。

 

風船のような姿をした愛らしいポケモンだが。愛らしいものほど危険なのがゴーストタイプのポケモンだ。

 

勿論ユウリが鍛えた子だから、人を無差別に殺したりはしないが。

 

それでも、ポケモンに対するアオイの警戒心をラッキーが拭った後は。

 

ポケモンが危険だという事を、このフワライドで学んで貰う必要がある。フワライドはある程度意思が分かるので、ユウリが説明すると、意図を汲んでくれた。

 

ポケモンは人間に近いが、それでも動物だ。

 

食物連鎖の中にいるし、殺し殺される関係だって維持している。人間のパートナーにもなってくれるが。人間を殺すポケモンだっている。

 

この世界で生きて行くには、ポケモンと上手くやっていくのが必須。

 

だから、早い段階から、人間の友達としてのポケモンと。

 

油断してはいけない相手でもあるポケモンに。

 

それぞれ接しておく必要があるのだった。

 

更に言うと、ポケモンはトレーナーの実力に敏感だ。自分の方が格上だと判断すると、指示なんか聞かなくなる可能性もある。トレーナーの扱い次第では、出ていくポケモンだっている。

 

勿論ユウリが仕込んだ子だから、面倒を見るようにといったアオイには非礼は働かない筈だが。

 

それでも、舐めた真似を許しもしないだろう。

 

医師に後を託すと、その場を離れる。

 

アオイは、少しずつ、確実に感情が戻って来ている。

 

まだ自分が十代である事を、ユウリもたまに忘れそうになることはある。人間の体は、二十くらいまでは成長を続けるのだ。今の、十歳で初等教育を終えられ、自立できる時代でもそれは変わらない。

 

ましてや幼い子は、体の回復も早い。

 

次に会うときは、別人のように回復してくれるといいな。

 

そう思って、ユウリはカロスを離れる。

 

空港で、カルネとあって、軽く話をする。

 

カロスから亡命するようにして離れたカルネは、かなり老け込んでいた。現役チャンプだった頃はとにかく美しい人だった。

 

その時代はカロスの文化も美しく見えたのだが。

 

その内部は、徹底的に腐りきっていたのだ。

 

ポケモンリーグの権限はあまり強くなく、チャンプでもできる事はあまりなかったらしいのだが。

 

それでもカルネは、危険になったカロスを離れてからも、出来る限りの事はしていたらしい。

 

ユウリに言い訳をすることはなかった。

 

ただ、申し訳なさそうに、頭を下げられた。

 

ユウリは、セレナに礼を言ってほしいとだけ告げて。一礼だけしてその場を離れる。

 

あの人は、ずっと苦労させて、心身共にボロボロになったセレナに何を言うのだろうか。

 

あまり趣味が良くない想像だなと、ユウリは自嘲していた。

 

 

 

更に三ヶ月が経過した。

 

各地のチャンピオンが集う会合に出たり。

 

公式試合でチャリティーの対戦をしたり。企業のCMに出たり。それらの合間に、悪の組織をまた一つ潰した。

 

大した規模ではなかった上に、大した悪事を働いている組織でもなかったので。

 

ユウリとしてもそれほど手荒に潰すつもりはなく。またある程度理屈が通じる相手でもあったので。

 

ボスをポケモンバトルで叩き伏せて。

 

後は幾つかの手続きを経て、社会復帰を手伝っておしまい。

 

小さめの悪の組織は、実際の所ただの愚連隊である事が多い。

 

地方の風習になじめなくて社会をドロップアウトした人間の集まりだったり。ただの小規模なギャングだったり。

 

ただそういった組織でも、カリスマになるようなトレーナーがでてしまうと、後は暴走する場合もある。

 

タチが悪い人間が入り込んだ結果、組織がどんどん変質していって。やがて最初期のメンバーは全員追い出されたり処分されたりというケースもある。

 

そういった悪の組織が、記録にあるだけで今までに八回、世界の滅亡に王手を掛けたとユウリは聞いている。フレア団のケースもその内の一回。だから、定期的にこうやって対処しなければならない。

 

仕事を終えて、カロスに向かう。

 

実家に戻る事はかなり減ってきたし、戻っても一日で出ることが多くなってきている。

 

友達と遊ぶ時間も、家でゆっくりする事も、ほとんどなくなっている。

 

これも、選んだ道だ。

 

そう思って、各地を回る。

 

アオイは、大丈夫だろうか。飛行機の中で、手持ちの子を出して軽く話す。アオイの事を聞いて、手持ちは色々な反応をする。

 

元は野生の個体だった子も多いから。そういう子は、よくあることだという反応を示すことも多い。

 

競合相手を殺す習性を持つポケモンは。

 

同じような習性を持っているライオンなどと同じく、珍しくもない。

 

意思疎通はある程度出来るから。

 

ユウリの怒りが理解出来ない子もいるし、逆に同調して許せないと考えてくれる子もいる。

 

だが、皆ユウリの手持ちだ。

 

だから、それらについては受け入れなければならないだろう。

 

カロスに到着。

 

また少し、雰囲気が良くなっているように思う。空港などの警備も減っている。飛行機の途中で、記事を幾つか見たけれども。

 

幸いにも犯罪の発生率はかなり減っているようだ。

 

それと同時に、少しずつスキャンダルの公表が行われている。

 

全部まとめて公表したらカロスが完全に終わる。

 

それゆえの判断らしいが。フレア団の悪事が確実に明らかになっていくにつれて。各地方からの怒りの声も強くなっているようである。

 

しばらくは、カロスの冬の時代が続く。

 

それは、フレア団を此処まで育ててしまったカロスの人達が、背負わなければならない罪業となる。

 

セレナは少しずつ、再建中のカロスの報道に姿を見せているそうだ。

 

カロスの報道は、文字通り完全に一からの再建になっている。それはそうだろう。フレア団に完全掌握されていたのだから。

 

幾つかの地方からの支援もあって、ようやく人材を集めてスタータープロジェクトが開始され。

 

今までの報道関係者はあらかた首にされた後で、一からの再建が始まっている状態ではあるのだが。

 

むしろそういう状況だから、爛熟した状況での無能で特権意識をもった記者が好き勝手するような事もなく。

 

真面目でやる気のある記者達が、多少ぎこちないながらもちゃんと報道をしているようである。

 

お洒落でもないし洗練されてもいないが。

 

それでもこれは活力があっていい。

 

そう、空港の街時間で。ぎこちなく作られているテレビ報道を見て、そう思った。

 

国際警察の迎えが来る。

 

一緒に移動しながら、周囲をそれでも警戒する。

 

ユウリのことは、やはりカロスの人達は感謝する気にはなれないようだ。フレア団は確かに倒れた。

 

だが、一気にカロスがその罪業を背負ったのも事実。

 

しばらくは不況と不景気が続く。観光客だって来なくなる。倒産する企業だってたくさんでるだろう。

 

フレア団が蓄えていた資産は全て没収されて、再配布が続いているが、それでもとても足りない。

 

それらの不景気を背負わされた人達は。

 

ユウリを恨むとまではいかないが。歓迎したくないと考えている様子だ。

 

移動しながら、話を聞く。

 

まだ街の彼方此方で、リンチが見られるそうである。

 

フレア団の幹部の裁判は次々に行われており。

 

パキラは真っ先に死刑が決まったが、裁判の間一言も口を利かなかったらしい。もう正気を保っておらず、ただ席についていただけだったそうだ。

 

やがて、目的の建物につく。

 

アオイは、大丈夫だろうか。

 

医師が出迎えてくれた。周囲を警官隊と、専門訓練を受けたポケモンが警戒する中、施設に入る。

 

アオイは、髪の毛もだいぶ伸びていた。

 

三つ編みにしようと頑張っているようだ。ただ、そうしきれていない。いずれ、しっかり三つ編みにしたいだろう。

 

意図は分かる。頭にある傷が目立たないようにするため。

 

アオイは、以前より、ずっと視線とか、姿勢とか。しっかりしていた。

 

「ユウリ、おねえ、ちゃん」

 

手を伸ばしてくるアオイ。

 

リネンでは無く、ちゃんとした服を着ている。

 

たどたどしいが、少しずつ喋れるようになってきているそうだ。

 

ユウリは、何度か目元を乱暴に擦ると。

 

アオイの手を掴んで。

 

引き寄せて、抱きしめていた。

 

細くて、ちょっと力を入れると砕けそうなほど脆い体。自分がこの子の年の時、こんなにひ弱だったか。違う。そんな筈は無い。栄養状態とか、あまりにも悪すぎたからだ。

 

助けられない子がたくさんいた。だけれども、せめて。責任を放棄したこの子の親や。助けられなかった子のぶんだけでも。

 

国際警察に所属している二人が来る。雰囲気が少しだけアオイに似ている。そういう人を選んだのだろう。

 

アオイから離れると、親になる二人に挨拶をする。

 

パルデアで暮らす前に、基礎的な事をユウリと一緒に学ぶ必要があることは、既に話をしてある。

 

この子は、最初のスタートが悪すぎる。

 

だから、自分で生きていけるように、普通の子よりもしっかり教育を受けなければならない。

 

最低でも、自分で自分の身を守れるようにしないと。

 

そう決めていた。

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