ポケットモンスター剣盾二次創作シリーズ 作:dwwyakata@2024
初等教育は全て終わって。
大人として扱われるときが来た。
アオイは、服装を丁寧にチェック。グレープ学園の制服は活動的で、他の地方でスクールと言われる初等教育のものとそれほど差がない。
嬉しいのは帽子があることで、これで髪が乱れても頭の傷が見えにくい。
頭の傷はどうしても目立つから、髪型で隠すのだけれども。いつも三つ編みを維持するのは、アオイも難しい事は分かっているし。
他の生徒と一緒に過ごすようになれば、どうしても目立つだろう。
ユウリお姉ちゃんの事は、絶対に喋らないようにすること。喋るにしても、信頼出来る相手にしか話さないこと。
他にも、絶対の事は幾つもある。
身だしなみを整えて、それで手紙が来るのを待つ。
確か手続きの書類がどうとかで。この地方。
パルデアの高等教育機関であるアカデミーに通う事になったが、それも入学式からでは無く中途でだ。アカデミーですら、ハンデを背負う事になる。
この家でしばし過ごすが。それもしばし。すぐに忙しくなる。
書類の到着やら、手続きを待つ今だけが、時間的余裕があるかも知れない。それもすぐに終わるが。
来る途中に調べたのだけれども。グレープ学園は一年ちょっと前に教師が総辞職して入れ替わっているらしい。
新しい校長先生は非常に評判が良い人で、どこでも悪い噂は聞かないと言う事だが。
一方で、アカデミーそのものにはあまり良くない話も聞かれるのだとか。
身を守ることは出来る。
ユウリお姉ちゃんのような、それこそ生身で軍隊を真正面から制圧するような力はないけれども。
それでも不良の群れくらいだったら、一人でどうにでもなる。
ただ、学校で行われるイジメというものは、武力が強ければ対応できるものでもないらしく。
色々、ここに来る前に。
お父さんとお母さんと一緒に勉強した。
初等教育も含め、今では集団での学業というのは殆どなくなっている。これは簡単で、教師の質にあまりにも依存しすぎるからだ。
今では催眠教育で、短期間で語学や数学などを覚える事が出来。
教師によってはクラスぐるみで虐めを行う事を黙認したり、荷担したりといった事を避ける為にも。
基本的に、初等教育では人間に依存する教育を行わない。
ただ、これには反論もあるらしく。
色々思うところがあって、子供が出来てからアカデミーに行く大人も多いそうだ。
アオイのやりたいことは決まっている。
会社を作ること。
カロスの、同じ立場の子達は、今でも連絡を取っている。
やっぱり病院から出られそうに無い子。
頭を弄られた結果、普通の子よりもずっと学業などが遅れてしまっている子。
トラウマで心がおかしくなってしまって、今も初等教育が終わらない子。
いずれも、面倒を見るには個人では無理だ。
アオイは、運が良かった。
だから、その運を、みんな助けるのに使いたいし。それでは、個人では限界がある。法人を立ち上げて、それでどうにかしたい。
皆が働ける仕事も探したい。
いずれにしても、アカデミーで勉強して、それで身につける事ができれば嬉しいし。
身に付けられなかったとしても、選択肢は増えるはずだ。
お父さんとお母さんに言われている。
ユウリお姉ちゃんに仕込まれた身体能力は、並みの人間を遙かに超えていると。
もしも企業の設立の目処が立たないようであれば、国際警察に来なさいとも。
人手不足、人員不足の国際警察だ。
アオイも、充分に雇ってくれるし。高い地位に行けば、皆を助ける事も簡単になるだろうと。
分かっている。
それも、選択肢として、今は選んでおかないといけない。
色々アオイは背負っている。
一人の命じゃないし、一人の道でもない。
自分だけの道を行ける人は、そんなに多く無いとアオイは聞いた。その道を行っているように思えるユウリお姉ちゃんも、自分の道はとても大変なのだと言っていたっけ。
あんなに強い人が、其処までいうならそうなのだろう。
帽子を被り直して、鏡で確認。
化粧はいらない。
舐められない程度の容姿をしていれば良い。
後は加減についても教わっている。
家にいるラッキーと訓練した。同年代の子供が壊れない程度の力の入れ方が大事だ。ラッキーは耐久に特化したポケモンで、アオイの事をとても大事に思ってくれている。
だけれども、助けを借りるのは家まで。外では一切助けは借りないとも決めている。
ポケモンの試合、自分での育成は、一から覚える。
それが、成長に大きく関わる。
そうユウリお姉ちゃんに言われているし。
自分でも、それは正しいと考えた末に思っている。
チャイムが鳴った。
思わず警戒したが、お母さんが出る。お父さんは少し前から出かけていて、家にはいない。
仕事が忙しいのだから、当然だろう。
様子を見に行くと、落ち着いた居住まいの老紳士が来ていた。笑顔を作るわけでは無いが、雰囲気がとにかく優しい。
「アオイ、グレープアカデミーの校長先生がおいでですよ」
「はい。 始めまして、校長先生。 アオイです」
「はっきりとした良い返事ですね。 始めましてアオイさん。 クラベルです。 遅れての編入と言う事で、書類などの手続きに来ました。 丁度此方に来る予定がありましたので、私がしっかりした方が確実だという風に判断しましてね」
「ありがとうございます」
随分とまあ。ろくでもない大人を知っているから、こういう校長だというのが分かると嬉しい。
手続きはお母さんがやる。
此処までは、やってもらう。
此処からは、全てアオイが歩かなければならない。
ちょっと緊張したが。
だが、此処から始まるのだ。
アオイの物語が。
隣の家に、丁度グレープアカデミーで、生徒会長をやっている人がいると聞かされる。
挨拶に行かないかと、クラベル校長に誘われたので、頷いていた。
お母さんは、好きなようにしなさいと表情で告げていた。
アオイとは血がつながっていないが。本当に出会ってから、よくしてくれた。何処かの娼婦だったらしいクスリの代金にアオイを売った淫売とは違って、この人こそアオイのお母さん。
その淫売をただ行きずりで孕ませただけの男なんかどうでもいい。
今、国際警察として、自慢できる仕事をしている人だけが。アオイのお父さんだ。
クラベル校長は、アオイがまだポケモンを持っていない事を聞いて、手持ちのパルデア御三家を譲ってくれると言う。
地力で捕まえるつもりだったので、申し訳なくなるが。
くれるのなら、有り難くいただくまでだ。
外に出ると、綺麗な空がどこまでも拡がっていた。
カントー地方の言葉で、こんな空を「アオイ空」というらしい。
アオイはクラベル校長に連れられて。
ユウリお姉ちゃんやお父さんやお母さんに背中を押されて。
今。
自分の道を歩き出していた。
(終)
如何でしたでしょうか。
ポケモン剣盾からポケモンSVへとかくして物語のバトンが受け渡されます。
世界はこうして新しい世代へと移り変わっていきます。
このシリーズはここでおしまいです。
ポケモンSVの話は、書き溜まったらまた出張で掲載させていただきます。
それまでお待ちいただけるとさいわいです。