ポケットモンスター剣盾二次創作シリーズ   作:dwwyakata@2024

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1、血塗られた妖精を辿る

正直な所、ユウリは行き詰まっていた。

 

一年弱の旅で、まさかダンデお兄ちゃんを倒せるとはとても思っていなかった。昔ダンデお兄ちゃんも、キバナさんやソニアさんと一緒に旅をして、一年弱でチャンピオンにまで上り詰めた。

 

ユウリもそれをなぞった訳だけれども。

 

チャンピオンと呼ばれても、気付かないことがたまにあるし。

 

ワイルドエリアで極限状態に自分を置いても、強くなる気がしないのである。

 

実際問題、チャンピオンになってから何度かダンデさんと伝説のポケモン抜きで模擬戦をやったのだけれど。

 

勝負は一進一退。

 

あの時より、腕を上げている筈なのに。

 

どうしてダンデさんにあの時勝てたのか、未だによく分からない。

 

今は色々なポケモンを手に入れて、力を増しながら、知識も増やす。

 

そう思っていたところに、ポプラさんに声を掛けられたのだ。

 

渡りに船、ではあったけれど。

 

しかし、貰ったものは想像以上の危険な存在だった。

 

マスターボールの中で、今の時点ではマホイップは大人しくしてくれている。現在持ち歩いているのは、魔竜ムゲンダイナと伝説の剣ザシアン、後はチャンピオンとの戦いで死闘をともに演じたエースバーンとカジリガメ、それに草タイプのポケモンであるラフレシアだが。

 

現在は転送機能により、手持ちのポケモンをスマホロトム経由でいつでも呼び出すことが出来る。

 

ただ取り回しが悪いので、六体だけを戦闘時には使う。

 

それだけだ。

 

エンジンシティを出て、ワイルドエリアに入る。比較的安全な場所を見繕うと、キャンプを展開する。

 

ワイルドエリアの中には、レンジャーが常駐していて、キャンプを開いても比較的安全な場所がある。

 

こういう拠点を経由して。

 

鍛えるトレーナーは多い。

 

格闘ジムのジムリーダー、サイトウさんとは時々ワイルドエリアで顔を合わせる。

 

サイトウさんはユウリより二回りくらい年上で、兎に角体を鍛えていることが一目で分かる女性だ。骨格からして違う。

 

まだ成長期なんだし、いずれ伸びるとサイトウさんには言われたけれど。

 

そんなサイトウさんも、ジムリーダーでありながら、ワイルドエリアでは何度も危ない目に会ったという。

 

そういえば、ポケモントレーナーには必修科目として、ワイルドエリアでの修練が何年か前から義務化されたと聞いている。

 

これを聞いて嫌がったトレーナーもいるらしいが。

 

ひょっとすると、ポプラさんに聞かされた事件が原因なのかも知れない。

 

エースバーンに手伝ってもらってテントを立てると。

 

他のポケモン達を呼び出す。

 

魔竜ムゲンダイナはとにかく寡黙で、周囲を我関せずと言う感じで浮いている。紫色の、骨で出来たドラゴンとでもいうべき禍々しい姿だが。実際暴走状態が収まってからは、穏やかなものである。

 

近所に住んでいるポケモン研究の大家、マグノリア博士に聞いたのだけれど。

 

ひょっとしたら異世界から来たポケモン、ウルトラビーストの一種かも知れないと言う話である。

 

いずれにしても、ムゲンダイナは暴走が収まった後はとても大人しく、戦闘でも過剰に暴れる事はしない。

 

カジリガメは殆どユウリの背丈と同じくらい甲羅の高さがある巨大な肉食性の亀で。ポケモンらしく強力な顎と、水を操る力を持っている。

 

力は極めて強く。幾つかの節目となる戦いでは、文字通りの要塞として活躍してくれた。

 

ラフレシアは大きな花がそのまま歩いているようなポケモンで、独特の臭いを常に放っているのだけれども。

 

性格は極めて温厚で、やんちゃなエースバーンや、獰猛なカジリガメに比べて、一番手が掛からなかった。

 

とはいっても、手が掛からないからと言って放置していてはいけないのも事実で。

 

基本的に寂しそうにしていないか、いつも目を配るようにしている。

 

ザシアンは他のポケモンと積極的になれ合うつもりは無い様子で、キャンプの隅っこに丸まってじっとしている。

 

しかし、ユウリの方は見ているので。

 

ユウリという人間を見極めようとしているのかも知れない。

 

エサはきちんと食べてくれるけれど。

 

それ以外では、基本的に馴染もうともしなかった。

 

そして、マホイップである。

 

呼び出した瞬間、周囲に緊張が走る。

 

ムゲンダイナはじっとマホイップを見つめ。普段は丸くなってじっとしているザシアンでさえ、顔を上げてマホイップの方を見つめた。

 

マホイップは枷から解放された手をしばらく触っていた。鉄も毒も苦手なフェアリータイプだ。さぞや辛かった事だろう。

 

だけれども、そうしないと制御出来ないほどの怪物。

 

どこでそんな力を手に入れたかは分からないが。

 

ポプラさんの話によると、エンジンシティの襲撃事件の少し前から、ワイルドエリアの巣穴が片っ端から襲われ。巣穴の主になっているポケモンが食い荒らされる事件が続出していたという。

 

このあからさますぎる血の色。

 

そして異常すぎる戦闘力。

 

犯人は十中八九このマホイップだろうという話だけれども。

 

伝説のポケモンですら注意を払った様子からして、それは間違いの無い事なのだろう。

 

手を叩いて、周囲を見回す。

 

「はい、これからこの子の面倒を見るからよろしくね。 この子の名前はどうしようかな」

 

「……」

 

マホイップが手をかざすと、恐らくサイコパワーだろう。その手に木の棒が収まっていた。小さな木の棒だ。気にするほどでもない。

 

そして、マホイップが地面に文字を書く。

 

文字を書けるのか。

 

エンジンシティの戦いについては、後からくわしくポプラさんに聞いた。迎撃の指揮をとったカブさんの先手先手を取り、人間の心理の裏をつくような戦術を矢継ぎ早に繰り出してきたという。

 

知能が高いことは知っていたけれど、文字を率先して書くとは。

 

伝説のポケモンの中には、人間の言葉を喋るものもいるらしいけれど。

 

文字を書いて意思疎通をしてくるポケモンはユウリも始めて見た。

 

「クリーム? それが貴方の名前」

 

うっすらと嗤うマホイップ。

 

狂気的な目の光と、その悪意に満ちた笑みは。愛くるしく人間と共存している他のマホイップと同じポケモンだとはとても思えなかったが。

 

身柄を引き受けると決めた以上、放置するつもりはない。

 

「分かった、貴方の事はこれからクリームと呼ぶね。 クリーム、これからカレーを作るけれど、何か好みの味はある?」

 

「……」

 

ついと視線を背けると、後は隅っこの方に行ってしまうクリーム。

 

これは時間が掛かるな。

 

だが、そもそもとてつもなく危険なポケモンなのだ。

 

それは、ユウリもよく分かっていた。

 

だから、気にするつもりはない。

 

人間に比較的身体構造が近いエースバーンに手伝って貰って、カレーを作る。別の地方から入ってきたこのからい料理は、ガラルではとても人気だ。他にもカントー地方などでも人気だと聞いている。

 

カレーだからからくするべき、というのは安易な考え。

 

生クリームを使って甘くしたり。或いは果実を入れてみたりと。

 

カレーは色々な活用方法がある。ナンと呼ばれるパンで食べる方法もあるらしいけれど。現在のガラルではお米で食べるのが主流だ。

 

ワイルドエリアでは、色々な食材が手に入るので。

 

それを使ったカレーのレシピも開発されている。

 

ポケモンにはポケモン用のカレーを作る。

 

基本は人間のものと同じだが、これについてはよく分かっていないらしい。

 

少なくとも犬や猫などには、人間と同じものを食べさせてはいけないというのは最低限の知識で。

 

人間が問題なく食べられても、毒になるものが存在している。

 

だがポケモンの場合、殆ど人間が食べられるものは口に出来る。

 

これもマグノリア博士によると、よく分かっていないことの一つなのだそうだ。

 

しばしカレーの調理に没頭する。

 

ただ、カジリガメとラフレシアに事前に告げてある。

 

あのマホイップ。クリームからは、目を離さないようにと。

 

勿論二体も分かっているだろう。ユウリと一緒に、散々修羅場をくぐってきたのだから。クリームが如何に危険か何て、一目で分かる。

 

程なくして、カレーが仕上がり、七皿に盛る。

 

クリームも呼ぶが。

 

しらけた目で此方を見た後、一応食べてはくれた。

 

言葉は恐らく通じているな。

 

そう思ったので、話しかけてみる。

 

「どう、クリーム。 結構美味しいと思うのだけれど」

 

じっと此方を見つめた後。

 

クリームは、棒を使って、地面に書いた。

 

「殺して食ったカビゴンの脂肪の方が美味しかった」

 

ぞくりと来たが。

 

巣穴を襲って他のポケモンを喰らい、力を増していたと事前に聞いていたから、それだけで済んだ。

 

そもそも、ワイルドエリアには厳然とした食物連鎖が存在している。

 

弱いポケモンが、強いポケモンに殺されて喰われるところをユウリは何度も見た。

 

マホイップはそこそこに強いポケモンだ。草食性だとは聞いていたけれど、その気になれば肉を食らう事も出来るのかも知れない。

 

飴細工によって体の色が変わるような不安定なポケモンだ。

 

たくさん殺して食べたのなら。体の色が血の赤に染まるのも、当然なのかも知れなかった。

 

食事が終わったので、一旦皆にモンスターボールに戻って貰う。

 

側にはエースバーンだけを残す。

 

エースバーンとは、軽く話しておきたかった。

 

「ねえエースバーン、クリームをどう思う?」

 

エースバーンは人間の言葉は喋れない。

 

だけれども、ユウリの意思をある程度察することは出来るし。ある程度意思を伝える事も出来る。

 

炎を自在に操るエースバーンと、そうして綿密に作戦を立て。

 

色々な戦いを勝ち抜いたのである。

 

エースバーンは身振り手振りで伝えてくる。

 

あいつは危険だ、と。

 

そんな事は分かっている。

 

少し寂しい思いがした。

 

「エースバーンはどうしたい?」

 

しばし黙った後。もう少し、彼奴の事を知りたいと、エースバーンは意思を伝えてくる。

 

頷く。多分、エースバーンもユウリの意図を察してくれたのだと思う。

 

では、少し様子を見ながら動くとするか。

 

それに実際、病み上がりとは言えクリームがどれだけやれるのかも知っておきたい。

 

流石に伝説級には及ばないにしても。

 

具体的に何が出来るのかは、トレーナーとして知っておきたかった。

 

 

 

翌日から、ワイルドエリアを回る。

 

危険地帯は幾つもあり、レンジャーが見張りをしている場所も珍しくもない。

 

湖に入るときは、フロートのついた専門の自転車を使うのだけれども。湖の中には獰猛な魚ポケモンどころか、ギャラドスまでいる事が珍しく無い。最低でもギャラドスから自衛できる実力がないトレーナーは、湖に入る事をレンジャーに制限される。

 

湖の中州にある島には、大量のキテルグマが棲息しているが。

 

このキテルグマ、別の地方では「最もトレーナーを殺したポケモン」として悪名高い。

 

二足で歩く熊のような姿をしたポケモンなのだが、その腕力は凄まじく。体格で上回る熊を一撃で殴り殺す程である。

 

特に人間に悪意を持って接してくる訳では無いが、とにかく加減というものを知らないため。トレーナーを鯖折りにして、背骨を折って殺してしまうケースが珍しくもないのである。

 

トレーナーに世話されているキテルグマですらそれである。

 

野生個体の危険性は言うまでも無く。

 

キテルグマの警戒サインである、両手を挙げて手を振るような動作をして来た場合。撃退出来る実力が無いなら即座に逃げろと、トレーナー免許取得の講習を受けたときには必ず徹底される。

 

殺されるからだ。

 

今回出向くのは、そんなキテルグマが多数棲息している湖中州の島。

 

常にレンジャーが常駐しているのだが。

 

チャンピオンとしての仕事だ。

 

キテルグマの数の調査。

 

それと、危険な個体がいないかどうか調べてほしい。

 

何でも、ダンデさんも危険地帯を回って、こういう仕事をしていたらしく。チャンピオンになった今は、ユウリがその仕事を引き継いだことになる。

 

なおダンデさんは今は後進を熱心に育成しており。

 

実戦経験を積むことは、ユウリとしても望むところだった。

 

そうしなければ、あっと言う間にチャンピオンの座を後進に奪い取られてしまうだろうから。

 

エースバーンとカジリガメを展開した後、少し考えた後、先にザシアンを呼び出す。

 

ザシアンはふんふんと周囲の臭いを嗅ぐと、目を細める。

 

此処は危ないぞ、というのだろう。

 

分かっていると頷くと、クリームも呼び出した。

 

あまり広くない島だが、かなりの数のキテルグマが棲息している危険な島だ。ワイルドエリアには、他にもキテルグマが棲息している場所があるのだが。それらの場所には、キテルグマ以上の戦闘力を持つポケモンがいたりする。人間にとって危険であることが、最強であることを意味はしない。

 

またこの島ですら、ドラゴンポケモンとして有名なオノノクスが棲息している事もあるので。

 

キテルグマは別に最強でもない。

 

現時点では、周囲に展開している面子の実力を考えると、余程油断しない限りは大丈夫である。

 

それにユウリ自身も、身体能力には自信がそれなりにある。

 

古い時代、人間はとても弱かったらしいのだけれど。

 

今の時代の人間は、場合によってはポケモンと互角以上に渡り合えるような身体能力の持ち主がいる。

 

ユウリ自身もそこそこ身体能力には自信がある。

 

キテルグマくらいが相手なら、もし勝てない場合でも、走って逃げる自信は充分にあった。

 

レンジャーの言っていた、島の西側に向かう。

 

盆地になっている其所を、一旦岩陰から確認。かなりの数のキテルグマがいる。繁殖地なのだろう。

 

立ち入り禁止の札が出ている場所がある。

 

ワイルドエリアといっても、トレーナーでも入ってはいけない場所が幾つかある。

 

危険すぎる場所もあるが。

 

多くの場合は、ポケモンの繁殖地だったり、寝床だったりする場所だ。

 

見える札は森の側にあるので。

 

多分彼処がキテルグマの繁殖地だ。

 

しらけた様子でキテルグマを見ているクリーム。いきなり皆殺しにしようとするようなら止めようと思ったが。

 

そこまで見境はなくないか。

 

少しだけ安心したが。

 

それはそうと、順番に彷徨いているキテルグマを見ていく。たまに極めて強大な個体が出現し、それが害を為す事があるのがポケモンだ。余所の地方では島の主、なんてのがいるらしい。

 

キテルグマが主だった場合、その危険度は想像を絶するし。

 

確認はしておくべきだろう。

 

エースバーンが、袖を引いてくる。

 

頷いて双眼鏡で確認。一体、確かにもの凄いのがいる。ふわふわのぬいぐるみみたいな見かけのキテルグマだが。そいつに限っては、全身が傷だらけで、歴戦の猛者である事が一目で分かった。

 

他のキテルグマも距離を置いている。

 

縄張りに五月蠅く。人間が近付くだけで警戒サインを出し、威嚇に応じなければ即座に襲いかかってくる。

 

そんな気性が荒いキテルグマでも、その個体からは距離を置いている。

 

結構危険な個体とみた。気配は読めるので、すぐに分かる。

 

念のため、スマホロトムをかざして、アプリを起動。大体の実力を測る。

 

細かい実力は分からないのだけれど。近年のスマホロトムは進歩していて。憑依しているロトムのサポートもあり。伝説級などの規格外でなければ、大まかな実力を測定できる。念のための二重チェックである。

 

「レベル65か……。 危険地帯だって事を考えると、別に放置でかまわないかなあ」

 

ぼやくユウリ。

 

はっと、誰かが嘲笑った気がした。

 

見ると、クリームだった。

 

「どうしたの?」

 

「人間に対する危険度が高い個体を調査しているんだろう? あれは危険度で言うと高い方だ。 殺さないのは何故だ」

 

棒で地面にそう書くクリーム。

 

多少たどたどしい字で、文法も意訳しなければならなかったけれど。少なくとも何か喋りながら文字を書いていて。その喋っている内容は、明らかにエースバーンやカジリガメには通じていた。

 

ポケモン同士が独自の方法で会話をしていることは前から知られていたが。

 

どうやらかなりクリームは流ちょうに喋れるらしい。

 

ただポケモンが人間と同じように言語で喋っているのかはまだよく分からないらしいのだが。

 

クリームは人間の言葉も書けるので、ある意味バイリンガルとも言える。

 

「そもそも此処はレンジャーが監視していて、実力がないトレーナーは入ってくる事も出来ない。 密猟に来たような人が襲われる事はあるかも知れないけれど、その場合はそもそもレンジャーが事前に見つけなければならないし、襲うのもあのキテルグマだとは限らないよ」

 

「彼奴は明らかに自分の戦闘力に自信を持っている。 恐らく警戒サインも出さずに突っ込んでくるぞ。 そういう意味では潜在的な危険性は高い。 試してみるか?」

 

「何をするつもりかは分からないけれどやめて」

 

止めると、クリームは明らかに嘲笑う。

 

ユウリは別に不快だとは思わない。

 

ポケモンというか、野生の生き物としてはごくまっとうな考えだと感じたし。意見としては間違ってもいないと思ったからだ。

 

エースバーンが警告の声を上げる。

 

どうやら、今のやりとりで。例の一回り強いのが此方に気付いた様子だ。

 

そして、クリームの言葉通り、警告のサインも出さず。まっすぐ突貫してきた。

 

さっと前に出るカジリガメ。

 

ザシアンは立ち上がったが、それだけ。

 

殺すつもりなら一瞬で出来る。

 

そういう判断なのだろう。

 

ユウリは指示を出す。

 

「カジリガメ、死なない程度に」

 

頷くと、カジリガメは前に出る。亀の甲羅など、真正面からたたき割ってやる。そう言わんばかりに突貫してくるキテルグマ。

 

カジリガメはそれを充分に引きつけると。

 

不意に首を伸ばして相手の胴にかじりつき、振り回して地面に叩き付けた。

 

ごわんと、凄まじい音がして。

 

地面が揺れる。

 

キテルグマ達が振り向くが。明らかに最強の個体が一瞬でねじ伏せられたのを見て、戦力差を悟ったのだろう。此方に近付いてはこない。

 

モンスターボールを放って、瀕死になっているキテルグマを捕獲。

 

少しモンスターボールの中で暴れたが、やがて静かになった。

 

後はじっとキテルグマ達を見つめる。

 

格上だった個体が、瞬時にねじ伏せられたのを見て、思うところがあったのだろう。キテルグマ達は、縄張りに入った訳でも無いユウリをじっと見つめていたが。やがて視線をそらした。

 

それでいい。

 

人間の恐ろしさを見せておくだけで良いのだ。

 

侮られることが、害につながる。

 

だから、人間を怖れさせ。近付かないようにしておくのが一番なのである。

 

ポケモンと友達として接することが出来る超級のトレーナーもいると聞いている。だけれども、残念ながらユウリはその次元にはまだ到達できていない。故に、資格を取るときに習った事。それに実戦で覚えた事。それらに忠実に動くだけである。

 

問題なしと判断。予定通りキテルグマの数を確認。一旦群生地を離れると、レンジャー達の詰め所に。何が起きたかをレンジャーに説明して、捕獲したキテルグマが入ったモンスターボールを引き渡す。報告書も提出した。

 

頷くと、専門のトレーナーに渡す事をレンジャーは約束してくれた。

 

まだ若いレンジャーは、モンスターボールを見つめながら言う。

 

「ダンデさんもポケモンは殺さない主義だったけれど、君もそれは継承しているんだね」

 

「その実力がついただけです。 殺すしかない場合は、そうせざるを得ませんでした」

 

「そうか……」

 

「それでは失礼します」

 

頭を下げると、島を離れる。途中、ギャラドスが此方を見ていたけれど。ユウリが一瞥しただけで、離れていった。

 

ユウリは殺さずで此処まで来られたわけではない。

 

ギリギリの勝負になって、どうしても相手を殺さなければ死ぬ状況になった事もあった。その時は、殺さざるを得なかった。

 

悲しかったが、何度もそれを乗り越える内に慣れた。

 

少なくともユウリはダンデお兄ちゃん、いやダンデさんのような無敵のチャンプではない。

 

まだ、迷いは晴れない。

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