仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ アズール×ムラサメ DUST TO DUST   作:正気山脈

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 宇宙に浮かぶ碧い星、地球。
 その海洋上に存在する国家のひとつ、日本に、突如として白い閃光が柱にようになって迸ると、地球は徐々にその形を崩していく。
 さらに光は周囲の惑星も、太陽さえも白く塗り潰すように飲み込み始め――。



「……ハッ!?」

 海底にあるLOT本部のベッドの上で、幼き少女のセピアは目を覚ます。
 荒くなった呼吸を深呼吸で整え、寝汗を掌で拭う。

「何か……途轍もなく大きな脅威が迫っている……これまでに見た事も感じた事もない、破滅の気配が……」

 歴代LOT本部長のヘルメス・トリスメギストスの名を継ぐ彼女は、先程見た夢の光景に胸騒ぎを感じていた。
 やけに現実味のある、全てが滅ぶ災いの悪夢。単なる夢なら問題ないが、彼女はこれを、時を司るトート神とヘルメス神の見せた予知夢だと確信している。
 傍にあった通信機を手に、すぐに部下へ連絡を取った。

『本部長、どうなさいました?』
「ブラウベルク。至急、日本支部へ連絡を。場合によっては他国の支部の力も必要かも知れない」
『なんですと? それは一体……何事ですか?』
「まだ私にも全てを理解できているワケではない。だが、この予感は……確かなものだ」

 声が震えかかるのを堪えながら、セピアはそう言葉を紡ぐ。

「彼も動いてくれれば良いが……」

 ベッドに横たわってそう言った後、彼女は再び瞳を閉ざした。


PAGE.01[赤き魔竜、烈火の邪剣]

 何もかも寝静まったように静かな夜、帝久乃市上空にて。

 

「ヒャッハハハハハ! ここがあのエフェサレフが殺られたってぇ宇宙か!」

 

 人の形に見える二つの影が暗闇の中で街を見下ろし、月の光を背にして、浮遊しながら話をしていた。

 

「マルム。油断するなよ、ヤツが死んだのはこの星の人間の仕業だ」

 

 笑って騒いでいる方の影にそう言ったのは、黒いボーターハットを被っている、和装を着た白い髪の男だ。

 人間味を感じない不自然な漆黒の肌に、尖った耳。両目は白目が確認できず、異様に釣り上がった目の中に紅の瞳だけがそこにあり、まるで刃物で斬り裂いたかのように大きく拡がっている。

 

「わーってるよぉリガレぇ! イヒヒ! でもよ、今回は二人がかりだし簡単に済むんじゃね?」

 

 マルムと呼ばれた黒いスパニッシュ風の衣装を纏う男が、ケラケラと笑いながらそう言った。

 隣にいるリガレという男と同じく白い髪に真っ黒な肌、尖った耳という共通の特徴を持っているが、こちらは瞳の色が淀んだような水色で、大きなネックウォーマーが鼻先まで顔を覆っている。

 

「それでもだ。仮面ライダーの力を侮るべきじゃない」

「アズールだったか。まったく、俺たち刈人を刈るなんて厄介なヤツが出たモンだぜぇ」

 

 リガレとマルム、彼ら二人はゆっくりと地上へと降りていく。

 片や冷めた目付きで、片や狂気に満ちた笑みを浮かべ。

 

「では……」

「この宇宙を刈っちまおうぜぇ!」

 

 

 

 同じ頃。

 帝久乃市の夜空の下で、ノーズリーブの白いウィザードフードジャケットとジーンズを着用した少年が、路地裏で室外機に腰掛けながら、星々を見上げて静かに息を吐いていた。

 フードの隙間から覗く黒髪とグレーのインナーカラー、そして黄色い眼。髪はハネっ気があり、目つきはやや気だるそうに垂れているが、その顔立ちは端正なものである。

 また、その腰には日本刀と脇差しが一本ずつ、そして真っ黒な銃が装備されていた。

 

「母さん、みんな……ようやく始まるよ、ボクらの戦いが」

 

 薄く微笑み、少年は立ち上がって刀を勢い良く振り抜く。

 すると先程まで椅子代わりになっていた室外機に切れ目が生じた後、音を立てて地面に落ちて壊れた。

 

「男も女も老いも若きも幼きも動物も無機物も何もかも関係ない。あまねく命を等しく滅ぼし、尽く、別け隔てなく葬り去ってやる」

 

 破滅を愉しむでも、世界の有り様を嘆くでもなく。

 ただ無表情にそう告げた後に振り返って、そこにいるいくつもの影に語りかける。

 人の姿を成しているものが多いが、中には明らかに人間とは異なるシルエットを形作っているものもあった。

 

「あなた方にも手伝って頂きますよ……共に世界を滅ぼしましょう、盟友さん」

 

 盟友と呼ばれた者たちは返事こそしなかったが、その言葉に応じて頷くような反応を見せ、右腕に『90』と記された腕章を付けたその少年と共に闇の中に消える。

 

※ ※ ※ ※ ※

 

 翌日、午前。

 雲ひとつない快晴の空の下、帝久乃市駅に到着した電車から、四人の少年少女が降りて来る。

 

「んん~、良い天気! 最高の旅行日和じゃん!」

 

 一人は栗色のポニーテール状の髪を揺らして歩く、小柄な童顔の少女。

 そんな彼女の後ろで、短く切った黒髪の少年が穏やかな笑みを浮かべてそれに付いて行く。

 

「若葉ったら、はしゃいじゃって」

「でも本当に今日は晴れて良かったですね……ね、紫乃くん」

 

 言いながらピンクブロンドの髪の少女が、残るもう一人の外ハネの黒髪少年の右腕に抱きつきながら現れる。

 四人は磐戸市からやって来た、新山 若葉と白多 駿斗、そしてロゼ・デュラックと行雲 紫乃であった。

 

「ここが帝久乃市……話に聞いた事はあるが、来るのは初めてだな」

 

 言いながら、紫乃はロゼと共に駅内を見渡す。

 ――巨神の王クロノスを打倒して約半年。封魔司書たちは戦いの後に散らばったラジエルの書の頁の行方を再び捜索しており、磐戸支部の面々もそれに加わっている。

 しかし今日彼らがこの街へ足を運んだのは、LOTで秘任務を受けたからではなく、単に休暇を楽しむためだ。

 街の様子を珍しそうに眺めて、駿斗は紫乃へひとつ質問を投げる。

 

「ここにもやっぱり封魔司書の人がいるの?」

「いや。昔は支部があったと聞くが、いつからかここに戯我は現れなくなったそうだ。だから、封魔司書にとっても戯我にとっても実質的な不可侵領域になっている」

「そんなところもあるんだ?」

「織愛曰く、それを知ってなおここを襲撃しようとした戯我が以前いたようだが、大部分が消されたらしい。生き残ったヤツに尋問したら『()()()()にみんな殺された』とかなんとか」

 

 戯我でさえも恐れる青い化け物。

 一体どれほど強いのだろうか、やはりLOTの敵なのだろうか。

 難しそうに眉をひそめて悩んでいる駿斗の右腕に、若葉が絡みつく。

 

「ぅわっ、若葉!?」

「こら駿くん! 今日は仕事の話はナシでしょ~! カワイイ彼女を放っておかないの~!」

 

 これでもか、とばかりに若葉はギュッと密着し続ける。

 駿斗が顔を赤くしてタジタジになる中、ロゼも紫乃の手を後ろから握り締めた。

 

「紫乃くんもね。せっかくのダブルデートだし、楽しみましょう?」

「ん……そう、だな」

 

 紫乃も頬を染め頷き、四人は外を目指して歩き出す。

 だが、その時。

 

「わぁ~、おとーさんおかーさん! はやくはやく~!」

 

 不意に子供の声が耳に届いて思わず振り返り、紫乃はぎょっと目を見開く。

 そしてロゼたちの腕を引いて大慌てで通路の方に小走りに進み、曲がり角に隠れた。

 

「ど、どうしたの?」

「……すまん、あの三人とは顔を合わせたくないんだ」

 

 駿斗に尋ねられて、紫乃は件の子供がいた方向、仲睦まじい三人家族のいる場所を指で差す。

 美しく穏やかな表情の長髪の女性に、やや目つきの鋭い眼鏡をかけた男、それに紫乃によく似た小柄な男の子。

 彼らを見て、すぐに駿斗が素性に思い至った。

 

「もしかしてあの人達、八重垣家の?」

 

 紫乃が頷くのを見ると、三人は納得する。

 かつて八重垣家の子として生まれたばかりの頃。紫乃はキュクロプスの眼という組織によって誘拐されてしまい、自分の本当の名も生みの親の顔も知らないまま、人間兵器として育てられて来た。

 それから紆余曲折あって姉の菫と出会って自分のルーツを知り、血の繋がった家族の姿を遠目に見た事はあるのだが、未だに菫以外とは面と向かって話した事はない。

 この場に菫がいない事から、彼女の方は仕事中で、そして八重垣家が旅行する事は知っていたとしても旅先までは知らなかったようだ。

 

「心配ないとは思うんだが……万が一オレの事がバレると、その……困る」

 

 戦いに身を投じる自分と関わって、彼らの平穏な日々を壊したくなどない。

 その思いから八重垣家との交流を断っていた紫乃は、ここに来て想定外の邂逅を果たしてしまう事に強い危機を感じていた。

 やがて一家が手を繋ぎ去っていくのを確認すると、安堵の息を吐いてロゼたちと向かい合う。

 

「すまないな、せっかくの旅行なのに」

「ううん、しょうがないよ。行き先まで同じとは限らないし、そう何度も会う事もないだろうから気楽に行きましょう」

 

 励ますようにロゼがそう言って、改めて一行は駅から外へ出て行った。

 

 

 

 一方、帝久乃市のショッピングモールにて。

 

「翔兄ちゃん、こっちこっち!」

「うふふ。フィオレお姉様ったら、転んじゃいますわよ?」

 

 天坂 翔とアシュリィ・ツキミ・フィオレの三姉妹は、ここに買い物ついでに遊びに出かけていた。

 恋人や姉たちと休日を過ごすのが楽しいようで、アシュリィは翔の顔を覗き込んで微笑みかける。

 

「今日の晩御飯はどうするの、ショウ」

「そうだなぁ……」

「ちなみに私はカレーが良いと思う。カレーの気分。カレー、カレー」

 

 せがむように連呼される。翔は困ったように微笑むと、ゆっくり首肯して彼女を落ち着かせた。

 

「わかったわかった、じゃあ今日はカレーにしようね。ハンバーグ付きで」

「ん!」

 

 自分の両手をぎゅっと握り、アシュリィはガッツポーズを取る。

 翔は微笑んだまま、そんな彼女と手を繋いで歩こうと腕を伸ばそうとする、が。

 その寸前で、ピタリと手が止まった。

 

「……」

「あれ、ショウ? どうしたの?」

「お兄様?」

「何かあった?」

 

 三人に尋ねられても、翔はその視線を虚空に彷徨わせている。まるで、彼女らには見えない何かを見つめているかのように。

 彼の姿から、アシュリィは察した様子で質問を投げた。

 

「もしかして()()()()?」

「うん……来たみたい」

 

 ようやく翔は反応を示し、溜め息を吐く。

 うんざりだ、とばかりの様子で。

 

「ごめん、行ってくる。多分5分か10分くらいで戻るから」

「気をつけてね、無理しないで。何かあったら私たちも手伝う」

 

 アシュリィたち三姉妹に見送られながら、翔は小さく手を振って、その場から去っていく。

 そして外へ出て青い空を見上げた後、すぐさま人のいない場所まで走り出し、人目がなくなった直後に大きく跳躍した。

 周囲のビルよりも高く飛び、ある一点に目を向けた翔は、二人の人影が立っているその屋上に降りる。

 突如として翔が降ってきたので、その二名は、リガレとマルムは目を丸くした。

 

「刈人、お前たちが探しているのは僕だろう」

 

 言いながら、翔は二人と対峙する。

 人間離れした力とその言動を受けて、リガレらはすぐにその正体を察した。

 

「こいつ、ガキのクセに俺らに気づいてやがったのか!?」

「なるほどエフェサレフを倒すだけの事はある。小僧と言えど、やはり侮れない」

 

 マルムはぎょっとしながら、リガレは鋭い目をさらに尖らせるように細めながら、身構える。

 

「仮面ライダーアズールの天坂 翔、貴様は我ら刈人のリガレとマルムが倒す。そして、この宇宙を虚無に捧げるのだ」

「光栄に思えよ! 刈人が二人同時に動くなんて滅多にないんだからなァ!」

 

 そう言い放ち、二人はじりじりと眼の前の少年との間合いを計り、戦闘態勢に移ろうとしていた。

 だが、その前に翔は首を左右に振る。

 

「リガレ、マルム。もういい加減、この宇宙を狙うのをやめてくれないかな」

「なに……? 今更命乞いのつもりか」

 

 嘲るようにリガレが言うと、翔は真剣な面持ちでその言葉を「違う」と否定した。

 

「お前たち刈人だけじゃなくて、似たようなヤツらとも戦った。その度に倒した。でも」

 

 翔は一度そこで言葉を区切った後、溜め息混じりに眉根を寄せて話を続ける。

 

「何度現れても見つけ出して必ず消すとは言ったけど、やられるだけなのに戦うくらいならもう諦めてくれ……本当に迷惑なんだよ。今日だって買い物の途中だったんだぞ」

 

 つまり、自分たちは買い物前の些事として処理すると言っているのか。別の用事の方が重要だと言うのか。相手にもならないと。

 マルムはそう思い、ネックウォーマーの内側でギリギリと歯を軋ませる。

 

同胞(エフェサレフ)を殺しといて、調子に乗った事言ってんじゃねぇよガキが!! 大体俺らが他のザコ共と同じだと思ってんのか!?」

「落ち着けマルム」

「冗談じゃねぇ!! こんなにナメられて黙ってられるか!! 今すぐ、ブッ殺すゥッ!!」

 

 そう言って隠れた口をガバッと曝すと、そこにはサメのようにズラリといくつも牙が並んだ大きく裂けた口があった。

 文字通りの大口を開けてマルムは噛み付かんばかりに飛びかかるが、翔はバックステップでひらり身をかわし、ポケットからマテリアフォンを取り出す。

 

《ドライバーコール!》

「あくまで殺し合いが望みなら」

《ブルースカイ・アドベンチャー!》

「この街を守るためにも、僕は容赦しない」

 

 言いながら、起動したマテリアプレートをドライバーにセット。そして、そのままマテリアフォンをバックル部へ近づけていく。

 

《ユー・ガット・メイル! ユー・ガット・メイル!》

「変身――」

「させるか間抜けが!」

 

 そんな言葉と同時に、マルムの口から丸いカプセルのような物体が吐き出され、中空で割れる。

 続いて破損したカプセルから溢れ出てくる、微細な蠢く『何か』は、翔の方へ向かい。

 リガレとマルムがほくそ笑んだ直後に、青い光が翔の周囲に吹き上がり、バチッと火花を上げその細菌のようなもの全てが死滅した。

 

「なっ!?」

AA(アンチ・アクイラ)ウィルスか……やっぱりお前らがヴェーダ・エレクトロニクスに作らせたものだったんだな、これは。でももう二度と効かない」

「ば、バカな、なぜ通じていない!?」

 

 今までの冷静な態度から打って変わって激しく動揺するリガレと、威嚇するように鋭い牙をガチガチと噛み鳴らすマルム。

 一度例のウィルスに苦しめられた翔は、対策のためにそれを遮断する術を既に身につけていたのだ。同じアクイラの力であるならば、そしてより洗練された力を持つ翔ならば不可能ではない。

 マテリアフォンを引き続いてドライバーへとかざし、翔は今度こそ変身を遂げる。

 

「変身!」

Alright(オーライ)! マテリアライド!》

 

 現れたのは、一本の剣を右手に携えて白い装甲で身を護る、銀のマフラーをたなびかせる青き戦士。

 

《ブルースカイ・アプリ! 蒼穹の冒険者、インストール!》

「この宇宙から消えろ……永遠に」

 

 剣先を突きつけ、仮面の戦士、アズールは告げた。

 

「リガレ!!」

「ああ」

 

 すると、マルムがそのアズールセイバーを叩いて飛び下がり、呼びかけられたリガレは自身の両手に二つの道具を形成する。

 ベルトにセットされた状態の真っ黒な銃と、鈍い金色の本のような形をした外装だ。

 

《レリックドライバーD(ダーク)!》

《ヴォイドユニット!》

 

 銃の方には何かを装填するためのスロットがあり、その右手側のスロットに本型の外装が装着される。

 さらにリガレはもう一つ、真っ赤な液体の詰まった弾丸のような形状のインクカートリッジをその手に生み出す。

 

「アレは……なんだ?」

 

 アズールは自分の持つ変身アイテムとも違うそれらを見て、戸惑いを隠し切れずにいた。

 リガレはその間に、手にしたインクカートリッジのスイッチを起動する。

 

《烈火剣呑!! クリカラリュウオウ!!》

 

 続いてそれを空いた左側のスロットにセットすると、ドライバーからガラスの割れるような音と禍々しい声が響いた。

 

Vanishing Color(バニシング・カラー)!! ABYSSAL GRADATION(アビサル・グラデーション)!!》

『変身!!』

DRAIN-UP(ドレイン・アップ)!!》

 

 銃のトリガーをリガレが引くと、本の表紙が開いて中から巨大な龍の爪の形があらわとなり、カートリッジを掴むかのように覆い被さった。それと同時に、マルムの頭上に大きな影が舞い降りる。

 右手に宝珠を持ち、一本の巨剣にその長い身を巻き付け、飲み込まんとするかのように剣の切っ先に牙を立てる真紅の龍。

 龍はその身を真っ赤なインクに転じ、その液体をマルムがガバッと口を開け飲み干す。

 その直後、マルムの肉体も液状となってハンコのような形になり、それがリガレの身体に押し込まれて肉体が溶け合っていく。

 

《森羅万象天地万物生々世々!! 等しく喰らい呑み込む虚無の龍!! ディアボリックドラゴン!!》

 

 音声と共にドロドロとしたインクがその場を満たし、二つに分かれて粘液の塊になったかと思うと、それらが人の形を形成し始める。

 ひとつは、右手に燃え上がるような赤い刀身の剣を持つ、睨みあげるように血走った大きな複眼が特徴的な黒い騎士。リガレの似姿だ。

 もう片方は、恐竜の化石標本を彷彿とさせるような赤い骨の装甲を持つ屈強なドラゴンの戦士で、口部には鋭利で凶暴な牙が並ぶ。マルムと良く似ている。

 どちらも、リガレが装備していたレリックドライバーDを装着していた。

 

「俺は仮面ライダーサイフォス」

「同じく仮面ライダーデモゴルゴン!」

『虚無の使徒たる奈落の刈人の名の元、お前を滅ぼす!』

 

 リガレはサイフォスと、マルムはデモゴルゴンと名乗り、同時に襲いかかる。

 サイフォスがその長剣に燃え立つ炎を纏わせて袈裟に振り下ろすと、アズールは即座にそれを自らの剣で打ち払い、続くデモゴルゴンの爪の攻撃を飛翔して避けた。

 

「チィッ!?」

「遅い」

 

 言いながらアズールセイバーをデモゴルゴンに向かって投擲し、飛びながら素早く接近。

 骨竜の戦士はそれを尻尾で弾き落とし、アズールを迎え撃つべく拳を握って肉迫する、が。

 

《アズールセイバーV2!》

「ハッ!」

「なぁっ!?」

 

 呼び出されたもう一本の剣が、不意を打たれたデモゴルゴンの身体を薙ぐ。

 装甲が斬り裂かれて黒い泥のような液体を出血し、よろめいたところにはたき落とされたアズールセイバーを拾い上げてもう一閃。

 だがそこにサイフォスが割り込み、自らの武装である終焔剣絶終(しゅうえんけんぜっと)で受け流す。

 

「なかなかやるな……だが」

刈人(俺たち)は死なねぇ!」

 

 デモゴルゴンの言葉通り、既に傷の再生は始まっている。

 エフェサレフの変身した仮面ライダーデマイズにも見られた、自己再生能力だ。

 

「知ってるよ。消すのはこれからだ」

 

 そう呟くと同時に、再び剣を投擲。今度はサイフォス目掛けて、二本同時に飛んでいく。

 サイフォスは左右から挟み込むような軌道を描くそれらの投射物を、難なく剣と拳打で防ぎ切り、アズールに向かって終焔剣絶終による炎の刃を放った。

 だが、件の戦士は大きく飛翔して眼前から消え、背後のデモゴルゴンの方に回り込んでいる。

 

「速……!?」

 

 デモゴルゴンもハッとして、鞭のように尻尾を振り叩き潰そうとするが、アズールは寸前で立ち止まり攻撃から逃れる。

 空振りだ。アズールが飛翔して右拳を突き出して来るのを見ると、骨の刈人は即座に腕を交差させ防御姿勢を取った。

 そしてインパクトの直前、彼の拳が青い輝きに包まれる。

 拳撃は腕に命中し、光が直撃箇所へと浸透していく、その瞬間。

 

「ガアァッ!?」

 

 デモゴルゴンの腕に亀裂が走り、その内側から流れ出た黒き泥が空中で霧散した。

 

「い、痛ぇ……!?」

「バカな!? なぜ負傷が癒えない!?」

 

 一体何が起きたのか。

 その答えが、他でもないアズールの口から語られる。

 

「さっきAAウィルスを消した時と同じ力だ……攻撃が当たるほんの一瞬だけ、お前たちの肉体の情報を()()()()()

「書き、換え……!?」

「お前らが不死身なのは、身体そのものがこの宇宙に存在しない物質……黒い泥によって構成されているからだろう。あの光は、お前たちの肉体をデジブレインと同一のものに作り変える力なんだよ」

 

 サイフォスがハッと目を見開く。

 電脳情報生命体たるデジブレインは、周囲にサイバー・ラインに繋がるゲートが存在しなければ身体が維持できず消滅してしまう。たとえ刈人であったとしても。

 自己学習と自己進化を続けるアクイラの力は、刈人を追い詰めるまでに至っているのだ。

 甘く見ていた、とサイフォスとデモゴルゴンは痛感せざるを得なかった。

 だが頭に浮かぶ後悔の言葉は、アズールの前へ踏み出す足音の前に掻き消される。

 

「じゃあ、そろそろ消えて貰おうか」

 

 グッと拳を構え、接近してくる青い怪物。

 ――しかし、その時だった。

 

「うっ!?」

 

 突如として響いた銃声と共に、砂煙が巻き上げられ、アズールの視界が妨げられてしまう。

 その一瞬の隙をついて、リガレとマルムが姿を消した。

 

「そんな、逃げられた……!」

 

 アズールは上空から周辺を探るものの、やはりどこにもいない。

 一体どこに行ってしまったのか。落ち着かない気分のまま、翔は一度アシュリィたちの元へ戻って行った。

 

 

 

 そしてそのビルの下、地上の道路では。

 

「……今のは……?」

 

 街を歩く紫乃が、頭上から微かに聞こえた音に思わず空を仰いでいた。

 ロゼは隣にいる紫乃が突然立ち止まったので、きょとんとして声を掛ける。

 

「紫乃くん、どうしたの?」

「いや、なんでもない。多分気のせいだろう」

 

 そう言いながら、再び紫乃はロゼと駿斗、そして若葉と共に散策を続けるのであった。

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