仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ アズール×ムラサメ DUST TO DUST   作:正気山脈

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 帝久乃市のビルの屋上で起こったアズールと奈落の刈人の戦闘。
 トドメを刺される寸前のところで何者かに救出され、港の方まで運ばれたリガレとマルムは、呼吸を整えて顔を上げる。

「あ、危ないところだった……」
「なんか知らんが助かったぜ。で、お前誰ェ?」

 刈人たちが問いかけると、その人物、右腕に『90』と記された腕章を付けている少年が微笑んだ。

「お初お目にかかります、刈人様。ボクはグレイ・ダスト。あなた方の信奉者にございます」

 信奉者。それは即ち、奈落秘神教の一員という事である。
 それを聞くと、二人は警戒を解いて話を聞く姿勢に移った。

「実は『ある者たち』と協力関係を締結しておりましてね。彼らの力を借りれば、アズールを確実に倒す事ができるでしょう」
「……ほう」

 自分たちが手も足も出なかったあのアズールを討つ秘策がある。
 刈人たちはすぐに興味を惹かれ、やや前に身を乗り出す。

「では聞かせて貰おうかな、グレイ」
「どうやってあの野郎をブチ殺す?」

 グレイは二人の問いに唇を釣り上げながら、作戦の概要を語り始めた。


PAGE.02[Gray Dust]

 リガレとマルム、二人の怪人を退けた後。

 翔は、ホメオスタシスの拠点であるZ.E.U.Sグループの本社ビル、その地下研究所を訪れていた。

 

「刈人に逃げられた!?」

 

 そんな驚愕の声を上げたのは、Z.E.U.S社長の静間 鷹弘。

 報告を受けたのは彼だけではなく、響や鋼作、翠月に浅黄も愕然としていた。

 

「銃声が聞こえて前が見えなくなったと思ったら、もういなくなってまして……簡単に倒せる相手だからって油断もあったかも知れないです。すいません」

「いや、お前が無事なら良いんだけどよ……珍しいな? いつもだったら確実に息の根を止めてるのに」

「なんか嫌だなその言い方、そもそも連中の場合は死なないんだから殺すとは言いません。存在を消してるだけです」

「なおのこと怖いわ」

 

 苦笑しつつ鷹弘はコーヒーを啜り、報告の続きに耳を傾ける。

 

「連中には協力者がいるようです、まだ詳細は調査できてませんけど……恐らくは奈落秘神教でしょうね」

「またあいつらか……」

「しかも刈人の方はAAウィルスを持っていました。このことから、やはりヴェーダ・エレクトロニクスとも繋がりがあると見られます」

 

 その話に響は表情を強張らせ、ギュッと拳を握る。

 かつてホメオスタシスの面々の前に現れ、カーネルドライバーによって変身能力を奪い、Z.E.U.Sグループからアプリドライバーの技術を盗んだ敵。それが、ヴェーダ・エレクトロニクス。

 AAウィルスによって翔をも一時的に無力化した彼らだが、最終的には響の怒りを買って会社ごと滅ぼされ、主犯格の四人も逮捕された。

 そして、翠月は彼らに取り調べを行い、ある情報を得ている。

 

「ヤツらは奪った技術を独占するだけではなく、AAウィルスも含めて刈人以外にも売り込むつもりでいたようだ。要は兵器運用だな」

「その取引相手が刈人や奈落秘神教ってワケかよ。ふざけやがって……」

「正義がどうとか抜かしておいて、やる事が結局ただの金儲けとはな。本当に救いようのない連中だ」

 

 鷹弘も翠月もこの場にいない囚人に憤懣をあらわにし、浅黄もうんうんと同意した。

 続いて響が、コーヒーを飲み干して唇を拭う。

 

「俺に刈人は倒せないが……奈落秘神教のメンバーくらいなら相手にできる。ホメオスタシスのパトロールを増やしておこう、この時期は観光客も多いから被害が出ないように気をつけないといけないしな」

「僕も街を探ってみる、もしかしたら手がかりとか見つかるかも」

「こっちで何か掴んだら報告するよ。それから、お前なら心配ないとは思うが……無茶はするなよ」

「うん!」

 

 翔と響は頷き合い、別々の場所へ向かって調査に乗り出すのであった。

 

※ ※ ※ ※ ※

 

 同じ頃。

 紫乃とロゼ、そして駿斗と若葉は、帝久乃市のアミューズメントパークを訪れていた。

 ここではZ.E.U.Sの手による最新技術が使われたアトラクションやゲームなどを楽しむ事ができ、若葉は早速とばかりに駿斗の腕を引いて、立体映像を利用したホラーコースターへ導こうとしている。

 

「待って待って若葉!! これはヤバい!! 絶対ヤバい!!」

「ほらほら行こうよ駿く~ん、超コワそうじゃん!」

「だから待ってって行ってるんだよぉ!」

 

 涙目になって若葉に引きずられる駿斗を見ながら、ロゼはクスリと笑みをこぼす。

 

「楽しそうね、あの二人」

「オレたちも行くか」

「えぇ!」

 

 指を絡め合わせるように手を繋ぎ、紫乃とロゼもその後に続く。

 一般的な人間の生活を送って来た駿斗や若葉と違い、彼ら二人は日夜怪物である戯我を相手取っている。霊体やゾンビの相手など慣れたものだ。

 故に、創作物のホラー演出などで恐怖するはずがない。

 はずがないのだが――。

 

「あー、怖かったー! ね!」

『……』

 

 アトラクションが終わった後、楽しそうに笑顔を見せて出て来たのは若葉のみであった。

 他の三人は半ば放心状態で、紫乃は頭を抱えて唸っており、ロゼは怯えた様子で紫乃の腕に抱きつき、駿斗に至ってはゾンビのように顔が青褪めている。

 座席の耳元に仕込まれたスピーカーから聞こえて来る幽霊の囁き声、足元から現れる立体映像の真っ白な無数の手、そして憎しみを募らせた顔で睨みつけてくる長い髪の女の幽霊など、BGMも含めた凄まじいまでの恐怖演出の数々。

 封魔司書である紫乃とロゼにとっては戦って倒せる程度の存在であるが、コースターでは安全バーによって身動きが取れないため、一方的にその映像や音声を体感させられるのだ。

 

「次どこ行こっか!」

「わ、若葉……一旦休憩しない? ほら、二人も疲れたみたいだし」

「えー? まだ最初のアトラクションだよ?」

「むしろなんで真っ先にホラーに行ったの……?」

 

 平気な顔で首を傾げる若葉、他の二人も額の汗を拭いながら息をつく。

 

「なぜホラージャンルの小説や映画で怖がるヤツらがいるのか、分かった気がするな」

「抵抗できない状態だとこんなに怖いものなのね……」

 

 駿斗もコクコクと頷き、若葉は三人を見て「大袈裟だなぁ」と唇を尖らせる。

 そうして一旦休憩がてらにソフトクリームを買い、ベンチに座って食べていると、紫乃の視界の端で奇妙なものが映り込む。

 

「む?」

 

 和やかな雰囲気のアミューズメントパークに相応しくない、黒スーツにサングラスをかけた男女の集団。

 何かのイベントなのだろうか。そう思っていると、スーツの集団は紫乃とロゼの姿に気づいてゆっくりと接近して来る。

 

「仮面ライダーを発見」

 

 サングラスの奥から覗く、殺意に近い異様な威圧感。明確な敵意。

 二人はその集団の呟く声も聞こえており、ソフトクリームを若葉と駿斗に渡して立ち上がる。

 すると黒スーツたちは、胸ポケットからあるものを取り出す。

 

「アレは……?」

 

 そこにあったのは、太陽の光を反射して光る一枚のメダル。

 色は銀で、表面には恐竜の姿が刻印されている。

 

「この宇宙の滅びのため……我々の命を虚無に捧げる」

「我々の欲望を喰らい、全てを破壊せよ」

 

 直後、黒スーツたちは口を開いて舌を出し、その舌にメダルを()()した。

 

「なっ!?」

 

 驚くほどすんなりとメダルが体内に入ったのを見て、紫乃とロゼは唖然とする。

 しかし事態はそれだけで終わらない。メダルを取り込んだ黒スーツ集団は口から黒い泥のような塊をベシャリと嘔吐し、それが硬貨の擦れ合う金属音を発した後、人のような形に変貌を果たす。

 その多くは恐竜や翼竜のような姿をしているが、それに当てはまらないものも二体ほどいる。

 一体は、二本角と朱色の長髪を生やし、後頭部からは黒い大蛇の長身を伸ばす怪人。

 もう片方は左半身が純白で右半身が真っ黒な、両腕に翼を生やす猛禽のような怪人であった。

 

「ウソ……!? 戯我、なの!?」

「一体なんなんだ、あのメダルは!!」

 

 これまでにない出来事に動揺しながらも、紫乃たちはレリックライザーを手に取って応戦しようと動く。

 そんな中、怪人たちが現れたのとは別方向、四人の背後から愉快げな声が聞こえて来る。

 

「セルメダル。800年前の異界に存在した、この世界で言う『遺物』だよ」

 

 そこにいたのは、ノースリーブの白いフードジャケットとジーンズを身に纏い、左腕に『90』と記された腕章を付けている、腰に日本刀と脇差を帯びた少年。

 彼の姿を見た瞬間、紫乃は言葉を失って目を見張った。

 

「アレを人間に投入する事によって、宿主の欲望を満たす事で成長する『ヤミー』と呼ばれる怪人が生まれるのさ。まぁ今回のケースは例外なんだけど……要するに、戯我とは違うものなんだよね」

「……は?」

「やぁ、46(シロ)。久し振り。こんなところで会うなんて、偶然だねぇ」

「お前……まさか、そんな……90(グレイ)、なのか!?」

 

 微笑みながら気さくに紫乃へ手を振り、しかし当の紫乃はまるで幽霊でも見ているかのように狼狽えている。

 話している間にもヤミーと呼ばれた怪人は、恐れ慄く人間たちに襲いかからんと唸り声を上げたりなどで威嚇しているが、他ならぬ白フードの少年自身が睨みを効かせ抑え込んでいた。

 どうやらまだ危害を加えるつもりはないらしい。それを察した駿斗は、彼が今すぐその気にならない内に、若葉を伴い周囲の人間を避難させるべく動き出す。

 

「驚くのも無理はないか。キミたちにとって、ボクは()()()既に死んだ存在なんだから」

 

 苦笑しながら少年は語り、様子を窺いながらロゼがこっそりと紫乃に尋ねる。

 

「紫乃くん、彼は?」

「……あいつはグレイ。オレと同じ、キュクロプスの眼に囚われていた子供たちの一人だ」

 

 フードの少年、グレイは懐かしむように空を仰ぎ、薄く目を細めながら紫乃の話の続きを聞く。

 

「施設からの脱走と大人たちへの復讐でオレとクリスの意見が分かれてしまったその日、こいつの班は訓練を受けていた」

「懐かしいねぇ。ボクの班は96(クロ)派が多かったけど、ボク自身はキミと同じ脱走派だった。どちらにしてもアダンたちにバレないよう、いつも通り訓練を受けてヤツらの目を欺くのがボクらの役目だったんだけどね」

 

 けど、と続けて、グレイは刀の鞘をグッと握り締める。

 

「反逆の日が来て浮足立ってたのかな? ボクらは運悪く……訓練用の戯我に敗れてしまった」

「……オレがその顛末を知ったのは、随分後の話だったがな。だが、まさかお前も生きていたとは」

 

 語る言葉とは裏腹に、紫乃はレリックライザーから手を離さず、グレイの一挙手一投足に目を配っていた。

 

「なぜお前はこんな事をしている」

「ハハッ! なぜ? どうしてだって?」

 

 唇を歪めて視線を紫乃の方に戻し、グレイは数度頷く。

 

「うん、そうか。そうだろうね……キミはLOTに救助されて運良く助かったんだから、ボクの気持ちが分からなくても不思議じゃない」

「……どういう意味だ? お前も、誰かに助けられてここにいるんじゃないのか?」

「そうだよ、その通りさ」

 

 だけど、と続けた後、グレイの口元から笑みが消える。

 

「人の悪意と世界の破滅からは逃れられないんだよ。誰一人、ね」

「なに……?」

 

 世界の破滅。

 彼の語る言葉に、紫乃は引っかかるものを感じるが、それに構わずグレイは話を続ける。

 

「46……いや、今は紫乃だったね。ボクはね、この宇宙の外にいる虚無に捧げるために全てを滅ぼさなくちゃいけないんだ。全ての宇宙はそうして滅ぶんだ、それが自然の摂理であるとすら言って良い」

「グレイ……?」

「この宇宙に限らず、あらゆる世界のあらゆる時代で、悪意が人を汚染しているんだよ。こうしている間にも、他の宇宙ではボクらの時空と同じように戦争や飢餓などで苦しむ人々がいる……」

 

 刀の柄から手を離すと、グレイは唇を釣り上げて紫乃の方にゆらりと歩み寄っていく。

 

「奈落秘神教は、その苦しみから世界を、人を救済(殺戮)する組織なんだ。どうかな紫乃……キミからLOTに取り次いでさ、ボクらと協力するよう要請してみるっていうのは」

 

 そして、そのまま友好的な笑みを見せて右手を差し出した。

 だが、紫乃はその手を取らず、首を左右に振る。

 

「そんなこと、できるワケがないだろう……」

「……だよねぇ。今のキミならそう言うと思っていたよ」

 

 グレイは至極残念そうに手を引き、後ろに下がって「じゃあ」と言いながら、その手に()()()()を握った。

 

《レリックライザーD(ダーク)!》

「邪魔をされないように、ちょっと痛めつけておくしかないかぁ」

 

 かつて巨神魔皇クロノスも所持していた、黒いレリックライザー。それが今、グレイの手に握られている。さらに、腰にはライズホルダーも装備されていた。

 LOTが厳重に封印しているはずのものがその場にある事に紫乃は驚くが、しかし不思議な話でもないと思い直す。

 現に、内部に組み込んだ遺物が違うというだけで、紫乃もロゼもレリックライザーを持っているのだ。黒いレリックライザーも、複数個あったとしてもおかしくはない。新たに作る事もできるのだろう。

 考えている内に、グレイはその銃をライズホルダーのバックル部へとセットする。

 

《レリックドライバーD(ダーク)!》

「見せてあげよう、全てを無に還す色を……」

 

 グレイがそう言いながら取り出したのは、紫乃が持つオリエンタルトリニティ・スプレーと同規格のスプレー缶型の黒いモンストリキッドだった。

 さらにグレイはそれの上部にあるノズルを指で押し込み、起動させる。

 

《生者必滅!! トワイライトナインテイル!!》

 

 スプレー缶の表面に描かれている黒い九尾の狐の目が黄色く輝き、その尾の一本一本が暗い無数の色彩を放つ。

 

Shadowing Color(シャドーイング・カラー)!! DARKNESS GRADATION(ダークネス・グラデーション)!!》

「……変身」

BLACK-OUT(ブラック・アウト)!!》

 

 トリガーを引いた瞬間、缶のノズルから黒い粒子が噴き出すと、その一部がグレイの身体を黒く塗り潰すように覆い尽くす。

 そうしてアンダースーツが構築された後、残る粒子が装甲を形成し、スーツの上から合着されていく。

 

(オン)(オン)(オン)!!》

 

 全身に暗いカラーラインが走る、漆黒のアーマー。

 カラーラインは時間の経過に伴って、マゼンタからイエロー、イエローからシアンと色が変化するようになっている。

 

《浮き世に呪いあれ!! 大禍刻に吼え猛る九尾の狐!! トワイライトナインテイル!!》

 

 頭部には狐を彷彿とさせる耳が付いており、複眼は黄色で、その手には鞘に収まった一本の刀を持つ。

 最後に背中から尾を思わせるような九つの長い布がマントのようにはためき、その仮面の戦士は完成した。

 ――ムラサメの姿に良く似た、黒い仮面ライダーが。

 

「ムラサメ……!?」

「一体どういう事だ!?」

 

 紫乃もロゼも、そして駿斗と若葉も愕然とする。

 現代において封魔霊装 叢雨丸を所持しているのは一人のみ、即ちムラサメは紫乃しかいないはずなのに、と。

 

「仮面ライダーマガツムラサメ。それが、この姿の名さ」

 

 鞘を左手で握って右手は柄にかけ、やや腰を落として抜刀術の構えを取るマガツムラサメ。

 全く隙がない。紫乃は息を呑み、レリックライザーを握る手を強めた。

 直後、マガツムラサメの背後に控えていたヤミーたちが動き出す。話は終わり、ということなのだろう。

 

「ボクたちを止めたければ戦うしかないよ、紫乃」

「グレイ……!」

「悔いが残らないよう、本気で来る事を勧めておく」

 

 言われた後、紫乃は短く溜め息を吐き、背中越しにロゼへ声をかける。

 

「ロゼ、あの怪人たちを頼む!」

「分かった! 紫乃くん、気を付けて!」

 

 そうしてロゼが変身して敵の散った方に飛んでいくのを聞きつつ、紫乃はレリックライザーをライズホルダーに装着し、モンストリキッドを装填した。

 

《サンダー!》

《ハウンド!》

「変身!」

《天を裂く紫電の咆哮! サンダーハウンド!》

「行くぞ、グレイ!」

 

 AウェポンT/G-SSSを握り、仮面ライダームラサメ サンダーハウンドカラーがマガツムラサメへと対峙する。

 

《貪狼ノ型!》

「シィッ!!」

「フッ……!!」

 

 七星紋のひとつに指で触れ、速度を強化して斬りかかるムラサメ。

 対するマガツは、間合いに入った瞬間に抜刀。Aウェポンの刃とぶつかり合い、火花を散らす。

 その後もムラサメは刀を振り被るが、その度にマガツの抜刀術と打ち合いになり、尽くが防がれてしまう。

 

「ならば!」

《サンダー! Calling(コーリング)!》

「急々如律令!」

 

 打ち合いの最中、ムラサメは高速化を維持したままバックステップし、リキッドとドライバーを操作して掌から雷光を放つ。

 態勢を崩させた後の、不意打ちの電撃。これならば当たるはず、と考えた紫乃であったが、その雷はマガツムラサメ自身が掌から繰り出した雷によって相殺される。

 

「なに!?」

「フフフ……」

 

 さらにマガツが人差し指の先をムラサメに向けると、その指先から大きな炎の塊が生み出され、猛スピードで飛んでいく。

 

《巨門ノ型!》

 

 しかし命中する前にAウェポンを操作して青い光のバリアを生み出し、炎を凌いだ。

 被弾を避けたとは言え、ギリギリの攻防が続いている。

 この事実を前にムラサメは、マガツが単なる偽物ではなく強敵であると認識せざるを得なくなった。

 

「どうも見くびられているようだね、ガッカリだ。本気を出さなければ勝てないと言ったはずだよ?」

 

 マガツムラサメ自身も手加減しているようで、余裕の態度で嘆息し、鞘に納まったままの刀を肩で担いでいる。

 通常のリキッドでは勝てない。そう判断したムラサメは、その手に赤紫のクリアカラーのリキッドを握った。

 

《天馬翔来!! ソニックペガサスエクシード!!》

「なら望み通り、本気を見せてやる!」

 

 装填されると同時にムラサメのボディを無数の色のインクが埋め尽くし、白銀の翼を背負う赤紫の装甲の剣士、仮面ライダームラサメ エクシードを形作っていく。

 

BRUSH-UP(ブラッシュ・アップ)!! 時を超え空を駆ける絆の翼!! 天元突破!! ソニックペガサスエクシード!!》

「これがオレの、オレたちの繋いだ……絆の奇跡、光の翼だ!!」

「……光……奇跡……絆ァ……フ、フフハハハハハ……」

 

 首をコキコキと鳴らし、マガツは刀を思い切り振って鞘を地面に捨てる。

 するとそれが黒い靄のようなものに包まれて消え、代わりに抜き身の脇差が左手へと握られた。

 

「全部引き裂き砕いてやる」

 

 マガツムラサメの黄色い眼光が、ムラサメエクシードの姿を捉え、再び二人の刃が激突する。

 

 

 

 同じ頃。

 仮面ライダーブリューナク エレガントヴァルキリーに変身したロゼは、エレガントミラージュで分身を生み出しつつ、空中で数体のランフォリンクスの姿のヤミーと戦っていた。

 

「ハァーッ!」

 

 AウェポンL/Rのランスモードを振るい、ランフォリンクスヤミーの翼を貫いて次々に地上へ落としていくブリューナク。

 だが地面に叩きつけられたヤミーたちは容易く消滅せず、地を走って恐竜ヤミーと共に人間を追い続ける。

 

「く、いくらなんでも数が多すぎるわ!?」

 

 このままではいつ被害が出てもおかしくない。

 そう思ったのも束の間、ランフォリンクスと共に三体程のヴェロキラプトルヤミーが人間の男女を襲おうとしている姿を目の当たりにする。

 助けに向かおうにも、この距離では間に合わない。それでもブリューナクは、Aウェポンをライフルに変形させ地上へと降下していく。

 そしてヴェロキの爪が人間たちに襲いかかる、その寸前。

 

「止まれ!!」

「ぐっ!?」

 

 駿斗の叫ぶ声と共に、ヴェロキヤミーとランフォリンクスヤミーの動きが止まった。

 彼の身体に流れる時の神の血、その力を励起させ時を止めたのだ。

 

「ブリューナク、今の内に……これ、あんまり長続きしないから……!」

「……ありがとうございます、白多先輩!」

《絢爛廻転! Turning Color(ターニング・カラー)! BRIGHT GRADATION(ブライト・グラデーション)!》

 

 ブリューナクがデュアルリキッドを半回転させると、その赤い戦乙女の姿が蔦に包まれていき、紫の薔薇が開花する。

 

BRUSH-UP(ブラッシュ・アップ)! 輝け! 華麗なる紫薔薇の竜乙女! ブリリアントヴィーヴル!》

「喰らいなさい! ブリリアントジュエル!」

 

 竜の如き翼を生やした乙女は、変化すると同時にライフルの引き金を弾きつつ、無数の宝石の弾丸を飛ばしてヤミーたちを攻撃。

 射撃によってヤミーたちは頭や胸を貫かれ、爆散。その際、それぞれのいた場所に一枚のセルメダルが落ちた。

 

「さぁ、早く逃げて!」

 

 言った直後、彼らの顔を見てブリューナクはハッと目を剥く。

 その二人の顔には見覚えがあった。紫乃が避けていた、八重垣家の夫妻だったのだ。

 

「まだ息子が! 竜胆(リンドウ)がいないんです!」

「この騒ぎではぐれてしまって……!」

 

 夫妻の言葉で、ロゼと駿斗と若葉は戦慄する。

 彼らと一緒にいたのは、まだ10歳にもなっていないような幼い男の子だったはず。

 そんな子供が戦火の只中に取り残されているなど、あまりにも危険だ。封魔司書として、無視する事はできない。

 だが、ヤミーを相手にしながら探すには、あまりにも――。

 

「手が足りなさ過ぎる……!」

 

 一体どうすれば良いというのか。分身(エレガントミラージュ)を使うにしても、一度攻撃を受ければ消滅してしまう。

 悩んでいると、頭上から影が差し込んだ。

 

「驚いたな、見たこともない仮面ライダーと怪人がいる」

 

 見上げれば、そこにいたのはコウモリのような翼を背負う、金色の装甲の戦士。

 右手には銃型の武器、左手にはサーベルを持ち、赤い眼を輝かせるその姿は悪魔のようにも見える。

 まさか新手の敵なのだろうか。降り立ったその人物を眼にして一瞬ロゼはそう考えるが、どうにも敵意を感じない。

 そうして見ていると、黄金の戦士がブリューナクに話しかけて来る。

 

「名前も知らないが、君。怪人たちと敵対しているのなら手を貸して欲しい」

「あ、あなたは……?」

 

 問いかけられ、男は仮面の奥でフッと笑い、名乗りを上げた。

 

「俺は仮面ライダーキアノス、天坂 響! この帝久乃市を守る者、ホメオスタシスのリーダーだ!」

 

 

 

 一方、ムラサメエクシードとマガツムラサメは、先程と同様に互角の剣戟を続けていた。

 

「なかなかやるね、ムラサメ。絆の力は伊達ではないといったところかな?」

「くっ、こいつ……!?」

 

 否。戦況は僅かながらも、マガツ優勢に傾いている。

 時間停止を無力化し、超加速と念動力によって戦うムラサメエクシードだが、その攻撃が()()()()()()()()()()のだ。

 そればかりか、時折脇差によって反撃さえ行い、それが小さいながらもムラサメに手傷を負わせている。

 

「なぜこのスピードに追いつける……!?」

「さぁ、ね。じゃあ……そろそろ終わらせてあげるよ」

Reshadowing Color(リシャドーイング・カラー)!! Last Calling(ラスト・コーリング)!!》

 

 マガツはそう言ってリキッドのノズル部のダイヤルを操作し、赤色の位置に合わせてトリガーを引く。

 すると、彼の持つ二本の刀にダークマゼンタの炎が灯った。

 

「ハァァァァァァッ……!」

《トワイライトナインテイル・アクロマティックプロミネンス!!》

 

 剣を交差させ、火炎の斬撃を飛ばさんと構えるマガツムラサメ。

 ムラサメエクシードは持ち前のスピードでそれを回避しようとするが、その寸前。

 背後のトイレの前に、泣いている子供がいる事に気付く。

 紫乃はすぐに、それが八重垣夫妻の子供だという事にも気付いてしまう。

 

『なっ……!?』

 

 ムラサメとマガツ、二人の声が重なるのと、必殺技が放たれてしまうのは同時であった。

 火炎の斬閃が解き放たれ、その一撃から背後の少年を守るべく、ムラサメはその場で剣と腕を交差させ身構える。

 

「ぐああああああ!!」

 

 そして、直撃の後。

 ムラサメの変身は解け、ダメージに耐え切れなかった紫乃は倒れ伏す――。

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